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第二部
幸せな時間
<side直>
初めての初詣。
初めてのおみくじ。
初めての屋台。
それだけじゃない。
年賀状におせち料理も……
新しい年になってから全てが初めてのことばかり。
それを家族みんなで楽しめるのが何よりも楽しい。
そして楽しみにしていたお餅つき。
ソファに座ってお餅つきが始まるのを待っていると、パパが長い紐を昇さんに渡しているのが見えた。
「あれ、なんですか?」
「あれは襷掛けといって、着物の袖や袂が邪魔にならないように結んでおくものなんだよ。すっごくかっこいいから見てて」
あやちゃんにそう言われてみていると、パパはその紐の先を咥えてシュッと紐を結んだ。
その手捌きが早くてどうなっているのかわからなかったけれど、すごくかっこいいってことだけはわかった。
「すごい!」
「でしょ? 私もあれ見るの好きなんだよね」
「わかります」
僕の言葉にあやちゃんと父さんが賛同する。
確かにかっこよくて何度も見ていたくなる。
「あ、昇くんもするよ」
そう言われて昇さんに視線を向ける。
パパと同じように紐の先を咥えてシュッと結ぶ。
「かっこいい……」
「ふふ、直くん。心の声が漏れてる。でもほんとかっこいいよね。卓さんと昇くん、お義父さんにもよく似ているから磯山家の血ってすごいなって思うよ」
そっか。昇さんって歳を重ねていったら、パパやおじいちゃまみたいになるんだ……
それってすごく素敵だな。
「直くんは保くんみたいになるね」
「えっ」
「だって、直くんと保くん、そっくりだよ」
その言葉に胸が熱くなる。
「私は、直と絢斗さんがそっくりだと思いましたよ」
父さんがすぐにそんな言葉を返してくれる。
「あ、やっぱり? というか、私と保くんも似てるよね? 雰囲気とか、顔の感じとか」
「いや、絢斗さんは美人なんで私となんて……」
「ううん、よく似てるよ。ね、直くん」
そう問いかけられて、僕は嬉しくてたまらなかった。
「あやちゃんと、父さん。よく似てる。僕も、似てて嬉しい」
泣きそうになりながら必死に答えると、あやちゃんと父さんが僕の手をそっと握ってくれた。
ああ、僕……本当に幸せだ。
パパがおじいちゃまとおじいちゃんをお餅つきに誘って、僕たちは縁側に移動した。
とうとうお餅つきが始まる。
「最初は卓さんだね。お父さんが合いの手を入れるみたい」
あやちゃんが教えてくれる。
パパがお餅をつくとおじいちゃんが手を使ってお餅を返す。
そのリズミカルな動きに見入ってしまう。
「すごい、すごい!」
お餅つきってこんなにワクワクするんだ。
「あ、次は昇くんだよ」
パパから杵を受け取る昇さんを見て声が出た。
「昇さん、頑張ってー!」
その声かけに笑顔で応えてくれる。
袴姿に襷掛けのその格好がすでにかっこいい。
昇さんが杵をパパが合いの手を入れてくれるみたい。
「わぁ、かっこいい」
もうその言葉しか出ない。
次はラシードさん。
「父さん。応援しないと!」
そう声をかけると、父さんはちょっと照れながらも応援の声をかけていた。
僕も一緒に応援すると笑顔が返ってきた。
ラシードさんもすごくかっこいい。
ずっと見ていたいくらいだけどやっぱりおじいちゃまたちも見てみたい。
「次は、おじいちゃまとおじいちゃんも見たいです!」
おねだりすると、おじいちゃまとおじいちゃんが立ち上がる。
パパから襷を渡されて、シュッと襷掛けをするけれど、なんだか一番かっこいい感じがする。
おじいちゃまの合いの手は昇さん。
すごいな。本当にかっこいい。
本当にその言葉しかない。
おじいちゃんの合いの手は誰がするのかなと思っていると、あやちゃんが縁側から飛び出していった。
「えっ、できるんですか?」
「任せておいて!」
その言葉通り、おじいちゃんが杵をつくリズムを壊すことなく軽やかにお餅を折りたたんでいく。
「すごい!」
あやちゃんの得意なもの、またひとつ知ったな。
「直くんもやってみない?」
おじいちゃんがつき終わったあとで昇さんに誘われた。
でも僕にできるかな……不安だ。
「大丈夫、俺が支えるから」
そう言われると安心する。
想像よりもずっと重かった杵を昇さんと一緒に持ち、パパとあやちゃんが合いの手を入れてくれる。
杵を持ち上げる時、みんなが「よいしょ」と声をかけてくれて嬉しかった。
そして出来上がったつき立てのお餅を食べる。
甘いきなこに、おじいちゃまがお餅をちぎって載せてくれた。
今日のお雑煮のお餅以上に長く伸びるお餅は、最高に美味しかった。
ああ、お餅つきってすごく楽しい!
