8 / 677
距離が縮まる
しおりを挟む
「あの、昇さん……サラダも、食べてみてください。昇さん?」
「――っ!!」
あまりにも直純くんが可愛すぎて、ぼーっとしていたら直純くんの声かけに気づかなくて、テーブルの下から足を蹴られてしまった。
もちろん蹴ってきたのは、伯父さん。
そこまで強い衝撃ではなかったけれど、突然のことに身体をびくつかせてしまった。
「だ、大丈夫ですか?」
「大丈夫、大丈夫。なんでもないよ」
「そう、ですか?」
「直純くんのサラダ、食べさせてもらうね。このドレッシングは先にかけたほうがいい?」
「あっ、えっと……」
「せっかく作ってくれたから、まずはそのまま食べてみようかな」
「はい」
俺の言葉にホッとしたような表情を見せてくれる。
直純くんは自分の意見を言うのがなかなか慣れなさそうだ。
それはきっと、母親からの抑圧的な生活をさせられていたからだろう。
くそっ。こんな良い子にトラウマを植えつけやがって!
母親に対して怒りしか出てこない。
もう、そんな奴の記憶を全て排除させて、これから俺が直純くんのトラウマを全部無くして見せる!
そう心に誓いながら、直純くんの作ってくれたサラダに口をつけた。
ただ千切っただけ、乗せただけの簡単なサラダ。
それでも愛情はたっぷり入っている気がした。
「ん! この大きさ、食べやすくていいね」
「よかった……」
俺が口に入れる間、ずっと緊張しているように見えた。
本当に正真正銘初めての料理なんだ。
それを俺が食べられたことが何よりも嬉しい。
「直純くんが作ってくれたドレッシングもかけてみようかな」
「はい。僕、いっぱい混ぜ混ぜしたんで多分できてると思います」
「くっ!」
少し得意げな表情だけでなく、混ぜ混ぜ……その言い方が可愛すぎる!
やっぱり俺の天使だな。
さっとサラダにかけて、トマトとチーズ、そしてレタスを一緒に口に運ぶと今まで食べたことのないくらい極上の味が口に広がった。
「んんっ!! これ、すっごく美味しいよ!!」
「――っ、本当ですか!!」
「ああ、直純くんも食べてごらん」
そのまま勢いのままに、ドレッシングがかかったレタスとチーズを一緒に直純くんの口に運ぶと、小さな口を目一杯大きく開いていた。
ああ、直純くんには大きすぎたかと思ったけれど、ここで引っ込めるわけにもいかず、そのままでいると直純くんはそれをパクリと口に入れた。
小さな口をリスのように膨らませて、もっ、もっ、っと口を動かしているのが実に可愛い。
「んっ、おい、ひぃ……っ」
こくんと飲み込んでから、笑顔でそう言ってくれた直純くんの唇の端にドレッシングが光っていることに気づいた。
これは伝えるべきか?
そっと伯父さんに目を向けると、俺に見せつけるように
「絢斗、唇にソースがついてる」
と言い、拭った指を自分の唇に運んでいく。
「――っ!!!」
確かに父さんも母さんにやってるけど、良いのか?
でも直純くんは何も知らないはず。
これを普通だと思わせれば良いんだ。
「直純くん、ここ、ドレッシングがついてる」
そう言いながら、直純くんの小さな唇に触れ指で拭い取ってやる。
「あ、ありがとうございます」
そんな声を聞きながら、俺はそれを口に運んだ。
ああ、さっきのドレッシングより数百倍も甘く、そして美味しく感じる。
父さんも伯父さんも、それに宗一郎さんも伊織さんも、これを味わいたくてやっているんだと、その時初めて気づいた。
この権利は誰にも奪わせない!
俺はそう心に誓った。
<side磯山卓>
直純くんの可愛さに惚けてしまう気持ちは私にもよくわかる。
だが、それで彼の言葉を聞き逃してしまうのはいただけない。
気づかせようと足を叩いたが、そこまで身体をびくつかせるとは思わなかった。
昇はまだまだ修行が足りないな。
「ふふっ。卓さん、あんまりいじめちゃダメだよ」
絢斗がこっそりと言ってくる。
「でも直純くんを不安にさせたのはよくない」
「ふふっ。本当にパパになってる」
絢斗は笑いながらも、ちょっと嫉妬してくれているのか、
「食べさせて」
と言ってくれる。
ああ、もう本当に私の絢斗は幾つになっても可愛すぎる。
そういえば、伊織くんも悠真くんの可愛らしさを前に時々惚けてしまって反応が遅いんだと志良堂が溢していたことがある。
やっぱりまだまだ鍛錬が足りないのか。
伊織くんでそうなのだから、昇にはもっと厳しく教育してやったほうが良いかもしれないな。
なんとか食事を終え、午後のひとときを過ごす。
「昇、せっかくの機会だから直純くんに語学を披露してみてはどうだ?」
「披露、ってどうやるんですか?」
「これを読み聞かせしてやるといい」
そう言って、私はドイツ語で書かれた童話集を昇に渡した。
昔、昇がドイツから帰ってきた時に、ドイツ語を忘れないようにしたいと言って、うちや自分の家にドイツ語の本を置いていた。
いつか読み返すかもしれないと大切に本棚にしまっていたんだ。
「懐かしいな……」
昇はポツリと嬉しそうに呟いた。
「直純くん、聞いてみる?」
「はい。すっごく楽しそうです」
「じゃあ、日本ではあまり有名じゃないやつにしようかな」
そう言って、昇が本を開くと直純くんは昇のそばにあまり隙間なく座った。
二人の距離感が近くなったのがありありと感じられる。
昇もそれが嬉しそうだ。
「ふふっ。良い感じだね」
絢斗の嬉しそうな声を聞きながら、私たちは少し離れた場所で幼いカップルの姿を見つめていた。
「――っ!!」
あまりにも直純くんが可愛すぎて、ぼーっとしていたら直純くんの声かけに気づかなくて、テーブルの下から足を蹴られてしまった。
もちろん蹴ってきたのは、伯父さん。
そこまで強い衝撃ではなかったけれど、突然のことに身体をびくつかせてしまった。
「だ、大丈夫ですか?」
「大丈夫、大丈夫。なんでもないよ」
「そう、ですか?」
「直純くんのサラダ、食べさせてもらうね。このドレッシングは先にかけたほうがいい?」
「あっ、えっと……」
「せっかく作ってくれたから、まずはそのまま食べてみようかな」
「はい」
俺の言葉にホッとしたような表情を見せてくれる。
直純くんは自分の意見を言うのがなかなか慣れなさそうだ。
それはきっと、母親からの抑圧的な生活をさせられていたからだろう。
くそっ。こんな良い子にトラウマを植えつけやがって!
母親に対して怒りしか出てこない。
もう、そんな奴の記憶を全て排除させて、これから俺が直純くんのトラウマを全部無くして見せる!
そう心に誓いながら、直純くんの作ってくれたサラダに口をつけた。
ただ千切っただけ、乗せただけの簡単なサラダ。
それでも愛情はたっぷり入っている気がした。
「ん! この大きさ、食べやすくていいね」
「よかった……」
俺が口に入れる間、ずっと緊張しているように見えた。
本当に正真正銘初めての料理なんだ。
それを俺が食べられたことが何よりも嬉しい。
「直純くんが作ってくれたドレッシングもかけてみようかな」
「はい。僕、いっぱい混ぜ混ぜしたんで多分できてると思います」
「くっ!」
少し得意げな表情だけでなく、混ぜ混ぜ……その言い方が可愛すぎる!
やっぱり俺の天使だな。
さっとサラダにかけて、トマトとチーズ、そしてレタスを一緒に口に運ぶと今まで食べたことのないくらい極上の味が口に広がった。
「んんっ!! これ、すっごく美味しいよ!!」
「――っ、本当ですか!!」
「ああ、直純くんも食べてごらん」
そのまま勢いのままに、ドレッシングがかかったレタスとチーズを一緒に直純くんの口に運ぶと、小さな口を目一杯大きく開いていた。
ああ、直純くんには大きすぎたかと思ったけれど、ここで引っ込めるわけにもいかず、そのままでいると直純くんはそれをパクリと口に入れた。
小さな口をリスのように膨らませて、もっ、もっ、っと口を動かしているのが実に可愛い。
「んっ、おい、ひぃ……っ」
こくんと飲み込んでから、笑顔でそう言ってくれた直純くんの唇の端にドレッシングが光っていることに気づいた。
これは伝えるべきか?
