ひとりぼっちになった僕は新しい家族に愛と幸せを教えてもらいました

波木真帆

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その時が来るまで

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夕食を食べ終えてみんなでソファーに座っている間に、私は直くんの部屋に行き、みんなで作ったそれぞれのリースをとってきた。

「尚孝くん、これ」

「あ! ありがとうございます」

「ふふっ。ご飯に呼ばれちゃったから忘れちゃってたよね」

「すみません」

「ううん。私もいい匂いに釣られて忘れちゃってたから今思い出したんだ。こういう時は食欲が先だから気にしないで」

そういうと尚孝くんはホッとしたように笑っていた。

「唯人さん、見てください!」

「わぁ、素敵ですね。これは尚孝さんの手作りですか?」

「はい。絢斗さんと直くんに教えてもらいながら作ったんですよ」

「へぇ、これは本当に素晴らしいな。早速家に帰ったら飾りましょう」

「はい」

ふふっ。尚孝くん、志摩くんに褒められて本当に嬉しそう。

「尚孝くんはリースづくりのセンスがあるよ」

「そうですか?」

「うん、選び方も上手だったし、バランスもいいし、さすがだなって思ったよ。ねぇ、直くん」

「はい。一緒に作って楽しかったです」

「直くん、ありがとう。じゃあもし、今度一花くんと会うことになったら、一花くんともリースを一緒に作ってみるといいよ」

「えっ、一花さん。リースを作るの上手なんですか?」

「ううん。多分、作ったことはないと思うけど、ものすごく手先が器用なんだ。一緒に暮らし始めてから未知子さんに編み物を習ってすぐに難しい柄のマフラーを二本も編んでいたからね。ほら、これだよ」

そう言って、尚孝くんがスマホを取り出して見せてくれたのは、おおよそ初心者の手作りとは思えない代物だった。

「えっ? これを習い始めてすぐに?」

以前、未知子さんがうちに来てくれた時に、編み物を始めたという話は聞いていたけど、あれからまだそんなに時間が経っていないのに、こんなにも上達しているなんて驚き以外出てこない。

「ええ、そうなんですよ」

「未知子さんの編み物がプロ級なのは聞いていたけど、それにしてもすごいね。ねぇ、卓さん」

「ああ。本当に。これは天性の才能だろうな」

「一花さん、すごい……」

直くんは写真に映るマフラーを食い入るように見つめていた。
もしかしたら直くんも編み物に興味を持ったかな。
今まで勉強漬けの生活を無理やりやらされていたんだから、こうやっていろんなことに目を向けられるようになったらいい。

「それじゃあ、私たちはそろそろお暇します」

「志摩くん、谷垣くんも今日は本当に来てくれてありがとう。休日なのに長い時間引き止めて悪かったね」

「いえ、私たちも楽しかったです。ねぇ、尚孝さん」

「はい。僕も直くんといろいろ話ができてよかったです。直くん、いつでも連絡してくれていいからね。僕からもメッセージ送るよ」

「はい。ありがとうございました」

家族みんなで玄関まで見送り、卓さんだけが駐車場まで送ってくると言って一緒に出て行った。


<side卓>

「本当に今日はありがとう。直くんの表情もすっかり変わって……君たち、特に谷垣くんには直くんの気持ちを引き出してくれたことを本当に感謝している」

お礼を言うだけでは全然足りないが、どうしても言わずにはいられない。
駐車場で頭を下げると、

「そんな、やめてください。僕はただ直くんの同志として話をしただけですから。直くんと話すことで僕の心も楽にしていただいたとおもってますから」

と言ってくれた。
本当に心優しい青年だ。

「先ほどは直純くんの手前何も言わずにおりましたが、会長からは、櫻葉会長と話をした上で、一花さんに直純くんと会う意思があるかを確認してから磯山先生にご連絡するとのことでした。一花さんの気持ちを最優先させていただきますので、少しお時間を頂戴するかもしれませんが、その間は磯山先生の胸にだけ留めておいていただけますか?」

「わかった。志摩くんの配慮に感謝するよ。こちらはお願いしている身だからな、どれだけでも待たせてもらう覚悟はできている。どれだけかかってもこちらは気にしないでくれ構わない。一花くんが落ち着くまではいつまででも待たせてもらうよ」

そう言うと志摩くんも谷垣くんも小さく頷いてくれた。

二人を見送って、自宅に戻ると直くんは風呂に入っているようだった。

「卓さん、今日はお疲れさま」

「絢斗も疲れただろう。部屋の風呂に入るといい」

「うん、そうしようかな」

「昇、今夜は直くんをしっかりと支えてやるんだぞ。いろんな話をして、気持ちが昂っているだろうからな」

「はい、任せてください。それで、今後はどうなるんですか? 直くんは一花さんと会えるの?」

「それはまだわからないよ。谷垣くんも言っていただろう? 一花くんは直くんの存在も知らないんだ。これからゆっくりと話をして一花くんが会って直くんの謝罪を受け入れてくれることになるのを待つしかない。それはこちらが急かすことではないからな」

「そうか……」

「私たちは、直くんを支えながらそれを待つだけだよ」

「わかりました」

納得したようにそう言うと昇は自分の部屋に戻って行った。
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