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さようならの代わりに
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<side昇>
「今日は講義に参加させてもらって、弁護士の仕事も見学させてもらってありがとうございました! 僕、春から日本の大学に行く楽しみにができました!」
俺たちと一緒に高校生活を楽しんでいたカールだったけれど、カールにとってここで過ごせた時間はそれよりもずっと充実していたみたいだ。それはカールの表情を見ているだけでよくわかる。
「今日は私たちも楽しかったよ。春からまた日本で勉強できるように祈ってるね。ね、直くん」
「うん。カールと過ごせてよかった。僕も試験頑張るね。これ、ありがとう!」
直くんはポケットから何かを見せていた。きっとカールから試験のお守りのようなものをもらったんだろう。
俺も直くんが試験を頑張れるようなものを用意しておかないとな。
「ノボル、日本に呼んでくれてありがとう。おかげでリューヤとリューヤの家族の仲間に入れてもらえたし、ナオとも友だちになれた。ノボルのおかげだよ」
俺のおかげと言ってくれるのは嬉しいけど、俺の友だちだからって何も気にせず受け入れてくれた懐の深い村山家のおかげだ。俺はなにもしてない。
「見送りには行けないけど、あと数日、家族で日本の生活を楽しんでくれ。春に会えるのを楽しみにしているよ」
「ノボル、ありがとう! ナオ、またね!」
「カールっ! またね!!」
カールは笑顔を向ける直くんにさようならの言葉は言わず、同じような笑顔を向けて何度も振り向いて俺たちに手を振りながら村山と一緒に帰って行った。
「直くん、よく頑張ったね」
「うっ……うっ……」
カールと村山が見えなくなったと同時に絢斗さんが直くんを抱きしめると、直くんの泣き声が事務所に響いた。
カールに涙を見せないように必死に我慢していたんだ。きっと今頃、あんな笑顔を見せていたカールも泣いていることだろう。
笑顔の自分を覚えていて欲しくて二人とも頑張ったんだな。
「昇くん、部屋でゆっくりさせてあげて」
「うん。直くん、行こうか」
絢斗さんから直くんを渡されて、俺は直くんを支えながら階段を上った。
「カールと別れて寂しくなっちゃった?」
「カールと出会って、すごく楽しかったから……」
「そっか、そうだよね。でも春になったら会えるよ。それまででも寂しかったらビデオチャットもできるし! そうしたらいつでも会わせてあげられるよ」
なんとか気持ちを浮上させたくて明るく話をすると、直くんは涙に濡れたまま俺を見上げた。
「昇さんは、どこにも行かないでください……昇さんと離れるのは嫌です」
「――っ、直くん……大丈夫。俺はどこにも行かない。ずっと直くんのそばにいるから。約束するよ」
きっと、直くんにずっと不安にさせていたのかもしれない。
日本を離れた時のあの父さんの言葉。
――不合格だったらフランスに連れて行くからな。
あれは父なりの激励だったんだろう。
俺が不合格だったらなんて、その可能性は1%もないけれど、直くんはそれを素直に受け止めてしまっていたんだ。
俺はさっと直くんを抱きかかえて急いで俺たちの部屋に向かった。
そして直くんを膝に乗せたままソファーに腰を下ろした。
「直くん、小指出して。ちゃんと約束しよう」
俺が小指を見せると、直くんも可愛い小指を見せてくれた。
「俺は直くんとずっと一緒にいるよ。約束!」
直くんと小指を絡めながら、俺はそっと顔を近づけて直くんの涙を唇で舐めとった後で、直くんの唇に自分のそれを重ね合わせた。
チュッと音を立てて離れると、直くんは嬉しそうに笑っていた。
「昇さんと約束する時は、いつもこれがいいです」
「そっか。じゃあ、俺たち二人だけの約束だね」
「約束……」
そう言いながら、直くんの唇が俺の唇に重なった。
この約束なら、俺はどんなことでも守れる! 絶対に!
