76 / 678
知らない感情
しおりを挟む
<side村山>
俺は朝から楽しみにしていた。
もちろんメインは俺の家にホームスティ予定のカールと話すためだけど、なんと言っても今日は磯山の例のあの子に会えるんだから。
父さんたちが友人同士ということもあって、当然のように俺たちも友人になったけれど、磯山は文武両道を地でいくようなやつで、スポーツは何をさせても軽くこなすし、成績も全ての教科において満遍なくいい。
最初は何をやっても一歩先を行く磯山の存在が疎ましく思った時期もあったけれど、磯山の存在が俺の負けず嫌いなところを引き出してくれて、今ではお互いにいいライバルになったと思っている。
そんな磯山だからこそ、女子の人気はすこぶる良かったけれど、女子から好意を寄せられることをあまり良くは思っていないようだった。
磯山の周りには男同士で結婚しているような関係の人も多く、その影響で磯山もそっちかと思っていたが、男子にも特別な感情を持っていないのがわかって、こいつは誰にも興味がないのだと気づいた。
俺自身も特に好きな相手ができたこともなかったけれど、結婚して今でも仲良さそうな両親を見ていると、いつかは俺にもそんな相手ができるんだろうと勝手に思っていた。
それまでは友人同士でつるんでいればいい。
その相手には磯山がいればいいと思っていた。
そんな磯山の態度が急激に変わったのは、直純くんという存在だった。
事件がらみで磯山の伯父さんの家にやってきた彼と磯山が出会って、どうやら運命を感じたらしい。
彼と出会ってからの磯山はまるで人が変わったように甘々な笑顔を見せるようになった。
けれどそれは彼に対してだけ。
関係ない相手には今まで以上に興味を持たなくなったから、本当に彼が特別なんだろう。
ひとつ屋根の下で一緒に生活しながらも手を出さないのも、彼を大切に思っているが故のことだ。
そんな彼がどんな人なのか、気になるのも仕方がないだろう。
しかも、磯山の伯父さんと絢斗さんまでメロメロになって溺愛しているというんだから。
玄関で当然のようにただいまーと声をかける磯山の元に嬉しそうに駆けてくる可愛い子。
その時の磯山の蕩けるような甘い表情に驚きが隠せなかった。
磯山がこんな顔をするなんてな……。
ちょっと意地悪をしてみたくて、彼の顔を覗き込んで挨拶をすると、彼は顔を真っ赤にしながら新しくなったばかりの自分の名前を告げた。
それが妙に父性本能をくすぐられるというか……磯山やおじさんたちがメロメロになってしまうのがわかる気がした。
砂糖菓子のような甘々な二人に案内されて、磯山の部屋に入る。
その間もずっと磯山は彼をピッタリと寄り添わせたまま、離れようとしなかった。
「そんなに警戒しなくてもいいだろう」
「いいからお前、ちょっと離れとけ」
「わかったって」
少し離れた場所にあるソファーに腰を下ろすと、磯山はようやく落ち着いたようにビデオチャットの準備を始めた。
「すぐカールが入ってくると思うから」
そういうと俺の座っていたソファーの前にあるテーブルにパソコンを置いた。
「飲み物とってくるから、悪いけどカールが入ってきたら先に喋っててくれ。日本語でもドイツ語でもいいぞ」
「ああ、わかった」
当然のように彼も連れて部屋から出ていった。
ふふっ。まぁ俺と二人で部屋にはいさせないよな。
かといって彼に飲み物を運ばせるはずもないしな。
磯山の考えが手に取るようにわかって思わず笑ってしまう。
「あいつがな……本当に変わったよな」
つい独り言を溢していると、
ーhallo! ノボル!
と画面から声が聞こえた。
その可愛い声に何故だかドキッとしてしまった。
画面の彼を怖がらせてはいけないという気持ちが込み上げてきて、できるだけ優しく声をかけた。
ーHi.カール。ごめん、今、磯山は席を外しているんだ。俺は磯山の友人の村山だよ。
ーム、ララマ?
