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自信をつけさせるために
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<side寛>
直くんのノートを見て驚いた。
いや、驚いたなんてものじゃない。
賢将さんに見せても私と同じ反応だったのだから、それがいかにすごいことかわかるだろう。
まさかまだ中学生の直くんがあの桜城大学の過去問を解いているとは思いもしなかった。
それは理解できないのも無理はないと思ったが以前のページを見てみたら基礎の復習のところは完璧だった。
通常なら直くんはまだ習ってすらいないはずだが、解けているのだからすごいとしか言いようがない。
私と賢将さんがそのことを褒めると途端に顔色を悪くした。
すぐに嫌な思い出が甦っているのだろうと察して、賢将さんがソファーに座らせて落ち着かせた。
きっと実家にいる間、黙々と勉強させられた上にもっとやれと叱られてばかりだったのだろう。
直くんがこれだけの実力を持ちながら、桜守の受験に対してあれほど不安に思っているのも無理はない。
おそらく毎日不安を煽るようなことを言われて精神的に疲弊されていたのだろうな。
直くんの実力を考えれば、これから受験まで何もしなくても余裕で合格できるだろう。
今は受験勉強よりも直くんの自信をつけさせることのほうを優先したほうがいい。
「直くん、今日は勉強は休んで好きなことをしようか。午後は卓の事務所を見学に行くから、午前中は何か違うことをしよう」
そんな提案を持ちかけてみた。
これまでの直くんなら自分から何かしたいなんて提案できなかっただろう。
だが、直くんは少し考えると嬉しそうな笑顔を向けた。
「好きなこと……あ、じゃあ僕……毅パパのマフラーを編みます。フランスは寒いから早く使って欲しいから……」
そう話す直くんの表情は落ち着いて見えた。
ここで卓たちと過ごすようになって、自分の意見が言えるようになったな。
それにしても毅のマフラーか……。羨ましい。
昇の両親のことを昇以上に気にかけていたと卓から聞いていたが、本当だな。
自分が親……父親と離れ離れになったから、同じように離れ離れになってしまった昇を気にしているのかもしれない。
昇のほうはそこまで気にしていないがな。
直くんは本当に優しい子だ。
隣の部屋に置いてある編み物の道具を取りに行き、リビングに連れて行く。
さすがに直くんと昇の部屋に、昇がいない間に入り込むのはたとえ祖父であっても心苦しいからな。
二人の聖域は邪魔しないほうがいい。
リビングに行くと手慣れた様子で編み棒を取り出し、さっと編み始める。
その様子が実に可愛らしくて私がスマホを取り出すと、賢将さんも同じようにスマホを構えた。
やっぱり考えることは同じだな。
直くんが楽しそうに編んでいる姿は見ているだけで癒される。
それからしばらくして講義を終えた絢斗くんとカールくんが部屋から出てきた。
「ナオ! 聞いて! すっごく楽しかったよ!」
興奮冷めやらぬ様子でリビングに駆け込んできたカールくんを見て、直くんはさっと編み棒にキャップをつけ紙袋に仕舞い込んだ。
「どんなことしたの?」
「あのね、お互いに意見を言い合うディベート方式で……」
カールくんが楽しそうにジェスチャーを交えながら話をすると、直くんは興味深そうにその話に聞き入っている。
「ええー、すごい! それならカールが……」
「そう、そうなんだよ!! ナオ、すごいなぁ」
相槌を打ちながら、直くんが言葉を発するがその意見も完全に的を射ていてカールくんは素直に感心しているが、私はもちろん、賢将さんも絢斗くんも驚きしかない。
なんせ大学生の討論をまだ十四歳の直くんがしっかりと理解して自分の意見を述べているのだから。
「直くん、今すぐにでも大学で授業を受けてついていけそうだね」
絢斗くんがポツリと呟く言葉に私も賢将さんも無言で頷いた。
「絢斗、知っていたか? 直くん、桜城大学の過去問を自力で解いてたぞ」
「えっ? 本当?」
「ああ。しかも基礎は完璧だったよ。応用も半分までは完璧に解いていたし、かなりの実力だよ。絢斗は気づいてなかったのか?」
「解きかけのノートを見せられて、何度か教えたことはあったけどまさか桜城の過去問とは思ってなかったよ。確かに中学の編入試験にしては難しいなと思ったけど、直くんが普通に解いてたからそこまで考えてなかった」
絢斗くんもかなりの秀才だからな。
通常の中学生の学力がどれほどなのかわかっていなかったのかもしれない。
「直くん自身は自分の実力を不安に思っていたようだったから、これから受験までは勉強よりも自信をつけさせることを優先したほうがいいな」
「そうなんですね。わかりました」
私の言葉に素直に納得した絢斗くんは、カールくんと直くんが話をしている中にさっと入っていった。
「ねぇ、直くん。次の講義は直くんも一緒に受けよう」
「えっ? 僕も? いいんですか?」
「もちろん! いろんな角度からの意見を話し合ったほうが、理解の幅も広がるしね」
絢斗くんの誘いに、直くんはこの上なく嬉しそうな笑顔を見せた。
「やった! ナオも一緒ならもっと楽しくなりそう!!」
カールくんも喜んでくれたおかげで、直くんもすっかりやる気になって、次の講義のために三人でリモート部屋に入っていった。
「じゃあ、私たちはその間に昼食の支度でもしておきましょうか」
「いいね。直くんたちはおやつにメロンパンを食べるから少し軽めにしておこうか」
