ひとりぼっちになった僕は新しい家族に愛と幸せを教えてもらいました

波木真帆

文字の大きさ
356 / 678

天使との対面

しおりを挟む
<side絢斗>

<もうすぐ着く?>

車に乗り込んでからも何度も皐月からメッセージが届く。
よっぽど待ち遠しくてたまらないらしい。

今日のホームパーティーも、悠真くんや真琴くんたちとの家族の時間もあったほうがいいよねと気を利かせて、お昼の少し前に到着して、夕方くらいに帰ると言うスケジュールを考えていたけれど、皐月がせっかく直くんと会えるのにそれじゃ全然足りないと言うから結局十時着の夕食まで食べて帰ることになってしまった。

それくらい今日のこの日を楽しみにしてくれている。

いつもなら皐月たちの家の地下駐車場に車を止めさせてもらうけれど、今日は初めて来る直くんのために玄関から入ってきてと言われている。

きっと玄関で何か歓迎の何かを考えてくれているんだろうと思う。
直くんにはそのことは何も言っていないからきっと驚くだろうな。

もう悠真くんと伊織くんも、真琴くんと成瀬くんも来ているはずだから直くんを見てどんな反応をするか楽しみだ。
何より皐月がどんな反応をするか……。

いや、なんとなくそれはわかる気がする。

だって、私も皐月の立場ならそうしてしまうだろうから……。

「また鳴宮くんか?」

「うん。楽しみで仕方がないみたいだよ」

卓さんにそんな返事をしつつ、

<あと五分くらいで着くよ>

とメッセージを送った。

すぐに<りょーかい!>と可愛いウサギのスタンプがかえって来る。
笑顔でこのスタンプを押しているんだと思うとつい私も笑顔になってしまうな。


「あ、直くん。もうすぐだよ」

昇くんは何度も行っているからさすが皐月の家をよく知っている。

「すごく大きな家ばっかりですね。なんだかドキドキします」

「確かに大きな家だけど、すっごく居心地がいいから安心するはずだよ」

昇くんが直くんに教えてあげているけれど、皐月と志良堂教授の家をそんなふうに思っていたんだ。なんか嬉しい。

言われていた通り、一階にある来客用の駐車場に卓さんが車を止めた。

私が卓さんにエスコートされるように、直くんも昇くんにエスコートされながら車を降りている。
いつも車に乗るたびにそうだから、直くんもそれが普通なんだと思ってきたみたい。

卓さんはそんな昇くんと直くんの姿に満足しているようだ。

「皐月ー! 来たよー!」

玄関チャイムを鳴らして、声をかける。

「鍵開いてるよー!」

そんな言葉がかえってきて、思わず笑ってしまう。

「直くん、こっちにおいで」

開けてすぐに直くんの姿が確認できる場所に直くんを立たせて扉を開けた。
直くんの後ろにはちゃんと昇くんも控えているから安心だ。

扉が開くと、パンッ、パンッ、パンッ! と大きな音で出迎えられる。

「直くん、いらっしゃーい!!」

「えっ、えっ……っ」

皐月と真琴くんと悠真くんの姿に驚く直くんと私たちの前にヒラヒラとしたものがゆっくりと落ちていく。

どうやらさっきの音はクラッカーだったみたい。
直くんは初めてこんな形で出迎えられて茫然としていたけれど、その表情には嬉しさが滲み出ている。
きっとこんなに歓迎されたのが嬉しくてたまらないんだ。
そして、目の前にずっとあいたかった天使ちゃんがいたことにようやく気づいたみたい。

