687 / 757
第二部
父と息子
「雅也。買ってきたか?」
「ええ。バッチリです」
彼はそう言って両手に持っていた袋を掲げて見せる。
そのとき、じいちゃんたちが目に入ったのか、すぐにこちらにやってきた。
「これはこれは磯山先生。緑川先生。新年おめでとうございます。お元気そうで何よりですね」
「ああ。ありがとう。おかげさまで可愛い孫が増えたものでな。老け込んではいられないよ。なぁ、賢将さん」
「ええ。雅也くんも可愛い息子たちが増えたから可愛くて仕方がないだろう?」
賢将さんの言葉にその彼は一気に顔を綻ばせた。
「そうなんですよ。ようやく私にも紹介してもらえて最高に幸せな正月を過ごしています」
その笑顔のまま透也さんと祥也さんが座っているほうを見ると、二人は警戒するように自分の大切な人を腕に閉じ込めた。
「ねぇ、あの人って……もしかして、透也さんと祥也さんのお父さん?」
じいちゃんにこっそり尋ねると、今気づいたとでもいうように笑った。
「そうか、お前は会ったことがなかったな。お前が透也くんたちと会っていたときは、彼は海外支社にいたからな」
一人で納得して見せると言葉を続けた。
「そうだよ。彼は日下部さんの息子の雅也くん。透也くんと祥也くんの父親だよ。息子二人に可愛い伴侶ができたということでずっと会わせてくれと話をしていたみたいなんだが、ほら――」
笑って透也さんたちのほうを見ると、まだ腕に閉じ込めたままだ。
「ああやってなかなか見せなかったみたいでね、今回ようやく雅也くんも会わせてもらったようだよ」
俺も父さんにあんまり直くんと会わせたくないから、透也さんと祥也さんの気持ちはよくわかる。
これがじいちゃんや大おじさんだと特に気にならないから不思議なんだよな。
透也さんたちのお父さん・雅也さんはさっきの荷物をキッチンに運んで、しばらくして大きなトレイにお菓子をたくさん載せて戻ってきた。
「わぁー、お義父さん。ありがとうございます」
「すごく美味しそうですね。これ、食べたかったんです」
大夢さんと大智さんが嬉しそうに笑顔を向けると、雅也さんはこの上なく幸せそうに笑みを浮かべた。
その様子を見て、透也さんと祥也さんがすかさず二人を腕に抱きかかえて……
その繰り返しに思わず俺は笑ってしまっていた。
そのとき――
「お待たせー」
という声が聞こえて、みんなで一斉に振り返る。
そこには、豪華絢爛な振袖を纏った直くんが立っていた。
<side寛>
敦己くんが直くんを連れて行ったが、直くんが怖がらなければ心配する相手じゃない。
なんせ彼は日下部さんが本当の孫のように可愛がっている子だ。
透也くんたちとは再従兄弟の彼のことを、両親に代わって育ててきた日下部さんから見れば目に入れても痛くない相手。
そんな相手が、日下部さんがひ孫のように可愛がっている直くんを邪険に扱うわけがない。
直くんもそれを感じたから素直について行ったんだ。
心配する必要は全くない。
ただ、何をしているかは気になるところだ。それは完全に興味というだけだが。
そんな中、日下部さんの息子の雅也くんが荷物を両手に持って戻ってきた。
その袋には有名菓子店のロゴが載っているから、初売りでも買いに行ってきたんだろう。
得意げな様子を見ると、うまく手に入れられたのかもしれない。
そういえば昔、私も沙都の欲しがるものを求めて正月から並んで買いに行ったことがある。
喜んでくれる顔を見るだけで嬉しかったものだ。
彼がご機嫌なのは無事に手に入れられたからだけじゃない。
ようやく可愛い息子たちに会わせてもらえたからだろう。
その可愛い息子たちのためにこの初売りも買いに行ったんだろうからな。
それにしても透也くんと祥也くんの独占欲は強いな。
さすが兄弟。こういうところは似ているようだ。
雅也くんが買ってきたお菓子をトレイに載せて持ってくると、嬉しそうな声が上がる。
その声だけで雅也くんは満足そうに笑みを浮かべる。
直くんが私の用意したお菓子を食べて嬉しそうにするのを見るだけで、私も満足だから今の雅也くんの気持ちはよくわかる。早く雅也くんにも私の可愛い孫を見せてあげたいものだ。
そう思っていると、入り口から敦己くんの声が聞こえた。
みんなで一斉にそちらを向くとそこには豪華絢爛な振袖を纏った直くんがいた。
少し照れながら近づいてくる直くんを見て、昇はポカンと口を開けて茫然としている。
周りを見てもみんな昇と同じだ。
その中でいち早く反応したのは、大夢くんと大智くんだ。
「わぁー! 綺麗!」
「すごく似合ってる!」
声をかけながら駆け寄っていく姿に、ようやく昇も我に返ったようだ。
後を追いかけるように駆け寄ると
「直くん。すごく綺麗だよ」
と笑顔を見せる。
少し不安げだった直くんの表情が一気に綻ぶのを見て、私はホッと胸を撫で下ろした。
「ええ。バッチリです」
彼はそう言って両手に持っていた袋を掲げて見せる。
そのとき、じいちゃんたちが目に入ったのか、すぐにこちらにやってきた。
「これはこれは磯山先生。緑川先生。新年おめでとうございます。お元気そうで何よりですね」
「ああ。ありがとう。おかげさまで可愛い孫が増えたものでな。老け込んではいられないよ。なぁ、賢将さん」
「ええ。雅也くんも可愛い息子たちが増えたから可愛くて仕方がないだろう?」
賢将さんの言葉にその彼は一気に顔を綻ばせた。
「そうなんですよ。ようやく私にも紹介してもらえて最高に幸せな正月を過ごしています」
その笑顔のまま透也さんと祥也さんが座っているほうを見ると、二人は警戒するように自分の大切な人を腕に閉じ込めた。
「ねぇ、あの人って……もしかして、透也さんと祥也さんのお父さん?」
じいちゃんにこっそり尋ねると、今気づいたとでもいうように笑った。
「そうか、お前は会ったことがなかったな。お前が透也くんたちと会っていたときは、彼は海外支社にいたからな」
一人で納得して見せると言葉を続けた。
「そうだよ。彼は日下部さんの息子の雅也くん。透也くんと祥也くんの父親だよ。息子二人に可愛い伴侶ができたということでずっと会わせてくれと話をしていたみたいなんだが、ほら――」
笑って透也さんたちのほうを見ると、まだ腕に閉じ込めたままだ。
「ああやってなかなか見せなかったみたいでね、今回ようやく雅也くんも会わせてもらったようだよ」
俺も父さんにあんまり直くんと会わせたくないから、透也さんと祥也さんの気持ちはよくわかる。
これがじいちゃんや大おじさんだと特に気にならないから不思議なんだよな。
透也さんたちのお父さん・雅也さんはさっきの荷物をキッチンに運んで、しばらくして大きなトレイにお菓子をたくさん載せて戻ってきた。
「わぁー、お義父さん。ありがとうございます」
「すごく美味しそうですね。これ、食べたかったんです」
大夢さんと大智さんが嬉しそうに笑顔を向けると、雅也さんはこの上なく幸せそうに笑みを浮かべた。
その様子を見て、透也さんと祥也さんがすかさず二人を腕に抱きかかえて……
その繰り返しに思わず俺は笑ってしまっていた。
そのとき――
「お待たせー」
という声が聞こえて、みんなで一斉に振り返る。
そこには、豪華絢爛な振袖を纏った直くんが立っていた。
<side寛>
敦己くんが直くんを連れて行ったが、直くんが怖がらなければ心配する相手じゃない。
なんせ彼は日下部さんが本当の孫のように可愛がっている子だ。
透也くんたちとは再従兄弟の彼のことを、両親に代わって育ててきた日下部さんから見れば目に入れても痛くない相手。
そんな相手が、日下部さんがひ孫のように可愛がっている直くんを邪険に扱うわけがない。
直くんもそれを感じたから素直について行ったんだ。
心配する必要は全くない。
ただ、何をしているかは気になるところだ。それは完全に興味というだけだが。
そんな中、日下部さんの息子の雅也くんが荷物を両手に持って戻ってきた。
その袋には有名菓子店のロゴが載っているから、初売りでも買いに行ってきたんだろう。
得意げな様子を見ると、うまく手に入れられたのかもしれない。
そういえば昔、私も沙都の欲しがるものを求めて正月から並んで買いに行ったことがある。
喜んでくれる顔を見るだけで嬉しかったものだ。
彼がご機嫌なのは無事に手に入れられたからだけじゃない。
ようやく可愛い息子たちに会わせてもらえたからだろう。
その可愛い息子たちのためにこの初売りも買いに行ったんだろうからな。
それにしても透也くんと祥也くんの独占欲は強いな。
さすが兄弟。こういうところは似ているようだ。
雅也くんが買ってきたお菓子をトレイに載せて持ってくると、嬉しそうな声が上がる。
その声だけで雅也くんは満足そうに笑みを浮かべる。
直くんが私の用意したお菓子を食べて嬉しそうにするのを見るだけで、私も満足だから今の雅也くんの気持ちはよくわかる。早く雅也くんにも私の可愛い孫を見せてあげたいものだ。
そう思っていると、入り口から敦己くんの声が聞こえた。
みんなで一斉にそちらを向くとそこには豪華絢爛な振袖を纏った直くんがいた。
少し照れながら近づいてくる直くんを見て、昇はポカンと口を開けて茫然としている。
周りを見てもみんな昇と同じだ。
その中でいち早く反応したのは、大夢くんと大智くんだ。
「わぁー! 綺麗!」
「すごく似合ってる!」
声をかけながら駆け寄っていく姿に、ようやく昇も我に返ったようだ。
後を追いかけるように駆け寄ると
「直くん。すごく綺麗だよ」
と笑顔を見せる。
少し不安げだった直くんの表情が一気に綻ぶのを見て、私はホッと胸を撫で下ろした。
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています
かきんとう
恋愛
王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。
磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。
その中心に、私は立っていた。
――今日、この瞬間のために。
「エレノア・フォン・リーベルト嬢」
高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。
空港清掃員58歳、転生先の王宮でも床を磨いたら双子に懐かれ、国王に溺愛される
木風
恋愛
羽田空港で十五年、黙々と床を磨いてきた清掃員・田中幸子(58)は事故死し、没落寸前の子爵令嬢エルシアとして転生する。
婚約破棄の末に家を追われた彼女が選んだのは、王宮の清掃員――前世の技で空気まで変わるほど磨き上げていく仕事だった。
やがて母を亡くした双子王子王女に懐かれ、荒れた執務室の主である喪中の国王とも距離が縮まり……。
「泣くなら俺の胸で」――床も心も磨き直す、清掃令嬢の溺愛成り上がり。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
【完結24万pt感謝】子息の廃嫡? そんなことは家でやれ! 国には関係ないぞ!
宇水涼麻
ファンタジー
貴族達が会する場で、四人の青年が高らかに婚約解消を宣った。
そこに国王陛下が登場し、有無を言わさずそれを認めた。
慌てて否定した青年たちの親に、国王陛下は騒ぎを起こした責任として罰金を課した。その金額があまりに高額で、親たちは青年たちの廃嫡することで免れようとする。
貴族家として、これまで後継者として育ててきた者を廃嫡するのは大変な決断である。
しかし、国王陛下はそれを意味なしと袖にした。それは今回の集会に理由がある。
〰️ 〰️ 〰️
中世ヨーロッパ風の婚約破棄物語です。
完結しました。いつもありがとうございます!
完結 王族の醜聞がメシウマ過ぎる件
音爽(ネソウ)
恋愛
王太子は言う。
『お前みたいなつまらない女など要らない、だが優秀さはかってやろう。第二妃として存分に働けよ』
『ごめんなさぁい、貴女は私の代わりに公儀をやってねぇ。だってそれしか取り柄がないんだしぃ』
公務のほとんどを丸投げにする宣言をして、正妃になるはずのアンドレイナ・サンドリーニを蹴落とし正妃の座に就いたベネッタ・ルニッチは高笑いした。王太子は彼女を第二妃として迎えると宣言したのである。
もちろん、そんな事は罷りならないと王は反対したのだが、その言葉を退けて彼女は同意をしてしまう。
屈辱的なことを敢えて受け入れたアンドレイナの真意とは……
*表紙絵自作
義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。
克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位
11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位
11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位
11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位
治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~
大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」
唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。
そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。
「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」
「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」
一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。
これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。
※小説家になろう様でも連載しております。
2021/02/12日、完結しました。
異世界転生ファミリー
くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?!
辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。
アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。
アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。
長男のナイトはクールで賢い美少年。
ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。
何の不思議もない家族と思われたが……
彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。