そんな話をしながら私たちはキッチンに向かった。
直くんのノートを見て驚いた。
いや、驚いたなんてものじゃない。
賢将さんに見せても私と同じ反応だったのだから、それがいかにすごいことかわかるだろう。
まさかまだ中学生の直くんがあの桜城大学の過去問を解いているとは思いもしなかった。
それは理解できないのも無理はないと思ったが以前のページを見てみたら基礎の復習のところは完璧だった。
通常なら直くんはまだ習ってすらいないはずだが、解けているのだからすごいとしか言いようがない。
私と賢将さんがそのことを褒めると途端に顔色を悪くした。
すぐに嫌な思い出が甦っているのだろうと察して、賢将さんがソファーに座らせて落ち着かせた。
きっと実家にいる間、黙々と勉強させられた上にもっとやれと叱られてばかりだったのだろう。
直くんがこれだけの実力を持ちながら、桜守の受験に対してあれほど不安に思っているのも無理はない。
おそらく毎日不安を煽るようなことを言われて精神的に疲弊されていたのだろうな。
直くんの実力を考えれば、これから受験まで何もしなくても余裕で合格できるだろう。
今は受験勉強よりも直くんの自信をつけさせることのほうを優先したほうがいい。
「直くん、今日は勉強は休んで好きなことをしようか。午後は卓の事務所を見学に行くから、午前中は何か違うことをしよう」
そんな提案を持ちかけてみた。
これまでの直くんなら自分から何かしたいなんて提案できなかっただろう。
だが、直くんは少し考えると嬉しそうな笑顔を向けた。
「好きなこと……あ、じゃあ僕……毅パパのマフラーを編みます。フランスは寒いから早く使って欲しいから……」
そう話す直くんの表情は落ち着いて見えた。
ここで卓たちと過ごすようになって、自分の意見が言えるようになったな。
それにしても毅のマフラーか……。羨ましい。
昇の両親のことを昇以上に気にかけていたと卓から聞いていたが、本当だな。
自分が親……父親と離れ離れになったから、同じように離れ離れになってしまった昇を気にしているのかもしれない。
昇のほうはそこまで気にしていないがな。
直くんは本当に優しい子だ。
隣の部屋に置いてある編み物の道具を取りに行き、リビングに連れて行く。
さすがに直くんと昇の部屋に、昇がいない間に入り込むのはたとえ祖父であっても心苦しいからな。
二人の聖域は邪魔しないほうがいい。
リビングに行くと手慣れた様子で編み棒を取り出し、さっと編み始める。
その様子が実に可愛らしくて私がスマホを取り出すと、賢将さんも同じようにスマホを構えた。
やっぱり考えることは同じだな。
直くんが楽しそうに編んでいる姿は見ているだけで癒される。
それからしばらくして講義を終えた絢斗くんとカールくんが部屋から出てきた。
「ナオ! 聞いて! すっごく楽しかったよ!」
興奮冷めやらぬ様子でリビングに駆け込んできたカールくんを見て、直くんはさっと編み棒にキャップをつけ紙袋に仕舞い込んだ。
「どんなことしたの?」
「あのね、お互いに意見を言い合うディベート方式で……」
カールくんが楽しそうにジェスチャーを交えながら話をすると、直くんは興味深そうにその話に聞き入っている。
「ええー、すごい! それならカールが……」
「そう、そうなんだよ!! ナオ、すごいなぁ」
相槌を打ちながら、直くんが言葉を発するがその意見も完全に的を射ていてカールくんは素直に感心しているが、私はもちろん、賢将さんも絢斗くんも驚きしかない。
なんせ大学生の討論をまだ十四歳の直くんがしっかりと理解して自分の意見を述べているのだから。
「直くん、今すぐにでも大学で授業を受けてついていけそうだね」
絢斗くんがポツリと呟く言葉に私も賢将さんも無言で頷いた。
「絢斗、知っていたか? 直くん、桜城大学の過去問を自力で解いてたぞ」
「えっ? 本当?」
「ああ。しかも基礎は完璧だったよ。応用も半分までは完璧に解いていたし、かなりの実力だよ。絢斗は気づいてなかったのか?」
「解きかけのノートを見せられて、何度か教えたことはあったけどまさか桜城の過去問とは思ってなかったよ。確かに中学の編入試験にしては難しいなと思ったけど、直くんが普通に解いてたからそこまで考えてなかった」
絢斗くんもかなりの秀才だからな。
通常の中学生の学力がどれほどなのかわかっていなかったのかもしれない。
「直くん自身は自分の実力を不安に思っていたようだったから、これから受験までは勉強よりも自信をつけさせることを優先したほうがいいな」
「そうなんですね。わかりました」
私の言葉に素直に納得した絢斗くんは、カールくんと直くんが話をしている中にさっと入っていった。
「ねぇ、直くん。次の講義は直くんも一緒に受けよう」
「えっ? 僕も? いいんですか?」
「もちろん! いろんな角度からの意見を話し合ったほうが、理解の幅も広がるしね」
絢斗くんの誘いに、直くんはこの上なく嬉しそうな笑顔を見せた。
「やった! ナオも一緒ならもっと楽しくなりそう!!」
カールくんも喜んでくれたおかげで、直くんもすっかりやる気になって、次の講義のために三人でリモート部屋に入っていった。
「じゃあ、私たちはその間に昼食の支度でもしておきましょうか」
「いいね。直くんたちはおやつにメロンパンを食べるから少し軽めにしておこうか」
そんな話をしながら私たちはキッチンに向かった。
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