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誕生日おめでとう
俺の身体に擦り寄り、俺の匂いを嬉しそうに嗅ぐ姿に笑みが溢れる。
理央、知ってるか?
遺伝子は自分とは遠い遺伝子個体を探し求める。
それは血の近いもの同士で間違いを起こさないように遺伝子レベルでそれを遠ざけるためだ。
だからこそ、他人の体臭が良い匂いだと感じたらそれは遺伝子レベルでその人を求めている証拠。
運命の相手だと言っていい。
理央が俺の匂いをいい匂いだと感じてくれているのは俺が理央にとっての運命の相手だということだ。
そして、俺も理央の芳しい匂いに細胞全てが反応している。
理央を腕に抱くだけで俺の身体に喜びが伝わっているのだから。
そんな愛しい理央がゆっくりと目を開ける。
理央はまだ俺の腕の中にいることには気がついていないみたいだ。
目の前にある俺の身体に見覚えがないのか、ペタペタと触って確かめようとする姿に我慢できずに声をかけてしまった。
驚いた理央は急に頭を動かしたからか、頭の痛みを訴えた。
やはり酒を飲んだ影響が出ているようだ。
とりあえず説明は後回しにして父さんが置いていってくれた薬を飲ませた。
父さんの薬はきっとすぐに効くだろう。
素直に飲んでくれたことには安心したが、あまり素直すぎるのも心配だ。
俺以外から渡される薬やその他、見慣れないものは無闇に口に入れないようにこれからしっかりと躾けておかないとな。
理央がちゃんと飲んだのを確認して、俺は本題に入った。
理央が飲んでしまったのがジュースではなく酒で、俺が酒を入れているのを忘れて理央を危ない目に合わせてしまったことを真摯に謝ると、理央は驚いたまま微動だにしなくなった。
てっきり具合でも悪くなったかと心配したのだが、理央が驚いた理由に今度は俺が驚かされた。
――俺、大人の言うことは常に正しいってずっと教えられてきたので……
この理央の言葉だけで理央がどのような環境の中にいたのかがよくわかった。
理央は反論することも許されず、常に奴隷のように働かされ、言うことを聞くロボットのような扱いをされてきたのだ。
ああ、理央を悪の巣窟のような場所から助けだすことができて本当によかった。
今となっては空良くんの話を持ってきてくれた悠木に感謝しかないな。
あいつからの初めての頼みに純粋に応えたいと思っただけだったが、まさかこんなことになろうとは。
本当に情けは人の為ならずなんだな……。
ああ、もう理央への愛しさが止まらない。
離れて暮らすなんてもう考えられない。
もっとはっきりと理央が俺のことを好きだと自覚してくれるまで待っていようとも思ったが、さっき両親の前ではっきりと告げたように今の俺の思いを理央に伝えよう。
俺はもう理央をあんな場所に返す気など微塵も思っていない。
だから理央さえよかったらここで一緒に暮らそう。
理央にそう告げた。
いや、本当は理央さえよかったら……なんて曖昧な気持ちじゃない。
もう理央がどれだけ嫌だと言っても手放すつもりもないくせに。
だから理央が迷惑じゃないかと言った時に必死に食い下がったんだ。
そして、切り札を使った。
理央が酔っ払って言ってくれた告白。
いつもの習慣ですぐに録音した。
『りょーや。かっこいー。だいすきー』
戸惑い恥ずかしがっていた理央も自分の声を聞いて一気に私への気持ちを自覚し始めた。
実際の裁判じゃ酔って喋った言葉なんて証拠として認められるかもわからない。
だが、俺はこれでも優秀な弁護士。
説き伏せるなんてお手のものだ。
俺はもう一つの切り札を使った。
「『大好きな人にはキスをする』そう言って私にキスしてくれたんだよ」
そう教えた上で、
「私は本気だよ。理央のことが好きなんだ。理央の気持ちを聞かせてくれないか?
