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本当に美味しいもの
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<side直純>
おじいちゃんとパン屋にお買い物。
僕の人生で初めてのことだ。
昇さんに貸してもらった大きなコートは、まるで昇さんに包まれているみたい。
匂いもするし、あったかいし、これ、すっごくいいな。
車で家から出ることは何度かあったけど、歩いて外に出るのは初めて。
今日は朝から初めてづくしだ。
昼間はまだあったかいと思っていたけれど、朝の外のヒヤッとした空気に、もう冬になりかけているんだと気づく。
少し寒くて白い息も出るけれど、おじいちゃんと繋いだ手がポカポカして暖かい。
「おじいちゃんは、パン屋さん行ったことがありますか?」
そう尋ねると、日本にいた時はよく行っていたと教えてくれた。
あやちゃんとあやちゃんのお母さんが焼きたてのパンが好きだったんだって。
「メロンパンは絢斗の大好物だからあったら買って行こう!」
おじいちゃんが笑顔で言ってくれる。
メロンパン。クラスメイトが大好物なんだと大声で言いながら教室で食べているのを見たことがある。
どんな味なんだろうって思っていたけれど、それが今日食べられるかもしれない。
そう思うとたまらなく嬉しくなっていた。
店が見えて入り口に向かっている間に大きな窓から中の様子が見えて、いっぱいパンが並んでいるのが見える。
そのどれもが輝いて見える。美味しそうな匂いもしているし、なんだかドキドキしてきた。
「さぁ、入ろうか」
おじいちゃんが扉を開けると、チリンチリンと鈴の音がする。
心地よい音だけど、今はその音すら浸っている暇もないほど、目の前の美味しそうなパンたちに惹かれてしまっていた。
僕はどうしていいのかわからず入り口に突っ立っていたけれど、おじいちゃんは手慣れた様子で白いお盆と挟む道具を取っていた。
「直くん、このトングで好きなパンをこのトレイに載せてごらん」
差し出されたトングというものを受け取り、カチカチと動かしてみた。
「そうそう、上手だよ。さぁ、どれがいい?」
どれと言われてもどれも美味しそうすぎて悩む。
「パンは冷凍できるから好きなだけ選んでいいよ。あ、メロンパンがあるよ」
おじいちゃんに教えられた場所を見ると、<ただいま焼きたて>というカードがつけられた場所に美味しそうなパンがいっぱい並んでいる。
「メロンパン、絢斗と直くんの分で二個買おうか」
「あの、カールの分も買っていいですか?」
「ああ、そうだったな。ドイツにはメロンパンのような菓子パンはないからカールくんも喜ぶだろうな。いいよ、三個このトレイに載せてごらん」
優しいおじいちゃんに許可をもらって、僕はメロンパンをトレイに載せる。
落とさないか心配だったけれど、おじいちゃんがすぐ近くにトレイを置いてくれるから安心だ。
「よし、上手におけたね。次はどのパンにしようか。なんでもいいよ」
そう言われるけれど、目に入ってくるものがどれも美味しそうすぎて選べない。
クロワッサン、レーズンシュガーパン、クリームパン、アップルパイ、シナモンロールと結局次々にトレイに入れてしまった。
流石にもうこれ以上は……と思ったけれど、
「カレーパン、揚げたてでーす」
と声が聞こえて。あまりにおいしそうな匂いに反応してしまった。
「直くん、カレーは好きかな?」
「はい。パパのカレー大好きです」
「そうか、卓くんのカレーは最高だろうな。このカレーパンもきっと絶品だよ。揚げたてだしせっかくだから買って行こうか」
「はい!」
美味しそうな匂いがするカレーパンを人数分トレイに載せてレジに並ぶと、おじいちゃんが店員さんに声をかけた。
小さな声だったからなんて言ったのかは聞こえなかったけれど、店員さんはしっかりと聞こえたみたい。
「すぐにご用意いたしますね」
すぐにお店の奥に入って行った。
それからすぐに小さなカゴみたいなものを持ってきて、僕に差し出してくれる。
「ご試食いかがですか?」
「試食? いいんですか?」
「はい。焼きたてなので美味しいですよ。手でお取りください」
焼きたて……さっきからそれが魔法の言葉みたいに僕の心を揺らす。
「あの、じゃあいただきます」
手のひらの半分より少し小さな白いパン。それを指で摘んで口に近づける。
それだけでふわっと美味しそうな匂いに包まれる。
パクッと半分ほどを口に入れると、ふわふわしてものすごく美味しい。
初めての味に興奮してあっという間に全部食べてしまった
こんなに美味しいパン、もっと味わって食べればよかった……。
そう後悔してしまうほど、すごくおいしかった。
「直くん、おいしかったかな?」
「はい! とっても!」
「そうか、じゃあそれも買って行こう。それも一つお願いします」
おじいちゃんはレジの人に向かっていうと、レジの人がお店の奥に入って何かを持ってきた。
「えっ、それ……」
「直くんが食べたのは食パンだよ」
「――っ、食パン? でも、食パンって……」
冷たくて硬くて何の味もなくて美味しくなかったのに……。
「本当はこんなに美味しいものなんだよ」
そう、だったんだ……。
あのブロッコリーも、食パンも……本当は美味しいものだったんだな。
「僕……これから食パンも好きになれそうです!」
「そうか、よかった」
その笑顔に、おじいちゃまがどうして今日、僕にパン屋さんにいくように言ってくれたのかがわかった気がした。
僕は焼きたての食パンを胸に抱き、おじいちゃんと手を繋いでみんなが待つ家に戻った。
おじいちゃんとパン屋にお買い物。
僕の人生で初めてのことだ。
昇さんに貸してもらった大きなコートは、まるで昇さんに包まれているみたい。
匂いもするし、あったかいし、これ、すっごくいいな。
車で家から出ることは何度かあったけど、歩いて外に出るのは初めて。
今日は朝から初めてづくしだ。
昼間はまだあったかいと思っていたけれど、朝の外のヒヤッとした空気に、もう冬になりかけているんだと気づく。
少し寒くて白い息も出るけれど、おじいちゃんと繋いだ手がポカポカして暖かい。
「おじいちゃんは、パン屋さん行ったことがありますか?」
そう尋ねると、日本にいた時はよく行っていたと教えてくれた。
あやちゃんとあやちゃんのお母さんが焼きたてのパンが好きだったんだって。
「メロンパンは絢斗の大好物だからあったら買って行こう!」
おじいちゃんが笑顔で言ってくれる。
メロンパン。クラスメイトが大好物なんだと大声で言いながら教室で食べているのを見たことがある。
どんな味なんだろうって思っていたけれど、それが今日食べられるかもしれない。
そう思うとたまらなく嬉しくなっていた。
店が見えて入り口に向かっている間に大きな窓から中の様子が見えて、いっぱいパンが並んでいるのが見える。
そのどれもが輝いて見える。美味しそうな匂いもしているし、なんだかドキドキしてきた。
「さぁ、入ろうか」
おじいちゃんが扉を開けると、チリンチリンと鈴の音がする。
心地よい音だけど、今はその音すら浸っている暇もないほど、目の前の美味しそうなパンたちに惹かれてしまっていた。
僕はどうしていいのかわからず入り口に突っ立っていたけれど、おじいちゃんは手慣れた様子で白いお盆と挟む道具を取っていた。
「直くん、このトングで好きなパンをこのトレイに載せてごらん」
差し出されたトングというものを受け取り、カチカチと動かしてみた。
「そうそう、上手だよ。さぁ、どれがいい?」
どれと言われてもどれも美味しそうすぎて悩む。
「パンは冷凍できるから好きなだけ選んでいいよ。あ、メロンパンがあるよ」
おじいちゃんに教えられた場所を見ると、<ただいま焼きたて>というカードがつけられた場所に美味しそうなパンがいっぱい並んでいる。
「メロンパン、絢斗と直くんの分で二個買おうか」
「あの、カールの分も買っていいですか?」
「ああ、そうだったな。ドイツにはメロンパンのような菓子パンはないからカールくんも喜ぶだろうな。いいよ、三個このトレイに載せてごらん」
優しいおじいちゃんに許可をもらって、僕はメロンパンをトレイに載せる。
落とさないか心配だったけれど、おじいちゃんがすぐ近くにトレイを置いてくれるから安心だ。
「よし、上手におけたね。次はどのパンにしようか。なんでもいいよ」
そう言われるけれど、目に入ってくるものがどれも美味しそうすぎて選べない。
クロワッサン、レーズンシュガーパン、クリームパン、アップルパイ、シナモンロールと結局次々にトレイに入れてしまった。
流石にもうこれ以上は……と思ったけれど、
「カレーパン、揚げたてでーす」
と声が聞こえて。あまりにおいしそうな匂いに反応してしまった。
「直くん、カレーは好きかな?」
「はい。パパのカレー大好きです」
「そうか、卓くんのカレーは最高だろうな。このカレーパンもきっと絶品だよ。揚げたてだしせっかくだから買って行こうか」
「はい!」
美味しそうな匂いがするカレーパンを人数分トレイに載せてレジに並ぶと、おじいちゃんが店員さんに声をかけた。
小さな声だったからなんて言ったのかは聞こえなかったけれど、店員さんはしっかりと聞こえたみたい。
「すぐにご用意いたしますね」
すぐにお店の奥に入って行った。
それからすぐに小さなカゴみたいなものを持ってきて、僕に差し出してくれる。
「ご試食いかがですか?」
「試食? いいんですか?」
「はい。焼きたてなので美味しいですよ。手でお取りください」
焼きたて……さっきからそれが魔法の言葉みたいに僕の心を揺らす。
「あの、じゃあいただきます」
手のひらの半分より少し小さな白いパン。それを指で摘んで口に近づける。
それだけでふわっと美味しそうな匂いに包まれる。
パクッと半分ほどを口に入れると、ふわふわしてものすごく美味しい。
初めての味に興奮してあっという間に全部食べてしまった
こんなに美味しいパン、もっと味わって食べればよかった……。
そう後悔してしまうほど、すごくおいしかった。
「直くん、おいしかったかな?」
「はい! とっても!」
「そうか、じゃあそれも買って行こう。それも一つお願いします」
おじいちゃんはレジの人に向かっていうと、レジの人がお店の奥に入って何かを持ってきた。
「えっ、それ……」
「直くんが食べたのは食パンだよ」
「――っ、食パン? でも、食パンって……」
冷たくて硬くて何の味もなくて美味しくなかったのに……。
「本当はこんなに美味しいものなんだよ」
そう、だったんだ……。
あのブロッコリーも、食パンも……本当は美味しいものだったんだな。
「僕……これから食パンも好きになれそうです!」
「そうか、よかった」
その笑顔に、おじいちゃまがどうして今日、僕にパン屋さんにいくように言ってくれたのかがわかった気がした。
僕は焼きたての食パンを胸に抱き、おじいちゃんと手を繋いでみんなが待つ家に戻った。
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