113 / 678
一花さんの優しさ
しおりを挟む
「もう泣かないで。ねっ。グリが心配しちゃう」
一花さんのその言葉に反応するように、腕の中にいたウサギさんが僕の頬をぺろぺろと舐めてくれた。
このウサギさん……僕を慰めてくれるんだ。
嬉しいな。
「グリの頭をよしよししてあげて。喜ぶよ」
そう言われて、僕はドキドキしながらウサギさんの頭に触れた。
もふっとした感触に思わず声が出てしまった。
ふわふわでとっても可愛い。
僕はずっと一人だったからずっとそばにいてくれるペットがいてくれたら……なんて思っていた時もあった。
絶対に叶わない夢だったから諦めていたけれど、その時想像していたペットにはウサギさんはいなかった。
ウサギさんをペットにできるなんて知らなかったから。
こんなにもふもふでふわふわだったなんて感動する。
僕が頭を撫でていると、ウサギさんから
「ぷぅぷぅ」
という鳴き声が聞こえる。
ウサギさんって鳴くんだな。それも知らなかった。
「これ、すごく喜んでいる時の鳴き声だよ」
そうなんだ……可愛すぎる。
あまりの可愛さに謝罪しにきたことも忘れてしまって、頭を撫でていると、
「あっ、そうだ! 直純くん、プリン食べよう」
と一花さんが誘ってくれた。
突然のお誘いに驚いたけれど、
――うちの子、プリンが好きなの。
と未知子さんがお話ししていたのを思い出す。
あの時、食べて初めてプリンが美味しいものだったんだって知ったんだよね。
それまでは母さんの作ったあの水で薄くなった卵を固めただけみたいなボソボソのがプリンだと教えられてたから、恐る恐る口に入れた時びっくりしたんだったな。
僕の椅子のすぐ近くにある冷蔵庫を開けると、プリンが二つ並んでいて、それがあの時食べたプリンと同じものだったことに気づいて思わず笑みが溢れた。
それを見られて、
「ふふっ。プリン好きなんでしょう? 僕もなんだ」
と話しかけてくれた。
なのでつい、
「実は、僕……プリンが苦手だったんです」
と思い出していたことが口から出てしまった。
僕がそんなことを言ってしまったから、一花さんが申し訳なさそうにごめんねと言い出して、慌てて僕の知っていたプリンとは全くの別物だったから、初めて食べた時にあまりの美味しさにびっくりしたというと、一花さんは少し悲しげな表情をして
「とりあえず、食べようか」
と優しく言ってくれた。
ああ、余計なこと言っちゃったな……。
一花さんは何も悪くないのに、謝らせちゃった……。
ああ、僕はバカだ……。
自己嫌悪に陥りながらも、柔らかなプリンを掬って口に運ぶと蕩ける甘さに一気に顔が綻んだ。
「すっごくおいしいです!」
その言葉に一花さんは嬉しそうに笑ってくれた。
それが嬉しくてぱくぱく食べているうちにあっという間にプリンが空っぽになってしまった。
ああ、もっと大切に食べれば良かったな……。
空の容器をじっと見つめていると、
「おいしかったね。プリン、最近好きになれたの?」
と尋ねられた。
パパのお家で暮らすようになって……と言いかけて、慌てて磯山先生と言い直したけれど、一花さんはパパのままでいいと言ってくれた。
本当に優しいな。
僕は正直にパパのお家で初めてプリンやケーキを食べさせてもらったこと、家で食べていたプリンはボソボソして美味しくなかったけど吐きそうになりながらも一生懸命食べていたことを話した。
すると、一花さんは信じられないと言った表情をしながら
「磯山先生のお家で他に初めて食べたものってある?」
とさらに尋ねてきた。
パパの家で初めて食べたもの……それは全部だ。
初めての夜に食べたハンバーグももちろんスープだって初めて。
あの日から、ほとんど毎日初めてのものを口にしていると言っても大袈裟じゃない。
それくらい家では僕が食べていいものが限られていたから。
パパの家に来て初めてこの世界にこんなにも美味しいものが溢れていたことを知ったんだ。
一花さんは僕が話しているのをただじっと聞いていて、ずっとびっくりした顔をしていた。
正直に話しすぎたかもしれないと思いつつ、名前を呼びかけると、
「あ、ごめんね。僕も同じだよ。征哉さんのお家に行ってから、初めて食べさせてもらうものばっかりでびっくりしたよ。僕たち、お揃いだね」
と言ってくれた。
僕たちが、お揃い……。
でも本当だったら一花さんは僕とはお揃いになるはずじゃなかったのに。
そう考えると本当に申し訳ないけれど、一花さんはそれを責めることなく
「僕、征哉さんにいっぱい美味しいもの教えてもらったから今度また一緒に食べよう」
と誘ってくれた。
今度、一緒に?