酔っ払った状態じゃなく、今の理央の言葉が聞きたい」
そういうと、理央は完全に落ち、俺のことを好きだと言ってくれた。
理央の口から好きだと言われた瞬間、全身がゾワゾワと粟立つような感覚を覚えた。
その時の俺は相当興奮していたんだろう。
初めて心から思いが通じ合ったことの幸福感に満ち、思いが溢れてどうしようもなかった。
理央とキスしたい。
それしか考えられなくなって、恥ずかしがる理央の唇を一気に奪った。
さっきの理央からの重ねるだけのキスにももちろん興奮したが、やっぱり理央と粘膜を重ねひとつに溶け合うような感覚は心地良い。
それこそ遺伝子・細胞レベルで重なり合うのが気持ちよくてたまらないんだ。
今日からここで一緒に暮らすことを約束させ、呼び方も『先生』から名前に変えさせた。
正直、理央から『先生』と呼ばれるのも興奮するが、名前でも呼んでほしい。
ああ、そうだ。
身体で愛し合うようになったらその最中だけ『先生』と呼ばせるのもいいかもしれない。
そんな邪なことを考えながら、理央に食事をさせようと理央を抱きかかえそのままダイニングへと向かった。
席に座らせ、まずは喜ばせてやろうと母さんが選んだ誕生日ケーキを見せてやることにした。
楽しみは多い方がいい。
そう思って目を瞑らせ、目の前にケーキを披露しながら
「お誕生日おめでとう」
と言った。
きっと喜んでくれるだろうとは思ったが、理央の反応は俺の想像とは全然違っていた。
急に大きな目にいっぱい涙をため、ポロポロとこぼし始めた。
満面の笑みを見せてくれると思っていただけに失敗したかと慌てて理央に駆け寄ると、理央は誕生日ケーキも誕生日のお祝いも何もかもが初めてだと話してくれた。
考えてみればクッキーさえも与えてもらっていないのに、誕生日ケーキで祝うだなんてしてもらっているはずがないんだ。
ケーキと『おめでとう』という言葉だけでこんなに涙を流すほど喜ぶ理央を見ていると、愛おしさと共に、理央の誕生日を嫌な思い出にしてしまった施設の奴らに腹立たしさが募る。
「なぁ、理央。覚えていてくれ。
今日は理央が施設に置いて行かれた日じゃない。私と出会って幸せになれた最高の誕生日だってそう覚えていてくれ」
そう、これからの日々。
全て俺が上書きしてやる。
ケーキを食べる前にオムライスを食べるかと尋ねると喜んだ理央に、いつもとは違うオムライスを作ってやろうと考えた。
どうせなら理央の喜ぶ顔をたくさん見たかったんだ。
成功させるぞと思いつつも、理央が見ていると思うと緊張する。
俺にもこんな繊細な一面があったことに笑ってしまう。
用意しておいたチキンライスの上になんとか成功したふわふわのオムレツを乗せて、縦に割れ目を入れてやると卵が綺麗にチキンライスにかぶさった。
その瞬間の理央の表情は言葉では言い表せないくらい嬉しそうだった。
この表情を録画できなかったことは残念極まりないが、俺の目に焼き付けておこう。
理央は初めて食べるオムライスを嬉しそうにあっという間に食べ終えた。
食後に楽しみにしていたケーキを出しながら、母さんがちゃんと準備しておいてくれた1と8のロウソクをケーキに挿し、理央の前に出してやると目を輝かせた。
誕生日ケーキもなかった理央にはロウソクを吹き消すことも初めてだろう。
嬉しそうな理央を今度はばっちり録画してやろうとスマホを手に持ち、ロウソクに火をつけ部屋の電気を消すとほんのりとした光の中でも理央の嬉しそうな表情がはっきりとわかった。
誕生日の定番である誕生日の歌を歌ってやると俺を嬉しそうに見つめ、フーっと笑顔で息を吹きかけた。
まるで消すのが勿体無いとでもいうように、ゆっくりと吹きかけられた息は少し間を開けて炎を消した。
好きなだけ食べていいよと言ったが、さっきのオムライスが理央の小さなお腹を占領しているようであまり入らないらしい。
残念そうにしながらもそう言ってくれた理央に、明日も明後日も食べられるからと言ってやるとホッとしたように微笑んだ。
理央、知ってるか?