ーああ、ごめん。発音しにくいよな。龍弥でいいよ。リューヤ。
その言葉にカールの表情が一気に輝きを増した。
うわっ、なんて可愛いんだろう。
さっきの直純くんをみた時に思ったのとは全く違う感情が溢れてくる。
なんだ、これ。
ーリューヤ。ありがとう。あの、もしかして…リューヤは僕を引き受けてくれるっていうノボルの友達?
ーそう! 俺の方はオッケーだからカールが気にしないならうちに来てくれよ。
なんて話をしていると、トレイを持った磯山と直純くんが部屋に入ってきた。
「ああ、ごめん。もう始まってたか?」
「ああ、今、ちょうど自己紹介したところだよ」
ーカール、磯山と直純くんがきたよ。
そう声をかけると、カールは少しホッとしたように見えた。
俺は朝から楽しみにしていた。
もちろんメインは俺の家にホームスティ予定のカールと話すためだけど、なんと言っても今日は磯山の例のあの子に会えるんだから。
父さんたちが友人同士ということもあって、当然のように俺たちも友人になったけれど、磯山は文武両道を地でいくようなやつで、スポーツは何をさせても軽くこなすし、成績も全ての教科において満遍なくいい。
最初は何をやっても一歩先を行く磯山の存在が疎ましく思った時期もあったけれど、磯山の存在が俺の負けず嫌いなところを引き出してくれて、今ではお互いにいいライバルになったと思っている。
そんな磯山だからこそ、女子の人気はすこぶる良かったけれど、女子から好意を寄せられることをあまり良くは思っていないようだった。
磯山の周りには男同士で結婚しているような関係の人も多く、その影響で磯山もそっちかと思っていたが、男子にも特別な感情を持っていないのがわかって、こいつは誰にも興味がないのだと気づいた。
俺自身も特に好きな相手ができたこともなかったけれど、結婚して今でも仲良さそうな両親を見ていると、いつかは俺にもそんな相手ができるんだろうと勝手に思っていた。
それまでは友人同士でつるんでいればいい。
その相手には磯山がいればいいと思っていた。
そんな磯山の態度が急激に変わったのは、直純くんという存在だった。
事件がらみで磯山の伯父さんの家にやってきた彼と磯山が出会って、どうやら運命を感じたらしい。
彼と出会ってからの磯山はまるで人が変わったように甘々な笑顔を見せるようになった。
けれどそれは彼に対してだけ。
関係ない相手には今まで以上に興味を持たなくなったから、本当に彼が特別なんだろう。
ひとつ屋根の下で一緒に生活しながらも手を出さないのも、彼を大切に思っているが故のことだ。
そんな彼がどんな人なのか、気になるのも仕方がないだろう。
しかも、磯山の伯父さんと絢斗さんまでメロメロになって溺愛しているというんだから。
玄関で当然のようにただいまーと声をかける磯山の元に嬉しそうに駆けてくる可愛い子。
その時の磯山の蕩けるような甘い表情に驚きが隠せなかった。
磯山がこんな顔をするなんてな……。
ちょっと意地悪をしてみたくて、彼の顔を覗き込んで挨拶をすると、彼は顔を真っ赤にしながら新しくなったばかりの自分の名前を告げた。
それが妙に父性本能をくすぐられるというか……磯山やおじさんたちがメロメロになってしまうのがわかる気がした。
砂糖菓子のような甘々な二人に案内されて、磯山の部屋に入る。
その間もずっと磯山は彼をピッタリと寄り添わせたまま、離れようとしなかった。
「そんなに警戒しなくてもいいだろう」
「いいからお前、ちょっと離れとけ」
「わかったって」
少し離れた場所にあるソファーに腰を下ろすと、磯山はようやく落ち着いたようにビデオチャットの準備を始めた。
「すぐカールが入ってくると思うから」
そういうと俺の座っていたソファーの前にあるテーブルにパソコンを置いた。
「飲み物とってくるから、悪いけどカールが入ってきたら先に喋っててくれ。日本語でもドイツ語でもいいぞ」
「ああ、わかった」
当然のように彼も連れて部屋から出ていった。
ふふっ。まぁ俺と二人で部屋にはいさせないよな。
かといって彼に飲み物を運ばせるはずもないしな。
磯山の考えが手に取るようにわかって思わず笑ってしまう。
「あいつがな……本当に変わったよな」
つい独り言を溢していると、
ーhallo! ノボル!
