249 / 678
大おじさんの家
しおりを挟む
<side昇>
村山は意図的だろうが、カールは無自覚に教室でも学食でもイチャイチャを繰り返していた。
だがそれでカールが過ごすこの一週間が無事に終えられるならそれでいい。
教室に戻ってから大事な話をし忘れていたことに気がついた。
「ああ、そうだ。カール、絢斗さんのオンライン講義の件だけど……」
「うん! どうだった? いつできそう?」
その話に勢いよく食いついてきたカールを見て、思わず笑ってしまう。
「まぁ落ち着けよ。来週の月曜日はどうかってさ。その日は絢斗さんの講義が二コマ目が十時半からだから、それに参加してうちで昼ごはん食べて午後は伯父さんの事務所を見学させてくれるって言ってたけど」
『Wow!Juhuu! 最高だよ!! ノボル、ありがとう!!』
ははっ。喜びすぎてドイツ語に戻ってる。よっぽど楽しみにしていたんだろうな。
まぁ、絢斗さんの講義を受けて伯父さんの事務所を見学なんて、桜城大学の法学部の学生でも垂涎ものだろうからな。
「いや、俺は別に何もしてないよ。カールが二人に気に入られただけだ。それでその日はどうやってうちに来るかなんだけど……」
「それなら、俺が学校に行く前に寄って連れて行くよ。授業よりも早く着くことになるけどいいかな?」
「かまわないと思うけど、一応伯父さんたちに確認してから連絡するよ」
「リューヤ。行き方を教えてくれたら僕一人でも行けるよ」
「ダメだって。カールは一人で出歩いちゃいけないって言っただろう?」
「でも、リューヤやみんなに迷惑かけるのは……」
「大丈夫、誰も迷惑なんて思ってないよ。だから気にしないで俺のいうことを聞いてくれ」
村山の言葉にカールはようやく納得したようで頷いた。
伯父さんには俺からも頼んでおこう。カールなら早めに着いても大丈夫だろうしな。
午後の授業も終わり、カールの日本の高校生活一日目が無事に終了した。
「じゃあ、俺寄るところあるから。また明日な」
「ああ。来週の件、連絡頼むな」
「わかってるって。じゃあな」
村山たちと別れて大おじさんの家に向かう。伯父さんの家から高校までと大おじさんが暮らすマンションから高校までの距離は進む方向が変わるだけでそこまで違いはない。
「確かこの辺だったよな……」
教えてもらっていた住所の辺りに到着すると一際高いタワマンが目の前に現れた。
「まさか、ここ?」
めっちゃすごいじゃん。
制服姿で入るのもちょっと緊張するが直くんが待ってくれているんだ。
気合を入れて玄関ロビーに入ると、ピシッとした黒服の男性に出迎えられた。
「いらっしゃいませ。コンシェルジュの大園でございます。どちらに御訪問でしょうか?」
「えっ? えっと、緑川さんの部屋に行きたいんですが。あの、俺……その、親戚の磯山と言います」
「磯山昇さまですね。緑川さまからお話を伺っております。一度緑川さまにご連絡をいたしますのでそちらでお待ちいただけますか?」
「あ、はい。わかりました」
すげぇ。さすが高級タワマン。なんか知らない世界だな。ここに大おじさんが住んでいるのか……。
豪華だけど落ち着いていて雰囲気がいいのは、この前行った銀座のイリゼホテルによく似ている気がする。
おのぼりさんみたいにキョロキョロ見回していると、
「磯山さま。エレベーターにご案内いたします」
とコンシェルジュさんがやってきた。
「は、はい。お願いします」
彼に案内されてエレベーターに乗り込むと、さっとボタンを押してエレベーターを降りていき頭を下げて見送られる。
やっぱりこのマンションすごいな。
感動している間に大おじさんの部屋に着き、エレベーターを降りると目の前には扉が一つしかない。
どうやらこの階には大おじさんの部屋しかないみたいだ。ますますすごいな。
玄関チャイムを鳴らすと、すぐに扉が開いた。
直くんに会える! その気持ちで飛び込むとすぐに直くんの声が聞こえた。
「昇さん! お帰りなさい!」
いつもと変わらぬ声にホッとして顔を見た瞬間、目が腫れていることに気づいた。
泣いた? どうして?