そっと伯父さんに目を向けると、俺に見せつけるように
「絢斗、唇にソースがついてる」
と言い、拭った指を自分の唇に運んでいく。
「――っ!!!」
確かに父さんも母さんにやってるけど、良いのか?
でも直純くんは何も知らないはず。
これを普通だと思わせれば良いんだ。
「直純くん、ここ、ドレッシングがついてる」
そう言いながら、直純くんの小さな唇に触れ指で拭い取ってやる。
「あ、ありがとうございます」
そんな声を聞きながら、俺はそれを口に運んだ。
ああ、さっきのドレッシングより数百倍も甘く、そして美味しく感じる。
父さんも伯父さんも、それに宗一郎さんも伊織さんも、これを味わいたくてやっているんだと、その時初めて気づいた。
この権利は誰にも奪わせない!
俺はそう心に誓った。
<side磯山卓>
直純くんの可愛さに惚けてしまう気持ちは私にもよくわかる。
だが、それで彼の言葉を聞き逃してしまうのはいただけない。
気づかせようと足を叩いたが、そこまで身体をびくつかせるとは思わなかった。
昇はまだまだ修行が足りないな。
「ふふっ。卓さん、あんまりいじめちゃダメだよ」
絢斗がこっそりと言ってくる。
「でも直純くんを不安にさせたのはよくない」
「ふふっ。本当にパパになってる」
絢斗は笑いながらも、ちょっと嫉妬してくれているのか、
「食べさせて」
と言ってくれる。
ああ、もう本当に私の絢斗は幾つになっても可愛すぎる。
そういえば、伊織くんも悠真くんの可愛らしさを前に時々惚けてしまって反応が遅いんだと志良堂が溢していたことがある。
やっぱりまだまだ鍛錬が足りないのか。
伊織くんでそうなのだから、昇にはもっと厳しく教育してやったほうが良いかもしれないな。
なんとか食事を終え、午後のひとときを過ごす。
「昇、せっかくの機会だから直純くんに語学を披露してみてはどうだ?」
「披露、ってどうやるんですか?」
「これを読み聞かせしてやるといい」
そう言って、私はドイツ語で書かれた童話集を昇に渡した。
昔、昇がドイツから帰ってきた時に、ドイツ語を忘れないようにしたいと言って、うちや自分の家にドイツ語の本を置いていた。
いつか読み返すかもしれないと大切に本棚にしまっていたんだ。
「懐かしいな……」
昇はポツリと嬉しそうに呟いた。
「直純くん、聞いてみる?」
「はい。すっごく楽しそうです」
「じゃあ、日本ではあまり有名じゃないやつにしようかな」
そう言って、昇が本を開くと直純くんは昇のそばにあまり隙間なく座った。
二人の距離感が近くなったのがありありと感じられる。
昇もそれが嬉しそうだ。
「ふふっ。良い感じだね」
絢斗の嬉しそうな声を聞きながら、私たちは少し離れた場所で幼いカップルの姿を見つめていた。
802
あなたにおすすめの小説
余命半年の僕は、君を英雄にするために「裏切り者」の汚名を着る
深渡 ケイ
ファンタジー
魔力を持たない少年アルトは、ある日、残酷な未来を知ってしまう。 最愛の幼馴染であり「勇者」であるレナが、半年後に味方の裏切りによって惨殺される未来を。
未来を変える代償として、半年で全身が石化して死ぬ呪いを受けたアルトは、残された命をかけた孤独な決断を下す。
「僕が最悪の裏切り者となって、彼女を救う礎になろう」
卓越した頭脳で、冷徹な「悪の参謀」を演じるアルト。彼の真意を知らないレナは、彼を軽蔑し、やがて憎悪の刃を向ける。 石化していく体に走る激痛と、愛する人に憎まれる絶望。それでも彼は、仮面の下で血の涙を流しながら、彼女を英雄にするための完璧なシナリオを紡ぎ続ける。
これは、誰よりも彼女の幸せを願った少年が、世界一の嫌われ者として死んでいく、至高の献身の物語。
腹違いの妹にすべてを奪われた薄幸の令嬢が、義理の母に殴られた瞬間、前世のインテリヤクザなおっさんがぶちギレた場合。
灯乃
ファンタジー
十二歳のときに母が病で亡くなった途端、父は後妻と一歳年下の妹を新たな『家族』として迎え入れた。
彼らの築く『家族』の輪から弾き出されたアニエスは、ある日義母の私室に呼び出され――。
タイトル通りのおっさんコメディーです。
幻獣保護センター廃棄処理係の私、ボロ雑巾のような「ゴミ幻獣」をこっそり洗ってモフっていたら、実は世界を喰らう「終焉の獣」だった件について
いぬがみとうま🐾
ファンタジー
「魔力なしの穀潰し」――そう蔑まれ、幻獣保護センターの地下で廃棄幻獣の掃除に明け暮れる少女・ミヤコ。
実のところ、その施設は「価値のない命」を無慈悲に殺処分する地獄だった。
ある日、ミヤコの前に運ばれてきたのは、泥と油にまみれた「ボロ雑巾」のような正体不明の幻獣。
誰の目にもゴミとしか映らないその塊を、ミヤコは放っておけなかった。
「こんなに汚れたままなんて、かわいそう」
彼女が生活魔法を込めたブラシで丹念に汚れを落とした瞬間、世界を縛る最凶の封印が汚れと一緒に「流されてしまう。
現れたのは、月光を纏ったような美しい銀狼。
それは世界を喰らうと恐れられる伝説の災厄級幻獣『フェンリル・ヴォイド』だった……。
拗らせ問題児は癒しの君を独占したい
結衣可
BL
前世で限界社畜として心をすり減らした青年は、異世界の貧乏子爵家三男・セナとして転生する。王立貴族学院に奨学生として通う彼は、座学で首席の成績を持ちながらも、目立つことを徹底的に避けて生きていた。期待されることは、壊れる前触れだと知っているからだ。
一方、公爵家次男のアレクシスは、魔法も剣術も学年トップの才能を持ちながら、「何も期待されていない」立場に嫌気がさし、問題児として学院で浮いた存在になっていた。
補習課題のペアとして出会った二人。
セナはアレクシスを特別視せず、恐れも媚びも見せない。その静かな態度と、美しい瞳に、アレクシスは強く惹かれていく。放課後を共に過ごすうち、アレクシスはセナを守りたいと思い始める。
身分差と噂、そしてセナが隠す“癒やしの光魔法”。
期待されることを恐れるセナと、期待されないことに傷つくアレクシスは、すれ違いながらも互いを唯一の居場所として見つけていく。
これは、静かに生きたい少年と、選ばれたかった少年が出会った物語。
なぜ、私に関係あるのかしら?
シエル
ファンタジー
「初めまして、アシュフォード公爵家一女、セシリア・アシュフォードと申します」
彼女は、つい先日までこの国の王太子殿下の婚約者だった。
そして今日、このトレヴァント辺境伯家へと嫁いできた。
「…レオンハルト・トレヴァントだ」
非道にも自らの実妹を長年にわたり虐げ、婚約者以外の男との不適切な関係を理由に、王太子妃に不適格とされ、貴族学院の卒業式で婚約破棄を宣告された。
そして、新たな婚約者として、その妹が王太子本人から指名されたのだった。
「私は君と夫婦になるつもりはないし、辺境伯夫人として扱うこともない」
この判断によって、どうなるかなども考えずに…
※ 中世ヨーロッパ風の世界観です。
※ ご都合主義ですので、ご了承下さい、
※ 画像はAIにて作成しております
異世界で目覚めたら、もふもふ騎士団に保護されてました ~ちびっ子だけど、獣人たちの平穏のためお世話係がんばります!!~
ありぽん
ファンタジー
神のミスで命を落とした芽依は、お詫びとして大好きな異世界へ転生させてもらえることに。だが転生の際、またしても神のミスで、森の奥地に幼女の姿で送られてしまい。転生の反動で眠っていた瞳は、気づかないうちに魔獣たちに囲まれてしまう。
しかしそんな危機的状況の中、森を巡回していた、獣人だけで構成された獣騎士団が駆け付けてくれ、芽依はどうにかこの窮地を切り抜けることができたのだった。
やがて目を覚ました芽依は、初めは混乱したものの、すぐに現状を受け入れ。またその後、同じ種族の人間側で保護する案も出たが、ある事情により、芽依はそのまま獣騎士団の宿舎で暮らすことに。
そこで芽依は、助けてくれた獣騎士たちに恩を返すため、そして日々厳しい任務に向かう獣人たちが少しでも平穏に過ごせるようにと、お世話係を買って出る。
そんな芽依に、当初は不安だった獣人たちだったが、元気で明るい瞳の存在は、次第に獣人たちの力となっていくのだった。
これはちびっ子転生者の芽依が、獣人や魔獣たちのために奮闘し、癒しとなっていく。そんな、ほっこりまったり? な物語。
売れ残りオメガの従僕なる日々
灰鷹
BL
王弟騎士α(23才)× 地方貴族庶子Ω(18才)
※ 第12回BL大賞では、たくさんの応援をありがとうございました!
ユリウスが暮らすシャマラーン帝国では、平民のオメガは18才になると、宮廷で開かれる選定の儀に参加することが義務付けられている。王族の妾となるオメガを選ぶためのその儀式に参加し、誰にも選ばれずに売れ残ったユリウスは、国王陛下から「第3王弟に謀反の疑いがあるため、身辺を探るように」という密命を受け、オメガ嫌いと噂される第3王弟ラインハルトの従僕になった。
無口で無愛想な彼の優しい一面を知り、任務とは裏腹にラインハルトに惹かれていくユリウスであったが、働き始めて3カ月が過ぎたところで第3王弟殿下が辺境伯令嬢の婿養子になるという噂を聞き、従僕も解雇される。
身代わりで呪いの公爵に嫁ぎましたが、聖女の力で浄化したら離縁どころか国一番の溺愛妻になりました〜実家が泣きついてももう遅い〜
しょくぱん
恋愛
「お前のような無能は、死神の生贄にでもなっていろ」
魔力なしの無能と蔑まれ、家族に虐げられてきた伯爵令嬢レティシア。 彼女に命じられたのは、近づく者すべてを病ませるという『呪いの公爵』アレクシスへの身代わり結婚だった。
鉄格子の馬車で運ばれ、たどり着いたのは瘴気に満ちた死の城。 恐ろしい怪物のような男に殺される――。 そう覚悟していたレティシアだったが、目の前の光景に絶望よりも先に別の感情が湧き上がる。
(な、何これ……汚すぎるわ! 雑巾とブラシはどこ!?)
実は、彼女が「無能」と言われていたのは、その力が『洗浄』と『浄化』に特化した特殊な聖女の魔力だったから。
レティシアが掃除をすれば、呪いの瘴気は消え去り、枯れた大地には花が咲き、不気味だった公爵城はまたたく間にピカピカの聖域に塗り替えられていく。 さらには、呪いで苦しんでいたアレクシスの素顔は、見惚れるほどの美青年で――。
「レティシア、君は一体何者なんだ……? 体が、こんなに軽いのは初めてだ」
冷酷だったはずの公爵様から、まさかの執着と溺愛。 さらには、呪いが解けたことで領地は国一番の豊かさを取り戻していく。
一方で、レティシアを捨てた実家は、彼女の『浄化』を失ったことで災厄に見舞われ、今さら「戻ってきてくれ」と泣きついてくるが……。
「私は今、お城の掃除と旦那様のお世話で忙しいんです。お引き取りくださいませ」
これは、掃除を愛する薄幸令嬢が、その愛と魔力で死神公爵を救い、最高に幸せな居場所を手に入れるまでのお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる