262 / 266
番外編
まだまだだな
しおりを挟む前話の裏側というか、マクベス視点のお話。
楽しんでいただけると嬉しいです♡
* * *
<sideマクベス>
ゴードン辺境伯さまのお屋敷から旦那さまとシュウさまが戻られて、このお屋敷にも明るい日常が戻ってきた。
やはりシュウさまがいらっしゃると使用人たちの士気も上がる。
お二人がいらっしゃらない時間は本当に火が消えたように静かだったからな。
だが、気をつけなければいけないことがある。
しばらく休暇をとったことで、旦那さまの仕事量が増えてしまうのだ。
ただでさえお忙しい旦那さまだから休暇明けに忙しくなるのは仕方のないことだが、旦那さまはご自分の身体を労わることなく仕事に集中してしまわれる。
それでいつも頭痛を起こしてしまうのだが、そんな状態の時でさえ、シュウさまを愛することをおやめにはならない。睡眠不足なのだから、しばらくは安静にして睡眠を重視して欲しいものだが、唯一のお方が隣にいると我慢できないのは仕方のないことなのだろうな。
今日もなんとか執務を終わらせていらっしゃったが、部屋に戻られる時には少し体調の悪い表情をなさっていた。
きっといつものように頭痛を起こしていらっしゃるのだろう。
さて、なんとかして休んでいただく方法はないか……。
そう考えていた時、シュウさまが私の元に駆けてこられた。
「マクベスさん! 大変!」
「シュウさま。どうかされましたか?」
「フレッドが熱があるみたい! だから熱がある時用のご飯を作ってほしいんだって」
「承知いたしました。それではすぐにご用意いたしますね。シュウさま、先にお部屋に戻られますか?」
「ううん。今、着替えているはずだから僕もご飯の支度を手伝うよ」
「シュウさまがお手伝いくださったらすぐにご用意できますよ。では厨房に参りましょう」
シュウさまと厨房までの道を歩きながら、私は良い方法を思いついた。
シュウさまに旦那さまのお世話をお願いしたら、旦那さまも流石にシュウさまのいうことをお聞きになるだろう。シュウさまがお休みになるように言ったら休まざるを得ないはず。これなら、きっと旦那さまの寝不足も解消できるに違いない。
すぐに料理長に食事を作らせて、シュウさまに最後の一味をお願いし、出来上がった料理と共にシュウさまと旦那さまがいらっしゃる部屋に向かった。
寝室の扉を叩くと部屋の中から大きな声で
「シュウか? 入ってくれ!」
少し焦ったような旦那さまの声が聞こえる。
その声を聞く限り、体調はそこまで悪そうには感じないが、きっとシュウさまが心配なさったのだろう。
シュウさまに休むように言われていうことを聞いていらっしゃるのだ。
やっぱり私の思った通りだ。これなら大丈夫そうだ。
シュウさまの姿を見て、一人で寂しかったと甘える旦那さまを拝見して、邪魔はしてはいけないと静かに待っていたが、私の気配を感じたのか、旦那さまはパッと私に視線を向けた。
「なんだ、マクベス。お前も一緒だったか」
「はい。旦那さま。お熱がおありだとか。医師をお呼びしましょうか?」
念のために尋ねたけれど、案の定休めば治ると返ってきた。
それならしっかりと休んでいただくとしよう。
「それでは明日の朝まで様子を見ましょう。シュウさま。お食事はシュウさまにお願いしてもよろしゅうございますか? 食事の後は念のために解熱薬もお飲ませくださいますか?」
シュウさまにお願いすると、シュウさま得意げな顔で任せてと仰った。
これなら大丈夫だろう。
「旦那さま。シュウさまの言うことをしっかりお守りくださいね」
念を押すように告げると、旦那さまは少し訝しんだ表情をしていたものの、了承してくださった。
これで安心だ。
私はベッドの前にテーブルを起き、持ってきた食事を並べて後のことをシュウさまに託し、部屋をでた。
「マクベス。旦那さまが熱がおありだとか?」
「ああ。ルーカス。そうなんだ。ここのところ、仕事が立て込んでいるのにシュウさまと時間を削ろうとなさらなかったからな。寝不足で発熱されたんだろう。それ以外は特に体調の悪いところはなさそうだった」
「まぁ、愛しい相手との時間は削りたくないものだからな。旦那さまのお気持ちはよくわかるよ。だが、旦那さまのお世話はしないでここにいていいのか?」
「旦那さまのお世話はシュウさまにお願いしたから大丈夫だよ」
「シュウさまに?」
「ああ。旦那さまもシュウさまのいうことなら聞くだろう。だから今日はしっかりと睡眠をとられるはずだ」
「ははっ。マクベスともあろうものが、旦那さまのことをよくわかっていないな」
「どういう意味だ?」
「後でわかるよ」
ルーカスは意味深な表情を見せて、自分の仕事へ戻っていった。
それから数時間後、旦那さまとシュウさまの寝室のベルが鳴らされ部屋に入った私の耳に飛び込んできたのは、風呂場で愛し合う激しい音だった。旦那さまにとって、シュウさまにお世話してもらうことはただただ興奮してしまう材料に過ぎなかったらしい。
どうやら、ルーカスの言ったように私はまだまだ旦那さまのことを理解していないようだ。
568
あなたにおすすめの小説
過労死転生した公務員、魔力がないだけで辺境に追放されたので、忠犬騎士と知識チートでざまぁしながら領地経営はじめます
水凪しおん
BL
過労死した元公務員の俺が転生したのは、魔法と剣が存在する異世界の、どうしようもない貧乏貴族の三男だった。
家族からは能無しと蔑まれ、与えられたのは「ゴミ捨て場」と揶揄される荒れ果てた辺境の領地。これは、事実上の追放だ。
絶望的な状況の中、俺に付き従ったのは、無口で無骨だが、その瞳に確かな忠誠を宿す一人の護衛騎士だけだった。
「大丈夫だ。俺がいる」
彼の言葉を胸に、俺は決意する。公務員として培った知識と経験、そして持ち前のしぶとさで、この最悪な領地を最高の楽園に変えてみせると。
これは、不遇な貴族と忠実な騎士が織りなす、絶望の淵から始まる領地改革ファンタジー。そして、固い絆で結ばれた二人が、やがて王国を揺るがす運命に立ち向かう物語。
無能と罵った家族に、見て見ぬふりをした者たちに、最高の「ざまぁ」をお見舞いしてやろうじゃないか!