それが気になって仕方がないけれど、いつものように抱きついて頬におかえりのキスをしてくれる直くんとの時間を無駄にしたくない。
一旦それを保留にして、俺は何も気づかないふりして直くんを抱きしめ、数時間ぶりの対面を素直に喜んだ。
大おじさんに挨拶をして中に入ると、いつになくはしゃいだ直くんが俺を窓際に連れて行ってくれる。
今はまだ賃貸らしいこの部屋を直くんが気に入ったら買い取るつもりだという大おじさんの凄さに驚きつつも、直くんのためならなんでもできるところが大おじさんらしいとも思ってしまう。
「直くん、昇にあれを食べさせるんだろう?」
大おじさんの声掛けに直くんは何かを思い出したように大きな声をあげた。
キッチンに駆けていく直くんを見ていると、大おじさんに手を洗うように声をかけられ俺は素直に洗面所に向かった。
手を洗っていると、スマホが振動するのを感じる。
急いで手を拭いてスマホを見ると、大おじさんからのメッセージが入っていた。
後で説明するというのはあの瞼の腫れについてだろう。
今はスルーしてくれというのならそれに従う他はない。
洗面所を出た俺は大おじさんに了解のアイコンタクトを送り、ダイニングテーブルの椅子に座った。
「おじいちゃんと一緒にお好み焼き作ったんです。あと、焼きそばもありますよ」
得意げな表情を見せる直くんがものすごく可愛い。
しかも直くんが作ってくれたお好み焼きと焼きそばか。
最高のおやつだな。
「んっ!! すっごく美味しいよ!!」
「よかったぁー。あ、昇さん。ソースついてますよ」
あまりにも美味しすぎて恥ずかしいところを見せたかと思ったけれど、俺が拭うよりも先に直くんが指で拭ってくれた。
ああ、直くん。最高だ!!
村山は意図的だろうが、カールは無自覚に教室でも学食でもイチャイチャを繰り返していた。
だがそれでカールが過ごすこの一週間が無事に終えられるならそれでいい。
教室に戻ってから大事な話をし忘れていたことに気がついた。
「ああ、そうだ。カール、絢斗さんのオンライン講義の件だけど……」
「うん! どうだった? いつできそう?」
その話に勢いよく食いついてきたカールを見て、思わず笑ってしまう。
「まぁ落ち着けよ。来週の月曜日はどうかってさ。その日は絢斗さんの講義が二コマ目が十時半からだから、それに参加してうちで昼ごはん食べて午後は伯父さんの事務所を見学させてくれるって言ってたけど」
『Wow!Juhuu! 最高だよ!! ノボル、ありがとう!!』
ははっ。喜びすぎてドイツ語に戻ってる。よっぽど楽しみにしていたんだろうな。
まぁ、絢斗さんの講義を受けて伯父さんの事務所を見学なんて、桜城大学の法学部の学生でも垂涎ものだろうからな。
「いや、俺は別に何もしてないよ。カールが二人に気に入られただけだ。それでその日はどうやってうちに来るかなんだけど……」
「それなら、俺が学校に行く前に寄って連れて行くよ。授業よりも早く着くことになるけどいいかな?」
「かまわないと思うけど、一応伯父さんたちに確認してから連絡するよ」
「リューヤ。行き方を教えてくれたら僕一人でも行けるよ」
「ダメだって。カールは一人で出歩いちゃいけないって言っただろう?」
「でも、リューヤやみんなに迷惑かけるのは……」
「大丈夫、誰も迷惑なんて思ってないよ。だから気にしないで俺のいうことを聞いてくれ」
村山の言葉にカールはようやく納得したようで頷いた。
伯父さんには俺からも頼んでおこう。カールなら早めに着いても大丈夫だろうしな。
午後の授業も終わり、カールの日本の高校生活一日目が無事に終了した。
「じゃあ、俺寄るところあるから。また明日な」
「ああ。来週の件、連絡頼むな」
「わかってるって。じゃあな」
村山たちと別れて大おじさんの家に向かう。伯父さんの家から高校までと大おじさんが暮らすマンションから高校までの距離は進む方向が変わるだけでそこまで違いはない。
「確かこの辺だったよな……」
教えてもらっていた住所の辺りに到着すると一際高いタワマンが目の前に現れた。
「まさか、ここ?」
めっちゃすごいじゃん。
制服姿で入るのもちょっと緊張するが直くんが待ってくれているんだ。
気合を入れて玄関ロビーに入ると、ピシッとした黒服の男性に出迎えられた。
「いらっしゃいませ。コンシェルジュの大園でございます。どちらに御訪問でしょうか?」
「えっ? えっと、緑川さんの部屋に行きたいんですが。あの、俺……その、親戚の磯山と言います」
「磯山昇さまですね。緑川さまからお話を伺っております。一度緑川さまにご連絡をいたしますのでそちらでお待ちいただけますか?」
「あ、はい。わかりました」
すげぇ。さすが高級タワマン。なんか知らない世界だな。ここに大おじさんが住んでいるのか……。
豪華だけど落ち着いていて雰囲気がいいのは、この前行った銀座のイリゼホテルによく似ている気がする。
おのぼりさんみたいにキョロキョロ見回していると、
「磯山さま。エレベーターにご案内いたします」
とコンシェルジュさんがやってきた。
「は、はい。お願いします」
彼に案内されてエレベーターに乗り込むと、さっとボタンを押してエレベーターを降りていき頭を下げて見送られる。
やっぱりこのマンションすごいな。
感動している間に大おじさんの部屋に着き、エレベーターを降りると目の前には扉が一つしかない。
どうやらこの階には大おじさんの部屋しかないみたいだ。ますますすごいな。
玄関チャイムを鳴らすと、すぐに扉が開いた。
直くんに会える! その気持ちで飛び込むとすぐに直くんの声が聞こえた。
「昇さん! お帰りなさい!」
いつもと変わらぬ声にホッとして顔を見た瞬間、目が腫れていることに気づいた。
泣いた? どうして?
それが気になって仕方がないけれど、いつものように抱きついて頬におかえりのキスをしてくれる直くんとの時間を無駄にしたくない。
一旦それを保留にして、俺は何も気づかないふりして直くんを抱きしめ、数時間ぶりの対面を素直に喜んだ。
大おじさんに挨拶をして中に入ると、いつになくはしゃいだ直くんが俺を窓際に連れて行ってくれる。
今はまだ賃貸らしいこの部屋を直くんが気に入ったら買い取るつもりだという大おじさんの凄さに驚きつつも、直くんのためならなんでもできるところが大おじさんらしいとも思ってしまう。
「直くん、昇にあれを食べさせるんだろう?」
大おじさんの声掛けに直くんは何かを思い出したように大きな声をあげた。
キッチンに駆けていく直くんを見ていると、大おじさんに手を洗うように声をかけられ俺は素直に洗面所に向かった。
手を洗っていると、スマホが振動するのを感じる。
急いで手を拭いてスマホを見ると、大おじさんからのメッセージが入っていた。
後で説明するというのはあの瞼の腫れについてだろう。
今はスルーしてくれというのならそれに従う他はない。
洗面所を出た俺は大おじさんに了解のアイコンタクトを送り、ダイニングテーブルの椅子に座った。
「おじいちゃんと一緒にお好み焼き作ったんです。あと、焼きそばもありますよ」
得意げな表情を見せる直くんがものすごく可愛い。
しかも直くんが作ってくれたお好み焼きと焼きそばか。
最高のおやつだな。
「んっ!! すっごく美味しいよ!!」
「よかったぁー。あ、昇さん。ソースついてますよ」
あまりにも美味しすぎて恥ずかしいところを見せたかと思ったけれど、俺が拭うよりも先に直くんが指で拭ってくれた。
ああ、直くん。最高だ!!
1,402
あなたにおすすめの小説
拗らせ問題児は癒しの君を独占したい
結衣可
BL
前世で限界社畜として心をすり減らした青年は、異世界の貧乏子爵家三男・セナとして転生する。王立貴族学院に奨学生として通う彼は、座学で首席の成績を持ちながらも、目立つことを徹底的に避けて生きていた。期待されることは、壊れる前触れだと知っているからだ。
一方、公爵家次男のアレクシスは、魔法も剣術も学年トップの才能を持ちながら、「何も期待されていない」立場に嫌気がさし、問題児として学院で浮いた存在になっていた。
補習課題のペアとして出会った二人。
セナはアレクシスを特別視せず、恐れも媚びも見せない。その静かな態度と、美しい瞳に、アレクシスは強く惹かれていく。放課後を共に過ごすうち、アレクシスはセナを守りたいと思い始める。
身分差と噂、そしてセナが隠す“癒やしの光魔法”。
期待されることを恐れるセナと、期待されないことに傷つくアレクシスは、すれ違いながらも互いを唯一の居場所として見つけていく。
これは、静かに生きたい少年と、選ばれたかった少年が出会った物語。
腹違いの妹にすべてを奪われた薄幸の令嬢が、義理の母に殴られた瞬間、前世のインテリヤクザなおっさんがぶちギレた場合。
灯乃
ファンタジー
十二歳のときに母が病で亡くなった途端、父は後妻と一歳年下の妹を新たな『家族』として迎え入れた。
彼らの築く『家族』の輪から弾き出されたアニエスは、ある日義母の私室に呼び出され――。
タイトル通りのおっさんコメディーです。
猫を追いかけて異世界に来たら、拾ってくれたのは優しい貴族様でした
水無瀬 蒼
BL
清石拓也はある日飼い猫の黒猫・ルナを追って古びた神社に紛れ込んだ。
そこで、御神木の根に足をひっかけて転んでしまう。
倒れる瞬間、大きな光に飲み込まれる。
そして目を覚ましたのは、遺跡の中だった。
体調の悪い拓也を助けてくれたのは貴族のレオニス・アーゼンハイツだった。
2026.1.5〜
売れ残りオメガの従僕なる日々
灰鷹
BL
王弟騎士α(23才)× 地方貴族庶子Ω(18才)
※ 第12回BL大賞では、たくさんの応援をありがとうございました!
ユリウスが暮らすシャマラーン帝国では、平民のオメガは18才になると、宮廷で開かれる選定の儀に参加することが義務付けられている。王族の妾となるオメガを選ぶためのその儀式に参加し、誰にも選ばれずに売れ残ったユリウスは、国王陛下から「第3王弟に謀反の疑いがあるため、身辺を探るように」という密命を受け、オメガ嫌いと噂される第3王弟ラインハルトの従僕になった。
無口で無愛想な彼の優しい一面を知り、任務とは裏腹にラインハルトに惹かれていくユリウスであったが、働き始めて3カ月が過ぎたところで第3王弟殿下が辺境伯令嬢の婿養子になるという噂を聞き、従僕も解雇される。
幻獣保護センター廃棄処理係の私、ボロ雑巾のような「ゴミ幻獣」をこっそり洗ってモフっていたら、実は世界を喰らう「終焉の獣」だった件について
いぬがみとうま🐾
ファンタジー
「魔力なしの穀潰し」――そう蔑まれ、幻獣保護センターの地下で廃棄幻獣の掃除に明け暮れる少女・ミヤコ。
実のところ、その施設は「価値のない命」を無慈悲に殺処分する地獄だった。
ある日、ミヤコの前に運ばれてきたのは、泥と油にまみれた「ボロ雑巾」のような正体不明の幻獣。
誰の目にもゴミとしか映らないその塊を、ミヤコは放っておけなかった。
「こんなに汚れたままなんて、かわいそう」
彼女が生活魔法を込めたブラシで丹念に汚れを落とした瞬間、世界を縛る最凶の封印が汚れと一緒に「流されてしまう。
現れたのは、月光を纏ったような美しい銀狼。
それは世界を喰らうと恐れられる伝説の災厄級幻獣『フェンリル・ヴォイド』だった……。
美形×平凡の子供の話
めちゅう
BL
美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか?
──────────────────
お読みくださりありがとうございます。
お楽しみいただけましたら幸いです。
お話を追加いたしました。
虚ろな檻と翡翠の魔石
篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」
不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。
待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。
しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。
「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」
記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。
-----------------------------------------
0時,6時,12時,18時に2話ずつ更新
【完結】『ルカ』
瀬川香夜子
BL
―――目が覚めた時、自分の中は空っぽだった。
倒れていたところを一人の老人に拾われ、目覚めた時には記憶を無くしていた。
クロと名付けられ、親切な老人―ソニーの家に置いて貰うことに。しかし、記憶は一向に戻る気配を見せない。
そんなある日、クロを知る青年が現れ……?
貴族の青年×記憶喪失の青年です。
※自サイトでも掲載しています。
2021年6月28日 本編完結
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる