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バレンタインデー おまけ話 side征哉
ロビーのでのイチャラブの続きの小話。
* * *
「ねー、せいくん。いちか、せいくんのおへやに行きたーい!」
可愛い一花のおねだりを聞いてあげたいが、時間は、まだ大丈夫なんだろうか?
チラリと麻友子さんに視線を向ければ、笑顔で頷いている。
「わかった。じゃあ、行こうか」
「やったー!」
喜ぶ一花を抱きかかえたまま、麻友子さんと執事の二階堂さんも一緒にエレベーターに向かう。
ロビーはまだざわついていたが。そこは放っておいた。
「おへやについたら、いちかがおいしいクッキーを食べさせてあげるねー!。せいくん、クッキー大好きだもんね」
笑顔でそういってくれるが、私は甘いものはそこまで得意ではない。
だが、私がクッキーが好きだと一花が勘違いしている理由がある。
それは、一花がクッキーを食べているときに、必ず私がちょうだいと声をかけるからだ。
だから一花は私がクッキーが好きなのだと思っているが、私にしてみれば、それがクッキーだろうが、チョコレートだろうがなんでもいい。要は一花の食べかけが欲しいだけだ。
一花はまだそんな私の気持ちなどわからないだろう。だがそれでもいい。
一緒のものを食べて美味しさを共有したい。ただそれだけだ。
私の部屋にいき、一花を膝に乗せたままソファに座る。
一花がクッキー缶の蓋を開けた途端、甘い香りが広がった。
「すごいな……。全部、一花が作ったのか?」
「うん! ママといっしょにねー!」
誇らしげに胸を張る一花に、思わず頬が緩む。
中には車やくま、そしてハート型のクッキーが並んでいた。
どれも少し不揃いで、けれどそれがたまらなく愛おしい。
その中から丸い形のクッキーを一枚、そっと手に取る。
「食べてもいいか?」
「だめー!」
思いっきり止められて、思わず固まってしまった。
どうして? と尋ねるよりも早く一花が口を開いた。
「いちかが食べさせるのー!」
一花が作ってくれるだけで嬉しいのに、食べさせてもくれるのか。
本当になんて嬉しい日なんだろう。
「じゃあ、お願いしてもいいか?」
「うん!」
嬉しそうに頷いた一花は、私の手からクッキーをとると、一口齧る。
さく、という軽い音。
そして、そのままそれをこちらに差し出してきた。
「はい。せいくん。半分こだよー!」
齧りかけのクッキーを目の前に、胸の奥がじんわりと熱くなる。
私が何気なく口にしていた言葉を、一花は覚えていてくれたんだな。
「ありがとう」
できるだけ平静を装って、差し出されたクッキーを食べる。
ほんのり甘くて、少しだけ不格好で、でもすごく一花の気持ちが伝わってくる。
「おいしい?」
不安そうに覗き込んでくる一花に、迷いなく頷いた。
「すごく美味しいよ」
「ほんと?」
「ああ、本当だとも。一花、ありがとう」
そう答えると、一花はパッと花が咲いたように笑った。
「ねぇ、せいくん。これ、見てー!」
一花がクッキー缶の中から取り出した一枚のハート型のクッキー。
それには、
<せいくん 大好き>
と文字が書かれていた。
「これ……」
「いちかが、かいたのー!」
得意げな表情がたまらなく可愛い。
「でも、漢字が……」
「いちか、もう大人だもん!」
一花の言葉に、麻友子さんがくすっと笑う。
「征哉くんのために頑張って書いてたわ。一花の想いだから、それは一人で食べてあげて」
「もちろんですよ。これは私のものです」
一花が私を想ってくれる気持ちが嬉しくて、私はしばらくそのクッキーから目を離せなかった。
一花のこの純粋な想いを残しておきたい。本当に、食べるのがもったいないと思ったのは初めてだった。
* * *
次はパパに渡しに行きます。
* * *
「ねー、せいくん。いちか、せいくんのおへやに行きたーい!」
可愛い一花のおねだりを聞いてあげたいが、時間は、まだ大丈夫なんだろうか?