遺伝子は自分とは遠い遺伝子個体を探し求める。
それは血の近いもの同士で間違いを起こさないように遺伝子レベルでそれを遠ざけるためだ。
だからこそ、他人の体臭が良い匂いだと感じたらそれは遺伝子レベルでその人を求めている証拠。
運命の相手だと言っていい。
理央が俺の匂いをいい匂いだと感じてくれているのは俺が理央にとっての運命の相手だということだ。
そして、俺も理央の芳しい匂いに細胞全てが反応している。
理央を腕に抱くだけで俺の身体に喜びが伝わっているのだから。
そんな愛しい理央がゆっくりと目を開ける。
理央はまだ俺の腕の中にいることには気がついていないみたいだ。
目の前にある俺の身体に見覚えがないのか、ペタペタと触って確かめようとする姿に我慢できずに声をかけてしまった。
驚いた理央は急に頭を動かしたからか、頭の痛みを訴えた。
やはり酒を飲んだ影響が出ているようだ。
とりあえず説明は後回しにして父さんが置いていってくれた薬を飲ませた。
父さんの薬はきっとすぐに効くだろう。
素直に飲んでくれたことには安心したが、あまり素直すぎるのも心配だ。
俺以外から渡される薬やその他、見慣れないものは無闇に口に入れないようにこれからしっかりと躾けておかないとな。
理央がちゃんと飲んだのを確認して、俺は本題に入った。
理央が飲んでしまったのがジュースではなく酒で、俺が酒を入れているのを忘れて理央を危ない目に合わせてしまったことを真摯に謝ると、理央は驚いたまま微動だにしなくなった。
てっきり具合でも悪くなったかと心配したのだが、理央が驚いた理由に今度は俺が驚かされた。
――俺、大人の言うことは常に正しいってずっと教えられてきたので……
この理央の言葉だけで理央がどのような環境の中にいたのかがよくわかった。
理央は反論することも許されず、常に奴隷のように働かされ、言うことを聞くロボットのような扱いをされてきたのだ。
ああ、理央を悪の巣窟のような場所から助けだすことができて本当によかった。
今となっては空良くんの話を持ってきてくれた悠木に感謝しかないな。
あいつからの初めての頼みに純粋に応えたいと思っただけだったが、まさかこんなことになろうとは。
本当に情けは人の為ならずなんだな……。
ああ、もう理央への愛しさが止まらない。
離れて暮らすなんてもう考えられない。
もっとはっきりと理央が俺のことを好きだと自覚してくれるまで待っていようとも思ったが、さっき両親の前ではっきりと告げたように今の俺の思いを理央に伝えよう。
俺はもう理央をあんな場所に返す気など微塵も思っていない。
だから理央さえよかったらここで一緒に暮らそう。
理央にそう告げた。
いや、本当は理央さえよかったら……なんて曖昧な気持ちじゃない。
もう理央がどれだけ嫌だと言っても手放すつもりもないくせに。
だから理央が迷惑じゃないかと言った時に必死に食い下がったんだ。
そして、切り札を使った。
理央が酔っ払って言ってくれた告白。
いつもの習慣ですぐに録音した。
『りょーや。かっこいー。だいすきー』
戸惑い恥ずかしがっていた理央も自分の声を聞いて一気に私への気持ちを自覚し始めた。
実際の裁判じゃ酔って喋った言葉なんて証拠として認められるかもわからない。
だが、俺はこれでも優秀な弁護士。
説き伏せるなんてお手のものだ。
俺はもう一つの切り札を使った。
「『大好きな人にはキスをする』そう言って私にキスしてくれたんだよ」
そう教えた上で、
「私は本気だよ。理央のことが好きなんだ。理央の気持ちを聞かせてくれないか?