その言葉が今日だけじゃないってことを教えてくれて、僕は興奮が抑えられなかった。
一花さんとこれからもまた会えるんだ。
それだけで僕はとてつもなく幸せな気分になれた。
一花さんのその言葉に反応するように、腕の中にいたウサギさんが僕の頬をぺろぺろと舐めてくれた。
このウサギさん……僕を慰めてくれるんだ。
嬉しいな。
「グリの頭をよしよししてあげて。喜ぶよ」
そう言われて、僕はドキドキしながらウサギさんの頭に触れた。
もふっとした感触に思わず声が出てしまった。
ふわふわでとっても可愛い。
僕はずっと一人だったからずっとそばにいてくれるペットがいてくれたら……なんて思っていた時もあった。
絶対に叶わない夢だったから諦めていたけれど、その時想像していたペットにはウサギさんはいなかった。
ウサギさんをペットにできるなんて知らなかったから。
こんなにもふもふでふわふわだったなんて感動する。
僕が頭を撫でていると、ウサギさんから
「ぷぅぷぅ」
という鳴き声が聞こえる。
ウサギさんって鳴くんだな。それも知らなかった。
「これ、すごく喜んでいる時の鳴き声だよ」
そうなんだ……可愛すぎる。
あまりの可愛さに謝罪しにきたことも忘れてしまって、頭を撫でていると、
「あっ、そうだ! 直純くん、プリン食べよう」
と一花さんが誘ってくれた。
突然のお誘いに驚いたけれど、
――うちの子、プリンが好きなの。
と未知子さんがお話ししていたのを思い出す。
あの時、食べて初めてプリンが美味しいものだったんだって知ったんだよね。
それまでは母さんの作ったあの水で薄くなった卵を固めただけみたいなボソボソのがプリンだと教えられてたから、恐る恐る口に入れた時びっくりしたんだったな。
僕の椅子のすぐ近くにある冷蔵庫を開けると、プリンが二つ並んでいて、それがあの時食べたプリンと同じものだったことに気づいて思わず笑みが溢れた。
それを見られて、
「ふふっ。プリン好きなんでしょう? 僕もなんだ」
と話しかけてくれた。
なのでつい、
「実は、僕……プリンが苦手だったんです」
と思い出していたことが口から出てしまった。
僕がそんなことを言ってしまったから、一花さんが申し訳なさそうにごめんねと言い出して、慌てて僕の知っていたプリンとは全くの別物だったから、初めて食べた時にあまりの美味しさにびっくりしたというと、一花さんは少し悲しげな表情をして
「とりあえず、食べようか」
と優しく言ってくれた。
ああ、余計なこと言っちゃったな……。
一花さんは何も悪くないのに、謝らせちゃった……。
ああ、僕はバカだ……。
自己嫌悪に陥りながらも、柔らかなプリンを掬って口に運ぶと蕩ける甘さに一気に顔が綻んだ。
「すっごくおいしいです!」
その言葉に一花さんは嬉しそうに笑ってくれた。
それが嬉しくてぱくぱく食べているうちにあっという間にプリンが空っぽになってしまった。