身代わりにされた少年は、冷徹騎士に溺愛される
秋津むぎ
BL
第13回BL大賞奨励賞頂きました!
最終17位でした!応援ありがとうございます!
あらすじ
魔力がなく、義母達に疎まれながらも必死に生きる少年アシェ。
ある日、義兄が騎士団長ヴァルドの徽章を盗んだ罪をアシェに押し付け、身代わりにされてしまう。
死を覚悟した彼の姿を見て、冷徹な騎士ヴァルドは――?
傷ついた少年と騎士の、温かい溺愛物語。
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
キュートなモブ令息に転生したボク。可愛さと前世の知識で悪役令息なお義兄さまを守りますっ!
をち。「もう我慢なんて」書籍発売中
BL
これは、あざと可愛い悪役令息の義弟VS.あざと主人公のおはなし。
ボクの名前は、クリストファー。
突然だけど、ボクには前世の記憶がある。
ジルベスターお義兄さまと初めて会ったとき、そのご尊顔を見て
「あああ!《《この人》》、知ってるう!悪役令息っ!」
と思い出したのだ。
あ、この人ゲームの悪役じゃん、って。
そう、俺が今いるこの世界は、ゲームの中の世界だったの!
そして、ボクは悪役令息ジルベスターの義弟に転生していたのだ!
しかも、モブ。
繰り返します。ボクはモブ!!「完全なるモブ」なのだ!
ゲームの中のボクには、モブすぎて名前もキャラデザもなかった。
どおりで今まで毎日自分の顔をみてもなんにも思い出さなかったわけだ!
ちなみに、ジルベスターお義兄さまは悪役ながら非常に人気があった。
その理由の第一は、ビジュアル!
夜空に輝く月みたいにキラキラした銀髪。夜の闇を思わせる深い紺碧の瞳。
涼やかに切れ上がった眦はサイコーにクール!!
イケメンではなく美形!ビューティフル!ワンダフォー!
ありとあらゆる美辞麗句を並び立てたくなるくらいに美しい姿かたちなのだ!
当然ながらボクもそのビジュアルにノックアウトされた。
ネップリももちろんコンプリートしたし、アクスタももちろん手に入れた!
そんなボクの推しジルベスターは、その無表情のせいで「人を馬鹿にしている」「心がない」「冷酷」といわれ、悪役令息と呼ばれていた。
でもボクにはわかっていた。全部誤解なんだって。
ジルベスターは優しい人なんだって。
あの無表情の下には確かに温かなものが隠れてるはずなの!
なのに誰もそれを理解しようとしなかった。
そして最後に断罪されてしまうのだ!あのピンク頭に惑わされたあんぽんたんたちのせいで!!
ジルベスターが断罪されたときには悔し涙にぬれた。
なんとかジルベスターを救おうとすべてのルートを試し、ゲームをやり込みまくった。
でも何をしてもジルベスターは断罪された。
ボクはこの世界で大声で叫ぶ。
ボクのお義兄様はカッコよくて優しい最高のお義兄様なんだからっ!
ゲームの世界ならいざしらず、このボクがついてるからには断罪なんてさせないっ!
最高に可愛いハイスぺモブ令息に転生したボクは、可愛さと前世の知識を武器にお義兄さまを守りますっ!
⭐︎⭐︎⭐︎
ご拝読頂きありがとうございます!
コメント、エール、いいねお待ちしております♡
「もう我慢なんてしません!家族からうとまれていた俺は、家を出て冒険者になります!」書籍発売中!
連載続いておりますので、そちらもぜひ♡
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
虚ろな檻と翡翠の魔石
篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」
不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。
待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。
しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。
「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」
記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。
-----------------------------------------
0時,6時,12時,18時に2話ずつ更新
転生令息は冒険者を目指す!?
葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。
救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。
再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。
異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!
とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A
幻獣保護センター廃棄処理係の私、ボロ雑巾のような「ゴミ幻獣」をこっそり洗ってモフっていたら、実は世界を喰らう「終焉の獣」だった件について
いぬがみとうま🐾
ファンタジー
「魔力なしの穀潰し」――そう蔑まれ、幻獣保護センターの地下で廃棄幻獣の掃除に明け暮れる少女・ミヤコ。
実のところ、その施設は「価値のない命」を無慈悲に殺処分する地獄だった。
ある日、ミヤコの前に運ばれてきたのは、泥と油にまみれた「ボロ雑巾」のような正体不明の幻獣。
誰の目にもゴミとしか映らないその塊を、ミヤコは放っておけなかった。
「こんなに汚れたままなんて、かわいそう」
彼女が生活魔法を込めたブラシで丹念に汚れを落とした瞬間、世界を縛る最凶の封印が汚れと一緒に「流されてしまう。
現れたのは、月光を纏ったような美しい銀狼。
それは世界を喰らうと恐れられる伝説の災厄級幻獣『フェンリル・ヴォイド』だった……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる