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『ん? どうした? 何の話だね?』
ラシード殿下の様子がおかしくなったことを心配して櫻葉会長が俺に尋ねてくる。
俺は正直に一花さんの年齢のことを尋ねられたことを伝えた。
『なるほど、それであの反応か。無理もないな』
櫻葉会長の言葉に、貴船会長も頷く。
ハッと我に返った殿下が二人に声をかけた。
『ノボルの話していたのは本当なのか?』
『ええ。本当です。一花は昇くんと同じ年齢なんですよ』
『信じられない……。むしろナオのほうが少し上だと言われても納得しそうだ』
元々外国人から見たら日本人は若く見えるようだけど、直くんと一花さんはまたそれとは違う理由だから余計に子どもみたいに見えるんだろう。
『君が彼を抱きかかえていたのは……?』
『まだ人混みや長時間歩くのは難しいので、出かけるときは私が抱きかかえることにしているんです。車椅子だと、入れない場所もありますから』
貴船会長の返答に殿下は納得したように頷いた。
『もし、彼の体調が良ければいつかカマル王国に遊びにきてほしい。我が王家の威信にかけて歓迎しよう』
ラシード殿下からの突然の誘いに貴船会長は驚いているようだった。
俺も同じだ。
どうして突然そんなことを?
もしかして保さんの償いのため、とか?
そう思ったけれど、殿下の考えは全く違うものだったようだ。
それを一番最初に理解していたのは、伯父さんだった。
フランとグリに囲まれて、俺たちの話を聞いていた伯父さんが教えてくれた。
『カマル王国は医療水準が高く国全体でバリアフリーを進めているから、国民全員が障がいに対しての意識が高いんだ。だから、安心して過ごせる国なんだよ』
そういえば、学校でそう習った覚えがある。
日本では車椅子移動が大変で外に出るのも億劫になっていた人が、カマルに移住して外に行くのが楽しくなって今では杖だけで歩き回れるようになったみたいな……
その話を聞いて貴船会長は表情を和らげた。
『ありがたいお誘いに感謝します。一花の体調が良い時期に、ぜひ遊びにいかせてください。そのときはぜひ殿下と保さんとも一緒に過ごしたいですね』
貴船会長の言葉に、今度はラシード殿下が表情を和らげた。
ずっと保さんが罪悪感に苦しんでいたのを知っているから、一花さんとその家族に赦されたのが嬉しいんだろう。
二人は固い握手を交わし、早速連絡先を交換していた。
<side征哉>
一花は直くんの父、保さんに会いたいというので一緒に会いにきたが、最後に磯山先生の事務所で会った時とは見た目がかなり変わっていた。
保さんに同行して中東に向かったお義父さんの秘書から報告書が届くたびに、お義父さんは私にも報告をしてくれたが、添えを見るたびに彼への想いはどんどん変わっていったのを自分でも理解していた。
一花が直くんと話をして、仲良くなってからは、保さんへの憎しみもほとんど消えていた。
だが一花が保さんと会うのは少し心配だった。もしかしたら、彼にあったことをきっかけに嫌なことを思い出すかもしれないと思ったからだ。保さんが一花を見て謝罪しようものなら、一花の中から必死に消そうとしていた辛い思い出を呼び起こすことになる。だから、私は一花を安心させるために抱きかかえて連れて行った。
思っていた通り、現れた一花に保さんはいきなり土下座を見せ、泣きながら謝罪をした。
けれど、保さんにもこの数ヶ月の思いがある。
謝罪をしなければ前に進めないのもわかる
だから少し待っていたが、その緊張感に包まれた空気を和やかにしてくれたのは直くんだった。
そしてその声に一花も応えた。
それで全てがうまく進んだ。
もうこれでいい。
実際に罪を犯したあの女は誘拐幇助の件についてはすでに実刑が決まり、今はそのほかの罪でも裁判にかけられ、おそらく十五年は出てこられない見通しだ
もちろん、出所後にはある場所に連れて行かれることが決まっている。
それから先は私とお義父さん、そして磯山先生だけが知るところだが、一花や直くん、そして保さんの前に二度と現れないことだけは確かだ、
もうあの件は何もかも忘れてこれからを幸せに過ごせばいい。
一花と直くん、そして緑川教授と保さんが楽しそうにスイーツを選んでいるのを見ながらそんなことを思っていた。
すると、ラシード殿下が一花の年齢のことを尋ねているのが聞こえた。
昇くんと一花が同じ歳だということに随分驚いていたが、それ以上に私が一花を抱きかかえて入ってきたことが気になっていたようだ。
一花の今の状態について話をすると、カマル王国に招待してくれるという嬉しい誘いを受けた。
一花の初めての海外にカマル王国を選んでもいいかもしれない。
あちらで殿下と保さんに案内してもらってのんびりすごすのもいい。
また志摩くんには調整を頼まなければいけないが、彼のことだから頑張ってやってくれるだろう。
私はラシード殿下と連絡先を交換し、ついでに最近出回り始めた最新のアプリを教えた。
一花たちのスマホに入れている『恋する子猫の狼さん』アプリと対をなす我々のためのアプリ。
その名も『ウルフハウス』
倉橋先輩がメインとなって開発したアプリで、そこでは彼が開発した商品全てをいつでも購入することができる優れものだ。
最近、顧客が増えたためアプリで管理もしながら、迅速な受付と発送ができるようにということらしい。
海外向けに日本食なども購入できるため、もうすでにこのアプリの愛用者は多いらしい。
もちろんこのアプリは誰でも登録できるわけではなく、個人情報入力後に審査がありそれに合格した人のみURLが送られて登録完了となるのだが、ラシード殿下なら審査に落ちることはまずない。
しっかりと説明をすると、すでにイリゼホテルで例のトイレタリー商品を使用していたようでそれがこのアプリで買えるならと喜んでおられた。
今まではお義父さんの秘書を通じて定期的に日本から送っていたようだが、このアプリがあれば自分のタイミングで購入できるようになる。それが一番嬉しいらしい。
倉橋先輩の商品の愛用者がまた増えたことになんとなく喜びを感じながら、運ばれてきたコーヒーの香りに癒されていた。
ラシード殿下の様子がおかしくなったことを心配して櫻葉会長が俺に尋ねてくる。
俺は正直に一花さんの年齢のことを尋ねられたことを伝えた。
『なるほど、それであの反応か。無理もないな』
櫻葉会長の言葉に、貴船会長も頷く。
ハッと我に返った殿下が二人に声をかけた。
『ノボルの話していたのは本当なのか?』
『ええ。本当です。一花は昇くんと同じ年齢なんですよ』
『信じられない……。むしろナオのほうが少し上だと言われても納得しそうだ』
元々外国人から見たら日本人は若く見えるようだけど、直くんと一花さんはまたそれとは違う理由だから余計に子どもみたいに見えるんだろう。
『君が彼を抱きかかえていたのは……?』
『まだ人混みや長時間歩くのは難しいので、出かけるときは私が抱きかかえることにしているんです。車椅子だと、入れない場所もありますから』
貴船会長の返答に殿下は納得したように頷いた。
『もし、彼の体調が良ければいつかカマル王国に遊びにきてほしい。我が王家の威信にかけて歓迎しよう』
ラシード殿下からの突然の誘いに貴船会長は驚いているようだった。
俺も同じだ。
どうして突然そんなことを?
もしかして保さんの償いのため、とか?
そう思ったけれど、殿下の考えは全く違うものだったようだ。
それを一番最初に理解していたのは、伯父さんだった。
フランとグリに囲まれて、俺たちの話を聞いていた伯父さんが教えてくれた。
『カマル王国は医療水準が高く国全体でバリアフリーを進めているから、国民全員が障がいに対しての意識が高いんだ。だから、安心して過ごせる国なんだよ』
そういえば、学校でそう習った覚えがある。
日本では車椅子移動が大変で外に出るのも億劫になっていた人が、カマルに移住して外に行くのが楽しくなって今では杖だけで歩き回れるようになったみたいな……
その話を聞いて貴船会長は表情を和らげた。
『ありがたいお誘いに感謝します。一花の体調が良い時期に、ぜひ遊びにいかせてください。そのときはぜひ殿下と保さんとも一緒に過ごしたいですね』
貴船会長の言葉に、今度はラシード殿下が表情を和らげた。
ずっと保さんが罪悪感に苦しんでいたのを知っているから、一花さんとその家族に赦されたのが嬉しいんだろう。
二人は固い握手を交わし、早速連絡先を交換していた。
<side征哉>
一花は直くんの父、保さんに会いたいというので一緒に会いにきたが、最後に磯山先生の事務所で会った時とは見た目がかなり変わっていた。
保さんに同行して中東に向かったお義父さんの秘書から報告書が届くたびに、お義父さんは私にも報告をしてくれたが、添えを見るたびに彼への想いはどんどん変わっていったのを自分でも理解していた。
一花が直くんと話をして、仲良くなってからは、保さんへの憎しみもほとんど消えていた。
だが一花が保さんと会うのは少し心配だった。もしかしたら、彼にあったことをきっかけに嫌なことを思い出すかもしれないと思ったからだ。保さんが一花を見て謝罪しようものなら、一花の中から必死に消そうとしていた辛い思い出を呼び起こすことになる。だから、私は一花を安心させるために抱きかかえて連れて行った。
思っていた通り、現れた一花に保さんはいきなり土下座を見せ、泣きながら謝罪をした。
けれど、保さんにもこの数ヶ月の思いがある。
謝罪をしなければ前に進めないのもわかる
だから少し待っていたが、その緊張感に包まれた空気を和やかにしてくれたのは直くんだった。
そしてその声に一花も応えた。
それで全てがうまく進んだ。
もうこれでいい。
実際に罪を犯したあの女は誘拐幇助の件についてはすでに実刑が決まり、今はそのほかの罪でも裁判にかけられ、おそらく十五年は出てこられない見通しだ
もちろん、出所後にはある場所に連れて行かれることが決まっている。
それから先は私とお義父さん、そして磯山先生だけが知るところだが、一花や直くん、そして保さんの前に二度と現れないことだけは確かだ、
もうあの件は何もかも忘れてこれからを幸せに過ごせばいい。
一花と直くん、そして緑川教授と保さんが楽しそうにスイーツを選んでいるのを見ながらそんなことを思っていた。
すると、ラシード殿下が一花の年齢のことを尋ねているのが聞こえた。
昇くんと一花が同じ歳だということに随分驚いていたが、それ以上に私が一花を抱きかかえて入ってきたことが気になっていたようだ。
一花の今の状態について話をすると、カマル王国に招待してくれるという嬉しい誘いを受けた。
一花の初めての海外にカマル王国を選んでもいいかもしれない。
あちらで殿下と保さんに案内してもらってのんびりすごすのもいい。
また志摩くんには調整を頼まなければいけないが、彼のことだから頑張ってやってくれるだろう。
私はラシード殿下と連絡先を交換し、ついでに最近出回り始めた最新のアプリを教えた。
一花たちのスマホに入れている『恋する子猫の狼さん』アプリと対をなす我々のためのアプリ。
その名も『ウルフハウス』
倉橋先輩がメインとなって開発したアプリで、そこでは彼が開発した商品全てをいつでも購入することができる優れものだ。
最近、顧客が増えたためアプリで管理もしながら、迅速な受付と発送ができるようにということらしい。
海外向けに日本食なども購入できるため、もうすでにこのアプリの愛用者は多いらしい。
もちろんこのアプリは誰でも登録できるわけではなく、個人情報入力後に審査がありそれに合格した人のみURLが送られて登録完了となるのだが、ラシード殿下なら審査に落ちることはまずない。
しっかりと説明をすると、すでにイリゼホテルで例のトイレタリー商品を使用していたようでそれがこのアプリで買えるならと喜んでおられた。
今まではお義父さんの秘書を通じて定期的に日本から送っていたようだが、このアプリがあれば自分のタイミングで購入できるようになる。それが一番嬉しいらしい。
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