それから数日後、カールが帰国の日を迎えた。
平日だったが村山はもちろん学校を欠席した。
受験を控えたこの時期に欠席なんてと思われてもおかしくなかったが、余裕で桜城大学に合格できる実力を持つ村山だから、担任も他の教師も何も気にしている様子はなかった。
きっと明日は流石の村山も塞ぎ込んでいることだろう。
俺が村山の立場なら相当辛いだろうからな。
直くんには敢えて、カールの出発時間を伝えなかった。
それでも気にしてしまうだろうということで、直くんのそばにはじいちゃんがついていてくれていた。
授業中も直くんのことが気になって、学校が終わると同時に急いで直くんの元に帰った。
「直くん、ただいま!」
「昇さん、おかえりなさい!」
いつものように笑顔で出迎えてくれた直くんの手には、縹色のマフラーが握られていた。
「直くん、それ……」
「完成したんです! 毅パパのマフラー。だからフランスに送りたいです」
きっとカールと離れる寂しさを、マフラーを編むのに集中することで埋めていたんだろう。
「オッケー。じゃあ手紙も書く?」
「わぁ! 書きたいです!」
「じゃあ、俺も父さんと母さんに書くよ。一緒に送ろう」
俺の提案に直くんは笑顔で返してくれた。
その向こうで、じいちゃんが笑顔で優しく頷いてくれていた。
* * *
ようやくカール編終わりました。
次は餃子パーティーに向けて進んでいきますのでどうぞお楽しみに♡
「今日は講義に参加させてもらって、弁護士の仕事も見学させてもらってありがとうございました! 僕、春から日本の大学に行く楽しみにができました!」
俺たちと一緒に高校生活を楽しんでいたカールだったけれど、カールにとってここで過ごせた時間はそれよりもずっと充実していたみたいだ。それはカールの表情を見ているだけでよくわかる。
「今日は私たちも楽しかったよ。春からまた日本で勉強できるように祈ってるね。ね、直くん」
「うん。カールと過ごせてよかった。僕も試験頑張るね。これ、ありがとう!」
直くんはポケットから何かを見せていた。きっとカールから試験のお守りのようなものをもらったんだろう。
俺も直くんが試験を頑張れるようなものを用意しておかないとな。
「ノボル、日本に呼んでくれてありがとう。おかげでリューヤとリューヤの家族の仲間に入れてもらえたし、ナオとも友だちになれた。ノボルのおかげだよ」
俺のおかげと言ってくれるのは嬉しいけど、俺の友だちだからって何も気にせず受け入れてくれた懐の深い村山家のおかげだ。俺はなにもしてない。
「見送りには行けないけど、あと数日、家族で日本の生活を楽しんでくれ。春に会えるのを楽しみにしているよ」
「ノボル、ありがとう! ナオ、またね!」
「カールっ! またね!!」
カールは笑顔を向ける直くんにさようならの言葉は言わず、同じような笑顔を向けて何度も振り向いて俺たちに手を振りながら村山と一緒に帰って行った。
「直くん、よく頑張ったね」
「うっ……うっ……」
カールと村山が見えなくなったと同時に絢斗さんが直くんを抱きしめると、直くんの泣き声が事務所に響いた。
カールに涙を見せないように必死に我慢していたんだ。きっと今頃、あんな笑顔を見せていたカールも泣いていることだろう。
笑顔の自分を覚えていて欲しくて二人とも頑張ったんだな。
「昇くん、部屋でゆっくりさせてあげて」
「うん。直くん、行こうか」
絢斗さんから直くんを渡されて、俺は直くんを支えながら階段を上った。
「カールと別れて寂しくなっちゃった?」
「カールと出会って、すごく楽しかったから……」
「そっか、そうだよね。でも春になったら会えるよ。それまででも寂しかったらビデオチャットもできるし! そうしたらいつでも会わせてあげられるよ」
なんとか気持ちを浮上させたくて明るく話をすると、直くんは涙に濡れたまま俺を見上げた。
「昇さんは、どこにも行かないでください……昇さんと離れるのは嫌です」
「――っ、直くん……大丈夫。俺はどこにも行かない。ずっと直くんのそばにいるから。約束するよ」
きっと、直くんにずっと不安にさせていたのかもしれない。
日本を離れた時のあの父さんの言葉。
――不合格だったらフランスに連れて行くからな。
あれは父なりの激励だったんだろう。
俺が不合格だったらなんて、その可能性は1%もないけれど、直くんはそれを素直に受け止めてしまっていたんだ。
俺はさっと直くんを抱きかかえて急いで俺たちの部屋に向かった。
そして直くんを膝に乗せたままソファーに腰を下ろした。
「直くん、小指出して。ちゃんと約束しよう」
俺が小指を見せると、直くんも可愛い小指を見せてくれた。
「俺は直くんとずっと一緒にいるよ。約束!」
直くんと小指を絡めながら、俺はそっと顔を近づけて直くんの涙を唇で舐めとった後で、直くんの唇に自分のそれを重ね合わせた。
チュッと音を立てて離れると、直くんは嬉しそうに笑っていた。
「昇さんと約束する時は、いつもこれがいいです」
「そっか。じゃあ、俺たち二人だけの約束だね」
「約束……」
そう言いながら、直くんの唇が俺の唇に重なった。
この約束なら、俺はどんなことでも守れる! 絶対に!
それから数日後、カールが帰国の日を迎えた。
平日だったが村山はもちろん学校を欠席した。
受験を控えたこの時期に欠席なんてと思われてもおかしくなかったが、余裕で桜城大学に合格できる実力を持つ村山だから、担任も他の教師も何も気にしている様子はなかった。
きっと明日は流石の村山も塞ぎ込んでいることだろう。
俺が村山の立場なら相当辛いだろうからな。
直くんには敢えて、カールの出発時間を伝えなかった。
それでも気にしてしまうだろうということで、直くんのそばにはじいちゃんがついていてくれていた。
授業中も直くんのことが気になって、学校が終わると同時に急いで直くんの元に帰った。
「直くん、ただいま!」
「昇さん、おかえりなさい!」
いつものように笑顔で出迎えてくれた直くんの手には、縹色のマフラーが握られていた。
「直くん、それ……」
「完成したんです! 毅パパのマフラー。だからフランスに送りたいです」
きっとカールと離れる寂しさを、マフラーを編むのに集中することで埋めていたんだろう。
「オッケー。じゃあ手紙も書く?」
「わぁ! 書きたいです!」
「じゃあ、俺も父さんと母さんに書くよ。一緒に送ろう」
俺の提案に直くんは笑顔で返してくれた。
その向こうで、じいちゃんが笑顔で優しく頷いてくれていた。
* * *
ようやくカール編終わりました。
次は餃子パーティーに向けて進んでいきますのでどうぞお楽しみに♡
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