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懐かしい匂い
<sideヴァル>
――ヴァルフレードさまは、顔や家柄だけを望まれる縁が本当にいいことだと思いますか?
縁談話を持ちかけてジーノと初めて会った時、私との縁談を自分には勿体無い、私には他の縁もあるはずだとジーノが言い出して、私は今のユーリさまと同じような言葉を返した。
今までアゴスティーノ公爵家という家柄と、私の顔だけを望む相手からの縁談話に嫌気がさしていたのだ。
だが、それに嫌気がさしていたのは私だけでなくユーリさまも同じ。
同じように目の前にいるユーリさまも、王族で美しい顔立ちであるが故に、私との縁談がなくなれば同じように求められるだろう。
私には心から惹かれたジーノがいた。ジーノが私の思いを受け止めてくれたからこそ、私は愛しい人と婚約することができた。ユーリさまが本気で私に惹かれてくださったのだとしたら、私は思いを受け止めるべきだろうか……。
けれど、私にはまだユーリさまにそこまでの感情は抱いていない。だが、あの時のジーノもきっと私に対してそこまでの感情は抱いていなかっただろう。それなのに、ジーノは私の思いを受け止めてくれた。
そんなジーノだからこそ、私は一生ジーノを愛し続けると誓ったのだ。死しても尚、私の心を占めるのはジーノ、ただ一人。そんな気持ちを持ちながら、ユーリさまとの縁談を進めるのは人として間違っているのではないかという気持ちでいっぱいになる。
「申し訳ありません。私自身、顔や家柄だけを望まれる縁談に嫌気がさしていたというのに、失礼なことを申しました」
「いえ。最愛のお方を亡くしたばかりの縁談話ですから、僕から一生を共にしたいと言われても驚かれて当然です。でも、ヴァルフレードさまとの縁談がうまくいかなければ、これ以後、誰との縁談も受けないつもりでいます。たとえ、お父さまに懇願されたとしても……」
「えっ、でもそれでは……」
「それくらい、本気でヴァルフレードさまを想っているとわかっていただきたいのです」
「ユーリさま……」
「だめ、ですか?」
「――っ!!!」
ユーリさまのお願いの表情が、ジーノと重なって見えてドキドキしてしまう。
顔も何もかも似ていないのに、どうしてだろう。
「ヴァルフレードさま……」
ユーリさまの目を見ていると、頷かずにはいられなくなる。
ジーノ……私を許してくれ。
「わかりました。このお話、受けさせていただきます」
「――っ、ヴァルフレードさま! よかった!!」
「――っ!!」
ユーリさまが抱きついてきて、胸がざわつく。
強く抱きしめたいという思いと、それに抗う気持ちが私の中で葛藤する。
それでもユーリさまとの縁を受けると決めた自分の気持ちに、責任をもつつもりでユーリさまの背中にそっと手を回した。
私の身体にすっぽりとおさまるその姿はやはりジーノを思い起こさせる。久しぶりのその感触に私の心は落ち着いていった。
<sideジーノ(ユーリ)>
ヴァル以外との縁談を受けるつもりはない。その言葉は優しいヴァルの感情を大きく揺さぶったらしい。
でもその言葉に嘘はない。
ヴァルとの縁談がうまくいかなければ、ジーノは神さまのとの約束通り一年で命を終えることになるのだから。
ヴァル以外誰とも結ばれるつもりはない。
ジーノはその思いをヴァルに告げると、ヴァルは話を受けてくれた。
半分脅迫じみたものだったかもしれない。けれど、今のジーノとっては大きな前進だった。
あまりの嬉しさに、ヴァルに抱きつくと懐かしい匂いに包まれる。
(ああ、ヴァルの匂い。ずっとこの匂いに抱きしめられたかった……)
突然のジーノの行動にヴァルは驚いているだろう。でももう少しだけ、この匂いに包まれていたい。
そう思っていると、ジーノの背中に優しいヴァルの腕が回った。
ジーノだけが抱きついている時よりもずっと密着して、ヴァルの鼓動も聞こえるようだ。
その鼓動に安心したジーノは、いつの間にかヴァルの胸の中で眠ってしまっていた。
「んっ……」
気づくとジーノは自分の部屋のベッドで眠っていた。
「あれ? ヴァルは?」
辺りを見回したけれど、ヴァルの姿は見えない。
ジーノが眠ってしまったから、呆れて帰ってしまったのかもしれない。
せっかくヴァルがジーノの気持ちを受け止めてくれたというのに……。
自分の愚かな行動に呆れ果て、自然に涙が溢れてくる。
「ユーリさま? どうかなさったのですか?」
ベッドの上で一人で泣いていると、寝室の扉が開き、驚きの表情を浮かべたヴァルが部屋に入ってきた。
――ヴァルフレードさまは、顔や家柄だけを望まれる縁が本当にいいことだと思いますか?
