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番外編
理央のおでかけ 9
<side凌也>
「きゅるるっ」
理央のお腹から可愛らしい音が聞こえる。
「わっ!」
理央は恥ずかしさのあまり、顔を赤くしてお腹を抑えるがその可愛い仕草に教授たちが相好を崩す。ああ、そんな可愛い顔をみんなに見せないでくれ。そんな独占欲に塗れた思いが頭をよぎるが、口に出すのはさすがに憚られた。
「ごめん、ごめん。理央くんお腹空いてたよね。観月くん、早く注文しに行こう」
鳴宮教授に腕をポンと叩かれ、
「はい。そうですね。理央、行こうか」
とそのまま抱きかかえて行こうとすると、
「凌也さん……僕、下ります」
と小さな声が耳に届いた。
できることならこのまま抱きかかえていたいが、さすがに一人だけ抱きかかえられているのは恥ずかしいらしい。鳴宮教授たちもいれば安心だろうし、理央の気持ちを優先させてあげたほうがいいか。
「わかった。だが、俺から離れないようにな」
「はい。僕、絶対に凌也さんから離れません!」
「いい子だ」
「ねぇ、理央くん。じゃあ、私とも手を繋ごうか」
「はい」
そう言って差し出された鳴宮教授の手を理央が躊躇いもなく繋いだことに驚きを隠せない。
「えっ……」
「観月くん、驚いてる?」
「え、ええ。鳴宮教授は理央をご存知なのですか?」
「うん。さっき理央くんが迷っていた時に私が見つけて榊くんのところまで連れて行ったんだ。ねぇ、理央くん」
「はい。鳴宮先生が僕を助けてくれたんです」
「ああ。そうだったのか。鳴宮教授、ありがとうございます」
なるほど。それで鳴宮教授がここにいたのか。てっきり食堂で会ったのかと思っていたが、そんな事情があったとは。
それにしても構内で迷子になって鳴宮教授に見つけてもらえたなんて、一番安心で安全な人に助けてもらったんだな、理央は。まさに強運としか言いようがない。
もし、薮田にでも遭遇していたら……想像するだけで薮田を葬りたくなってくる。
理央を真ん中に鳴宮教授と並んで歩く。
「教授は緑川教授のところに来ようとなさってたんですか?」
「そうなんだよ。今日、榊くんと一緒に観月くんの姫が来るって聞いてたから会わなきゃ勿体ないと思ってね。でも想像していた100倍可愛い子でびっくりしたよ。ねぇねぇ、理央くん。観月くんは優しい?」
鳴宮教授が突然理央に質問を始める。理央がなんて答えるのか、気になって仕方がない。緊張しながら、理央の答えを待っていると理央は蕩けるような笑顔を見せて口を開いた。
「はい。凌也さんはすっごく優しいですよ」
「へぇ、たとえばどんなところが優しい?」
「うーんと、朝起きた時はぎゅって抱きしめながら優しく起こしてくれるし、いっつも僕の好きな料理を作ってくれて食べさせてくれるし、お仕事中も僕と目があったら笑顔で手を振ってくれるし、あっ、お風呂で髪も身体も綺麗に洗ってくれて、それから――」
「理央っ、もうその辺でいいんじゃないか?」
このままだと全てを話してしまいそうな理央に慌てて口を挟めば、理央はピクッと身体を震わせて口を噤んだ。
「ご、ごめんなさい……」
今にも泣き出しそうな目で見上げられて、自分の対応が失敗したことを知る。思わず大声を上げてしまって理央を怖がらせてしまったかもしれない。
「あ、いや……別に怒ったわけじゃないんだ。ほら、もう注文する順番に来たから。なっ」
慌てて理央に取り繕って頭を優しく撫でると、理央は小さく頷いた。
「りょうやさんの……すきなの、たべたいです……っ」
少し涙声になりながらもそう言ってくれる理央の優しさに胸が締め付けられる。
「ああ、じゃあ唐揚げ定食かな」
「はい。ぼく、それにします」
そう言って健気にも俺を見上げて笑顔を見せてくれる。理央の方こそ、俺に優しいんだ。
「観月くん、本当に変わったんだね。理央くんが変えてくれたのかな」
鳴宮教授に小声で尋ねられる。
ああ、そうだ。理央が俺をこんなにも変えてくれたんだ。
鳴宮教授に笑顔で返すと、教授は何も言わずただ嬉しそうに笑っていた。
唐揚げ定食と理央の好きなハンバーグ定食を頼み、トレイを運んでいる間、理央は教授と手を繋いでいた。
本当に安心して任せられる相手がいるのは心強い。席に戻り、みんなの料理が揃ってようやく昼食が始まる。
「理央、熱いから全部口に入れてはダメだぞ」
「わかりました」
唐揚げを箸で掴んで理央の口元に運ぶと、小さな口が唐揚げにパクりとかぶり付く。本当に小さな一口だ。
それでも理央は
「んーっ! おいひぃ、です」
と満面の笑みを見せてくれる。
「理央くんの美味しそうな顔見てたら、こっちまで幸せになってくるね」
「うんうん、確かに」
鳴宮教授と緑川教授はもう理央にメロメロのようだ。まるで自分の子どもでも見るような優しい眼差しを向けている。この二人がいてくださったら、理央をこの大学に行かせても安心かもしれないな。
