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良き相談相手
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<side絢斗>
直純くんの父親からの初めての手紙。
これだけの期間が空いたことにほんの少し心配があった。
それは卓さんが毎日、直純くんの父親と共に行動をしている櫻葉さんの秘書に、直純くんの様子を報告していると聞いていたからだ。
直純くんの父親がどこまでその報告を受けていたかはわからないけれど、もし全てを聞かされていたとしたら、直純くんのここでの生活の様子を知っていくたびに、直純くんがあの家でどんな仕打ちを受けていたかを理解し、自分が直純くんを守ろうとしなかったことを後悔したに違いない。
離れていれば離れている分、今すぐに何も行動できないジレンマが突発的な行動を起こす。
自分がいない方が幸せになれる。
そう思い込んで別れを告げても仕方がない。
直純くんの父がそんなことを考え、その決意を手紙に書いたのではないかと思うと、たまらなく不安で直純くんの部屋に向かえば、やはり直純くんは悲しみに打ちひしがれていた。
小さな身体で床に崩れ落ち、大粒の涙を流していた直純くんの姿を見るだけで、胸が締め付けられる思いだった。
直純くんを抱きかかえて座らせると、私に身を預けて声を堪えながら涙を流す。
手紙を読んだ卓さんが、直純くんに私たちの子どもにならないかと告げた時点で、やっぱり父親は直純くんとの別れを選んだのかとショックを受けた。
直純くんの父親もずっと悩み続けた結果、直純くんに一番良いと思って自分から別れを告げたのかもしれない。
けれど、この大粒の涙を見ればきっとそれが間違いだったことに気づくだろう。
それくらいに直純くんは悲しんでいた。
けれど、今の私にできることは、そんな決断を出した直純くんの父親を非難することじゃない。
直純くんの心をどうしたら癒せるかを考えるだけ。
卓さんが昇くんに話をしている間に、どちらかを選ぶのではなく、家族が増えるということだと説明すると、直純くんは少し安心してくれたように見えた。
話を終えた昇くんが直純くんを連れて部屋に戻るのを見送り、
「卓さん、私は賛成だよ。直純くんと家族になりたい」
というと、
「ああ、絢斗ならそう言ってくれると思っていた」
と抱きしめてくれた。
「私たちの気持ちは決まっている。あとは直純くんの気持ちだけだ。それはゆっくり決めて貰えばいいと思ってる」
「うん。そうだね。私たちはこれからも今まで通りにするだけだね」
「ああ、そうだ。その通りだよ」
「昇くんがいてくれてよかったね」
「そうだな……昇の存在は大きいな」
本当に、昇くんが直純くんのそばにいてくれて……それだけで直純くんの心も落ち着きやすいだろう。
「絢斗、もうそろそろ授業だろう」
「あっ、そうだ。卓さんも依頼人が来るんだよね?」
「ああ、17時には戻れるよ」
「うん、わかった。ねぇ、皐月に直純くんのこと、相談してもいいかな?」
同じ教授仲間の鳴宮皐月は同じ大学の教授だった志良堂さんと夫夫で、直純くんのケースとは全然違うけれど、二十年以上前に養子を迎えている。
困った時にはいつもお互いに悩みを相談し合う間柄だから、今回のことも第三者の立場から意見を聞いてみたいと思ったんだ。
「そうだな。鳴宮くんならいいアドバイスをくれるかもしれないな。私も志良堂に話をしてみよう」
「うん、ありがとう! 卓さん、大好き!!」
「ふふっ。私も愛しているよ」
そういうと、キスをして事務所に向かった。
急いで講義の準備を整えて、スマホを手に取った。
皐月もこれから講義だったはず。
私は直純くんといられるようにオンライン講義で対応しているけれど、皐月は大学にいるはずだから講義が終わったら少し電話で話したいって言っておこうかな。
<ちょっと大事な相談事があるんだ。この講義が終わったら、少し電話で話したい。絢斗>
よし、これでいい。
って、わっ! もう返事きた。
<オッケー。講義終わったら電話するね。皐月>
さすが、皐月!
そうとなれば集中! 集中!
いつも以上に気持ちを入れて、講義を始めた。
なんだかかなり盛り上がったのは気のせいかな?
まぁ、とにかく無事に終わってよかった。
キッチンに行き、コーヒーとお菓子を持って部屋に戻るとちょうど皐月から電話が来たところだった。
ーもしもし、皐月!
ーごめん、遅くなった。
ーいや、大丈夫。ちょうどよかったよ。
ーそれならよかった。それでどうした?
ーあー、実は、前に少し話した直純くんのことだけど…………
私はこれまでのことを全て皐月に話した。
直純くんが母親から虐待を受けていたことから、父親に別れの手紙が送られてきて、卓さんが私たちの養子にしようと告げたところまで包み隠さず。
ーそうだったんだ……。それは絢斗も磯山さんも大変だったね。
ーでもね、家族になれるのは嬉しいと思ってるんだ。皐月が伊織くんを養子に迎えてからずっと羨ましいなって思ってたし。
ー伊織は宗一郎さんとよく似たタイプだったから、対応しやすかったっていうのもあるけどね。ねぇ、近いうちに直純くんと直接話がしたいな。どうかな?
ー前に一度皐月のことは話しているし、大丈夫だと思うよ。
ーじゃあ、近いうちに会いにいくよ! お土産持って。
ーそうだね。直純くんも少しは気分も晴れるかも。頼もうかな。
ーオッケー!
予定を調べて連絡するねと言って、電話は切れた。
皐月は思い立ったら即行動だから、きっとすぐに訪ねてくるはず。
きっと直純くんにとってもいい刺激になるんじゃないかな。
直純くんの父親からの初めての手紙。
これだけの期間が空いたことにほんの少し心配があった。
それは卓さんが毎日、直純くんの父親と共に行動をしている櫻葉さんの秘書に、直純くんの様子を報告していると聞いていたからだ。
直純くんの父親がどこまでその報告を受けていたかはわからないけれど、もし全てを聞かされていたとしたら、直純くんのここでの生活の様子を知っていくたびに、直純くんがあの家でどんな仕打ちを受けていたかを理解し、自分が直純くんを守ろうとしなかったことを後悔したに違いない。
離れていれば離れている分、今すぐに何も行動できないジレンマが突発的な行動を起こす。
自分がいない方が幸せになれる。
そう思い込んで別れを告げても仕方がない。
直純くんの父がそんなことを考え、その決意を手紙に書いたのではないかと思うと、たまらなく不安で直純くんの部屋に向かえば、やはり直純くんは悲しみに打ちひしがれていた。
小さな身体で床に崩れ落ち、大粒の涙を流していた直純くんの姿を見るだけで、胸が締め付けられる思いだった。
直純くんを抱きかかえて座らせると、私に身を預けて声を堪えながら涙を流す。
手紙を読んだ卓さんが、直純くんに私たちの子どもにならないかと告げた時点で、やっぱり父親は直純くんとの別れを選んだのかとショックを受けた。
直純くんの父親もずっと悩み続けた結果、直純くんに一番良いと思って自分から別れを告げたのかもしれない。
けれど、この大粒の涙を見ればきっとそれが間違いだったことに気づくだろう。
それくらいに直純くんは悲しんでいた。
けれど、今の私にできることは、そんな決断を出した直純くんの父親を非難することじゃない。
直純くんの心をどうしたら癒せるかを考えるだけ。
卓さんが昇くんに話をしている間に、どちらかを選ぶのではなく、家族が増えるということだと説明すると、直純くんは少し安心してくれたように見えた。
話を終えた昇くんが直純くんを連れて部屋に戻るのを見送り、
「卓さん、私は賛成だよ。直純くんと家族になりたい」
というと、
「ああ、絢斗ならそう言ってくれると思っていた」
と抱きしめてくれた。
「私たちの気持ちは決まっている。あとは直純くんの気持ちだけだ。それはゆっくり決めて貰えばいいと思ってる」
「うん。そうだね。私たちはこれからも今まで通りにするだけだね」
「ああ、そうだ。その通りだよ」
「昇くんがいてくれてよかったね」
「そうだな……昇の存在は大きいな」
本当に、昇くんが直純くんのそばにいてくれて……それだけで直純くんの心も落ち着きやすいだろう。
「絢斗、もうそろそろ授業だろう」
「あっ、そうだ。卓さんも依頼人が来るんだよね?」
「ああ、17時には戻れるよ」
「うん、わかった。ねぇ、皐月に直純くんのこと、相談してもいいかな?」
同じ教授仲間の鳴宮皐月は同じ大学の教授だった志良堂さんと夫夫で、直純くんのケースとは全然違うけれど、二十年以上前に養子を迎えている。
困った時にはいつもお互いに悩みを相談し合う間柄だから、今回のことも第三者の立場から意見を聞いてみたいと思ったんだ。
「そうだな。鳴宮くんならいいアドバイスをくれるかもしれないな。私も志良堂に話をしてみよう」
「うん、ありがとう! 卓さん、大好き!!」
「ふふっ。私も愛しているよ」
そういうと、キスをして事務所に向かった。
急いで講義の準備を整えて、スマホを手に取った。
皐月もこれから講義だったはず。
私は直純くんといられるようにオンライン講義で対応しているけれど、皐月は大学にいるはずだから講義が終わったら少し電話で話したいって言っておこうかな。
<ちょっと大事な相談事があるんだ。この講義が終わったら、少し電話で話したい。絢斗>
よし、これでいい。
って、わっ! もう返事きた。
<オッケー。講義終わったら電話するね。皐月>
さすが、皐月!
そうとなれば集中! 集中!
いつも以上に気持ちを入れて、講義を始めた。
なんだかかなり盛り上がったのは気のせいかな?
まぁ、とにかく無事に終わってよかった。
キッチンに行き、コーヒーとお菓子を持って部屋に戻るとちょうど皐月から電話が来たところだった。
ーもしもし、皐月!
ーごめん、遅くなった。
ーいや、大丈夫。ちょうどよかったよ。
ーそれならよかった。それでどうした?
ーあー、実は、前に少し話した直純くんのことだけど…………
私はこれまでのことを全て皐月に話した。
直純くんが母親から虐待を受けていたことから、父親に別れの手紙が送られてきて、卓さんが私たちの養子にしようと告げたところまで包み隠さず。
ーそうだったんだ……。それは絢斗も磯山さんも大変だったね。
ーでもね、家族になれるのは嬉しいと思ってるんだ。皐月が伊織くんを養子に迎えてからずっと羨ましいなって思ってたし。
ー伊織は宗一郎さんとよく似たタイプだったから、対応しやすかったっていうのもあるけどね。ねぇ、近いうちに直純くんと直接話がしたいな。どうかな?
ー前に一度皐月のことは話しているし、大丈夫だと思うよ。
ーじゃあ、近いうちに会いにいくよ! お土産持って。
ーそうだね。直純くんも少しは気分も晴れるかも。頼もうかな。
ーオッケー!
予定を調べて連絡するねと言って、電話は切れた。
皐月は思い立ったら即行動だから、きっとすぐに訪ねてくるはず。
きっと直純くんにとってもいい刺激になるんじゃないかな。
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