ひとりぼっちになった僕は新しい家族に愛と幸せを教えてもらいました

波木真帆

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大おじさんの家

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<side昇>

村山は意図的だろうが、カールは無自覚に教室でも学食でもイチャイチャを繰り返していた。
だがそれでカールが過ごすこの一週間が無事に終えられるならそれでいい。

教室に戻ってから大事な話をし忘れていたことに気がついた。

「ああ、そうだ。カール、絢斗さんのオンライン講義の件だけど……」

「うん! どうだった? いつできそう?」

その話に勢いよく食いついてきたカールを見て、思わず笑ってしまう。

「まぁ落ち着けよ。来週の月曜日はどうかってさ。その日は絢斗さんの講義が二コマ目が十時半からだから、それに参加してうちで昼ごはん食べて午後は伯父さんの事務所を見学させてくれるって言ってたけど」

『Wow!Juhuやったーu! 最高だよ!! ノボル、ありがとう!!』

ははっ。喜びすぎてドイツ語に戻ってる。よっぽど楽しみにしていたんだろうな。
まぁ、絢斗さんの講義を受けて伯父さんの事務所を見学なんて、桜城大学の法学部の学生でも垂涎ものだろうからな。

「いや、俺は別に何もしてないよ。カールが二人に気に入られただけだ。それでその日はどうやってうちに来るかなんだけど……」

「それなら、俺が学校に行く前に寄って連れて行くよ。授業よりも早く着くことになるけどいいかな?」

「かまわないと思うけど、一応伯父さんたちに確認してから連絡するよ」

「リューヤ。行き方を教えてくれたら僕一人でも行けるよ」

「ダメだって。カールは一人で出歩いちゃいけないって言っただろう?」

「でも、リューヤやみんなに迷惑かけるのは……」

「大丈夫、誰も迷惑なんて思ってないよ。だから気にしないで俺のいうことを聞いてくれ」

村山の言葉にカールはようやく納得したようで頷いた。
伯父さんには俺からも頼んでおこう。カールなら早めに着いても大丈夫だろうしな。


午後の授業も終わり、カールの日本の高校生活一日目が無事に終了した。

「じゃあ、俺寄るところあるから。また明日な」

「ああ。来週の件、連絡頼むな」

「わかってるって。じゃあな」

村山たちと別れて大おじさんの家に向かう。伯父さんの家から高校までと大おじさんが暮らすマンションから高校までの距離は進む方向が変わるだけでそこまで違いはない。

「確かこの辺だったよな……」

教えてもらっていた住所の辺りに到着すると一際高いタワマンが目の前に現れた。

「まさか、ここ?」

めっちゃすごいじゃん。

制服姿で入るのもちょっと緊張するが直くんが待ってくれているんだ。
気合を入れて玄関ロビーに入ると、ピシッとした黒服の男性に出迎えられた。

「いらっしゃいませ。コンシェルジュの大園でございます。どちらに御訪問でしょうか?」

「えっ? えっと、緑川さんの部屋に行きたいんですが。あの、俺……その、親戚の磯山と言います」

「磯山昇さまですね。緑川さまからお話を伺っております。一度緑川さまにご連絡をいたしますのでそちらでお待ちいただけますか?」

「あ、はい。わかりました」

すげぇ。さすが高級タワマン。なんか知らない世界だな。ここに大おじさんが住んでいるのか……。

豪華だけど落ち着いていて雰囲気がいいのは、この前行った銀座のイリゼホテルによく似ている気がする。
おのぼりさんみたいにキョロキョロ見回していると、

「磯山さま。エレベーターにご案内いたします」

とコンシェルジュさんがやってきた。

「は、はい。お願いします」

彼に案内されてエレベーターに乗り込むと、さっとボタンを押してエレベーターを降りていき頭を下げて見送られる。
やっぱりこのマンションすごいな。

感動している間に大おじさんの部屋に着き、エレベーターを降りると目の前には扉が一つしかない。
どうやらこの階には大おじさんの部屋しかないみたいだ。ますますすごいな。

玄関チャイムを鳴らすと、すぐに扉が開いた。
直くんに会える! その気持ちで飛び込むとすぐに直くんの声が聞こえた。

「昇さん! お帰りなさい!」

いつもと変わらぬ声にホッとして顔を見た瞬間、目が腫れていることに気づいた。
泣いた? どうして?

それが気になって仕方がないけれど、いつものように抱きついて頬におかえりのキスをしてくれる直くんとの時間を無駄にしたくない。

一旦それを保留にして、俺は何も気づかないふりして直くんを抱きしめ、数時間ぶりの対面を素直に喜んだ。

大おじさんに挨拶をして中に入ると、いつになくはしゃいだ直くんが俺を窓際に連れて行ってくれる。
今はまだ賃貸らしいこの部屋を直くんが気に入ったら買い取るつもりだという大おじさんの凄さに驚きつつも、直くんのためならなんでもできるところが大おじさんらしいとも思ってしまう。

「直くん、昇にあれを食べさせるんだろう?」

大おじさんの声掛けに直くんは何かを思い出したように大きな声をあげた。
キッチンに駆けていく直くんを見ていると、大おじさんに手を洗うように声をかけられ俺は素直に洗面所に向かった。
手を洗っていると、スマホが振動するのを感じる。
急いで手を拭いてスマホを見ると、大おじさんからのメッセージが入っていた。

後で説明するというのはあの瞼の腫れについてだろう。
今はスルーしてくれというのならそれに従う他はない。

洗面所を出た俺は大おじさんに了解のアイコンタクトを送り、ダイニングテーブルの椅子に座った。

「おじいちゃんと一緒にお好み焼き作ったんです。あと、焼きそばもありますよ」

得意げな表情を見せる直くんがものすごく可愛い。
しかも直くんが作ってくれたお好み焼きと焼きそばか。
最高のおやつだな。

「んっ!! すっごく美味しいよ!!」

「よかったぁー。あ、昇さん。ソースついてますよ」

あまりにも美味しすぎて恥ずかしいところを見せたかと思ったけれど、俺が拭うよりも先に直くんが指で拭ってくれた。

ああ、直くん。最高だ!!
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