ひとりぼっちのぼくが異世界で公爵さまに溺愛されています

波木真帆

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最終章 (領地での生活編)

フレッド   52−1※

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「屋敷周辺の警備はできているか?」

「はっ。ご安心ください」

私たちが食事をしている間に先ほどの騒ぎを踏まえて、レオンとマクベスが対策を講じてくれていると思っていたが、やはりさすがだな。
安心してシュウを屋敷に連れ帰ることができる。

目立った騒ぎが起こる気配もなく、馬車は屋敷へと進んでいった。


「フレッド、もうすぐ着く?」

シュウは馬車が走り出して少し経った頃から幾度となく、その質問を投げかけてくる。
よほど到着が楽しみと見える。

それほどまでに楽しみにしてくれているとは、私としても嬉しい限りだ。

シュウにとって懐かしい場所に変わりはないが、王都で過ごしている時間のほうがはるかに長い。
もうすっかり忘れているのではないかと思っていたが、ここへ向かう途中、何度も楽しそうにサヴァンスタックでの屋敷の話をしてくれていたことが頭をよぎる。

それほどまでにシュウにあの屋敷での日々が楽しい思い出になってくれているのだ。
歴史が変わったことでシュウがあの屋敷で過ごした日々が我々以外の記憶から消え去り、あの屋敷にはシュウを知るものは誰もいないのが少し可哀想ではあるが、それでもシュウならば、すぐにあの者たちの記憶に強く刻まれるに違いない。

屋敷が近くなってきて、シュウは外を覗こうとしたがさっきのことを思い出したのか、座席に座ったまま動こうとしない。
よほどさっきの騒ぎが怖かったと見える。

だが、馬車の外からも大きな声は聞こえないことに安堵の表情を見せていた。

通常ならば、私たちの帰宅だ。
屋敷の外で使用人たちが並んで迎え入れてくれるものであるが、あのような騒ぎになりかねないために使用人たちは屋敷の中で我々を迎え入れるべく今か今かと到着を待ち侘びていることだろう。

屋敷の前に馬車が停まり、シュウの手を引いてゆっくりと降り立つとシュウは感慨深い表情で

「ああ……っ、ぼくたち……帰って、きたんだね……」

とその綺麗な瞳に涙を潤ませながら感動に身を震わせていた。

ああ、シュウはこんなにもこの屋敷に帰ってくるのを心待ちにしてくれていたのか……。
私は本当に幸せ者だな。

あまりの感動に緊張した様子のシュウに大丈夫だよと声をかけ、シュウとピッタリと寄り添いながら玄関への道のりを歩いていく。

マクベスが開けて待っていたその玄関に吸い込まれるように、シュウと共に中に入ると、

「旦那さま、奥方さま。おかえりなさいませ!」

と大勢の声で出迎えられた。

懐かしい者たちの姿だ。
誰の欠けもない。

だがその表情は私の知っているものとは随分と違う。
以前は私の顔に嫌悪するものはいなくとも、皆、緊張した面持ちで私と対面していた。
気を遣われているというのがありありと感じられて、屋敷の中であっても心穏やかに過ごすことまではできなかった。

仕方のないことだ。
嫌悪されないだけいいじゃないかと何度自分に言い聞かせたか。

だが、今……私とシュウに向けられている表情は皆、心からの笑みを浮かべていて、以前より壁を感じられない。

「ああ、出迎えありがとう。無事にお前たちの顔が見られて嬉しいぞ」

私のために、そしてシュウのために出迎えてくれたものたちに心からの感謝の気持ちを伝えたが、声が震えて言葉にならない。

ああ、こんなにも歴史は変わったのだな。
なんと嬉しいことだろう。


喜びに胸を振るわせていると、シュウが突然大声をあげた。

「わぁっ! シンシアさん! メリルさん! ただいまっ!」

シュウの嬉しそうな声が屋敷の広い玄関に響き渡る。
その瞬間さっきまで歓迎の言葉に溢れていたのが、急にしんと静まり返る。

それもそうだろう。
初めてこの屋敷に来たはずのシュウが、シンシアとメリルに声をかけたのだ。
しかも、旧知の中のように。

やはりレオンとマクベスに事実を伝えておいて正解だったな。
シュウには知らないふりをして初めて出会ったように振る舞うなど到底できるはずがない。
それほど素直な子なのだ。

そんなシュウを守ることも伴侶としての私の責務だ。

間違えたことに気づいたシュウが不安そうな顔で私を見上げる。
ああ、そんな表情も可愛い。

私はシンシアとメリルに視線を向け、

「シンシア、メリル。お前たちは私の大事な伴侶の専属メイドに任命する」

というと、二人は驚きの表情を見せ

「わ、私どもが奥方さまのお世話を? 若輩者の私たちですが……よろしいのですか?」

と私に声を返してくる。

怯えた表情もなく、ただ内容に驚いているだけだ。
それがとてつもなく嬉しい。

以前の世界でシュウを大切に世話してくれていたシンシアとメリルだ。
この二人を差し置いて他の者を世話役にするなどあり得ない。
急にシュウに話しかけられて驚く二人に、ここへの道中、お前たちの話をしていたからシュウは会うのを楽しみにしていたようだと誤魔化したが、素直な二人はそれをそのまま信じたようだ。

シュウに同意を求めると、シュウは私の意図に気付いたようで嬉しそうに笑顔を見せながら、シンシアとメリル、そして、私たちを出迎えてくれた大勢の使用人たちに向かって、

「シンシアさん、メリルさん。それから皆さんもこれからよろしくお願いします」

と声をかけた。

使用人たちは美しいシュウにこんなにも丁寧に挨拶をしてもらえたのがよほど嬉しかったようで口々に感嘆の声を上げていた。

伴侶が褒められて悪い気などするわけない。

私は得意げに

「私の伴侶は心清らかで本当に女神のように麗しいのだ。なんといっても私の唯一だからな」

と言うと、皆、先ほど以上に大きな感嘆の声を上げてくれた。
以前ならシュウは私が唯一だと発すると恥ずかしがっていたが、唯一の意味をきちんと理解してからは何も言わないどころか、笑顔を向けてくれるようになった。

それだけでシュウが私と唯一であることを心から喜んでいるのだと感じられて嬉しくてたまらない。

私たちが唯一だと知ったところで、使用人たちから我々への質問が飛んでくるがシュウの顔に少し疲れの表情が見える。
なんと言っても長旅から帰宅したばかりなのだ。
ずっと玄関にいたままでは疲れもしよう。

そう思った時、我々の後ろからマクベスの声が響いた。

「さぁ、旦那さまと奥方さまは長旅でお疲れになっている。お話はまた後でお伺いすることにして、すぐに部屋に案内するんだ。ルドガー、私が留守にしていた間はしっかりとやってくれていただろうな?」

その声に騒ついていたのが一瞬で静まりかえる。

ああ、やはり筆頭執事の威力は並大抵のものではない。
端にいたルドガーがマクベスの言葉に我々の前に飛び出てきた。

私とマクベスに見つめられ、緊張の面持ちで声を震わせているが、マクベスが私を探しに王都へ向かうことができたのもルドガーがこの屋敷をしっかりと守れるとわかっていたからだ。

マクベスの強い口調の中にはルドガーへの師弟愛のようなものが感じられる。
私はそんな二人の強い信頼関係に胸を打たれながらルドガーへの感謝の思いを口にすると、ルドガーは嬉しそうに涙を滲ませた。

ルドガーの涙がツーッと頬を伝わった瞬間、私の後ろからルドガーめがけてスッと長い手が伸びてきた。
かと思えば、ルドガーはあっという間に大きな身体に抱きしめられていた。

自分の状況が何も理解できていないルドガーはただただ焦っているが、ルドガーを抱きしめているレオンの口からは

「ああ、まさかここで出会えるとは……」

喜びに満ち溢れた言葉が漏れている。

まさか……こんなことが起こるとは……信じられないな。
だが、レオンのあの表情はどうみてもそうだと言っている。

ルイであった時は命尽きるまでシュウをひたすらに思い続け、そして、レオンという新しい人生を生き出してもシュウと出会った瞬間にルイの記憶を思い出し、ここから先の人生をシュウの護衛として生きることを決断してくれたレオンに、まさかここで唯一との出会いがあろうとは……。

なんという運命なのだろう。

もし、ルイとしての記憶が戻らなければ私はシュウの護衛に引き抜くこともなかっただろう。
そうなれば、レオンは生涯騎士団長として王都で過ごしていたに違いない。

とすれば、サヴァンスタックに住むルドガーと出会うことはほぼなかったといえよう。
そう考えればこの二人が出会えたのもシュウのおかげだといえばそうなのかもしれない。

「フレデリックさま、申し訳ございません。私と彼にこのまま休暇をいただけませんか?」

レオンの申し出に腕の中にいるルドガーは戸惑いを見せている。
だが、ようやく自分の伴侶となるべきものを見つけたレオンのことを思えば、許可しないわけにはいかない。

レオンとルドガーに三日間の休暇をやることにした上で、ルドガーにきちんと説明するようにと告げた。

私の言葉に嬉しそうな表情で返したレオンは、ほんの少しの時間でも惜しいとでもいうようにすぐさまルドガーを抱き上げ使用人部屋のある棟へと駆けて行った。

ふふっ。
オランディア王国騎士団最強の男も唯一を前にすれば、ただの男だというわけだな。

私の隣でシュウは何が起こっているのかわからないという表情でレオンが走り去った方向を見つめていたが、私もそろそろ限界だ。

シュウを部屋に誘い抱きかかえた。

そして、我々の周りにいる使用人たちに

「我々は今から初夜に入る。良いな?」

と宣言すると、使用人たちは嬉しそうに歓声をあげた。

すると、マクベスがスッと私のそばに近づいてきて、耳持ちで囁く。

「旦那さま。シュウさまは長旅でお疲れでございます。くれぐれも無理はおさせになりませんように……」

シュウとの体格に違いを心配しているのだろう。
だが、私も鬼畜ではない。
シュウに無理をさせないようになど承知の上だ。

だが、この屋敷で身も心も繋がるのは初めてなのだ。
この記念すべき夜にシュウと愛し合わないなどという選択肢など私には無い。
マクベスも私の思いを理解してくれるはずだ。


