ひとりぼっちになった僕は新しい家族に愛と幸せを教えてもらいました

波木真帆

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約束

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<side磯山卓>

「昇、早かったな」

「直純くんが心配で……。父さんが送ってくれたんだ」

「そうか。毅、悪かったな。こんな夜中に」

「いや、昇の気持ちは聞いていたから」

そうか。
もう自分から話したのか
それくらい昇は本気だということだろう。

「それで直純くんは?」

「そのまま客間に寝かせているよ。やっと眠れたという感じだったからな。起こすのが忍びなくて……」

「兄さん、私も少し彼の姿を見られるかな?」

「父さんはまた今度にしろよ。眠っているのに可哀想だろ」

今のはもちろん直純くんを心配した上での発言だろうが、直純くんの寝顔を見せたくないという気持ちもあるのだろう。
毅は息子の威圧に怯えたのか、

「そ、それもそうだな……わかったよ。じゃあ、フランスに発つ前に必ず食事の機会でも作ろう」

とすぐに引いた。

「毅、悪いが直純くんは今はまだ外に出せないんだ。もう一度うちに来てもらうことになるがそれでいいか?」

「そうか、わかった。そうするよ。昇、お前が纏めていた荷物は明日にでもここに送るから」

そういうと毅は早々に帰って行った。
あいつも明日は仕事だからな。

毅を見送って、直純くんのいる客間に入ろうとした昇が

「ああっ!!!」

と大きな声をあげた。

「どうしたんだ? そんな大きな声を出したら直純くんが起きるだろう!」

「伯父さん、どうしよう」

「なんだ? どうした?」

「実は、今度来るときに、クマのぬいぐるみを持ってくるって約束してたんだ。でも、急だったからぬいぐるみを用意する暇もなくて……どうしよう…‥」

「どうしようって……この時間じゃ、どこに開いてないだろうし。直純くんには謝るしかないだろう」

「そう、だよなぁ……ああ……昼間、買いに行っていればよかった……」

客間の前で打ちひしがれる昇を見ていると、どうにかしてやりたいがどうすることもできない。

すると、部屋から出てきていた絢斗が、

「それならちょうどいいものがあるよ! ちょっと待ってて!」

と言って嬉しそうに部屋に戻って行った。
扉を開けたまま、クローゼットをゴソゴソしている音がする。

「あった!」

そんな絢斗の声が聞こえたと思ったら、嬉しそうにこちらにやってきた。

「昇くんがこれを着たらいいよ」

「これは……?」

「クマの着ぐるみパジャマだよ。前にお遊びで皐月とパジャマを買ったんだけど、サイズ間違えて大きすぎたから、卓さんにあげようと思ってたの。夏じゃまだ早いかなーと思って冬まで置いておこうと思ってたんだけど、これなら直純くんも喜んでくれるんじゃないかな?」

「クマの、着ぐるみ、パジャマ……」

茫然と呟きながら昇が広げてみせるが、確かにこれを絢斗が着れば可愛かっただろう。
昇が受け取ってくれなければ、これを私が着るところだったのか……。

昇には悪いが、助かったな……。

絢斗とお揃いならまだしも一人で着るのは流石に勇気がいる。

「ほらほら。着てみて!」

絢斗に勧められて、昇は茫然としたまま隣の直純くんの部屋に入り着替え始めた。

すぐに部屋から出てきたが

「――っ!!」

必死に笑いを堪える私とは対照的に、

「わぁー!! いいよ、これなら直純くんもクマの代わりに許してくれるよ!!」」

と大喜びの絢斗。

昇は頭の中で必死に考えたのだろう。
クマを渡せずに悲しむ直純くんと、自分がこれを着て直純くんの前に出ることを。

「あの、じゃあ……これ、借ります……」

小さな声でそう呟くと、

「夜中に失礼しました。あの、おやすみなさい……」

と言って直純くんが眠る客間に入っていった。

さて、朝起きて直純くんはどんな反応をするだろうな。
昇には悪いが、正直少し楽しみで仕方がない。

<side昇>

あの写真付きのメッセージを見て、居ても立ってもいられずに夜中だというのに、伯父さん家に駆け込んだ。

車の中で話しかけてくる父さんに直純くんのことをいろいろと話はしたけれど、頭の中は直純くんでいっぱいだった。

ようやく部屋に入れると思った瞬間、クマのぬいぐるみを忘れてきたことに気づき、愕然とした。
あんなにも喜んでくれていたのに、約束を破るやつだと思われるかもしれない。

これから信頼を得ていかなければいけない大事な時期だっていうのに。

そんな時絢斗さんがクマの着ぐるみパジャマを貸してくれた。
クマの耳付きの上着に、丸い尻尾がついたズボン。
どちらもクマの毛皮のようにもこもこしている。

これならクマの代わりだと言って一日くらいは許してくれるかもしれない。
でも俺がこんな格好して、直純くんに引かれたら?
そんな可能性がないわけじゃない。

でも、俺は

――これなら直純くんもクマの代わりに許してくれるよ!!

という絢斗さんの言葉を信じることにした。

伯父さんたちに挨拶をして、そっと客間に入る。

せっかく寝ついたところだと言っていたから、起こさないようにベッドに身体を滑り込ませる。

すると、丸まって眠っていた直純くんが俺が来たことに気づいたように身体を動かし、俺の胸元に擦り寄ってくる。

昨日と同じ場所にすっぽりとはまり込むと、安心したように深い眠りに落ちていった。

ああ、無意識でもいい。
直純くんが俺を必要としてくれているのなら。
俺は欲望を必死に抑えて、隣で安心を与え続けるよ。

俺はそっと直純くんの髪にキスを落として眠りについた。
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