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お城へ
<side斗希>
僕が、国王さまに会いにいく……
そんな日が来るなんて思いもしなかった。
でも考えてみれば僕はこの世界に来て、この国の人としてこれから先生きていくのだから、挨拶をするのは当然のことなのだろう。
でも、この家から出るのはまだちょっと怖い。
一人で行くのは無理だけど、エリアスさんが一緒なら頑張れる。
素直にその気持ちを告げるとエリアスさんははっきりと一人にはさせないと言ってくれた。
その言葉だけで、一気に安心感が増してくるから不思議だ。
そして、国王さまに会いに行く当日がやってきた。
緊張しすぎて、いつもより早く目覚めてしまったけれど、すぐにエリアスさんが気づいて腕の中に抱きしめてくれた。
そのおかげで安心してもう一度眠りにつくことができた。
朝食も僕の好きな果物をたくさん用意してくれてすごく嬉しかった。
家を出る前にはお医者さまが来て、大丈夫だけど無理はしないようにと声をかけてくれてありがたかった。
それでも家を出る時間が近づくと緊張してしまっていた。
「あの、でも……もし、途中でダメだなって思ったら……」
エリアスさんにそう尋ねると、間髪入れずにすぐに引き返すと言ってくれた。
国王さまとの約束を簡単に破ってもいいのかと心配だったけれど、エリアスさんが僕を守ってくれると思うだけですごく安心できた。
玄関を出ると爽やかな青空の下、玄関の前に停まっていた大きな馬車に驚いた。
「これで、行くんですか?」
「ああ。すぐに着くよ」
エリアスさんはさっと僕を抱きかかえて、馬車に乗り込んだ。
「旦那様。トキ様。行ってらっしゃいませ」
クラウスさんやお医者さまに見送られながら、馬車はゆっくりと動き出した。
僕はもちろん、馬車には乗ったことがない。
高いところからの景色にちょっとワクワクする自分がいた。
「あれ?」
歩いている人たちがみんなこの馬車に視線を向け、頭を下げていることに気づいた。
「どうした?」
「あの、どうしてあの人たちこの馬車に向かって頭を下げてるんですか?」
「ああ。それはこの馬車が我がランチェスター公爵家の馬車だとわかるからだよ。我が家は王家の血筋で、このフィオラード王国唯一の公爵家だからな。いわば、王族と同じ位置付けなんだよ」
そう教えてもらってびっくりした。
あんなに大きなお屋敷に住んでいたからすごい人なんだってことはわかっていたつもりだったけれど、まさか王族と同じだなんて……
「トキ、どうかしたか?」
「い、いえ。あの。僕……エリアスさんの恋人、というか、好きでいていいのかなって……ちょっと心配になって」
不安な気持ちが押し寄せてきて、ぽろっと胸の内を伝えるとエリアスさんの長い腕に包み込まれる。
「何を言っているんだ。言っただろう? トキは形式上、陛下より身分は上だと。だからもちろん、私よりもずっと上なんだ。何も気にすることはない。そもそも、身分など関係なく私はトキにそばにいてほしいし、トキのそばにいたいのだ。それをわかってくれるだろう?」
「エリアスさん……」
その真剣な表情でエリアスさんの本心だと伝わってくるのが嬉しい。
「はい。僕も、ずっとエリアスさんのそばにいたいです」
ちゃんと思いを伝えられたところで、馬車はゆっくりと大きな門を抜け、お城に入って行った。
「さぁ、トキ。降りようか」
さっと抱きかかえられて、一緒に馬車を降りる。
玄関に立っていた騎士さんたちが一斉に僕たちを見た。
その数の多さにびっくりして身体が震えた。
エリアスさんにしがみつくと、僕を覆い隠すように腕の中に閉じ込めてくれる。
「お前たち、離れていろ」
低く静かな声をかけると、さっとその人たちがその場からいなくなった。
「もう大丈夫だ」
「ごめんなさい、僕……」
「気にしないでいい。トキは何も悪くない」
エリアスさんはそう言って僕を下すことなく、お城の中に入っていった。
僕が、国王さまに会いにいく……
そんな日が来るなんて思いもしなかった。
でも考えてみれば僕はこの世界に来て、この国の人としてこれから先生きていくのだから、挨拶をするのは当然のことなのだろう。
でも、この家から出るのはまだちょっと怖い。
一人で行くのは無理だけど、エリアスさんが一緒なら頑張れる。
素直にその気持ちを告げるとエリアスさんははっきりと一人にはさせないと言ってくれた。
その言葉だけで、一気に安心感が増してくるから不思議だ。
そして、国王さまに会いに行く当日がやってきた。
緊張しすぎて、いつもより早く目覚めてしまったけれど、すぐにエリアスさんが気づいて腕の中に抱きしめてくれた。
そのおかげで安心してもう一度眠りにつくことができた。
朝食も僕の好きな果物をたくさん用意してくれてすごく嬉しかった。
家を出る前にはお医者さまが来て、大丈夫だけど無理はしないようにと声をかけてくれてありがたかった。
それでも家を出る時間が近づくと緊張してしまっていた。
「あの、でも……もし、途中でダメだなって思ったら……」
エリアスさんにそう尋ねると、間髪入れずにすぐに引き返すと言ってくれた。
国王さまとの約束を簡単に破ってもいいのかと心配だったけれど、エリアスさんが僕を守ってくれると思うだけですごく安心できた。
玄関を出ると爽やかな青空の下、玄関の前に停まっていた大きな馬車に驚いた。
「これで、行くんですか?」
「ああ。すぐに着くよ」
エリアスさんはさっと僕を抱きかかえて、馬車に乗り込んだ。
「旦那様。トキ様。行ってらっしゃいませ」
クラウスさんやお医者さまに見送られながら、馬車はゆっくりと動き出した。
僕はもちろん、馬車には乗ったことがない。
高いところからの景色にちょっとワクワクする自分がいた。
「あれ?」
歩いている人たちがみんなこの馬車に視線を向け、頭を下げていることに気づいた。
「どうした?」
「あの、どうしてあの人たちこの馬車に向かって頭を下げてるんですか?」
「ああ。それはこの馬車が我がランチェスター公爵家の馬車だとわかるからだよ。我が家は王家の血筋で、このフィオラード王国唯一の公爵家だからな。いわば、王族と同じ位置付けなんだよ」
そう教えてもらってびっくりした。
あんなに大きなお屋敷に住んでいたからすごい人なんだってことはわかっていたつもりだったけれど、まさか王族と同じだなんて……
「トキ、どうかしたか?」
「い、いえ。あの。僕……エリアスさんの恋人、というか、好きでいていいのかなって……ちょっと心配になって」
不安な気持ちが押し寄せてきて、ぽろっと胸の内を伝えるとエリアスさんの長い腕に包み込まれる。
「何を言っているんだ。言っただろう? トキは形式上、陛下より身分は上だと。だからもちろん、私よりもずっと上なんだ。何も気にすることはない。そもそも、身分など関係なく私はトキにそばにいてほしいし、トキのそばにいたいのだ。それをわかってくれるだろう?」
「エリアスさん……」
その真剣な表情でエリアスさんの本心だと伝わってくるのが嬉しい。
「はい。僕も、ずっとエリアスさんのそばにいたいです」
ちゃんと思いを伝えられたところで、馬車はゆっくりと大きな門を抜け、お城に入って行った。
「さぁ、トキ。降りようか」
さっと抱きかかえられて、一緒に馬車を降りる。
玄関に立っていた騎士さんたちが一斉に僕たちを見た。
その数の多さにびっくりして身体が震えた。
エリアスさんにしがみつくと、僕を覆い隠すように腕の中に閉じ込めてくれる。
「お前たち、離れていろ」
低く静かな声をかけると、さっとその人たちがその場からいなくなった。
「もう大丈夫だ」
「ごめんなさい、僕……」
「気にしないでいい。トキは何も悪くない」
エリアスさんはそう言って僕を下すことなく、お城の中に入っていった。
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