シュウを抱き上げたまま階段を上り、久しぶりの自室へ入るとシュウは以前と同じままだと嬉しそうな声をあげた。
そんな可愛いシュウに惹き寄せられるように、私はシュウの唇に口付けた。
扉が閉まるまで我慢できたことだけは褒めて欲しい。

何度しても飽きることのないシュウの甘い唇に酔いしれながら、しばらくの間柔らかな唇も甘い口内も余す所なく味わい続けていた。

甘い唾液を堪能してから、寝室に連れて行ってもいいかと尋ねると少し恥ずかしそうに初夜だからかと尋ねてくる。

ふふっ。
この部屋で過ごしていた時には知らなかった初夜の意味をシュウはもうすでに知っているのだな。
大人になったものだ。

ほんのりと頬を染めながら、今日は初めてではないと言ってくる。
確かに私はシュウともう数えきれないほど何度も愛し合っている。
だが、そんなことは関係ない。

この屋敷での初夜は正真正銘、今夜なのだ。

先ほど私たちの帰りを歓迎してくれた使用人たちにも私たちがきちんと初夜を迎え、誰もが認める夫夫になったことを示さねばなるまい。

だからこそ、今夜はシュウとこの屋敷で愛し合わなければいけないのだ。

この屋敷で迎える初夜は大事な儀式なのだ。
そう告げるとシュウはすぐに納得してくれた。

そうと決まれば話は早い。
シュウを早速寝室に……と思っていると、シュウから疑問が投げかけられた。

どうやら先ほどのレオンの行動が気になっていたようだ。
あの場にいてあれが理解できていなかったのはおそらくシュウだけだろうな。
本当に色事に関しては子どものように純粋だ。

「おそらくだが……レオンとルドガーは唯一なのだろう」

そう教えると、シュウは少し混乱したように見えた。
唯一が見ただけでわかるものなのかと驚いていたが、厳密にいえばそうではない。

見ただけで相手が自分の唯一であるかを確実に見極められる者はいないだろう。
だが、なんというのだろう。
私がシュウと出会った時に感じたあの時の気持ちを。

シュウと目が合った瞬間にドンと雷のような衝撃が私の中を走ったのだ。

おそらく、レオンもあの時の私と同じような衝撃をルドガーに抱いたに違いない。

シュウも私にそんな思いを抱かなかったか……そう尋ねると、シュウも同じように私を特別だと感じてくれていたようだ。

レオンたちも同じだろう。
そしてアンドリュー王もまたトーマ王妃にそのような思いを抱いていたのだと教えてやると

「やっぱり唯一って、特別なんだね」

と嬉しそうに微笑んでいた。

「二人でこれから特別な夜を過ごそう」

そういうと、シュウは嬉しそうに寝室に連れて行ってと言ってくれた。

ああ、こんな嬉しい願いはこの世にないだろうな。

「私の姫……仰せのままに」

シュウの頬にそっと口づけをしてシュウを寝室へと連れて行った。

シュウと愛し合うのは初めてでもないのに、この部屋でシュウを抱くことに興奮しているせいかシュウの服を脱がすのも手間取る。

以前の私が甦って来ているようなそんな感覚を覚えながら、シュウの服を一枚、一枚取り去っていく。
私の手が震えていることに気づいたのか、シュウが私の服を脱がせてくれると言い出した。

シュウの甘やかな唇に口づけながら、シュウの指が私の釦を外していく。
上着とシャツを脱がされ露わになった胸板にシュウの手が触れる。

「ふふっ。私の身体が好きか?」

「うん。だってぼくだけのフレッドだもんね」

シュウが独占欲を露わにしてくれたことが嬉しくて、私もシュウの肌にそっと触れるとピクリと身体を震わせ、もっと触ってとねだってくる。

可愛らしいおねだりに一気に昂る愚息を必死で抑えながら、シュウの胸の尖りを指先で弄ると

「ああっ……んっ!」

気持ちよさそうな声をあげる。

シュウの嬌声を聞きながらようやくシュウの服を脱がし終えたと同時に私もズボンと下着をさっと脱ぎ、お互いに生まれたままの姿になった。

「ふれっど、の……おっきくなってる」

「ああ、シュウも感じてくれているみたいだな」

もうすでにお互いに蜜を漏らしているせいか、甘い香りが部屋中に漂っている。
それだけでクラクラとしそうになる。

「ふれ、っどの……なめ、たい……」

「じゃあ一緒にしようか」

私の言葉に嬉しそうに頷くシュウを抱き上げ、私はベッドに横たわった。
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