ああ、もっと大切に食べれば良かったな……。
空の容器をじっと見つめていると、
「おいしかったね。プリン、最近好きになれたの?」
と尋ねられた。
パパのお家で暮らすようになって……と言いかけて、慌てて磯山先生と言い直したけれど、一花さんはパパのままでいいと言ってくれた。
本当に優しいな。
僕は正直にパパのお家で初めてプリンやケーキを食べさせてもらったこと、家で食べていたプリンはボソボソして美味しくなかったけど吐きそうになりながらも一生懸命食べていたことを話した。
すると、一花さんは信じられないと言った表情をしながら
「磯山先生のお家で他に初めて食べたものってある?」
とさらに尋ねてきた。
パパの家で初めて食べたもの……それは全部だ。
初めての夜に食べたハンバーグももちろんスープだって初めて。
あの日から、ほとんど毎日初めてのものを口にしていると言っても大袈裟じゃない。
それくらい家では僕が食べていいものが限られていたから。
パパの家に来て初めてこの世界にこんなにも美味しいものが溢れていたことを知ったんだ。
一花さんは僕が話しているのをただじっと聞いていて、ずっとびっくりした顔をしていた。
正直に話しすぎたかもしれないと思いつつ、名前を呼びかけると、
「あ、ごめんね。僕も同じだよ。征哉さんのお家に行ってから、初めて食べさせてもらうものばっかりでびっくりしたよ。僕たち、お揃いだね」
と言ってくれた。
僕たちが、お揃い……。
でも本当だったら一花さんは僕とはお揃いになるはずじゃなかったのに。
そう考えると本当に申し訳ないけれど、一花さんはそれを責めることなく
「僕、征哉さんにいっぱい美味しいもの教えてもらったから今度また一緒に食べよう」
と誘ってくれた。
今度、一緒に?
その言葉が今日だけじゃないってことを教えてくれて、僕は興奮が抑えられなかった。
一花さんとこれからもまた会えるんだ。
それだけで僕はとてつもなく幸せな気分になれた。
1,820
あなたにおすすめの小説
運命よりも先に、愛してしまった
AzureHaru
BL
幼馴染で番同士の受けと攻め。2人は運命の番ではなかったが、相思相愛だった。そんな時、攻めに運命の番が現れる。それを知った受けは身籠もっていたが、運命の番同士の子供の方が優秀な者が生まれることも知っており、身を引く事を決め姿を消す。
しかし、攻めと運命の番の相手にはそれぞれに別の愛する人がいる事をしり、
2人は運命の番としてではなく、友人として付き合っていけたらと話し合ってわかれた。
その後、攻めは受けが勘違いしていなくなってしまったことを両親達から聞かされるのであった。
売れ残りオメガの従僕なる日々
灰鷹
BL
王弟騎士α(23才)× 地方貴族庶子Ω(18才)
※ 第12回BL大賞では、たくさんの応援をありがとうございました!
