ひとりぼっちになった僕は新しい家族に愛と幸せを教えてもらいました

波木真帆

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第二部

直くんの憧れ

<side絢斗>

「表面から書いたほうがいいですか?」

「どっちでもいいよ。先に名前と住所を書いてもいいし」

私も卓さんも表はほとんど印刷だ。
皐月のような昔からの友だちには今も変わらず手書きだけど。
その時は表から書くかな。あんまり考えたことなかったな。

そういうところからも直くんは初めてだと言うのが窺える。

直くんは少し考えて表から書くことにしたみたい。
送られてきた年賀状を上に置き、筆ペンを手に取った。

直くんの鉛筆の文字はよく知っている。教科書通りの綺麗な字。
筆ペンはどんな字になるだろう。ちょっと楽しみ。

直くんは真剣な表情でスッと筆ペンを立てると、驚くほど滑らかで綺麗な文字を書いた。
あまりにも綺麗な文字に思わず声が出そうになる。
口を押さえて必死にこらえている間に直くんは敬介くんの住所と名前を書き終えた。

静かに筆ペンが年賀状から離れ、直くんが一息つく。
そのタイミングで私はようやく口を開いた。

「すごい! 直くん、綺麗な字だね」

「えっ、そんな……っ」

「ううん、本当に綺麗! ねぇ、卓さん。昇くんも見て!」

私が声をかけるとすぐに二人がやってきて直くんの書いた年賀状を覗き込む。

「筆ペンで書いたんだよ。すごく上手だよね」

「おお、これはすごいな」

「本当! 俺より全然綺麗だよ」

昇くんは文字を覚え出した頃から小学一年生までの数年間、書道の師範の免許を持っていたお義母さんに週に一度習っていた。二年生になった頃からサッカーやったり、バスケをしたりと忙しくなって会いに行った時に習う程度になったようだけど、基本をしっかりと教えられたせいか、今でも字は綺麗だ。

けれど、直くんは十年は書道を学んだような綺麗な文字。

「どこかで習ってた?」

学習塾と英語塾には通っていたと卓さんから聞いた覚えがあったけれど、書道も習っていたんだろうか。
気になって尋ねると、直くんは笑顔で教えてくれた。

「習っていたというか、学校の書道の先生がいてたまに教えてもらってたんです。字を書いていると集中できて心が落ち着くので」

その言葉にハッとさせられる。
それは心を落ち着けなきゃいけない何かがあったって言うことだから。
でもそれは口にしない。

「そっか。いい先生に教えてもらえてよかったね。字は一生ものだから。直くんの字、私好きだよ」

「あやちゃん……」

「じゃあ書いちゃおうっか」

私の呼びかけに直くんは嬉しそうに返事をした。

「じゃあ俺も書いとこう! 成瀬さんたちにも年賀状送らないと!」

そう言って直くんの向かいに座り、年賀状を書き始めた。
直くんと昇くんが笑顔で書いていくのを私と卓さんは微笑ましく思いながら見つめていた。

驚くほどのほどの集中力を見せた直くんと昇くんは一時間足らずで年賀状を書き終えた。

「パパ、あやちゃん。見てください。書けました!」

嬉しそうに見せてくれた年賀状。
それぞれに可愛いスタンプと直くんが描いた干支のイラストがある。
そして驚くほど達筆で書かれたメッセージ。
ふふ。これ、直くんが書いたって知ったらみんな驚くだろうな。

「じゃあ、途中でポストに寄ってから実家に行こうか。片付けておくから昇と直くんは着替えておいで」

今日はみんなで初詣が待っている。
きっとお父さんたちも楽しみにしているだろう。

卓さんがテーブルの上を片付けるのを見ながら、私は直くんが書いた年賀状を見直していた。

「絢斗、どうした?」

「ううん。直くん、本当に学校に行けるのが楽しみなんだなって。どのメッセージにも学校のことが書いてある」

それを笑顔で書いていたのをしっかり覚えてる。

「そうだな。急にいけなくなってから数ヶ月。ようやく落ち着いて勉強できるから楽しみなんだろう。それに絢斗の母校だからと言うのもあるみたいだぞ」

「えっ? そうなの?」

「ああ、絢斗が学校でどんな生活をしていたか知るのが楽しみなんだろうな。それだけ絢斗を憧れているんだろう」

直くんが、憧れてくれてる……

くすぐったいけどやっぱりそれは嬉しいな。

「直くんは絢斗と同じように桜城大学を目指すんだろうな。その時はしっかり守らないとな。事務所は休んでずっと付き添うのもいいかもしれないな」

「卓さんったら。まだまだ先だよ」

そう言いつつも、三年なんてあっという間なんだろうな。
直くんが大学生か……まだ想像できないな。
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