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第二部
ものすごい演奏ルーム
<side昇>
小田切先生に自分の存在が見えていなかったことは少しショックを受けたけれど、それだけ直くんの可愛さに驚いたんだろうと思うと納得できた。それにまた威圧されるよりはずっといい。
「あ、そうだ。敦己くんたちの準備が整った頃だろうから、そろそろ演奏ルームに行こうか」
大智さんの言葉にすぐに透也さんが賛同する。
「そうですね。小田切先生たちも一緒にどうですか?」
「演奏ルーム、ですか?」
「ええ。今から敦己とここにいる直くんが演奏してくれるんですよ」
そう告げると、直くんの隣にいた暁さんは驚きの表情を向けた。
「ああ、だから着物着てたんだ! 聴きたい!」
彼の素直な言葉に直くんは少し照れつつも、「ぜひ」と返していた。
「じゃあ、行こう! おじいさまも行きましょう」
大智さんはさらりと日下部さんを誘う。
透也さんはその二人にすかさず近づいて、大智さんを真ん中に手を繋いだ。
「お義父さんも行きましょう」
大夢さんが祥也さんたちのお父さんに声をかけると同じように祥也さんも駆け寄って大夢さんを真ん中に手を繋ぎ歩いていく。
俺はじいちゃんたちに直くんを譲ろうかと一瞬悩んだけれど、少しくらい俺のそばにいてもらってもいいだろう。
それに俺が直くんの恋人だってことをしっかりと見せつけて、祥也さんたちから余計な威圧は受けないようにしたい。
「直くん。行こう」
さっと手を差し出すと、直くんは嬉しそうに俺の手を取った。
昨日の着物もめちゃくちゃ可愛かったけど、今日のもすごく似合ってる。
でも俺なら……直くんに何色の着物を選ぶかなぁ……
桜色も似合いそうだ。
白地に水色なんてのも似合いそう。
紫とか王道の赤もいいな……
うわっ、もう全部じゃん。
というか、直くんはどんな色でも着こなせそうなんだよな。
直くんの成人式は式典に出る時はスーツだろうけど、写真撮影の時は俺が選んだ着物を着てもらうのもいいかも……
じいちゃんとか伯父さんとか母さんたちとか、かなりライバルが多そうだけど、そこは俺が直くんのために誂えた着物を着てもらおう。
そんなことを考えながら、日下部さんたちに続いて歩いているとある扉の前に止まった。
「ここが演奏ルームだよ」
日下部さんがそう説明してくれて、ゆっくりと扉を開ける。
「わぁーっ!」
そこには一般人の家では到底見ることのない大きなホールがあった。
直くんが声を上げて驚いているけれど、それは当然だ。
俺だって声を上げてしまいそうになったのを必死に堪えた。
なんせ、広いステージとそれを囲うように客席まで作られている。
ここだけ写真を撮ったらどこかの演奏ホールだと思われそうだ。
「すごいな……」
堪えきれなかった声がつい漏れてしまった。
すると中から、
「直くんもこっちにおいで」
と敦己さんの声が聞こえる。
みんなでホールを覗き込むと、そこには美しい着物姿の敦己さんがいた。
「わぁー、敦己さん綺麗!」
直くんの声に大智さんや大夢さん、それに暁さんたちも声を上げる。
「本当、すごく似合ってるー!」
「ええー、すごい!」
「宇佐美さん、きれーい!」
そう言って駆け寄った彼らに、敦己さんは少し照れつつも笑顔を見せた。
「家族以外に見せるのは学生の時以来だから恥ずかしいな。でも、なんとか着れてよかったよ」
「準備って、着物を着る時間だったんですね」
「うん。人に着せるのと自分で着付けるのとはまた違うから。久しぶりだから着られないかもってドキドキだったよ」
敦己さんのその言葉に彼らは納得したように頷いていた。
「じゃあみんなはその辺、好きなところに座ってください。直くんはこっちに来て」
テキパキと指示を出す敦己さんの言葉に従い、俺は直くんを舞台にまで連れて行って、直くんの姿がよく見えそうな場所に座った。すぐ隣には日下部さん達やじいちゃん、大おじさんも腰を下ろした。
どうやら考えることは同じだったみたいだ。
舞台上で直くんと敦己さんが二人で話をしているが、綺麗な着物を着た二人が戯れあっているように見えてそれだけでニヤけてしまう。
ああ、どんな演奏をしてくれるのか楽しみでたまらないな。
小田切先生に自分の存在が見えていなかったことは少しショックを受けたけれど、それだけ直くんの可愛さに驚いたんだろうと思うと納得できた。それにまた威圧されるよりはずっといい。
「あ、そうだ。敦己くんたちの準備が整った頃だろうから、そろそろ演奏ルームに行こうか」
大智さんの言葉にすぐに透也さんが賛同する。
「そうですね。小田切先生たちも一緒にどうですか?」
「演奏ルーム、ですか?」
「ええ。今から敦己とここにいる直くんが演奏してくれるんですよ」
そう告げると、直くんの隣にいた暁さんは驚きの表情を向けた。
「ああ、だから着物着てたんだ! 聴きたい!」
彼の素直な言葉に直くんは少し照れつつも、「ぜひ」と返していた。
「じゃあ、行こう! おじいさまも行きましょう」
大智さんはさらりと日下部さんを誘う。
透也さんはその二人にすかさず近づいて、大智さんを真ん中に手を繋いだ。
「お義父さんも行きましょう」
大夢さんが祥也さんたちのお父さんに声をかけると同じように祥也さんも駆け寄って大夢さんを真ん中に手を繋ぎ歩いていく。
俺はじいちゃんたちに直くんを譲ろうかと一瞬悩んだけれど、少しくらい俺のそばにいてもらってもいいだろう。
それに俺が直くんの恋人だってことをしっかりと見せつけて、祥也さんたちから余計な威圧は受けないようにしたい。
「直くん。行こう」
さっと手を差し出すと、直くんは嬉しそうに俺の手を取った。
昨日の着物もめちゃくちゃ可愛かったけど、今日のもすごく似合ってる。
でも俺なら……直くんに何色の着物を選ぶかなぁ……
桜色も似合いそうだ。
白地に水色なんてのも似合いそう。
紫とか王道の赤もいいな……
うわっ、もう全部じゃん。
というか、直くんはどんな色でも着こなせそうなんだよな。
直くんの成人式は式典に出る時はスーツだろうけど、写真撮影の時は俺が選んだ着物を着てもらうのもいいかも……
じいちゃんとか伯父さんとか母さんたちとか、かなりライバルが多そうだけど、そこは俺が直くんのために誂えた着物を着てもらおう。
そんなことを考えながら、日下部さんたちに続いて歩いているとある扉の前に止まった。
「ここが演奏ルームだよ」
日下部さんがそう説明してくれて、ゆっくりと扉を開ける。
「わぁーっ!」
そこには一般人の家では到底見ることのない大きなホールがあった。
直くんが声を上げて驚いているけれど、それは当然だ。
俺だって声を上げてしまいそうになったのを必死に堪えた。
なんせ、広いステージとそれを囲うように客席まで作られている。
ここだけ写真を撮ったらどこかの演奏ホールだと思われそうだ。
「すごいな……」
堪えきれなかった声がつい漏れてしまった。
すると中から、
「直くんもこっちにおいで」
と敦己さんの声が聞こえる。
みんなでホールを覗き込むと、そこには美しい着物姿の敦己さんがいた。
「わぁー、敦己さん綺麗!」
直くんの声に大智さんや大夢さん、それに暁さんたちも声を上げる。
「本当、すごく似合ってるー!」
「ええー、すごい!」
「宇佐美さん、きれーい!」
そう言って駆け寄った彼らに、敦己さんは少し照れつつも笑顔を見せた。
「家族以外に見せるのは学生の時以来だから恥ずかしいな。でも、なんとか着れてよかったよ」
「準備って、着物を着る時間だったんですね」
「うん。人に着せるのと自分で着付けるのとはまた違うから。久しぶりだから着られないかもってドキドキだったよ」
敦己さんのその言葉に彼らは納得したように頷いていた。
「じゃあみんなはその辺、好きなところに座ってください。直くんはこっちに来て」
テキパキと指示を出す敦己さんの言葉に従い、俺は直くんを舞台にまで連れて行って、直くんの姿がよく見えそうな場所に座った。すぐ隣には日下部さん達やじいちゃん、大おじさんも腰を下ろした。
どうやら考えることは同じだったみたいだ。
舞台上で直くんと敦己さんが二人で話をしているが、綺麗な着物を着た二人が戯れあっているように見えてそれだけでニヤけてしまう。
ああ、どんな演奏をしてくれるのか楽しみでたまらないな。
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