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海を渡って
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<side直純>
今まで自分のベッド以外の場所で寝たことなんてなかった。
でもあの日、昇さんの部屋でゲームをさせてもらった日に昇さんのベッドに寝てからはこのベッドが好きになった。
昇さんが家に帰ってしまった時に自分のベッドに寝たけれど、寂しくてたまらなくなっていた。
だから、こっそりと誰もいない昇さんの部屋に入り込んで寝ていたら、目覚めたら昇さんが隣にいてびっくりしてしまった。
しかもクマさんの着ぐるみパジャマを着て。
あの時の約束を覚えていてくれたんだということも嬉しかったけれど、何より昇さんが帰ってきてくれたのが嬉しかった。
これからずっと一緒なんだと思ったら嬉しくて、これで自分の部屋でも寂しいと思わずに眠れると思った。
だって、隣の部屋に昇さんがいるのだから。
でも、昇さんがお風呂に入っている間に一人で部屋に戻っていると、なんとも寂しい気持ちになってきて我慢できなくなった。
今まではなんでも我慢していたのに。
僕はこの家に来て少しわがままになっているのかもしれない。
それでも一旦芽生えた感情はなかなか消えず、このままだと今日は眠れないかもしれないと思ったら、どうしようもなくなった。
昇さんが部屋に戻ってきたのを確認して、僕は枕を抱きしめて昇さんの部屋に向かった。
一緒に寝たいってお願いしてみて、断られたらその時は我慢しよう。
そう自分に言い聞かせながら、昇さんにお願いしてみた。
誰かに自分のことをお願いするなんて、ほとんどしたことがない。
だからドキドキしたけれど、昇さんはすぐに許してくれた。
昇さんのベッドに潜り込んで、安心する匂いに包まれながら、勉強をしている昇さんの後ろ姿を見つめる。
ああ、僕の視線の先に昇さんがいる。
それだけでますます安心して、僕はあっという間に眠りに落ちていた。
「んっ……あった、かい……」
安心する匂いに包まれながら、寝ているとさらに温かいものが近づいてきた気がして、嬉しくて僕はそれに擦り寄っていた。
これを幸せって言うんだろうな……。
目を覚ますと、頭がスッキリしている。
やっぱり昇さんのベッドだと熟睡できるんだな。
そして、もう一つ。
昇さんの温もりが僕を熟睡させてくれるってことに気づいた。
人と寝るってこんなに安心するものだったんだな。
でも、多分……いや、絶対に母さんや父さんだと安心はしなかったって言い切れる。
特に母さんは緊張する存在だったし、今でも安心できそうにない。
もしかしたら僕が一緒に寝て安心する人って、昇さんだけなのかな?
だったらすごく嬉しい気がする。
「おはよう」
「あっ、起こしちゃいましたか?」
「いや、ちょうど目が覚めたんだ。直純くんのおかげでぐっすり眠れたよ」
「えっ、昇さんもですか? 僕も、ぐっすり眠れました」
「――っ、そうか。ならよかった。じゃあ、今日からここでずっと一緒に寝る?」
「――っ、いいんですか?」
「もちろん! 直純くんが熟睡できたら嬉しいし。一緒に寝よう」
まさかそんなことを言ってくれるなんて思いもしなかった。
すごく嬉しい!!
「はい。僕、昇さんと一緒に寝たいです!!」
僕はあまりの嬉しさに目の前の昇さんにギュッと抱きついた。
<side磯山卓>
「直純くん、昇くんと一緒に寝てるんでしょ?」
「なんでわかった?」
「ふふっ。枕持って部屋に向かっているのが見えたし、それに……わかるよ。一度一緒に寝て温もりを感じたら、それがないところでは眠れないよ。私だって、卓さんと離れて寝るなんて絶対にできない自信があるし」
自信満々にそんなことを言ってくれる絢斗が可愛い。
「昇くんにはかなり辛い状態だろうけど、直純くんのためには頑張るかな」
「ああ、さっき昇に相談されたよ。なんとか我慢できる方法はないかって」
「それでなんて教えてあげたの?」
「いや、私は絢斗に我慢したことはないからな。だから、昇の気持ちがわかる人を紹介すると言ったよ」
「昇くんの気持ちがわかる人?」
「ああ、周防くんだよ。あの子なら、最適だろう?」
「確かに。周防くん以上に適任はいないね」
絢斗にも納得の人選だったようでよかった。
明日にでも早速連絡しておこう。
翌朝、いつものように絢斗と直純くんに見送られて事務所に下りると、早々に郵便が来た。
もしかしたら、あれか。
と思いながら受け取ると、やはり差出人は
<迫田保>
中東から直純くん宛の手紙だ。
彼についていてくれている、櫻葉会長の秘書からの定期連絡で、彼が直純くん宛の手紙を書いていると報告があったから、そろそろかと思っていたがようやく到着したか。
あちらの生活も少しは落ち着いた頃だろう。
きっとあちらでの生活で、気づいたことも多々あっただろうな。
それに気づいたからこそのこの手紙だろうし、直純くんを傷つけるような言葉はないはずだ。
すぐに持っていてやるとしよう。
あの子も少なからず父親のことを心配していた様子だったからな。
私はその手紙を持って、自宅に向かった。
今まで自分のベッド以外の場所で寝たことなんてなかった。
でもあの日、昇さんの部屋でゲームをさせてもらった日に昇さんのベッドに寝てからはこのベッドが好きになった。
昇さんが家に帰ってしまった時に自分のベッドに寝たけれど、寂しくてたまらなくなっていた。
だから、こっそりと誰もいない昇さんの部屋に入り込んで寝ていたら、目覚めたら昇さんが隣にいてびっくりしてしまった。
しかもクマさんの着ぐるみパジャマを着て。
あの時の約束を覚えていてくれたんだということも嬉しかったけれど、何より昇さんが帰ってきてくれたのが嬉しかった。
これからずっと一緒なんだと思ったら嬉しくて、これで自分の部屋でも寂しいと思わずに眠れると思った。
だって、隣の部屋に昇さんがいるのだから。
でも、昇さんがお風呂に入っている間に一人で部屋に戻っていると、なんとも寂しい気持ちになってきて我慢できなくなった。
今まではなんでも我慢していたのに。
僕はこの家に来て少しわがままになっているのかもしれない。
それでも一旦芽生えた感情はなかなか消えず、このままだと今日は眠れないかもしれないと思ったら、どうしようもなくなった。
昇さんが部屋に戻ってきたのを確認して、僕は枕を抱きしめて昇さんの部屋に向かった。
一緒に寝たいってお願いしてみて、断られたらその時は我慢しよう。
そう自分に言い聞かせながら、昇さんにお願いしてみた。
誰かに自分のことをお願いするなんて、ほとんどしたことがない。
だからドキドキしたけれど、昇さんはすぐに許してくれた。
昇さんのベッドに潜り込んで、安心する匂いに包まれながら、勉強をしている昇さんの後ろ姿を見つめる。
ああ、僕の視線の先に昇さんがいる。
それだけでますます安心して、僕はあっという間に眠りに落ちていた。
「んっ……あった、かい……」
安心する匂いに包まれながら、寝ているとさらに温かいものが近づいてきた気がして、嬉しくて僕はそれに擦り寄っていた。
これを幸せって言うんだろうな……。
目を覚ますと、頭がスッキリしている。
やっぱり昇さんのベッドだと熟睡できるんだな。
そして、もう一つ。
昇さんの温もりが僕を熟睡させてくれるってことに気づいた。
人と寝るってこんなに安心するものだったんだな。
でも、多分……いや、絶対に母さんや父さんだと安心はしなかったって言い切れる。
特に母さんは緊張する存在だったし、今でも安心できそうにない。
もしかしたら僕が一緒に寝て安心する人って、昇さんだけなのかな?
だったらすごく嬉しい気がする。
「おはよう」
「あっ、起こしちゃいましたか?」
「いや、ちょうど目が覚めたんだ。直純くんのおかげでぐっすり眠れたよ」
「えっ、昇さんもですか? 僕も、ぐっすり眠れました」
「――っ、そうか。ならよかった。じゃあ、今日からここでずっと一緒に寝る?」
「――っ、いいんですか?」
「もちろん! 直純くんが熟睡できたら嬉しいし。一緒に寝よう」
まさかそんなことを言ってくれるなんて思いもしなかった。
すごく嬉しい!!
「はい。僕、昇さんと一緒に寝たいです!!」
僕はあまりの嬉しさに目の前の昇さんにギュッと抱きついた。
<side磯山卓>
「直純くん、昇くんと一緒に寝てるんでしょ?」
「なんでわかった?」
「ふふっ。枕持って部屋に向かっているのが見えたし、それに……わかるよ。一度一緒に寝て温もりを感じたら、それがないところでは眠れないよ。私だって、卓さんと離れて寝るなんて絶対にできない自信があるし」
自信満々にそんなことを言ってくれる絢斗が可愛い。
「昇くんにはかなり辛い状態だろうけど、直純くんのためには頑張るかな」
「ああ、さっき昇に相談されたよ。なんとか我慢できる方法はないかって」
「それでなんて教えてあげたの?」
「いや、私は絢斗に我慢したことはないからな。だから、昇の気持ちがわかる人を紹介すると言ったよ」
「昇くんの気持ちがわかる人?」
「ああ、周防くんだよ。あの子なら、最適だろう?」
「確かに。周防くん以上に適任はいないね」
絢斗にも納得の人選だったようでよかった。
明日にでも早速連絡しておこう。
翌朝、いつものように絢斗と直純くんに見送られて事務所に下りると、早々に郵便が来た。
もしかしたら、あれか。
と思いながら受け取ると、やはり差出人は
<迫田保>
中東から直純くん宛の手紙だ。
彼についていてくれている、櫻葉会長の秘書からの定期連絡で、彼が直純くん宛の手紙を書いていると報告があったから、そろそろかと思っていたがようやく到着したか。
あちらの生活も少しは落ち着いた頃だろう。
きっとあちらでの生活で、気づいたことも多々あっただろうな。
それに気づいたからこそのこの手紙だろうし、直純くんを傷つけるような言葉はないはずだ。
すぐに持っていてやるとしよう。
あの子も少なからず父親のことを心配していた様子だったからな。
私はその手紙を持って、自宅に向かった。
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