南国特有のスコールが初恋を連れてきてくれました

波木真帆

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番外編

もう一つの出会い  3

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3話で終わらなかったので、タイトル変更しました。
楽しんでいただけると嬉しいです♡

  *   *   *


「隣、いいかな?」

「は、はい。どうぞ」

まだ周りには席はあるものの、断る気になれなかったのは彼ともう少し話をしてみたいと思ってしまったからだ。

「ありがとう」

さすが、西表島に住んでいるだけあってかなりの軽装だ。

「石垣でお仕事だったんですか?」

「いや、私も那覇から来たんだ。実は君のことを那覇空港で見かけていてね」

「えっ、そうだったんですか?」

「ああ。困っていた外国人観光客に積極的に声をかけているのをみて、感心していたんだよ」

「そんな……っ」

別に誰かに褒められようと思ってしていた行為ではないし、そもそも気がつけば身体が反応していたという方が正しいかもしれない。

「君は大学生、かな?」

「はい。そうです」

「この時期に一人旅だなんて珍しいな」

「急にゼミが休みになったので、就職前に行きたいところに行ってみようかと思いまして……」

「なるほど。ということは、四年生かな?」

「そうです」

「どうして西表のツアーを選んだのか聞いてもいいかな?」

「どうしてと言われても……気になったからとしか言えないんですが……強いてあげるなら、自然に触れたくなったから、でしょうか。何もかもまっさらな気持ちで自然を見てみたいなと思ったんです」

「へぇ。それならきっと西表は君にとっていい場所になるかもしれないよ」

「どういう意味ですか?」

「西表はね、人生を変える島と言われているんだ。きっと君をいい方向に導いてくれるはずだよ」

導くなんて……カンカカリャユタみたいなことを言う。

この人はなんだか不思議な人だ。

話をしている間にあっという間に西表島の船着場に到着した。

「足元、不安定だから気をつけて」

「はい。ありがとうございます」

大学でもこうして声をかけられることは多いけれど、必ず私の手や腰に触れてこようとする。
けれど、この人は声はかけてくれるけれど、決して触れようとはしない。
その一線引いたような距離感がなんとも心地よかった。

「うちの会社に連れて行って、ツアーの説明をしてから出発になる。ちなみに今日のツアー予約は君だけだよ」

「えっ、そうなんですか?」

「ああ。もともと、今日は貸切の観光予定が入っていたから予約は取っていなかったんだ。だけど、その予約が急遽なくなったから時間限定で予約を受け付けていたんだけど、その間に予約が来たのが君だけだったんだよ。君、ツイてるね。うちのツアーを一人で貸切にしたのは初めてだよ」

「そんな……っ、でも私一人連れていくのってコストがかかるんじゃないですか?」

「ははっ。そこは気にしなくていいよ。君は面白いことを言うなぁ。普通ならラッキーだって喜ぶところだよ」

あ、本気で笑ってる。
今までは作り笑いだったっぽいけど、ちゃんと笑えるんだな。

「あの……私、君じゃなくて、砂川悠真です」

「砂川ってことは、もしかして宮古島?」

「はい。そうです」

「へぇ、なるほど。砂川くんがここに来たくなった気持ちがわかるよ」

「えっ?」

「宮古島と、この辺の離島は別物だからね。沖縄出身者なら余計自分の目でみてみたいって思うものだろう」

「――っ!!」

自分が思っていたことを見透かされたようでドキッとしてしまった。

この人は本当に不思議な人だな。

「あいっ、倉橋さん」

「ああ、平良のおばあちゃん。どうして船着場に?」

「ちょっと届け物があってね。それより、随分と魂の綺麗な子を連れているね」

「えっ?」

魂?
それってどう言う意味?

おばあちゃんの言葉に驚いている私の横で彼もまた驚きの表情を見せていた。

「平良のおばあちゃん、それって……」

「違うよ。あなたのじゃない。だけど、この子は倉橋さんに必要な子だよ」

「そうか……。私もなんとなくそんな気がしたんだ」

「大切におし。守り抜いたら、きっと倉橋さんにも幸運が巡ってくるよ」

「ええ。わかりましたよ。じゃあ、砂川くん。行こうか」

「えっ、あっ。はい」

わけもわからないまま、優しい笑顔で見送ってくれるおばあちゃんを船着場に残し、私は彼に連れられて少し離れた場所に停まっていたタクシーまで歩いた。

「いいかな?」

「ああ、倉橋さん。帰ってきてたんだね。あれ? この子は?」

「これからツアーに連れていくお客さんだよ」

「へぇ、綺麗な子だね」

さっきのおばあちゃんといい、この運転手さんといい、私を綺麗だと言ってくる。
どうみてもただの大学生の男なのだけど……。
なんだか少し照れくさい。

あっという間にK.Yリゾートと看板のある建物に到着した。
あまりにも立派な建物に驚いてしまう。

さっと支払いを済ませてくれた彼に続いてタクシーを降りると、タクシーはすぐに来た道を戻って行った。

「さぁ、入って」

「は、はい。あの、ここって……観光ツアーの受付場所ですか?」

「いや、それは隣の建物。ここは言うなれば本社、かな。大学生だから会社案内をしようかと思って」

「えっ……」

まさかここで就活をすることになるとは思わなかったけれど、興味はある。
倉橋社長自らいろいろな部屋に案内してくれて、あまりにも楽しくて興奮してしまっている自分がいた。
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