ユリウスが暮らすシャマラーン帝国では、平民のオメガは18才になると、宮廷で開かれる選定の儀に参加することが義務付けられている。王族の妾となるオメガを選ぶためのその儀式に参加し、誰にも選ばれずに売れ残ったユリウスは、国王陛下から「第3王弟に謀反の疑いがあるため、身辺を探るように」という密命を受け、オメガ嫌いと噂される第3王弟ラインハルトの従僕になった。
無口で無愛想な彼の優しい一面を知り、任務とは裏腹にラインハルトに惹かれていくユリウスであったが、働き始めて3カ月が過ぎたところで第3王弟殿下が辺境伯令嬢の婿養子になるという噂を聞き、従僕も解雇される。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
働かないつもりでしたのに、気づけば全部うまくいっていました ――自由に生きる貴族夫人と溺愛旦那様』
鷹 綾
恋愛
前世では、仕事に追われるだけの人生を送り、恋も自由も知らないまま終わった私。
だからこそ転生後に誓った――
「今度こそ、働かずに優雅に生きる!」 と。
気づけば貴族夫人、しかも結婚相手は冷静沈着な名門貴族リチャード様。
「君は何もしなくていい。自由に過ごしてくれ」
――理想的すぎる条件に、これは勝ち確人生だと思ったのに。
なぜか気づけば、
・屋敷の管理を改善して使用人の待遇が激変
・夫の仕事を手伝ったら経理改革が大成功
・興味本位で教えた簿記と珠算が商業界に革命を起こす
・商人ギルドの顧問にまで祭り上げられる始末
「あれ? 私、働かない予定でしたよね???」
自分から出世街道を爆走するつもりはなかったはずなのに、
“やりたいことをやっていただけ”で、世界のほうが勝手に変わっていく。
一方、そんな彼女を静かに見守り続けていた夫・リチャードは、
実は昔から彼女を想い続けていた溺愛系旦那様で――。
「君が選ぶなら、私はずっとそばにいる」
働かないつもりだった貴族夫人が、
自由・仕事・愛情のすべてを“自分で選ぶ”人生に辿り着く物語。
これは、
何もしないはずだったのに、幸せだけは全部手に入れてしまった女性の物語。
隊長さんとボク
ばたかっぷ
BL
ボクの名前はエナ。
エドリアーリアナ国の守護神獣だけど、斑色の毛並みのボクはいつもひとりぼっち。
そんなボクの前に現れたのは優しい隊長さんだった――。
王候騎士団隊長さんが大好きな小動物が頑張る、なんちゃってファンタジーです。
きゅ~きゅ~鳴くもふもふな小動物とそのもふもふを愛でる隊長さんで構成されています。
えろ皆無らぶ成分も極小ですσ(^◇^;)本格ファンタジーをお求めの方は回れ右でお願いします~m(_ _)m
僕を惑わせるのは素直な君
秋元智也
BL
父と妹、そして兄の家族3人で暮らして来た。
なんの不自由もない。
5年前に病気で母親を亡くしてから家事一切は兄の歩夢が
全てやって居た。
そこへいきなり父親からも唐突なカミングアウト。
「俺、再婚しようと思うんだけど……」
この言葉に驚きと迷い、そして一縷の不安が過ぎる。
だが、好きになってしまったになら仕方がない。
反対する事なく母親になる人と会う事に……。
そこには兄になる青年がついていて…。
いきなりの兄の存在に戸惑いながらも興味もあった。
だが、兄の心の声がどうにもおかしくて。
自然と聞こえて来てしまう本音に戸惑うながら惹かれて
いってしまうが……。
それは兄弟で、そして家族で……同性な訳で……。
何もかも不幸にする恋愛などお互い苦しみしかなく……。
幻獣保護センター廃棄処理係の私、ボロ雑巾のような「ゴミ幻獣」をこっそり洗ってモフっていたら、実は世界を喰らう「終焉の獣」だった件について
いぬがみとうま🐾
ファンタジー
「魔力なしの穀潰し」――そう蔑まれ、幻獣保護センターの地下で廃棄幻獣の掃除に明け暮れる少女・ミヤコ。
実のところ、その施設は「価値のない命」を無慈悲に殺処分する地獄だった。
ある日、ミヤコの前に運ばれてきたのは、泥と油にまみれた「ボロ雑巾」のような正体不明の幻獣。
誰の目にもゴミとしか映らないその塊を、ミヤコは放っておけなかった。
「こんなに汚れたままなんて、かわいそう」
彼女が生活魔法を込めたブラシで丹念に汚れを落とした瞬間、世界を縛る最凶の封印が汚れと一緒に「流されてしまう。
現れたのは、月光を纏ったような美しい銀狼。
それは世界を喰らうと恐れられる伝説の災厄級幻獣『フェンリル・ヴォイド』だった……。
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる