ひとりぼっちになった僕は新しい家族に愛と幸せを教えてもらいました

波木真帆

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戯れを見守る

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<side毅>

「ああー、今から直くんと会えるのは嬉しいけど、今日でしばらくお別れなんて寂しいわ」

「そうだな。だが、正式に兄さんの実子になったと言っていたから、これから一生縁が切れることはないよ。一生という年月に比べたら数年の赴任期間などあっという間だよ。それに私たちがフランスに行っている間に、遊びに来てもらうのも楽しいぞ」

可愛い息子のような存在ができて喜んでいる二葉には最悪のタイミングだったかもしれない今回の海外赴任。

それでもフランス本社での、しかも役職付きの待遇で断る理由などどこにもなかった。
それでも自分一人で単身赴任という選択は考えられなかった。

愛しい二葉と離れ離れになることなど考えられなかったし、何より私のそばにはいつだって二葉がいてくれなければ仕事を頑張ることもできない。

英語もフランス語も得意で社交的な二葉なら、数年のフランス生活もうまくやってくれるだろう。

二葉自身もフランスでの生活を悲観しているわけではない。
むしろ楽しみにしてくれていた。
ただ、直くんと離れるのが寂しいだけだ。

実の息子よりも直くんとの別れを寂しがっているのは昇が聞いたら、それはそれでショックを受けそうな気も……いやいや、それはないか。

昇の方から当然だと言ってきそうだ。

日本とフランスで物理的な距離が離れる分、二葉が直くんに会えないことを寂しがるだろうが、そこはなんとか繋がりを持たせてやるしかないな。

「直くんをフランスに? そうね、それは楽しそう!! あっちなら、直くんも気兼ねなく外に出られるだろうし、フランス観光に連れていくのも楽しいわね!」

「ああ、そうだよ。楽しいことを考えていればあっという間だ」

なんとか二葉の気持ちを盛り上げつつ、空港に到着した。

航空会社に一番近い場所でタクシーを降り、持ってきたキャリーケースをトランクから一つ下ろす。
必要な荷物は前もってフランスに送っているし、ここに入っているのは最低限のものだ。
キャリーケースは一つでないと、二葉の手を握れないからこれは必須だ。

その足ですぐにチェックインをして、荷物を預け、先に店に立ち寄り、席の予約をして、兄さんたちとの待ち合わせ場所に向かった。
少し早く着きすぎたようで、そこにはまだ兄さんたちの姿は見えない。
可愛い二葉に不躾な視線を送ってくる輩に睨みを効かせつつ、

「今日は村山夫妻も私たちの見送りにきてくれるみたいだぞ」

と声をかけた。

「瑠璃さんから聞いてるわ。私たちを見送った後、昇が村山家にホームステイを頼んだ子がドイツから来るのよ」

「ああ、そうか。そうだったな。確かカールだったか?」

「そうそう。そういえばね。瑠璃さんが言ってたわ」

意味深な笑いを見せながら、二葉が私の腕に絡みつき見上げてくる。
この表情が幾つになっても可愛い。

「何を?」

「あのね、龍弥くんがそのカールくんを気に入っているみたいだって」

「そうなのか? あの、龍弥くんが? ああ、そういえば、前にぬいぐるみを買ってたな? ほら、昇が直くんに買っていた時」

「そうそう。あれ、カールくんのためだったのよ」

「そうか、会う前からぬいぐるみをねぇ……なるほど」

あの時、なんとなくそういう感じかと思っていたが、私の直感は当たっていたようだな。

「カールくんにも会ってみたかったな。二人が一緒にいるところを見ればすぐにわかるだろうに」

「本当にね、でも瑠璃さんから聞くから大丈夫よ。楽しみが増えたわね」

「そうだな」

寂しいとは言いつつも、一緒に楽しみを共有してくれる。
そんな二葉の優しさに私はいつも救われるんだ。


待ち合わせの時間までそろそろかと思った頃、

「あ、いた! 二葉さーんっ!!」

と耳に心地良い声が飛び込んできた。

その声に二葉もすぐに反応して可愛く手を振り合う。
それだけでも可愛らしいのに、

「あーっ! 直くん!! きてくれてありがとう!!」

「ふーちゃん!! 会えて嬉しいです!!」

二葉は兄さんと絢斗さんの後ろにいた直くんにもすぐに気づき、可愛い声をかけるとあの時あった頃よりもずっと柔らかで子どもらしい笑顔を浮かべた直くんが嬉しそうに二葉の下に駆け寄ってくる。

二葉と絢斗さんと直くんと可愛い三人がきゃっきゃと戯れる様子が、忙しなく動いている人が多い空港内でもかなり人目を惹きすっかり注目の的になってしまっている。

それでもせっかくの対面を邪魔したくなくて、しばらく兄さんと昇と三人で二葉たちを守り続けた。

そうしてようやく少し落ち着いたところで、兄さんが店に行こうと声をかけてくれて、私たちはみんなで席に移動した。

大きな窓から飛行機が見える特等席。
しかも半個室のようになっているから、安心して二葉たちのおしゃべりを見守ることができる。

初めてこんなにも近くで飛行機を見て興奮気味の直くんに、二葉が私たちが乗る飛行機を教えると突然静かになってしまった。
何か悪いことを言ってしまっただろうかと不安になり兄さんに小声でこっそり尋ねると

「別れを実感したのかもしれないな」

と小声で返してくれた。

そうか……。
直くんはそれほど私たちの別れを惜しんでくれているのか……。

なんて優しい子なんだろうな。

「あ、ねぇねぇ、絢斗さんと直くんの帽子ってお揃い? すごくよく似合ってるわ!」

少し気持ちが沈んだらしい直くんを盛り上げようと思ったのか、二葉がそんな声をかけた。

「せっかくのお出かけだから、息子とお揃いも楽しいかなって。いいでしょう?」

「とってもいい! 羨ましいくらい」

「だと思って……」

絢斗さんは笑顔を見せながら、持ってきていたカバンから綺麗な包みを取り出して二葉に渡した。

「これ、プレゼント。お揃いの帽子だよ」

「ええーっ!! すっごく嬉しい!!!」

思いがけない絢斗さんからの贈り物に二葉は嬉しそうにその包みを開けた。
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