ひとりぼっちになった僕は新しい家族に愛と幸せを教えてもらいました

波木真帆

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難題に出会う

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黒服の店員は部屋に案内すると俺たちに向かって笑顔で話しかけた。

「こちらからお好きなものをお選びください」

「えっ……」

こんなにもすごい店なのだから、てっきり俺たちに似合う服を選んでくれるのだとばかり思っていた。
俺が驚いたように、隣にいた村山も驚きの表情を見せていた。

「お好きなものって……」

オープンクローゼットのような広々とした空間に、ジャケットやパンツ、Tシャツ、シャツ、ニットなど、それにアクセサリーや靴に至るまでの全てが揃えられていて、その一つ一つが途轍もない量だ。

ここから自分で選ぶ?
組み合わせも全て?

家のクローゼットにあるものを適当に選ぶのとはわけが違う。
流石に困惑していると、伯父さんと村山の父さんが俺たちに近づいてきた。

「お前たちはこれから直くんやカールくんの隣で、絶対に勝てそうにないと周りに思わせるほどの力を持たないといけない。服のセンスはその一つだ。可愛い直くんやカールくんのそばでセンスが悪いものを着ていてみろ。あれならすぐに奪えると思われて変なのが近づいてきたらどうする?」

「それは……」

「直くんやカールくんに恥ずかしい思いをさせないようにするためにも、しっかりとしたセンスを持つことが大事だ。それは単純に高価なものを着ていればいいというものではない。自分をより良く見せるため、または自分を引き立てることができる服を選ぶ力が必要だ。わかるか?」

確かに父さんも、伯父さんも、それに宗一郎さんや伊織さん、じいちゃんたちもいつもセンスいい服を着ていて、一緒に歩いていると羨望の眼差しで見られていた。

「お前たちが普段着ているものは、年齢から見れば決して安価なものではないが、ここの服はお前たちの服よりも桁が一つは違うだろう。その中でいかに自分に似合う服を見つけられるか、私たちに見せてほしい。それによって助言も変わってくる。いいか?」

「わ、わかった……」

俺も村山も突然現れた試練に少し怯みながらも、部屋の中に入った。

まずはジャケットだよな。

ジャケットだけで結構洗練された感じが出るし。
伊織さんもTシャツにジャケット羽織っていただけでもかなりかっこよく見えた。

そう思ってジャケットゾーンに向かったけれど、黒、グレー、ネイビー、ベージュ、ブラウン。
色だけでもかなりの種類があるのに、それにプラスして素材や色の濃さ、デザインで全然違うものに見える。

「ああ、一つに決められなければ二つ、三つ、組み合わせを考えてもいいぞ。値段は全て外してもらっているから、値段も気にするな」

俺の心を見透かしたように伯父さんから声がかかる。

よし、こうなったらやるしかないか。

俺は気合いを入れ直して服を選び始めた。

とりあえず着回しの出来そうな黒のジャケットと言っても、少しグレーが入ったような明るめの黒のジャケットに白のシャツ。そして、漆黒の細身のパンツ。これは結構良さそうな気がする。

もう一つは悩んでいたブラウンがかったベージュのジャケット。
薄手に見えるが素材はこれからの季節に使えそうな暖かなカシミヤ素材のものだ。
これなら直くんが寒いと言った時に羽織らせてあげられる。

こっちの中もシャツだと無難すぎるか……。

ふと薄手のニットがあることに気づいてそれを手に取った。
グレーのニットか……。
これに明るいグレーの細身のパンツを合わせてみた。

「伯父さん。選んだよ」

「ああ。じゃあ、そこで試着しておいで」

「試着するの?」

「当たり前だろう。実際に着て、似合うかどうか見せてもらうよ」

伯父さんのその言葉に、さっきの黒服の店員さんが俺を試着室に案内してくれる。

大きな一枚鏡のある広々とした部屋の中で着替えることになった。

まずは黒の方から。

制服を脱ぎ、シャツに袖を通して驚いた。
肌に触れる感触も着心地も俺の持っている服とは全然違う。

こんなに違うものだと思ってもなかったな……。

初めて知った感触に驚きつつ、自分で決めたコーディネートに着替え終わり、試着室から外にできた。

「ああ、着替えたか。なるほど。無難にまとめたな」

伯父さんが俺をみてクスッと笑う。
無難だと言われて一気に恥ずかしくなってくる。

「まぁ、悪くないコーディネートだな。純弥くん、どうだ?」

「そうですね、明るい黒を上に持ってきたのはよかったですね。似合っていると思いますよ」

「だそうだ。とりあえずそれは合格だな。次のも着てみてくれ」

「は、はい」

こうして自分のセンスを見定められるのはなんとなく恥ずかしいが、褒められると嬉しい。
俺はドキドキしつつも二つ目の服に着替え始めた。
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