ひとりぼっちになった僕は新しい家族に愛と幸せを教えてもらいました

波木真帆

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出発の前に

「たくさん食べられるからこの間と同じ四角のケーキを作ろう。ただ今回はクリスマスだからより豪華に二段重ねにするよ」

「わぁー! すごい!」

重ね合わせる時にかなりの神経を使うが、逆を言えばそれ以外は前回と同じ。
直くんと二人でやれば問題なくできるはずだ。

材料は全て計量が終わっている。
卵も常温に戻しておいたし、粉類も全て振るい終わっている。
バターも湯煎にかけて溶かし、牛乳も加えて温めているし準備は万端だ。

「それじゃあ、卵と砂糖を混ぜ合わせて行こうか」

「はい!」

もちろん混ぜ合わせるのはホイッパーではない。
二段重ねの大きなケーキを作るのに、ホイッパーでは直くんの腕がもたない。
ここは前回も使用した、祐悟くんが開発した軽くて威力が強いハンドミキサーを使用するのが楽でいい。

軽いから直くんにも使いやすいだろう。

早速ハンドミキサーの準備をして、私がボウルを支えて卵と砂糖を混ぜ合わせていく。

あっという間に生地が白くもったりと変化して直くんが目を輝かせた。

「わぁ、おじいちゃん。見てください! もうこんなに!」

「おお、いい感じにできてるな。よし、それじゃあ少しスピードを緩めよう」

高速から低速に切り替えてさらに生地が滑らかになるまで混ぜ合わせたら振るっておいた粉類を加える。
ハンドミキサーではなくゴムベラで大きく混ぜ合わせる。
準備しておいたバターと牛乳を混ぜ合わせればもう生地は完成だ。

大きなスクエア型とそれより一回り小さい型にそれぞれ生地を流し込む。
我が家の大きなオーブンは二つ一緒に焼けるからありがたい。

三十分ほど焼いている間、直くんはオーブンの中を時折覗き込んでは嬉しそうな表情をしていた。

そうしてあっという間に生地が焼き上がる時間になった。

危ないからと少し離れた場所に居させて、私がオーブンから焼き上がったスポンジを取り出した。

二つとも型から出し、粗熱をとる。

「すっごくいい匂い」

「ああ、焼き色もいいしすごく良くできているよ」

今の所、失敗はない。

粗熱をとっている間に生クリームをホイップしておく。
デコレーション用と絞り出し用の二種類。

ここでもあのハンドミキサーが大活躍だ。
飾り付け用の苺の準備も整って、後は飾り付け。

スポンジ生地を三枚にスライスして、大きなほうを私が、一回り小さいほうを直くんが飾り付けしていく。

セルクルのスクエア型に切り分けたきじを敷き、苺を並べてクリームを塗っていく。
そしてその上にまた生地をのせて、の繰り返し。
直くんは私の手元を見ながら、ケーキを飾り付けしていった。

一時間ほど冷蔵庫で冷やして、私が飾り付けたケーキを型から外し、その上に直くんのケーキを重ね合わせる。
ここがかなり神経を使ったが、意外と直くんが冷静に進めてくれて綺麗に中央に二段目のケーキを載せることができた。

「直くん、うまいぞ!」

「わぁ、やったー!」

嬉しそうにその場に飛び跳ねる直くんがこの上なく可愛い。

そして二人で最後の飾り付けをして二段の豪華なクリスマスケーキは完成した。

「これ、どうやって持っていきますか?」

「大丈夫。ちゃんと運べるよ」

今回も伊織くんに頼んで二段ケーキが入るサイズの保冷付きケーキケースを送ってもらっている。
これにお皿ごと入れたら冷えたまま運ぶことができる。

直くんは出来上がったケーキを持って向かう気満々だが、直くんとのケーキ作りが順調すぎて、想像より早く完成したから今から向かってはまだ早いかもしれない。

寛さんに連絡をとってから、向こうのじゅんびが整ったところで向かうとしよう。

連絡を入れるとやはりまだ少し早いようだ。
卓くんたちと毅くんたちも到着して、準備をしつつご馳走も作っているようだからもう少し待ったほうがいいだろう。

「直くん、パーティーでご馳走を食べるまでまだ少し時間があるから軽くご飯を食べてから行こうか」

「はい。あの、ちょっとだけピアノを弾いてきてもいいですか?」

「構わないよ。私も聞いていいのかな?」

直くんが昇と何やらこっそりとピアノを練習しているのは気づいていた。
多分寛さんのためだろうと思っていたから何も言わずにいたが、今は寛さんはいない。

「はい。聞いて感想を聞かせてくれたら嬉しいです」

直くんと一緒に演奏ルームに向かうと、直くんは嬉しそうにピアノの椅子に座り、そっと鍵盤に手を置いた。

どんな曲を聞かせてくれるのだろう。
少し緊張しながら、楽しみに聞いていると、不思議な曲が流れてきた。

「こ、れは……?」

直くんは確かにピアノを弾いているはずなのに、私の耳にはまるで琴を演奏しているような音が聞こえる。

一体どういうことなんだろう?
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