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番外編
ラガヌムの女神
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突然思いついたお話。
ザックとハーヴィーの屋敷から帰宅途中のお話です。
楽しんでいただけると嬉しいです♡
* * *
<sideフレッド>
「ねぇ、フレッド……」
「どうした?」
「次の町で少し長く休んだりできる?」
私の膝に乗り、外の景色を見ていたシュウが突然そんなことを言い出した。
「ああ、それは構わないが疲れたのか?」
それならば宿のある町まで行ってのんびりと過ごさせた方がいいと思ったのだが、シュウの口からは
「ううん、そうじゃなくてフレッドといつもと違う町でデートしたいなって」
という想像以上の嬉しい言葉が出てきた。
「――っ!! シュウっ!!」
ああ、もうどうしていつもシュウは私の喜ぶことを考えてくれるのだろう。
「それでは次の町を一緒に散策でもしようか」
「わぁー! 嬉しいっ! フレッド、大好き!!」
「シュウ、そういう時はどうしてくれるのだった?」
「あ、そうか。フレッド、目を瞑って……」
シュウが口付けてくれるのを見たい気持ちはあるが、シュウが目を瞑って欲しいというのならそれに従うだけだ。
「こうか?」
「うん。目を開けないでね」
そういうと、シュウの顔が少しずつ近づいてくる気配がする。
そしてシュウの小さな両手が私の頬に触れたと思ったら、柔らかくて小さな唇が私のそれにそっと重なった。
ああ、シュウとの口付けはいつだって私を高揚させるが、シュウからしてくれる口付けは格別だ。
我慢できずにシュウの唇に舌を当てると、小さな唇がそっと開いた。
吸い込まれるように舌を入れると、シュウの方から舌が絡みついてくる。
拙いその動きが何よりも私の興奮を増してくる。
あまり激しくしては町で外に出せなくなるとわかっているから、自分からは動かずにシュウにされるがままになって唇を離すと
「フレッド……どうだった?」
とほんのりと頬を染めて尋ねてくる。
「ああ、シュウからの口付けは最高だ。続きは今夜の宿でな」
「うん……楽しみにしてる」
「――っ!!」
ああ。もう本当にシュウは私を煽る天才だ。
少し経って目的の町に到着し、御者には予定より少し長めに休憩を取ることを伝えて、シュウと二人で馬車を降りた。
ここから我がサヴァンスタック領まではそこまで離れてはいないが、私が泊まるような宿もない小さな町だから迷惑になってはいけないと思い、馬たちの休憩地として暫く留まっているくらいの場所だった。
だからこうしてこの地に降り立つのは初めてかもしれない。
流石に私やシュウの名を知らないことはないから安心だが正直に言ってここに何があるのかもよくわかっていない。
馬車を降りてすぐに甘い匂いに誘われた。
「なんだ、この匂いは?」
「フレッドも知らないの?」
「ああ、初めてだな」
「じゃあ、行ってみようよ!」
「わかった。だが、絶対に私から離れてはいけないぞ」
「うん! わかった」
そういうとシュウは私の腕にしっかりと絡みつき、ピッタリと寄り添って歩き始めた。
ああ、これならいいだろう。
シュウとその甘い匂いを出してみる店に向かうと、店先で何やら揚げているものがいる。
「わぁ! ドーナツみたい!」
「ドーナツ?」
「うん、僕がいたところにもこうやって揚げたものに砂糖とかチョコレートとかかけて食べてたんだよ。向こうでは真ん中がくり抜かれた丸い形だったんだけどね。ここのは小さいから食べやすそう!」
「そうなのか。シュウのところにもあったものと聞けば興味が湧くな。一つ買ってみようか」
「やったぁ! フレッド、大好き!!」
嬉しそうに抱きついてくれるシュウを愛おしく思いながら、店に立ち寄ってみるとちょうど全ての菓子が揚がったところだったようで、火は消えていた。
よかった、シュウを連れているから万が一のことがあっては危ないからな。
安心して声をかけようとすると、客のいる気配に気づいたのか店主が後ろ向きに我々に声をかけながら振り返った。
「いらっしゃ――ええっ? も、もしや、さ、さゔぁ、サヴァンスタック公爵さま?? い、いや、まさか……っ、公爵さまがこんな辺鄙なところに来るはずがない!! でもとてもよく似ていらっしゃる」
とかなり混乱を極めている様子。
まぁ、私もシュウが言わなければ決して立ち寄ることもなかった店だ。
店主が混乱するのも無理はない。
「店主、落ち着いてくれ」
「は、はい」
何度も私とシュウの顔を見て、本物だとわかると途端にトーンダウンしたのは、きっと、あまりのことに茫然としてしまっているのかもしれない。
「私たちのことを知ってくれているのは有り難いが、今回のこの町の訪問は個人的なものだ。だから、そこまで畏まらずとも良い。ここまではわかるか?」
「は、はい」
「そこでだ、私の愛しい伴侶が、其方の作っている菓子に興味があるようで、一つ購入したいのだ。良いか?」
「は、はい。えっ?」
半ば茫然と話を聞いていた店主だったが私たちが購入したいという話にようやく我に返ったのか、驚いたように大きな声を上げた。
「あ、あの……私の、ラガヌムをお召し上がりいただけるのですか?」
「ほお、ラガヌムというのか。それを一つもらいたい」
「は、はい。ありがとうございます」
店主は小さな箱にラガヌムを数個入れると、上から黒い砂糖と蜂蜜をかけ小さな棒を二本突き刺して渡してくれた。
「いくらだ?」
「い、いえ。お代は結構でございます。公爵さまと奥方さまに召し上がっていただけるだけで光栄でございます」
深々と頭を下げるが、
「そんなのダメです!」
とシュウが声を上げた。
「えっ?」
突然のシュウの声に目を丸くする店主にシュウはしっかりと諭した。
「一生懸命作っているものをタダであげたりしちゃダメです。物を渡して対価をもらうのは当然のことですよ。そうじゃないとこれを美味しくいただけません。ねぇ、そうだよね、フレッド」
「ああ、そうだな。私の伴侶もこう言っているから、店主。金を受け取ってくれ」
「は、はい」
店主は恐縮しながらも、金を受け取ってくれた。
「フレッド、食べてみたい!」
国王の弟で公爵でもある私が店先で立ったまま食べ物を食べるなど、考えられないことだが、シュウの望みなら別だ。
「ああ、少しまだ熱いみたいだから冷めたかどうか確認してからな」
店主には悪いが、毒味をしないでシュウに食べさせるわけにはいかない。
一個の半分を口に入れると、特に問題はないようだ。
しかも思っていたよりも随分と美味しい。
流石、シュウが食べたいと望むものだ。
「ほら、シュウ」
私の食べかけを当然のように口に入れて、美味しそうに食べるシュウの姿にいつしか町の者たちが見惚れているのがわかる。
これでシュウの人気がまた増えることだろう。
「んっ! これ、すっごく美味しい!!」
シュウの嘘偽りのない言葉に店主は満面の笑みを浮かべていた。
ああ、この町に立ち寄ったことはいいことだったかもしれないな。
そんな予想通り、シュウのこの時の美味しいという一言が瞬く間にオランディア王国で広がり、それとともに一気にラガヌム人気が加速して、この小さな町は途轍もない数の観光客で溢れるようになり、大きな賑わいを見せるようになった。
それからはいろいろな町からシュウへの招待状が届き、その各地でシュウは女神のように崇め奉られるようになった。
今やサヴァンスタック公爵夫人ではなく、私の方が女神の伴侶と言われそうな勢いだ。
だがそれでもいい。
私はシュウの伴侶であることに変わりはないのだから。
ザックとハーヴィーの屋敷から帰宅途中のお話です。
楽しんでいただけると嬉しいです♡
* * *
<sideフレッド>
「ねぇ、フレッド……」
「どうした?」
「次の町で少し長く休んだりできる?」
私の膝に乗り、外の景色を見ていたシュウが突然そんなことを言い出した。
「ああ、それは構わないが疲れたのか?」
それならば宿のある町まで行ってのんびりと過ごさせた方がいいと思ったのだが、シュウの口からは
「ううん、そうじゃなくてフレッドといつもと違う町でデートしたいなって」
という想像以上の嬉しい言葉が出てきた。
「――っ!! シュウっ!!」
ああ、もうどうしていつもシュウは私の喜ぶことを考えてくれるのだろう。
「それでは次の町を一緒に散策でもしようか」
「わぁー! 嬉しいっ! フレッド、大好き!!」
「シュウ、そういう時はどうしてくれるのだった?」
「あ、そうか。フレッド、目を瞑って……」
シュウが口付けてくれるのを見たい気持ちはあるが、シュウが目を瞑って欲しいというのならそれに従うだけだ。
「こうか?」
「うん。目を開けないでね」
そういうと、シュウの顔が少しずつ近づいてくる気配がする。
そしてシュウの小さな両手が私の頬に触れたと思ったら、柔らかくて小さな唇が私のそれにそっと重なった。
ああ、シュウとの口付けはいつだって私を高揚させるが、シュウからしてくれる口付けは格別だ。
我慢できずにシュウの唇に舌を当てると、小さな唇がそっと開いた。
吸い込まれるように舌を入れると、シュウの方から舌が絡みついてくる。
拙いその動きが何よりも私の興奮を増してくる。
あまり激しくしては町で外に出せなくなるとわかっているから、自分からは動かずにシュウにされるがままになって唇を離すと
「フレッド……どうだった?」
とほんのりと頬を染めて尋ねてくる。
「ああ、シュウからの口付けは最高だ。続きは今夜の宿でな」
「うん……楽しみにしてる」
「――っ!!」
ああ。もう本当にシュウは私を煽る天才だ。
少し経って目的の町に到着し、御者には予定より少し長めに休憩を取ることを伝えて、シュウと二人で馬車を降りた。
ここから我がサヴァンスタック領まではそこまで離れてはいないが、私が泊まるような宿もない小さな町だから迷惑になってはいけないと思い、馬たちの休憩地として暫く留まっているくらいの場所だった。
だからこうしてこの地に降り立つのは初めてかもしれない。
流石に私やシュウの名を知らないことはないから安心だが正直に言ってここに何があるのかもよくわかっていない。
馬車を降りてすぐに甘い匂いに誘われた。
「なんだ、この匂いは?」
「フレッドも知らないの?」
「ああ、初めてだな」
「じゃあ、行ってみようよ!」
「わかった。だが、絶対に私から離れてはいけないぞ」
「うん! わかった」
そういうとシュウは私の腕にしっかりと絡みつき、ピッタリと寄り添って歩き始めた。
ああ、これならいいだろう。
シュウとその甘い匂いを出してみる店に向かうと、店先で何やら揚げているものがいる。
「わぁ! ドーナツみたい!」
「ドーナツ?」
「うん、僕がいたところにもこうやって揚げたものに砂糖とかチョコレートとかかけて食べてたんだよ。向こうでは真ん中がくり抜かれた丸い形だったんだけどね。ここのは小さいから食べやすそう!」
「そうなのか。シュウのところにもあったものと聞けば興味が湧くな。一つ買ってみようか」
「やったぁ! フレッド、大好き!!」
嬉しそうに抱きついてくれるシュウを愛おしく思いながら、店に立ち寄ってみるとちょうど全ての菓子が揚がったところだったようで、火は消えていた。
よかった、シュウを連れているから万が一のことがあっては危ないからな。
安心して声をかけようとすると、客のいる気配に気づいたのか店主が後ろ向きに我々に声をかけながら振り返った。
「いらっしゃ――ええっ? も、もしや、さ、さゔぁ、サヴァンスタック公爵さま?? い、いや、まさか……っ、公爵さまがこんな辺鄙なところに来るはずがない!! でもとてもよく似ていらっしゃる」
とかなり混乱を極めている様子。
まぁ、私もシュウが言わなければ決して立ち寄ることもなかった店だ。
店主が混乱するのも無理はない。
「店主、落ち着いてくれ」
「は、はい」
何度も私とシュウの顔を見て、本物だとわかると途端にトーンダウンしたのは、きっと、あまりのことに茫然としてしまっているのかもしれない。
「私たちのことを知ってくれているのは有り難いが、今回のこの町の訪問は個人的なものだ。だから、そこまで畏まらずとも良い。ここまではわかるか?」
「は、はい」
「そこでだ、私の愛しい伴侶が、其方の作っている菓子に興味があるようで、一つ購入したいのだ。良いか?」
「は、はい。えっ?」
半ば茫然と話を聞いていた店主だったが私たちが購入したいという話にようやく我に返ったのか、驚いたように大きな声を上げた。
「あ、あの……私の、ラガヌムをお召し上がりいただけるのですか?」
「ほお、ラガヌムというのか。それを一つもらいたい」
「は、はい。ありがとうございます」
店主は小さな箱にラガヌムを数個入れると、上から黒い砂糖と蜂蜜をかけ小さな棒を二本突き刺して渡してくれた。
「いくらだ?」
「い、いえ。お代は結構でございます。公爵さまと奥方さまに召し上がっていただけるだけで光栄でございます」
深々と頭を下げるが、
「そんなのダメです!」
とシュウが声を上げた。
「えっ?」
突然のシュウの声に目を丸くする店主にシュウはしっかりと諭した。
「一生懸命作っているものをタダであげたりしちゃダメです。物を渡して対価をもらうのは当然のことですよ。そうじゃないとこれを美味しくいただけません。ねぇ、そうだよね、フレッド」
「ああ、そうだな。私の伴侶もこう言っているから、店主。金を受け取ってくれ」
「は、はい」
店主は恐縮しながらも、金を受け取ってくれた。
「フレッド、食べてみたい!」
国王の弟で公爵でもある私が店先で立ったまま食べ物を食べるなど、考えられないことだが、シュウの望みなら別だ。
「ああ、少しまだ熱いみたいだから冷めたかどうか確認してからな」
店主には悪いが、毒味をしないでシュウに食べさせるわけにはいかない。
一個の半分を口に入れると、特に問題はないようだ。
しかも思っていたよりも随分と美味しい。
流石、シュウが食べたいと望むものだ。
「ほら、シュウ」
私の食べかけを当然のように口に入れて、美味しそうに食べるシュウの姿にいつしか町の者たちが見惚れているのがわかる。
これでシュウの人気がまた増えることだろう。
「んっ! これ、すっごく美味しい!!」
シュウの嘘偽りのない言葉に店主は満面の笑みを浮かべていた。
ああ、この町に立ち寄ったことはいいことだったかもしれないな。
そんな予想通り、シュウのこの時の美味しいという一言が瞬く間にオランディア王国で広がり、それとともに一気にラガヌム人気が加速して、この小さな町は途轍もない数の観光客で溢れるようになり、大きな賑わいを見せるようになった。
それからはいろいろな町からシュウへの招待状が届き、その各地でシュウは女神のように崇め奉られるようになった。
今やサヴァンスタック公爵夫人ではなく、私の方が女神の伴侶と言われそうな勢いだ。
だがそれでもいい。
私はシュウの伴侶であることに変わりはないのだから。
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