* * *
お餅つきが無事に終わったところで年内最後の更新となりました。
詳しくはまたあとで近況ボードでお知らせします。
いつも読んでくださってありがとうございます。
新しい年になっても直くんと家族のお話を楽しんでいただけると嬉しいです♡
初めての初詣。
初めてのおみくじ。
初めての屋台。
それだけじゃない。
年賀状におせち料理も……
新しい年になってから全てが初めてのことばかり。
それを家族みんなで楽しめるのが何よりも楽しい。
そして楽しみにしていたお餅つき。
ソファに座ってお餅つきが始まるのを待っていると、パパが長い紐を昇さんに渡しているのが見えた。
「あれ、なんですか?」
「あれは襷掛けといって、着物の袖や袂が邪魔にならないように結んでおくものなんだよ。すっごくかっこいいから見てて」
あやちゃんにそう言われてみていると、パパはその紐の先を咥えてシュッと紐を結んだ。
その手捌きが早くてどうなっているのかわからなかったけれど、すごくかっこいいってことだけはわかった。
「すごい!」
「でしょ? 私もあれ見るの好きなんだよね」
「わかります」
僕の言葉にあやちゃんと父さんが賛同する。
確かにかっこよくて何度も見ていたくなる。
「あ、昇くんもするよ」
そう言われて昇さんに視線を向ける。
パパと同じように紐の先を咥えてシュッと結ぶ。
「かっこいい……」
「ふふ、直くん。心の声が漏れてる。でもほんとかっこいいよね。卓さんと昇くん、お義父さんにもよく似ているから磯山家の血ってすごいなって思うよ」
そっか。昇さんって歳を重ねていったら、パパやおじいちゃまみたいになるんだ……
それってすごく素敵だな。
「直くんは保くんみたいになるね」
「えっ」
「だって、直くんと保くん、そっくりだよ」
その言葉に胸が熱くなる。
「私は、直と絢斗さんがそっくりだと思いましたよ」
父さんがすぐにそんな言葉を返してくれる。
「あ、やっぱり? というか、私と保くんも似てるよね? 雰囲気とか、顔の感じとか」
「いや、絢斗さんは美人なんで私となんて……」
「ううん、よく似てるよ。ね、直くん」
そう問いかけられて、僕は嬉しくてたまらなかった。
「あやちゃんと、父さん。よく似てる。僕も、似てて嬉しい」
泣きそうになりながら必死に答えると、あやちゃんと父さんが僕の手をそっと握ってくれた。
ああ、僕……本当に幸せだ。
パパがおじいちゃまとおじいちゃんをお餅つきに誘って、僕たちは縁側に移動した。
とうとうお餅つきが始まる。
「最初は卓さんだね。お父さんが合いの手を入れるみたい」
あやちゃんが教えてくれる。
パパがお餅をつくとおじいちゃんが手を使ってお餅を返す。
そのリズミカルな動きに見入ってしまう。
「すごい、すごい!」
お餅つきってこんなにワクワクするんだ。
「あ、次は昇くんだよ」
パパから杵を受け取る昇さんを見て声が出た。
「昇さん、頑張ってー!」
その声かけに笑顔で応えてくれる。
袴姿に襷掛けのその格好がすでにかっこいい。
昇さんが杵をパパが合いの手を入れてくれるみたい。
「わぁ、かっこいい」
もうその言葉しか出ない。
次はラシードさん。
「父さん。応援しないと!」
そう声をかけると、父さんはちょっと照れながらも応援の声をかけていた。
僕も一緒に応援すると笑顔が返ってきた。
ラシードさんもすごくかっこいい。
ずっと見ていたいくらいだけどやっぱりおじいちゃまたちも見てみたい。
「次は、おじいちゃまとおじいちゃんも見たいです!」
おねだりすると、おじいちゃまとおじいちゃんが立ち上がる。
パパから襷を渡されて、シュッと襷掛けをするけれど、なんだか一番かっこいい感じがする。
おじいちゃまの合いの手は昇さん。
すごいな。本当にかっこいい。
本当にその言葉しかない。
おじいちゃんの合いの手は誰がするのかなと思っていると、あやちゃんが縁側から飛び出していった。
「えっ、できるんですか?」
「任せておいて!」
その言葉通り、おじいちゃんが杵をつくリズムを壊すことなく軽やかにお餅を折りたたんでいく。
「すごい!」
あやちゃんの得意なもの、またひとつ知ったな。
「直くんもやってみない?」
おじいちゃんがつき終わったあとで昇さんに誘われた。
でも僕にできるかな……不安だ。
「大丈夫、俺が支えるから」
そう言われると安心する。
想像よりもずっと重かった杵を昇さんと一緒に持ち、パパとあやちゃんが合いの手を入れてくれる。
杵を持ち上げる時、みんなが「よいしょ」と声をかけてくれて嬉しかった。
そして出来上がったつき立てのお餅を食べる。
甘いきなこに、おじいちゃまがお餅をちぎって載せてくれた。
今日のお雑煮のお餅以上に長く伸びるお餅は、最高に美味しかった。
ああ、お餅つきってすごく楽しい!
* * *
お餅つきが無事に終わったところで年内最後の更新となりました。
詳しくはまたあとで近況ボードでお知らせします。
いつも読んでくださってありがとうございます。
新しい年になっても直くんと家族のお話を楽しんでいただけると嬉しいです♡
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