ひとりぼっちになった僕は新しい家族に愛と幸せを教えてもらいました

波木真帆

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第二部

餅つき最高!

「どうだ? 昇もやってみるか?」

「うん!」

今度は俺の番だ。
直くんにかっこいいって思われるように頑張らないとな。

伯父さんから杵を受け取ると、縁側から直くんの声が聞こえる。

「昇さん、頑張ってー!」

その声でより一層やる気が出てくる。

「気合い入れすぎて臼にぶつけないようにするんだぞ。目線は常に餅の中心だ。そして力任せに振り被るんじゃなくて、持ち上げた杵の重さで餅をつくんだ。いいか、リズムが大事だからな」

伯父さんのアドバイスをしっかりと胸に刻み込む。

伯父さんは大おじさんと交代して俺の合いの手をやってくれるようだ。

「昇。いいぞ」

「はい。よいしょ」

俺がついて杵をあげると、すかさず伯父さんが餅を中央に折りたたむ。
その繰り返しで、伯父さんの手際がいいから餅をつきやすい。
そうか、餅つきって杵をつく人がすごいんだと持ってたけど、この合いの手を入れてくれる人も重要だったんだな。

「よし、次はラシード殿下に代わろう」

そう言われて俺は殿下に杵を渡した。

『ラシード! 頑張って!』

『ラシードさん、がんばってくださーい!』

保さんと直くんの呼びかけに殿下が嬉しそうに笑顔を返す。
すごいな。この殿下をここまで笑顔にするのはこの二人だけなんだろう。

伯父さんがさらりと餅つきの極意を伝えるが、何もかもが初めての殿下には少し難しいかもしれない。
そう思ったけれど、それは思いっきり杞憂だった。

杵を振り上げその重さで軽やかについていく。
その滑らかな動きも思わず感嘆のため息が漏れた。

「すごいな……」

やっぱり王族として教育を受けてきた人は、俺らみたいな庶民とは違うんだろう。

『ラシード、すごいよ!』

タオルを片手に殿下の元に駆け寄ってきた保さんの目が輝いている。
これは惚れ直した瞬間なんだろう。

「次は、おじいちゃまとおじいちゃんも見たいです!」

「そうか、じゃあそろそろやるとしようか」

直くんのおねだりにじいちゃんと大おじさんが笑顔で立ち上がる。
まさにラスボスの威厳。

「父さん」

伯父さんが襷を渡すと、さっと口に咥えシュッと襷掛けをする。
その仕草がため息が出るほどかっこいい。

伯父さんもかっこよかったけど、じいちゃんはその遥か上をいく感じだ。
これはやっぱり培ってきた年月なんだろうか……

ちらっと縁側を見ると、直くんだけじゃなく絢斗さんも見惚れているのがわかる。
この歳になってもまだ人を惹きつけられるじいちゃんは尊敬しかないな。

「じいちゃん。俺が合いの手を入れるよ」

「そうか、頼むよ」

こうしてじいちゃんの餅つきの相手ができるのも多分あと数年。
孫との餅つきの思い出をじいちゃんに覚えていてもらいたい。

じいちゃんは八十九とは思えない力で杵を持ち上げる。
そのままストっとおろし、俺が餅を畳む。
正確にど真ん中に杵を下ろしてくれるからめちゃくちゃやりやすい。

数回叩いて、今度は大おじさんに代わった。

「あ、昇くん。私が合いの手を入れるよ」

そう言って縁側から飛び出してきたのは絢斗さん。

「えっ? 大丈夫ですか?」

「任せておいて!」

そういうが早いか、絢斗さんは俺の場所と代わり、杵を持つ大おじさんに笑顔を向ける。

「お父さん。いいよ」

その笑顔に応えるように大おじさんは杵を下ろした。
杵が持ち上がると、絢斗さんが手慣れた様子で餅を折りたたむ。
正直に言って俺より断然上手い。

「すごっ……」

「絢斗は上手なんだよ。ああいうのは身体が動くんだろうな」

苦手なものと得意なものがはっきりしている絢斗さんの得意なものってことか。

大おじさんが数回餅をつきおわって、俺は直くんに声をかけた。

「直くんもやってみない?」

「でも、僕……」

「大丈夫、俺が支えるから」

直くんの手をとって、庭に向かう。

大おじさんから杵を受取ろうとした直くんだったけれど、多分持てないだろう。

「わぁ、重い!」

その重さだけ分からせてから俺はそっと後ろから支えた。

「よし。一緒にやってみよう。餅の真ん中に下ろすんだよ」

「私と卓さんで合いの手やるね」

直くんと俺が杵を持ち上げるとじいちゃんたちや保さんから「よいしょ」の声がかかる。

みんなが一体となって直くんの餅つきを成功させようとしているのが楽しい。

何度か餅をついて、ようやくつきたての餅が出来上がった。

「よし。これくらいでいいだろう」

伯父さんと一緒に臼ごと縁側に持っていく。
そしてもち粉を振って用意しておいた机につきたての餅を載せる。

じいちゃんはそれを驚くほどの速さで一口サイズにちぎっていった。

「直くんはきなこがいいかな」

砂糖をたっぷりと混ぜたきな粉の器を絢斗さんが直くんに渡す。
そこにじいちゃんがちぎった餅を入れる。

「直くん。食べてみて」

「はい。いただきます!」

箸でつかみ、直くんの口に入った餅は驚くほど伸びた。

「んー! おいひぃー!」

その幸せそうな声に、俺たちはみんな笑顔になっていた。
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