酔っ払った状態じゃなく、今の理央の言葉が聞きたい」
そういうと、理央は完全に落ち、俺のことを好きだと言ってくれた。
理央の口から好きだと言われた瞬間、全身がゾワゾワと粟立つような感覚を覚えた。
その時の俺は相当興奮していたんだろう。
初めて心から思いが通じ合ったことの幸福感に満ち、思いが溢れてどうしようもなかった。
理央とキスしたい。
それしか考えられなくなって、恥ずかしがる理央の唇を一気に奪った。
さっきの理央からの重ねるだけのキスにももちろん興奮したが、やっぱり理央と粘膜を重ねひとつに溶け合うような感覚は心地良い。
それこそ遺伝子・細胞レベルで重なり合うのが気持ちよくてたまらないんだ。
今日からここで一緒に暮らすことを約束させ、呼び方も『先生』から名前に変えさせた。
正直、理央から『先生』と呼ばれるのも興奮するが、名前でも呼んでほしい。
ああ、そうだ。
身体で愛し合うようになったらその最中だけ『先生』と呼ばせるのもいいかもしれない。
そんな邪なことを考えながら、理央に食事をさせようと理央を抱きかかえそのままダイニングへと向かった。
席に座らせ、まずは喜ばせてやろうと母さんが選んだ誕生日ケーキを見せてやることにした。
楽しみは多い方がいい。
そう思って目を瞑らせ、目の前にケーキを披露しながら
「お誕生日おめでとう」
と言った。
きっと喜んでくれるだろうとは思ったが、理央の反応は俺の想像とは全然違っていた。
急に大きな目にいっぱい涙をため、ポロポロとこぼし始めた。
満面の笑みを見せてくれると思っていただけに失敗したかと慌てて理央に駆け寄ると、理央は誕生日ケーキも誕生日のお祝いも何もかもが初めてだと話してくれた。
考えてみればクッキーさえも与えてもらっていないのに、誕生日ケーキで祝うだなんてしてもらっているはずがないんだ。
ケーキと『おめでとう』という言葉だけでこんなに涙を流すほど喜ぶ理央を見ていると、愛おしさと共に、理央の誕生日を嫌な思い出にしてしまった施設の奴らに腹立たしさが募る。
「なぁ、理央。覚えていてくれ。
今日は理央が施設に置いて行かれた日じゃない。私と出会って幸せになれた最高の誕生日だってそう覚えていてくれ」
そう、これからの日々。
全て俺が上書きしてやる。
ケーキを食べる前にオムライスを食べるかと尋ねると喜んだ理央に、いつもとは違うオムライスを作ってやろうと考えた。
どうせなら理央の喜ぶ顔をたくさん見たかったんだ。
成功させるぞと思いつつも、理央が見ていると思うと緊張する。
俺にもこんな繊細な一面があったことに笑ってしまう。
用意しておいたチキンライスの上になんとか成功したふわふわのオムレツを乗せて、縦に割れ目を入れてやると卵が綺麗にチキンライスにかぶさった。
その瞬間の理央の表情は言葉では言い表せないくらい嬉しそうだった。
この表情を録画できなかったことは残念極まりないが、俺の目に焼き付けておこう。
理央は初めて食べるオムライスを嬉しそうにあっという間に食べ終えた。
食後に楽しみにしていたケーキを出しながら、母さんがちゃんと準備しておいてくれた1と8のロウソクをケーキに挿し、理央の前に出してやると目を輝かせた。
誕生日ケーキもなかった理央にはロウソクを吹き消すことも初めてだろう。
嬉しそうな理央を今度はばっちり録画してやろうとスマホを手に持ち、ロウソクに火をつけ部屋の電気を消すとほんのりとした光の中でも理央の嬉しそうな表情がはっきりとわかった。
誕生日の定番である誕生日の歌を歌ってやると俺を嬉しそうに見つめ、フーっと笑顔で息を吹きかけた。
まるで消すのが勿体無いとでもいうように、ゆっくりと吹きかけられた息は少し間を開けて炎を消した。
好きなだけ食べていいよと言ったが、さっきのオムライスが理央の小さなお腹を占領しているようであまり入らないらしい。
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