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国王さまの言葉
<side斗希>
広い部屋の奥。
玉座に座るその人の目が、真っ直ぐ僕を見つめていた。
何もかも見透かされそうなその視線が、怖いと思うよりも、緊張を誘う。
この世界にいることを認めてもらえなかったら、エリアスさんと離れ離れになってしまったりしないかな……
そんな不安が頭をよぎる。
無意識にエリアスさんの服を掴んでしまっていた。
「大丈夫だよ」
僕の耳元にだけ聞こえる声をかけてくれて安心させてくれる。
「……そなたが、トキ殿か……」
低く、落ち着いた声。だけど、恐怖は感じなかった。
「は、はい……」
声が震える。抑えようと試みても自分ではどうしようもできない。
すると、ふっと国王さまの表情が緩んだ気がした。
「楽にしてくれ。何も怖いことはしない」
その言葉に、少しだけ肩の力が抜ける。
「其方を我が国の民であることを認める。これによりトキ殿は我が国のどこででも暮らすことが可能になるが、どこで暮らしたい?」
「どこでも……?」
「そうだ。トキ殿が望むならこの城内で生活することも可能だ」
国王さまはそう言ってくれたけれど、王城で暮らす自分なんて、想像もできない。
僕がいたい場所は一つだけだ。
「僕は……エリアスさんとずっと一緒にいたいです。僕はそれを望みます」
そう告げると、僕を抱きしめていたエリアスさんの力が強くなった。
「トキ、ありがとう。嬉しいよ」
「僕のほうこそ、これでずっと一緒にいられると思ったら嬉しいです」
正直に思いを伝えると、エリアスさんは涙を浮かべて喜んでくれた。
そんな僕たちの様子をじっと見つめていた国王さまが静かに口を開いた。
「トキ殿の望みを叶えよう。ついては――」
一拍空けて、ゆっくりと言葉を続けた。
「トキ殿を私の養子にし、其方の夫として降嫁させる。それで其方たち二人は正式な夫夫となるが、どうだ?」
……え?
国王さまの言葉が、頭の中でぐるぐると回る。
養子
降嫁
夫夫
ひとつひとつはもちろん知っている言葉だけど、繋がった途端、意味がわからなくなった。
「えっと……」
尋ねようとしても何を聞き返せばいいかわからない。
僕は反射的にエリアスさんを見上げた。
エリアスさんは、目を見開いていた。
それほど驚く内容だったに違いない。
だって僕もまだ何も理解できてない。
けれどエリアスさんの動揺はすぐに消えた。
そして、僕をしっかりと抱きしめる。
「陛下。そのお言葉、謹んでお受けします」
「異存はないか?」
「ございません」
その迷いない答えにきっと僕にとっていいことなのだろうとわかる。
だって、エリアスさんはいつだって僕を大切にしてくれるから。
「トキ、いいか?」
エリアスさんに尋ねられる。
だけど、僕はまだわかっていない。
「あの、どういう、意味なんですか? 僕、よくわからなくて……」
「そうだったな。急すぎた」
その表情は少しだけ困ってみえる。
けれどしっかりと僕を見つめてくれた。
「トキにわかるように伝えよう。これはトキがこの国で誰にも脅かされず、私のそばにいられるための最も安全な形だ。トキを私の夫として、ずっと一緒に過ごしたい。どうだろう?」
「僕が、エリアスさんの、夫に……」
「そうだ。私の気持ちは今、陛下にお伝えしたが……」
エリアスさんは、深呼吸をして僕を真っすぐに見つめた。
「最終的に決めるのはトキだ。トキの気持ちを聞かせてほしい。私はいつまででもその答えを待つ」
その言葉に僕の心臓が大きくはねた。
選ぶのは僕――
それなら、僕の気持ちははっきりしている。
だって、エリアスさんのいない未来なんて、もう考えられないんだから。
広い部屋の奥。
玉座に座るその人の目が、真っ直ぐ僕を見つめていた。
何もかも見透かされそうなその視線が、怖いと思うよりも、緊張を誘う。
この世界にいることを認めてもらえなかったら、エリアスさんと離れ離れになってしまったりしないかな……
そんな不安が頭をよぎる。
無意識にエリアスさんの服を掴んでしまっていた。
「大丈夫だよ」
僕の耳元にだけ聞こえる声をかけてくれて安心させてくれる。
「……そなたが、トキ殿か……」
低く、落ち着いた声。だけど、恐怖は感じなかった。
「は、はい……」
声が震える。抑えようと試みても自分ではどうしようもできない。
すると、ふっと国王さまの表情が緩んだ気がした。
「楽にしてくれ。何も怖いことはしない」
その言葉に、少しだけ肩の力が抜ける。
「其方を我が国の民であることを認める。これによりトキ殿は我が国のどこででも暮らすことが可能になるが、どこで暮らしたい?」
「どこでも……?」
「そうだ。トキ殿が望むならこの城内で生活することも可能だ」
国王さまはそう言ってくれたけれど、王城で暮らす自分なんて、想像もできない。
僕がいたい場所は一つだけだ。
「僕は……エリアスさんとずっと一緒にいたいです。僕はそれを望みます」
そう告げると、僕を抱きしめていたエリアスさんの力が強くなった。
「トキ、ありがとう。嬉しいよ」
「僕のほうこそ、これでずっと一緒にいられると思ったら嬉しいです」
正直に思いを伝えると、エリアスさんは涙を浮かべて喜んでくれた。
そんな僕たちの様子をじっと見つめていた国王さまが静かに口を開いた。
「トキ殿の望みを叶えよう。ついては――」
一拍空けて、ゆっくりと言葉を続けた。
「トキ殿を私の養子にし、其方の夫として降嫁させる。それで其方たち二人は正式な夫夫となるが、どうだ?」
……え?
国王さまの言葉が、頭の中でぐるぐると回る。
養子
降嫁
夫夫
ひとつひとつはもちろん知っている言葉だけど、繋がった途端、意味がわからなくなった。
「えっと……」
尋ねようとしても何を聞き返せばいいかわからない。
僕は反射的にエリアスさんを見上げた。
エリアスさんは、目を見開いていた。
それほど驚く内容だったに違いない。
だって僕もまだ何も理解できてない。
けれどエリアスさんの動揺はすぐに消えた。
そして、僕をしっかりと抱きしめる。
「陛下。そのお言葉、謹んでお受けします」
「異存はないか?」
「ございません」
その迷いない答えにきっと僕にとっていいことなのだろうとわかる。
だって、エリアスさんはいつだって僕を大切にしてくれるから。
「トキ、いいか?」
エリアスさんに尋ねられる。
だけど、僕はまだわかっていない。
「あの、どういう、意味なんですか? 僕、よくわからなくて……」
「そうだったな。急すぎた」
その表情は少しだけ困ってみえる。
けれどしっかりと僕を見つめてくれた。
「トキにわかるように伝えよう。これはトキがこの国で誰にも脅かされず、私のそばにいられるための最も安全な形だ。トキを私の夫として、ずっと一緒に過ごしたい。どうだろう?」
「僕が、エリアスさんの、夫に……」
「そうだ。私の気持ちは今、陛下にお伝えしたが……」
エリアスさんは、深呼吸をして僕を真っすぐに見つめた。
「最終的に決めるのはトキだ。トキの気持ちを聞かせてほしい。私はいつまででもその答えを待つ」
その言葉に僕の心臓が大きくはねた。
選ぶのは僕――
それなら、僕の気持ちははっきりしている。
だって、エリアスさんのいない未来なんて、もう考えられないんだから。
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