「きゅるるっ」
理央のお腹から可愛らしい音が聞こえる。
「わっ!」
理央は恥ずかしさのあまり、顔を赤くしてお腹を抑えるがその可愛い仕草に教授たちが相好を崩す。ああ、そんな可愛い顔をみんなに見せないでくれ。そんな独占欲に塗れた思いが頭をよぎるが、口に出すのはさすがに憚られた。
「ごめん、ごめん。理央くんお腹空いてたよね。観月くん、早く注文しに行こう」
鳴宮教授に腕をポンと叩かれ、
「はい。そうですね。理央、行こうか」
とそのまま抱きかかえて行こうとすると、
「凌也さん……僕、下ります」
と小さな声が耳に届いた。
できることならこのまま抱きかかえていたいが、さすがに一人だけ抱きかかえられているのは恥ずかしいらしい。鳴宮教授たちもいれば安心だろうし、理央の気持ちを優先させてあげたほうがいいか。
「わかった。だが、俺から離れないようにな」
「はい。僕、絶対に凌也さんから離れません!」
「いい子だ」
「ねぇ、理央くん。じゃあ、私とも手を繋ごうか」
「はい」
そう言って差し出された鳴宮教授の手を理央が躊躇いもなく繋いだことに驚きを隠せない。
「えっ……」
「観月くん、驚いてる?」
「え、ええ。鳴宮教授は理央をご存知なのですか?」
「うん。さっき理央くんが迷っていた時に私が見つけて榊くんのところまで連れて行ったんだ。ねぇ、理央くん」
「はい。鳴宮先生が僕を助けてくれたんです」
「ああ。そうだったのか。鳴宮教授、ありがとうございます」
なるほど。それで鳴宮教授がここにいたのか。てっきり食堂で会ったのかと思っていたが、そんな事情があったとは。
それにしても構内で迷子になって鳴宮教授に見つけてもらえたなんて、一番安心で安全な人に助けてもらったんだな、理央は。まさに強運としか言いようがない。
もし、薮田にでも遭遇していたら……想像するだけで薮田を葬りたくなってくる。
理央を真ん中に鳴宮教授と並んで歩く。
「教授は緑川教授のところに来ようとなさってたんですか?」
「そうなんだよ。今日、榊くんと一緒に観月くんの姫が来るって聞いてたから会わなきゃ勿体ないと思ってね。でも想像していた100倍可愛い子でびっくりしたよ。ねぇねぇ、理央くん。観月くんは優しい?」
鳴宮教授が突然理央に質問を始める。理央がなんて答えるのか、気になって仕方がない。緊張しながら、理央の答えを待っていると理央は蕩けるような笑顔を見せて口を開いた。
「はい。凌也さんはすっごく優しいですよ」
「へぇ、たとえばどんなところが優しい?」
「うーんと、朝起きた時はぎゅって抱きしめながら優しく起こしてくれるし、いっつも僕の好きな料理を作ってくれて食べさせてくれるし、お仕事中も僕と目があったら笑顔で手を振ってくれるし、あっ、お風呂で髪も身体も綺麗に洗ってくれて、それから――」
「理央っ、もうその辺でいいんじゃないか?」
このままだと全てを話してしまいそうな理央に慌てて口を挟めば、理央はピクッと身体を震わせて口を噤んだ。
「ご、ごめんなさい……」
今にも泣き出しそうな目で見上げられて、自分の対応が失敗したことを知る。思わず大声を上げてしまって理央を怖がらせてしまったかもしれない。
「あ、いや……別に怒ったわけじゃないんだ。ほら、もう注文する順番に来たから。なっ」
慌てて理央に取り繕って頭を優しく撫でると、理央は小さく頷いた。
「りょうやさんの……すきなの、たべたいです……っ」
少し涙声になりながらもそう言ってくれる理央の優しさに胸が締め付けられる。
「ああ、じゃあ唐揚げ定食かな」
「はい。ぼく、それにします」
そう言って健気にも俺を見上げて笑顔を見せてくれる。理央の方こそ、俺に優しいんだ。
「観月くん、本当に変わったんだね。理央くんが変えてくれたのかな」
鳴宮教授に小声で尋ねられる。
ああ、そうだ。理央が俺をこんなにも変えてくれたんだ。
鳴宮教授に笑顔で返すと、教授は何も言わずただ嬉しそうに笑っていた。
唐揚げ定食と理央の好きなハンバーグ定食を頼み、トレイを運んでいる間、理央は教授と手を繋いでいた。
本当に安心して任せられる相手がいるのは心強い。席に戻り、みんなの料理が揃ってようやく昼食が始まる。
「理央、熱いから全部口に入れてはダメだぞ」
「わかりました」
唐揚げを箸で掴んで理央の口元に運ぶと、小さな口が唐揚げにパクりとかぶり付く。本当に小さな一口だ。
それでも理央は
「んーっ! おいひぃ、です」
と満面の笑みを見せてくれる。
「理央くんの美味しそうな顔見てたら、こっちまで幸せになってくるね」
「うんうん、確かに」
鳴宮教授と緑川教授はもう理央にメロメロのようだ。まるで自分の子どもでも見るような優しい眼差しを向けている。この二人がいてくださったら、理央をこの大学に行かせても安心かもしれないな。
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