「あ、天使、さん……」

直くんがポツリと言った言葉にすぐに悠真くんが反応する。

「直くん、真琴に会いたかったんだよね。中でゆっくりおしゃべりしようか」

「は、はい」

笑顔の悠真くんに誘われて、直くんは顔を真っ赤にしている。
だって、悠真くんも真琴くんとよく似ていて、綺麗な天使さんなんだから。

「行こう! 行こう!」

「絢斗も来て!」

直くんが真琴くんと悠真くんに連れて行かれるのを見て、皐月も私に声をかける。
私は急いで靴を脱いで皐月と一緒に三人について行った。


<side昇>

いつもなら地下駐車場に入っていく車が一階にある駐車場に止まった。
これは多分直くんのためなんだろう。
それか皐月さんが何か考えているのか……。

皐月さんはいつも楽しく出迎えてくれて明るくて優しい人だ。
絢斗さんと幼稚園時代からの親友というのも頷ける。

直くんをエスコートして降り、絢斗さんが玄関チャイムを鳴らすと鍵が開いているという返答が来た。
それだけでもう何かあることは間違いない。

俺は気合いを入れて、直くんの後ろに立って扉が開くのを待った。

すると、大きなクラッカーの音に出迎えられて、驚きのあまり直くんは後ずさった。
その身体をそっと支えていると、直くんの声が聞こえた。

「天使、さん……」

ずっと会いたいと言っていた直くんの天使さん、それは真琴さんだ。
直くんが真琴さんに見惚れているのが誰の目にもわかる。
真琴さんを溺愛している成瀬さんに威圧されないかとそれだけが心配だったけれど、恐る恐る成瀬さんに視線を向けるとなぜか直くんを見て笑顔を浮かべている。

「えっ……」

信じられないものを見たと思ってしまうほど、成瀬さんの穏やかな表情に驚きしかない。
茫然としていると、直くんは真琴さんと悠真さん、それに皐月さんと絢斗さんに囲まれてさっさと家の中に入って行ってしまった。

「磯山。昇くんも、とりあえず中に入ってくれ」

玄関先に俺と伯父さんが残されたまま立っていると、宗一郎さんが声をかけてくれた。

「皐月が直くんを驚かせてしまったようだな。悪い」

「いや、確かに驚いていたが歓迎されて喜んでいたから大丈夫だよ。それより、成瀬くん……」

伯父さんが成瀬さんに声をかけると、成瀬さんはいつもの表情で伯父さんを見た。

「磯山先生、どうかされましたか?」

「いや、てっきり直くんに嫉妬するんじゃないかと思っていたから驚いたよ。君も寛大になったんだな」

そんな伯父さんの言葉に、伊織さんの方が先に笑みを溢した。

「成瀬は直くんを見て安心しただけですよ。あの子の目には可愛い天使に出会えたという喜びしか見えませんでしたから。成瀬、そうだろう?」

成瀬さんは伊織さんをチラッと見ると、伯父さんに笑顔を向けた。

「流石に私も中学生相手に嫉妬なんてしませんよ」

「そうか、それもそうだな」

伯父さんは成瀬さんの言葉に納得していたけれど、俺は覚えている。
もうすぐ中学生になる俺が真琴さんと初めて会った時、とんでもない威圧を受けまくって真琴さんの半径三メートル以内に近づけなかったのを……。

あの時、俺は思いっきり敵認定されていたに違いない。
しおりを挟む
感想 1,244

あなたにおすすめの小説

なぜ、私に関係あるのかしら?

シエル
ファンタジー
「初めまして、アシュフォード公爵家一女、セシリア・アシュフォードと申します」 彼女は、つい先日までこの国の王太子殿下の婚約者だった。 そして今日、このトレヴァント辺境伯家へと嫁いできた。 「…レオンハルト・トレヴァントだ」 非道にも自らの実妹を長年にわたり虐げ、婚約者以外の男との不適切な関係を理由に、王太子妃に不適格とされ、貴族学院の卒業式で婚約破棄を宣告された。 そして、新たな婚約者として、その妹が王太子本人から指名されたのだった。 「私は君と夫婦になるつもりはないし、辺境伯夫人として扱うこともない」 この判断によって、どうなるかなども考えずに… ※ 中世ヨーロッパ風の世界観です。 ※ ご都合主義ですので、ご了承下さい、 ※ 画像はAIにて作成しております

【完結】『ルカ』

瀬川香夜子
BL
―――目が覚めた時、自分の中は空っぽだった。 倒れていたところを一人の老人に拾われ、目覚めた時には記憶を無くしていた。 クロと名付けられ、親切な老人―ソニーの家に置いて貰うことに。しかし、記憶は一向に戻る気配を見せない。 そんなある日、クロを知る青年が現れ……? 貴族の青年×記憶喪失の青年です。 ※自サイトでも掲載しています。 2021年6月28日 本編完結

腹違いの妹にすべてを奪われた薄幸の令嬢が、義理の母に殴られた瞬間、前世のインテリヤクザなおっさんがぶちギレた場合。

灯乃
ファンタジー
十二歳のときに母が病で亡くなった途端、父は後妻と一歳年下の妹を新たな『家族』として迎え入れた。 彼らの築く『家族』の輪から弾き出されたアニエスは、ある日義母の私室に呼び出され――。 タイトル通りのおっさんコメディーです。

幻獣保護センター廃棄処理係の私、ボロ雑巾のような「ゴミ幻獣」をこっそり洗ってモフっていたら、実は世界を喰らう「終焉の獣」だった件について

いぬがみとうま🐾
ファンタジー
「魔力なしの穀潰し」――そう蔑まれ、幻獣保護センターの地下で廃棄幻獣の掃除に明け暮れる少女・ミヤコ。 実のところ、その施設は「価値のない命」を無慈悲に殺処分する地獄だった。 ある日、ミヤコの前に運ばれてきたのは、泥と油にまみれた「ボロ雑巾」のような正体不明の幻獣。 誰の目にもゴミとしか映らないその塊を、ミヤコは放っておけなかった。 「こんなに汚れたままなんて、かわいそう」 彼女が生活魔法を込めたブラシで丹念に汚れを落とした瞬間、世界を縛る最凶の封印が汚れと一緒に「流されてしまう。 現れたのは、月光を纏ったような美しい銀狼。 それは世界を喰らうと恐れられる伝説の災厄級幻獣『フェンリル・ヴォイド』だった……。

拗らせ問題児は癒しの君を独占したい

結衣可
BL
前世で限界社畜として心をすり減らした青年は、異世界の貧乏子爵家三男・セナとして転生する。王立貴族学院に奨学生として通う彼は、座学で首席の成績を持ちながらも、目立つことを徹底的に避けて生きていた。期待されることは、壊れる前触れだと知っているからだ。 一方、公爵家次男のアレクシスは、魔法も剣術も学年トップの才能を持ちながら、「何も期待されていない」立場に嫌気がさし、問題児として学院で浮いた存在になっていた。 補習課題のペアとして出会った二人。 セナはアレクシスを特別視せず、恐れも媚びも見せない。その静かな態度と、美しい瞳に、アレクシスは強く惹かれていく。放課後を共に過ごすうち、アレクシスはセナを守りたいと思い始める。 身分差と噂、そしてセナが隠す“癒やしの光魔法”。 期待されることを恐れるセナと、期待されないことに傷つくアレクシスは、すれ違いながらも互いを唯一の居場所として見つけていく。 これは、静かに生きたい少年と、選ばれたかった少年が出会った物語。

売れ残りオメガの従僕なる日々

灰鷹
BL
王弟騎士α(23才)× 地方貴族庶子Ω(18才) ※ 第12回BL大賞では、たくさんの応援をありがとうございました!  ユリウスが暮らすシャマラーン帝国では、平民のオメガは18才になると、宮廷で開かれる選定の儀に参加することが義務付けられている。王族の妾となるオメガを選ぶためのその儀式に参加し、誰にも選ばれずに売れ残ったユリウスは、国王陛下から「第3王弟に謀反の疑いがあるため、身辺を探るように」という密命を受け、オメガ嫌いと噂される第3王弟ラインハルトの従僕になった。  無口で無愛想な彼の優しい一面を知り、任務とは裏腹にラインハルトに惹かれていくユリウスであったが、働き始めて3カ月が過ぎたところで第3王弟殿下が辺境伯令嬢の婿養子になるという噂を聞き、従僕も解雇される。

美形×平凡の子供の話

めちゅう
BL
 美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか? ────────────────── お読みくださりありがとうございます。 お楽しみいただけましたら幸いです。 お話を追加いたしました。

僕を惑わせるのは素直な君

秋元智也
BL
父と妹、そして兄の家族3人で暮らして来た。 なんの不自由もない。 5年前に病気で母親を亡くしてから家事一切は兄の歩夢が 全てやって居た。 そこへいきなり父親からも唐突なカミングアウト。 「俺、再婚しようと思うんだけど……」 この言葉に驚きと迷い、そして一縷の不安が過ぎる。 だが、好きになってしまったになら仕方がない。 反対する事なく母親になる人と会う事に……。 そこには兄になる青年がついていて…。 いきなりの兄の存在に戸惑いながらも興味もあった。 だが、兄の心の声がどうにもおかしくて。 自然と聞こえて来てしまう本音に戸惑うながら惹かれて いってしまうが……。 それは兄弟で、そして家族で……同性な訳で……。 何もかも不幸にする恋愛などお互い苦しみしかなく……。

処理中です...