チラリと麻友子さんに視線を向ければ、笑顔で頷いている。
「わかった。じゃあ、行こうか」
「やったー!」
喜ぶ一花を抱きかかえたまま、麻友子さんと執事の二階堂さんも一緒にエレベーターに向かう。
ロビーはまだざわついていたが。そこは放っておいた。
「おへやについたら、いちかがおいしいクッキーを食べさせてあげるねー!。せいくん、クッキー大好きだもんね」
笑顔でそういってくれるが、私は甘いものはそこまで得意ではない。
だが、私がクッキーが好きだと一花が勘違いしている理由がある。
それは、一花がクッキーを食べているときに、必ず私がちょうだいと声をかけるからだ。
だから一花は私がクッキーが好きなのだと思っているが、私にしてみれば、それがクッキーだろうが、チョコレートだろうがなんでもいい。要は一花の食べかけが欲しいだけだ。
一花はまだそんな私の気持ちなどわからないだろう。だがそれでもいい。
一緒のものを食べて美味しさを共有したい。ただそれだけだ。
私の部屋にいき、一花を膝に乗せたままソファに座る。
一花がクッキー缶の蓋を開けた途端、甘い香りが広がった。
「すごいな……。全部、一花が作ったのか?」
「うん! ママといっしょにねー!」
誇らしげに胸を張る一花に、思わず頬が緩む。
中には車やくま、そしてハート型のクッキーが並んでいた。
どれも少し不揃いで、けれどそれがたまらなく愛おしい。
その中から丸い形のクッキーを一枚、そっと手に取る。
「食べてもいいか?」
「だめー!」
思いっきり止められて、思わず固まってしまった。
どうして? と尋ねるよりも早く一花が口を開いた。
「いちかが食べさせるのー!」
一花が作ってくれるだけで嬉しいのに、食べさせてもくれるのか。
本当になんて嬉しい日なんだろう。
「じゃあ、お願いしてもいいか?」
「うん!」
嬉しそうに頷いた一花は、私の手からクッキーをとると、一口齧る。
さく、という軽い音。
そして、そのままそれをこちらに差し出してきた。
「はい。せいくん。半分こだよー!」
齧りかけのクッキーを目の前に、胸の奥がじんわりと熱くなる。
私が何気なく口にしていた言葉を、一花は覚えていてくれたんだな。
「ありがとう」
できるだけ平静を装って、差し出されたクッキーを食べる。
ほんのり甘くて、少しだけ不格好で、でもすごく一花の気持ちが伝わってくる。
「おいしい?」
不安そうに覗き込んでくる一花に、迷いなく頷いた。
「すごく美味しいよ」
「ほんと?」
「ああ、本当だとも。一花、ありがとう」
そう答えると、一花はパッと花が咲いたように笑った。
「ねぇ、せいくん。これ、見てー!」
一花がクッキー缶の中から取り出した一枚のハート型のクッキー。
それには、
<せいくん 大好き>
と文字が書かれていた。
「これ……」
「いちかが、かいたのー!」
得意げな表情がたまらなく可愛い。
「でも、漢字が……」
「いちか、もう大人だもん!」
一花の言葉に、麻友子さんがくすっと笑う。
「征哉くんのために頑張って書いてたわ。一花の想いだから、それは一人で食べてあげて」
「もちろんですよ。これは私のものです」
一花が私を想ってくれる気持ちが嬉しくて、私はしばらくそのクッキーから目を離せなかった。
一花のこの純粋な想いを残しておきたい。本当に、食べるのがもったいないと思ったのは初めてだった。
* * *
次はパパに渡しに行きます。
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いいですね、めちゃくちゃ可愛いです。
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