19 / 23
私の覚悟
どこかお身体におつらい場所でもあるのかと心配になり尋ねてみれば
「ヴァルフレードさまの、お姿が見えなかったので、てっきり僕に呆れてお帰りになったのかと……」
となんとも可愛らしい答えが返ってきた。
私の姿が見えなかったから涙を流すほど不安になったとは……。心がギュッと締め付けられるような思いがする。
陛下が来られていたから仕方がないとはいえ、寂しい思いをさせてしまった事実は変わらない。
怖がらせて申し訳なかったという気持ちを込めて謝り、この部屋に連れてきた経緯を伝えるとユーリさまはほんのりと頬を赤らめて謝ってくれた。
いや、私はユーリさまの謝罪の言葉が欲しいのではない。だが、今ならこの延長でユーリさまに真実を尋ねても許されるかもしれない。
そんな期待を胸に、私はそっとユーリさまのベッドに腰を下ろし、さっきの疑問を口にすることにした。
「なんでしょう? ヴァルフレードさまがお聞きになりたいことでしたらなんでもお話ししますよ」
なぜか覚悟を決めたような表情のユーリさまが気になりつつも、一度聞いてみたいと思った衝動を抑えきれず、私はゆっくりと口にした。
「こちらにお連れした時、ユーリさまが私を、「ヴァル」とお呼びになったのですが覚えていらっしゃいますか?」
「えっ? そんな……っ、ほ、んとうに?」
「はい。もしかしたらヴァルフレードと呼びかけたのが聞こえなかっただけかもしれませんが、少し気になってしまいまして……」
「えっと……ごめんなさい。覚えてなくて、無意識に言ってしまったのかも……」
「そうでしたか。それではお気になさらず」
愛称で呼んでほしい。そうこちらから告げる前に愛称で呼ぶことはない。たとえ、将来の結婚相手であってもそう頼む前にそのような呼び方をしないのは暗黙のルールになっている。だから、私が愛称呼びを認めたのは、この世界にジーノただ一人のはず。
ユーリさまには気にしないでいいと伝えたものの、どうしても気になってしまったのは、告げた時のユーリさまの表情だった。
しまった! とでも言うようなあの表情。まるでいつも呼んでいたのがバレてしまったとでも言いたげな表情だった。
そっとユーリさまに視線を向けると、不安げな表情をしていらっしゃる。私はそんな顔を見たかったのではない。
ただ自分の中にある違和感の正体が知りたかっただけだ。
でもこのことでユーリさまにそのようなつらい表情をさせるくらいなら、もう忘れてしまおう。そして、ユーリさまのお好きなように呼んでもらったらいい。
「ユーリさま。いい機会ですから、これからは私をヴァルとお呼びください」
「えっ? いいのですか?」
「はい。私はもうユーリさまと人生を共にすると決めたのですから」
「――っ、ヴァル……っ」
目を潤ませて私に抱きついてくるユーリさまを私は拒めなかった。
ジーノ、これで良かったのだな?
――ゔぁる……あい、してる……しあ、わせに、なって……
最後の力を振り絞って私に最後の望みをかけてくれたジーノ。ジーノ以外を愛することなど一生ないと思ったが、ジーノの願い通り、私はこのユーリさまを幸せにすると誓うよ。ジーノ、喜んでくれるだろう?
「ユーリさま……」
優しく名前を囁くと、
「ユーリと呼んでください」
と涙を潤ませたまま告げられた。
その表情がなんとも愛おしく感じられて、私は覚悟を決めた。
「ユーリ……愛しているよ」
小さく名前を呼ぶと、花が綻ぶような笑顔を向けられ、ユーリさまの美しい顔が近づいてくる。
そして、どちらともなく唇が重なった瞬間、部屋中が眩い光に包まれた。
「ヴァルフレードさまの、お姿が見えなかったので、てっきり僕に呆れてお帰りになったのかと……」
となんとも可愛らしい答えが返ってきた。
私の姿が見えなかったから涙を流すほど不安になったとは……。心がギュッと締め付けられるような思いがする。
陛下が来られていたから仕方がないとはいえ、寂しい思いをさせてしまった事実は変わらない。
怖がらせて申し訳なかったという気持ちを込めて謝り、この部屋に連れてきた経緯を伝えるとユーリさまはほんのりと頬を赤らめて謝ってくれた。
いや、私はユーリさまの謝罪の言葉が欲しいのではない。だが、今ならこの延長でユーリさまに真実を尋ねても許されるかもしれない。
そんな期待を胸に、私はそっとユーリさまのベッドに腰を下ろし、さっきの疑問を口にすることにした。
「なんでしょう? ヴァルフレードさまがお聞きになりたいことでしたらなんでもお話ししますよ」
なぜか覚悟を決めたような表情のユーリさまが気になりつつも、一度聞いてみたいと思った衝動を抑えきれず、私はゆっくりと口にした。
「こちらにお連れした時、ユーリさまが私を、「ヴァル」とお呼びになったのですが覚えていらっしゃいますか?」
「えっ? そんな……っ、ほ、んとうに?」
「はい。もしかしたらヴァルフレードと呼びかけたのが聞こえなかっただけかもしれませんが、少し気になってしまいまして……」
「えっと……ごめんなさい。覚えてなくて、無意識に言ってしまったのかも……」
「そうでしたか。それではお気になさらず」
愛称で呼んでほしい。そうこちらから告げる前に愛称で呼ぶことはない。たとえ、将来の結婚相手であってもそう頼む前にそのような呼び方をしないのは暗黙のルールになっている。だから、私が愛称呼びを認めたのは、この世界にジーノただ一人のはず。
ユーリさまには気にしないでいいと伝えたものの、どうしても気になってしまったのは、告げた時のユーリさまの表情だった。
しまった! とでも言うようなあの表情。まるでいつも呼んでいたのがバレてしまったとでも言いたげな表情だった。
そっとユーリさまに視線を向けると、不安げな表情をしていらっしゃる。私はそんな顔を見たかったのではない。
ただ自分の中にある違和感の正体が知りたかっただけだ。
でもこのことでユーリさまにそのようなつらい表情をさせるくらいなら、もう忘れてしまおう。そして、ユーリさまのお好きなように呼んでもらったらいい。
「ユーリさま。いい機会ですから、これからは私をヴァルとお呼びください」
「えっ? いいのですか?」
「はい。私はもうユーリさまと人生を共にすると決めたのですから」
「――っ、ヴァル……っ」
目を潤ませて私に抱きついてくるユーリさまを私は拒めなかった。
ジーノ、これで良かったのだな?
――ゔぁる……あい、してる……しあ、わせに、なって……
最後の力を振り絞って私に最後の望みをかけてくれたジーノ。ジーノ以外を愛することなど一生ないと思ったが、ジーノの願い通り、私はこのユーリさまを幸せにすると誓うよ。ジーノ、喜んでくれるだろう?
「ユーリさま……」
優しく名前を囁くと、
「ユーリと呼んでください」
と涙を潤ませたまま告げられた。
その表情がなんとも愛おしく感じられて、私は覚悟を決めた。
「ユーリ……愛しているよ」
小さく名前を呼ぶと、花が綻ぶような笑顔を向けられ、ユーリさまの美しい顔が近づいてくる。
そして、どちらともなく唇が重なった瞬間、部屋中が眩い光に包まれた。
あなたにおすすめの小説
美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
【BLーR18】箱入り王子(プリンス)は俺サマ情報屋(実は上級貴族)に心奪われる
奏音 美都
BL
<あらすじ>
エレンザードの正統な王位継承者である王子、ジュリアンは、城の情報屋であるリアムと秘密の恋人関係にあった。城内でしか逢瀬できないジュリアンは、最近顔を見せないリアムを寂しく思っていた。
そんなある日、幼馴染であり、執事のエリックからリアムが治安の悪いザード地区の居酒屋で働いているらしいと聞き、いても立ってもいられず、夜中城を抜け出してリアムに会いに行くが……
俺様意地悪ちょいS情報屋攻め×可愛い健気流され王子受け
シャルルは死んだ
ふじの
BL
地方都市で理髪店を営むジルには、秘密がある。実はかつてはシャルルという名前で、傲慢な貴族だったのだ。しかし婚約者であった第二王子のファビアン殿下に嫌われていると知り、身を引いて王都を四年前に去っていた。そんなある日、店の買い出しで出かけた先でファビアン殿下と再会し──。
婚約破棄させた愛し合う2人にザマァされた俺。とその後
結人
BL
王太子妃になるために頑張ってた公爵家の三男アランが愛する2人の愛でザマァされ…溺愛される話。
※男しかいない世界で男同士でも結婚できます。子供はなんかしたら作ることができます。きっと…。
全5話完結。予約更新します。
憎くて恋しい君にだけは、絶対会いたくなかったのに。
Q矢(Q.➽)
BL
愛する人達を守る為に、俺は戦いに出たのに。
満身創痍ながらも生き残り、帰還してみれば、とっくの昔に彼は俺を諦めていたらしい。
よし、じゃあ、もう死のうかな…から始まる転生物語。
愛しすぎて愛が枯渇してしまった俺は、もう誰も愛する気力は無い。
だから生まれ変わっても君には会いたく無いって願ったんだ。
それなのに転生先にはまんまと彼が。
でも、どっち?
判別のつかないままの二人の彼の愛と執着に溺死寸前の主人公君。
今世は幸せになりに来ました。