異世界で監禁された僕は助けてくれた公爵さまからこの上ない寵愛を受けています

波木真帆

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家族愛か否か



「じゃあ、少し手伝ってもらえるか?」

あまり無理はさせたくないが、トキがやる気になっているこの時にやらせてみたい。

「はい!」

目を輝かせるトキをみて、私の選択は正しかったのだと思う。

トキを膝に乗せて、机に書類を並べる。

「これをわかりやすく並べて欲しい」

「わかりました」

この数日、トキのそばを離れぬようにしていたから、実のところ仕事は溜まっている。
トキをそばに置きながら、さっと書類に目を通し決裁の判を押していると、トキが私の名を呼んだ。

「どうした? 疲れたか?」

「いえ、そうじゃなくて……この書類、急ぎのものも入ってますよ」

トキが手にしているのは領地から上がってくる定期報告書。
手渡されてみてみると、確かに急ぎのものが紛れてしまっていたようだ。

「これって、同じ報告書でも急ぎの場合は用紙の色を変えておくとかにしたほうが、エリアスさんの目に留まりやすいんじゃないですか?」

ポツリと溢すその声は誇らしげでも自慢げでもない。
ただトキが思ったことを教えてくれているだけだ。
だが、それが何よりもありがたい。

「なるほど。その通りだな。用紙の件は早速変更するとしよう」

「本当ですか?」

「ああ。トキがいてくれたら助かるよ」

そう告げると、トキは嬉しそうな笑顔を見せる。
今まで見たどの笑顔よりも溌剌としているように見えた。

「トキのおかげで随分と捗った。明日もぜひ手伝って欲しい」

「はい! 喜んで!」

トキをあまり無理をさせてはいけないと思っていたが、こうして役割を与えたほうがトキも私の役に立てると思えて嬉しいのだろう。それならば任せることにしようか。

それがトキのためでもあり、私のためでもあるのだから。


「トキ。疲れただろう。食事の前に風呂にしようか」

「はい。あ、今日はエリアスさんも一緒に入りませんか?」

「えっ? 今、なんと?」

突然のトキからの誘いに聞き間違えたかと思うほど驚いてしまった。

「いつも僕をお風呂に入れて、濡れないようにするのも大変でしょう? 一緒に入ったらそれも気にしないで良くなりますよ」

「……だが、」

言葉に詰まった私を、トキは不思議そうに見上げている。
その表情には誘った自覚も、駆け引きもない。
ただ私が一緒にいることが、トキの中で当たり前になり始めただけだ。

「私は構わないが、トキは……その、嫌ではないのか?」

「えっ? 嫌じゃないですよ。だって、エリアスさんと一緒なら安心ですし」

安心、か……
その言葉が私の胸の奥に静かに響く。

トキが私に対して家族愛を抱いているのか、それとも……

それを知るにはちょうどいい機会なのかもしれない。

私は一度深く息を吐いた。

「わかった。それじゃあ一緒に入るとしよう。だが、少しでも嫌だと思ったらすぐにいうんだぞ」

私の言葉にトキはキョトンとした表情を見せていたが、笑顔で頷いた。
そうして執務室を出る。
部屋の前で待機をしていたクラウスに、二人で風呂に入ることを伝えると、一瞬驚きの表情を見せたがすぐに準備に向かった。その後ろをトキを抱きかかえて歩く。自然と私に身体を預けてくれるトキが愛おしい。

「いつもエリアスさんが髪を洗ってくれたから、今日は僕が洗いましょうか?」

「い、いや。まだ無理はしなくていい。もう少し元気になったらやってもらおう」

「はい。じゃあそれを楽しみにしておきます」

そんなことをさらりと言ってくれる。
これが私への愛情で言ってくれているなら……
これほど幸せなことはないのだがな。

そんなことを考えつつ、自室に戻った。
風呂場は寝室の奥にある。
寝室の扉を開けるとちょうどクラウスが出てきた。

「用意はできたか?」

「はい。つつがなく」

頭を下げて出ていくクラウスを見送り、私はトキを風呂場に連れて行った。

いつものようにトキの衣服を脱がせる。
そこにはもう恥じらいは見えない。
これがトキの日常になっているから。

だが、今日は違う。
脱衣所にあるソファにトキを座らせて、私も衣服を脱ぐ。
私の裸をトキがどう思うか、それが気になって仕方がない。

トキの視線を感じながら、私は服を脱ぎすすめ半裸を晒した。

「わぁ、すごく鍛えてるんですね」

すぐにトキから声がかかり驚いた。
みると、その表情には怯えた様子は見られない。
むしろ私の裸を嬉々として見てくれている。
その事実は私を喜ばせたが、同時に家族としてしか見ていないのではないか……
そんな不安を覚えた。

そのときだった。

「……かっこいい」

そんなトキの声がに耳に入った。

「えっ?」

思わず声に出すと、トキは照れた表情を見せながら言葉を続けた。

「エリアスさんって、強そうで……すごくかっこいいです」

その言葉と表情は家族に向けるものとは明らかに違う。
私は胸の奥がかすかに熱くなるのを感じた。
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