ひとりぼっちになった僕は新しい家族に愛と幸せを教えてもらいました

波木真帆

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一花さんからの贈り物

<side直>

「直くんのお父さん、これどうですか?」

一花さんが父さんに桜味のマドレーヌというものを渡す。
父さんは嬉しそうに口に入れ、目を輝かせた。

「美味しい! 桜味なんて久しぶりだな」

「あちらでは桜味はなかなか見つからないよね」

「そうなんですよ。この抹茶も美味しい!」

あやちゃんとも楽しそうに話をしていて、和気あいあいといった感じだ。

「直くん、食べてる? これも美味しいよ」

ずっと三人の和やかな様子を見ていたら、一花さんが僕にもマドレーヌを渡してくれる。

「ありがとうございます。なんだか幸せだなって思って見てました」

本当に……父さんも交えてこんなふうに過ごせたらって、ずっと思っていたからその夢が叶ってすごく幸せだ。

「僕もここに直くんたちと来たいなって思ってたから嬉しいよ。ね、これも食べてみて!」

「あ、一花さんが考えたスイーツですね。これって、どんなものですか?」

「直くんはティラミス、って知ってる?」

「てぃら、みす……」

食べたことがあるのかどうかすらわからない。
困ってあやちゃんを見ると、代わりに答えてくれた。

「直くんはまだないかな。ねぇ、卓さん」

「そうだな。中に浸すコーヒーが少し濃いめだからまだ食べさせてはないかな」

「そうなんだ。じゃあこれが初めてのティラミスだね。このティラミスはコーヒーの代わりに抹茶を使ってるんだ。中身はティラミスと一緒だけど上に桜味のわらび餅をのせてるんだ」

一花さんがすごく説明してくれるけれど、味の想像がつかない。
でもあやちゃんは「へぇー、おもしろそう!」と興奮してる。

僕も食べて見たくなって、スプーンを入れてみた。
「全部一緒に食べてみて」とアドバイスされた通り、もちもちのわらび餅とクリーム、そして抹茶味のまで全部スプーンにのせてみた。パクッと口に入れると、いろんな食感が一度に押し寄せてくるけれど、どれも邪魔しない。
口の中でいい感じで混ざり合って美味しい。

「これ、すごく美味しいです!」

「本当! すごく美味しいよ! ねぇ、保くん」

「はい。すごく珍しい組み合わせだけど、見事に調和してて美味しいです。これを考えたなんて、すごいな……」

あやちゃんも父さんもすごく感心しているみたい。
それくらいすごく美味しかった。

「これは販売してからまだそんなに経ってないんだが売れ行きも好調なんだよ」

一花さんのお父さんの得意げな顔がなんだかとても幸せそうだ。

「ああ、そういえば一花。あれは直くんに渡したのか?」

「あっ! そうだった!」

声をあげる一花さんの元に貴船さんがさっと駆け寄って何か小さな箱みたいなのを渡した。

「直くん、これ僕からのプレゼント」

「えっ? ぼ、くに……?」

「うん。直くんが合格して学校に通うことになったって聞いたから、征哉さんと一緒に考えて直くんのために作ってもらったんだ」

僕のために、わざわざ?
そんな……嬉しすぎる。

受け取る手が震えてしまう。
それでも大切に箱を開けると、中から出てきたのは可愛いウサギと犬のキーホルダー。

「あ、これ……」

「そう、グリとフランのキーホルダー。直くんがいく学校のカバンに可愛いキーホルダーをつけるって聞いたからそれにしたんだ。つけてもらえたら嬉しい」

「かわいい……」

フランくんとグリちゃんにそっくり。

「直くん、よかったね」

「はい。一花さん、ありがとうございます。僕、大切にしますね」

心からそう伝えると、一花さんは嬉しそうに笑ってくれた。

もふもふの手触りに癒されていると、あやちゃんが一花さんに声をかける。

「そういえば、一花くんはクリスマスに何かもらった?」

「あ! そうだ! その話をしなくちゃ! 実は僕、サンタさんに会ったんですよ!」

嬉しそうなその声に、僕もつられて声を上げてしまった。

「僕も! 僕も会いました!」

「わぁ、直くんも? 会えたんだ! よかったね!」

「はい。サンタさんから直接プレゼントをもらって……昇さんも、もらったんですよ。ねぇ、昇さん」

僕は嬉しくなって昇さんを見ると、笑顔で頷いてくれる。

「わぁー、やっぱり! 征哉さんが二十歳まではもらえるって教えてくれたから、きっと昇くんももらってるだろうなって思ってたんだ。直くんはまだこれからもいっぱいもらえるね!」

二十歳までサンタさんに会える!
僕はプレゼントよりもその事実がすごく嬉しかった。
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