ジーノの秘密の恋 〜もう一度愛してると聞かせて……

波木真帆

文字の大きさ
21 / 23

二人だけの秘密

<sideジーノ(ユーリ)>

ジーノに、いや、ユーリに愛を囁いてくれた途端、ヴァルは突然意識を失い、ベッドに倒れ込んだ。

どうして?
 
やっとヴァルに愛してると言われたのに……。

神さまと約束したはずだったのに……。

ここでヴァルを失ってしまったらユーリになったジーノは一体どうしたらいいのだろう?

愛しい人を失ってしまう恐怖。絶望に震える。今になってあの時のヴァルの気持ちがよくわかる。

絶対にこの手を離さないって思っているのに、握り返してこない。
それがこんなにも辛いことだったなんて……。

ヴァル……っ、ヴァル……っ。

お願い! 目を開けて!!

どれだけ望んでももう二度とジーノの目にヴァルは映らなかったあの時と同じように、今度はヴァルの目にユーリが映らなくなるんだろうか……。

いや! そんなこと考えたくない!

ジーノは、座ったままベッドに倒れ込んだヴァルを必死にベッドの中央まで引きずり、ジーノの命が尽きた時のヴァルと同じように後ろからヴァルを抱きかかえて必死に声をかけ続けた。

「ヴァル! ヴァル! 目を開けて! 僕をおいていかないで!!」

どれほど声をかけ続けていただろう。

突然、ヴァルの指がぴくりと動いた。

「――っ、ヴァル?」

先ほどまで何も動きもなかった身体が動いた気がして、ジーノはさらに必死に声をかけ続けた。

「ヴァルっ! ヴァルっ! ねぇ、目を開けて! お願い!!」

ジーノの目に溜まっていた涙がポトリとヴァルの頬に落ちた瞬間、

「んっ……」

ヴァルの瞼がゆっくりと開いた。

「ヴァル!」

「ジー、ノ……」

「えっ?」

どうして、ヴァルがジーノと呼んだの?
今の姿はユーリなのに。

「あ、あの……」

「大丈夫。全て神さまから聞いた。ジーノ、私のためにありがとう」

「――っ!! ヴァルっ!!」

何もかも理解したヴァルのその表情に、ジーノは涙でぐしょ濡れになっていることも忘れてヴァルに抱きついた。

「ヴァルっ! よかった! もう、会えないかと思った」

「ジーノ! それは私もだよ。ありがとう、本当に嬉しいよ」

「ヴァル……っ!! んんっ……」

笑顔のヴァルに見つめられたと思ったら、ヴァルの唇が重なった。
チュッと重ねるだけの甘いキス。

懐かしい、ヴァルとのキスだ。

そっと唇が離れていくと、ヴァルが嬉しそうに頬を緩めた。

「初めてだよ。ジーノとのキスでしょっぱかったのは」

「えっ? あっ! ご、ごめんなさい」

涙でぐしょ濡れだったことを思い出して、慌てて服の袖で拭こうとしたのをさっと止められて、ヴァルが綺麗なハンカチで涙を拭ってくれる。

「心配かけてしまったのだな。こんなに目が腫れて……」

「そんなこと……っ、あの時、ヴァルを泣かせてしまったことに比べたら僕の涙なんて……」

「あの時? もしかしてあの時もずっとそばにいたのか?」

「はい。僕の亡骸を腕に抱いたまま涙を流しているヴァルをずっと見てました。何もできないのが辛くて申し訳なくて……」

「そうか……それなら、私の気持ちは全てジーノに伝わっていたわけだな」

「はい。ヴァルがどれだけ僕のことを思ってくれていたか全部……」

だからこそ、どうしてもヴァルを守りたいと思ったんだ。

「神さまと契約を交わしたと聞いた。どうしてそんな無茶な真似を?」

「それは……だから、ヴァルが僕をどれだけ思ってくれているのかわかったから、ヴァルに幸せになって欲しくて……でも、ヴァルは僕がいないと幸せにはなれないって、だから神さまが提案してくださったんだ。ユーリさまと入れ替わって、ユーリさまの寿命が尽きる前にヴァルが愛してくれるようになったら、って……」

「――っ、私の幸せのために無理な選択をさせてしまったのだな。でも、本当だよ、ジーノでなければ私は幸せにはなれない。私がユーリさまに愛を告げることができたのは、姿形が変わってもジーノだと本能が気づいていたからだろうな」

「ヴァル……でも、これは二人だけの秘密にしよう。お父さま……国王さまはユーリさまが元気になってとても喜んでくださっているから……」

「ああ、そうだな。全てを伝えることが最善ではないからな」

ヴァルはジーノの気持ちも国王さまの気持ちも理解してくれた。そうして、笑顔のままもう一度唇を重ね合った。
感想 2

あなたにおすすめの小説

いくら気に入っているとしても、人はモノに恋心を抱かない

ちき
BL
一度オナホ認定されてしまった俺が、恋人に昇進できる可能性はあるか、その答えはノーだ。

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

【BLーR18】箱入り王子(プリンス)は俺サマ情報屋(実は上級貴族)に心奪われる

奏音 美都
BL
<あらすじ>  エレンザードの正統な王位継承者である王子、ジュリアンは、城の情報屋であるリアムと秘密の恋人関係にあった。城内でしか逢瀬できないジュリアンは、最近顔を見せないリアムを寂しく思っていた。  そんなある日、幼馴染であり、執事のエリックからリアムが治安の悪いザード地区の居酒屋で働いているらしいと聞き、いても立ってもいられず、夜中城を抜け出してリアムに会いに行くが……  俺様意地悪ちょいS情報屋攻め×可愛い健気流され王子受け

シャルルは死んだ

ふじの
BL
地方都市で理髪店を営むジルには、秘密がある。実はかつてはシャルルという名前で、傲慢な貴族だったのだ。しかし婚約者であった第二王子のファビアン殿下に嫌われていると知り、身を引いて王都を四年前に去っていた。そんなある日、店の買い出しで出かけた先でファビアン殿下と再会し──。

婚約破棄させた愛し合う2人にザマァされた俺。とその後

結人
BL
王太子妃になるために頑張ってた公爵家の三男アランが愛する2人の愛でザマァされ…溺愛される話。 ※男しかいない世界で男同士でも結婚できます。子供はなんかしたら作ることができます。きっと…。 全5話完結。予約更新します。

憎くて恋しい君にだけは、絶対会いたくなかったのに。

Q矢(Q.➽)
BL
愛する人達を守る為に、俺は戦いに出たのに。 満身創痍ながらも生き残り、帰還してみれば、とっくの昔に彼は俺を諦めていたらしい。 よし、じゃあ、もう死のうかな…から始まる転生物語。 愛しすぎて愛が枯渇してしまった俺は、もう誰も愛する気力は無い。 だから生まれ変わっても君には会いたく無いって願ったんだ。 それなのに転生先にはまんまと彼が。 でも、どっち? 判別のつかないままの二人の彼の愛と執着に溺死寸前の主人公君。 今世は幸せになりに来ました。

ルピナスの花束

キザキ ケイ
BL
王宮の片隅に立つ図書塔。そこに勤める司書のハロルドは、変わった能力を持っていることを隠して生活していた。 ある日、片想いをしていた騎士ルーファスから呼び出され、告白を受ける。本来なら嬉しいはずの出来事だが、ハロルドは能力によって「ルーファスが罰ゲームで自分に告白してきた」ということを知ってしまう。 想う相手に嘘の告白をされたことへの意趣返しとして、了承の返事をしたハロルドは、なぜかルーファスと本物の恋人同士になってしまい───。