縁談話を持ちかけてジーノと初めて会った時、私との縁談を自分には勿体無い、私には他の縁もあるはずだとジーノが言い出して、私は今のユーリさまと同じような言葉を返した。
今までアゴスティーノ公爵家という家柄と、私の顔だけを望む相手からの縁談話に嫌気がさしていたのだ。
だが、それに嫌気がさしていたのは私だけでなくユーリさまも同じ。
同じように目の前にいるユーリさまも、王族で美しい顔立ちであるが故に、私との縁談がなくなれば同じように求められるだろう。
私には心から惹かれたジーノがいた。ジーノが私の思いを受け止めてくれたからこそ、私は愛しい人と婚約することができた。ユーリさまが本気で私に惹かれてくださったのだとしたら、私は思いを受け止めるべきだろうか……。
けれど、私にはまだユーリさまにそこまでの感情は抱いていない。だが、あの時のジーノもきっと私に対してそこまでの感情は抱いていなかっただろう。それなのに、ジーノは私の思いを受け止めてくれた。
そんなジーノだからこそ、私は一生ジーノを愛し続けると誓ったのだ。死しても尚、私の心を占めるのはジーノ、ただ一人。そんな気持ちを持ちながら、ユーリさまとの縁談を進めるのは人として間違っているのではないかという気持ちでいっぱいになる。
「申し訳ありません。私自身、顔や家柄だけを望まれる縁談に嫌気がさしていたというのに、失礼なことを申しました」
「いえ。最愛のお方を亡くしたばかりの縁談話ですから、僕から一生を共にしたいと言われても驚かれて当然です。でも、ヴァルフレードさまとの縁談がうまくいかなければ、これ以後、誰との縁談も受けないつもりでいます。たとえ、お父さまに懇願されたとしても……」
「えっ、でもそれでは……」
「それくらい、本気でヴァルフレードさまを想っているとわかっていただきたいのです」
「ユーリさま……」
「だめ、ですか?」
「――っ!!!」
ユーリさまのお願いの表情が、ジーノと重なって見えてドキドキしてしまう。
顔も何もかも似ていないのに、どうしてだろう。
「ヴァルフレードさま……」
ユーリさまの目を見ていると、頷かずにはいられなくなる。
ジーノ……私を許してくれ。
「わかりました。このお話、受けさせていただきます」
「――っ、ヴァルフレードさま! よかった!!」
「――っ!!」
ユーリさまが抱きついてきて、胸がざわつく。
強く抱きしめたいという思いと、それに抗う気持ちが私の中で葛藤する。
それでもユーリさまとの縁を受けると決めた自分の気持ちに、責任をもつつもりでユーリさまの背中にそっと手を回した。
私の身体にすっぽりとおさまるその姿はやはりジーノを思い起こさせる。久しぶりのその感触に私の心は落ち着いていった。
<sideジーノ(ユーリ)>
ヴァル以外との縁談を受けるつもりはない。その言葉は優しいヴァルの感情を大きく揺さぶったらしい。
でもその言葉に嘘はない。
ヴァルとの縁談がうまくいかなければ、ジーノは神さまのとの約束通り一年で命を終えることになるのだから。
ヴァル以外誰とも結ばれるつもりはない。
ジーノはその思いをヴァルに告げると、ヴァルは話を受けてくれた。
半分脅迫じみたものだったかもしれない。けれど、今のジーノとっては大きな前進だった。
あまりの嬉しさに、ヴァルに抱きつくと懐かしい匂いに包まれる。
(ああ、ヴァルの匂い。ずっとこの匂いに抱きしめられたかった……)
突然のジーノの行動にヴァルは驚いているだろう。でももう少しだけ、この匂いに包まれていたい。
そう思っていると、ジーノの背中に優しいヴァルの腕が回った。
ジーノだけが抱きついている時よりもずっと密着して、ヴァルの鼓動も聞こえるようだ。
その鼓動に安心したジーノは、いつの間にかヴァルの胸の中で眠ってしまっていた。
「んっ……」
気づくとジーノは自分の部屋のベッドで眠っていた。
「あれ? ヴァルは?」
辺りを見回したけれど、ヴァルの姿は見えない。
ジーノが眠ってしまったから、呆れて帰ってしまったのかもしれない。
せっかくヴァルがジーノの気持ちを受け止めてくれたというのに……。
自分の愚かな行動に呆れ果て、自然に涙が溢れてくる。
「ユーリさま? どうかなさったのですか?」
ベッドの上で一人で泣いていると、寝室の扉が開き、驚きの表情を浮かべたヴァルが部屋に入ってきた。
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