溺愛されまくりの会長令息が財閥イケメンスパダリ御曹司に見初められました

波木真帆

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一花たちの優しさ

<side征哉>

「そろそろ空良くんの家だよ」

「せいくん、どのお家?」

「正面の西洋風の家だよ」

先ほどの観月家と同じくらいの豪邸だが、こちらは西洋風の佇まい。この家はエヴァンや弓弦くんには馴染みがあるだろう。

「わぁー、空良くんちもおっきぃー! かっこいいお家だね」

「フランスにはこういう建物多いよ」

「へぇー、そうなんだ! かっこいいね」

一花たちは普段学校でしか会うことがない。お互いの家に遊びに行くことも今はまだないから、友だちがどんな家に住んでいるのか見られるのが楽しいようで、窓の外を見ながら盛り上がっている。

車はガレージではなく、そのまま来客用の駐車スペースに停まった。一花たちの要望を聞いて窓を開けて待っていると、すぐに悠木くんが出てきた。だが、なぜか空良くんを抱きかかえたままだ。

一花たちもその様子に気がついたのか、

「空良くーん! おはようー!」

と車の中から笑顔で声をかけた。

けれど、空良くんはついさっきまで泣いていたかのような表情で、

「おはよう……」

と小さな声で挨拶を返していた。

「空良くん、どうしたの? お腹痛い?」

一花が心配そうに声をかけるとフルフルと頭を横に振るばかり。
悠木くんは、

「ほら、空良。車に乗せてもらおう」

と声をかけ、失礼しますと言いながら乗り込んできた。
悠木くんの両親は少し離れた場所から心配そうに見守っているようだ。

「空良くん、一花の隣に座って!」

「うん……」

いつもとは全然違う様子の空良くんに一花は笑顔で声をかけ、隣に座らせると、

「空良くん、どうしたの?」

と優しく問いかける。
それに空良くんも落ち着いてきたのかゆっくりと口を開いた。

「あのね、昨日ママと遠足のおやつにみんなに食べて欲しくてクッキー焼いたの」

「ええー! すごい!!」

「でもね、さっき遠足の準備してた時に僕……落としちゃって……割れちゃった……。せっかくママが綺麗にラッピングしてくれたのに……」

「空良くん……」

なるほど。そういうことだったか。
一花が楽しそうに準備をしていたのを見ているから、空良くんがどれだけ悲しかったかよくわかる。
ここはなんと言ってやるのがいいか……。下手に慰めても気持ちは晴れないだろうしな。

「ねぇ、空良くん。そのクッキー見せて!」

「えっ、でも……割れちゃたよ」

「いいから見せて。ねっ」

一花の声掛けに空良くんは悠木くんからリュックを受け取るとファスナーを開け、ゴソゴソと小さな手で探すと、中から透明な袋にラッピングされたクッキーが出てきた。確かに大きく割れているのが見える。

「これ、みんなに一つずつプレゼントしようと思ったんだ。でもこんな割れちゃったら……」

「これ、一花の? もらってもいい?」

袋に『いちかちゃん』と書かれたシールが貼っているのを見つけた一花が声をかけると、空良くんは不安げな顔をしつつも一花に手渡した。

一花はそれを嬉しそうに眺めてからラッピングのリボンを解き始めた。

「えっ、一花ちゃん。何を……」

驚く空良くんの隣で一花はそれに手を入れて欠片を一つ取ると、笑顔で口に入れた。

「あ……」

「んーっ! すっごく美味しい!」

「えっ?」

「空良くんとママの手作りクッキー、すっごく美味しいよ! みんなに美味しく食べて欲しいって気持ちがいっぱい詰まってるね」

「一花ちゃん……」

「わぁー、いいな。僕も食べたい!」

「僕も!」

一花に続くように弓弦くんと理央くんも空良くんからクッキーを受け取り、嬉しそうに口に運んだ。

「本当だ! 美味しいー!」

「僕も今度作ってみたい! 空良くん教えてね!」

「うん! 空良、みんなとクッキー作る!!」

みんなからの言葉に空良くんの表情が一気に明るくなった。
悠木くんはせっかくの遠足が悲しいものにならずにほっとしているようだ。
遠足に行く直前に大泣きしている愛しい子を慰めるのは大変だっただろうからな。

すっかり機嫌が良くなった空良くんを囲んで一花たちは話を始めた。
最後の家、真守くんの家まではもうすぐだ。

「ねぇ、そういえば空良くんのお家。屋根に煙突があったね」

「うん。だから僕のお家はそこからサンタさんが来てくれるんだ! 僕はまだ会ったことないけど、パパとママが言ってたよ」

「やっぱり煙突ってすごいね!」

「理央くんの家は煙突あるの?」

「ううん。ないけど、ちゃんとプレゼントもってきてくれるよ。サンタさん、すごいんだ!」

「うん、すごいよねー! 僕のお家も煙突ないけど、サンタさん来てくれるもん!」

一花たちの可愛い話に私たちは思わず顔を見合わせて微笑んだ。
サンタクロースか……。私はもう一花の年にはとっくに信じてなかったな。
だが一花がまだサンタクロースを信じているというのなら、今年のクリスマスは私は一花のために力を尽くそうか。愛しい一花の喜ぶ顔が見られるならどんなことでもやってみせる。

「あのね、実は僕……サンタさんに会ったことがあるんだ!」

「ええーっ! 本当?」

「うん。去年のクリスマスにお庭にソリに乗ったサンタさんが来て、直接僕にプレゼント渡してくれたんだよー!」

「ええーーっ!! いいなぁ!! すごーい!!」

弓弦くんの言葉に一花たちは目を輝かせている。
きっと弓弦くんのためにエヴァンや両親が頑張ったんだろうな。さすが世界のロレーヌ一族。
私も負けるわけにはいかないな。



  *   *   *


ここのところかかりきりになっていた作業が昨夜ようやく終わりましたー!
しばらくは楽になると思うので、これから少しずつ以前のような頻度で更新できるように頑張ります♡
これからも楽しんでいただけると嬉しいです♡
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