と画面から声が聞こえた。
その可愛い声に何故だかドキッとしてしまった。
画面の彼を怖がらせてはいけないという気持ちが込み上げてきて、できるだけ優しく声をかけた。
ーHi.カール。ごめん、今、磯山は席を外しているんだ。俺は磯山の友人の村山だよ。
ーム、ララマ?
ーああ、ごめん。発音しにくいよな。龍弥でいいよ。リューヤ。
その言葉にカールの表情が一気に輝きを増した。
うわっ、なんて可愛いんだろう。
さっきの直純くんをみた時に思ったのとは全く違う感情が溢れてくる。
なんだ、これ。
ーリューヤ。ありがとう。あの、もしかして…リューヤは僕を引き受けてくれるっていうノボルの友達?
ーそう! 俺の方はオッケーだからカールが気にしないならうちに来てくれよ。
なんて話をしていると、トレイを持った磯山と直純くんが部屋に入ってきた。
「ああ、ごめん。もう始まってたか?」
「ああ、今、ちょうど自己紹介したところだよ」
ーカール、磯山と直純くんがきたよ。
そう声をかけると、カールは少しホッとしたように見えた。
1,951
あなたにおすすめの小説
なぜ、私に関係あるのかしら?
シエル
ファンタジー
「初めまして、アシュフォード公爵家一女、セシリア・アシュフォードと申します」
彼女は、つい先日までこの国の王太子殿下の婚約者だった。
そして今日、このトレヴァント辺境伯家へと嫁いできた。
「…レオンハルト・トレヴァントだ」
非道にも自らの実妹を長年にわたり虐げ、婚約者以外の男との不適切な関係を理由に、王太子妃に不適格とされ、貴族学院の卒業式で婚約破棄を宣告された。
そして、新たな婚約者として、その妹が王太子本人から指名されたのだった。
「私は君と夫婦になるつもりはないし、辺境伯夫人として扱うこともない」
この判断によって、どうなるかなども考えずに…
※ 中世ヨーロッパ風の世界観です。
※ ご都合主義ですので、ご了承下さい、
※ 画像はAIにて作成しております
【完結】『ルカ』
瀬川香夜子
BL
―――目が覚めた時、自分の中は空っぽだった。
倒れていたところを一人の老人に拾われ、目覚めた時には記憶を無くしていた。
クロと名付けられ、親切な老人―ソニーの家に置いて貰うことに。しかし、記憶は一向に戻る気配を見せない。
そんなある日、クロを知る青年が現れ……?
貴族の青年×記憶喪失の青年です。
※自サイトでも掲載しています。
2021年6月28日 本編完結
幻獣保護センター廃棄処理係の私、ボロ雑巾のような「ゴミ幻獣」をこっそり洗ってモフっていたら、実は世界を喰らう「終焉の獣」だった件について
いぬがみとうま🐾
ファンタジー
「魔力なしの穀潰し」――そう蔑まれ、幻獣保護センターの地下で廃棄幻獣の掃除に明け暮れる少女・ミヤコ。
実のところ、その施設は「価値のない命」を無慈悲に殺処分する地獄だった。
ある日、ミヤコの前に運ばれてきたのは、泥と油にまみれた「ボロ雑巾」のような正体不明の幻獣。
誰の目にもゴミとしか映らないその塊を、ミヤコは放っておけなかった。
「こんなに汚れたままなんて、かわいそう」
彼女が生活魔法を込めたブラシで丹念に汚れを落とした瞬間、世界を縛る最凶の封印が汚れと一緒に「流されてしまう。
現れたのは、月光を纏ったような美しい銀狼。
それは世界を喰らうと恐れられる伝説の災厄級幻獣『フェンリル・ヴォイド』だった……。
腹違いの妹にすべてを奪われた薄幸の令嬢が、義理の母に殴られた瞬間、前世のインテリヤクザなおっさんがぶちギレた場合。
灯乃
ファンタジー
十二歳のときに母が病で亡くなった途端、父は後妻と一歳年下の妹を新たな『家族』として迎え入れた。
彼らの築く『家族』の輪から弾き出されたアニエスは、ある日義母の私室に呼び出され――。
タイトル通りのおっさんコメディーです。
拗らせ問題児は癒しの君を独占したい
結衣可
BL
前世で限界社畜として心をすり減らした青年は、異世界の貧乏子爵家三男・セナとして転生する。王立貴族学院に奨学生として通う彼は、座学で首席の成績を持ちながらも、目立つことを徹底的に避けて生きていた。期待されることは、壊れる前触れだと知っているからだ。
一方、公爵家次男のアレクシスは、魔法も剣術も学年トップの才能を持ちながら、「何も期待されていない」立場に嫌気がさし、問題児として学院で浮いた存在になっていた。
補習課題のペアとして出会った二人。
セナはアレクシスを特別視せず、恐れも媚びも見せない。その静かな態度と、美しい瞳に、アレクシスは強く惹かれていく。放課後を共に過ごすうち、アレクシスはセナを守りたいと思い始める。
身分差と噂、そしてセナが隠す“癒やしの光魔法”。
期待されることを恐れるセナと、期待されないことに傷つくアレクシスは、すれ違いながらも互いを唯一の居場所として見つけていく。
これは、静かに生きたい少年と、選ばれたかった少年が出会った物語。
僕を惑わせるのは素直な君
秋元智也
BL
父と妹、そして兄の家族3人で暮らして来た。
なんの不自由もない。
5年前に病気で母親を亡くしてから家事一切は兄の歩夢が
全てやって居た。
そこへいきなり父親からも唐突なカミングアウト。
「俺、再婚しようと思うんだけど……」
この言葉に驚きと迷い、そして一縷の不安が過ぎる。
だが、好きになってしまったになら仕方がない。
反対する事なく母親になる人と会う事に……。
そこには兄になる青年がついていて…。
いきなりの兄の存在に戸惑いながらも興味もあった。
だが、兄の心の声がどうにもおかしくて。
自然と聞こえて来てしまう本音に戸惑うながら惹かれて
いってしまうが……。
それは兄弟で、そして家族で……同性な訳で……。
何もかも不幸にする恋愛などお互い苦しみしかなく……。
売れ残りオメガの従僕なる日々
灰鷹
BL
王弟騎士α(23才)× 地方貴族庶子Ω(18才)
※ 第12回BL大賞では、たくさんの応援をありがとうございました!
ユリウスが暮らすシャマラーン帝国では、平民のオメガは18才になると、宮廷で開かれる選定の儀に参加することが義務付けられている。王族の妾となるオメガを選ぶためのその儀式に参加し、誰にも選ばれずに売れ残ったユリウスは、国王陛下から「第3王弟に謀反の疑いがあるため、身辺を探るように」という密命を受け、オメガ嫌いと噂される第3王弟ラインハルトの従僕になった。
無口で無愛想な彼の優しい一面を知り、任務とは裏腹にラインハルトに惹かれていくユリウスであったが、働き始めて3カ月が過ぎたところで第3王弟殿下が辺境伯令嬢の婿養子になるという噂を聞き、従僕も解雇される。
美形×平凡の子供の話
めちゅう
BL
美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか?
──────────────────
お読みくださりありがとうございます。
お楽しみいただけましたら幸いです。
お話を追加いたしました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる