ひとりぼっちになった僕は新しい家族に愛と幸せを教えてもらいました

波木真帆

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きっといいことが……

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<side賢将>

改名に際して、必要な書類の作成のために直くんの診断書を書いてほしいという卓くんからの要請に私は即答で了承した。
直くんが幸せになれるのならなんでもするさ。

法務省に勤めていた友人にも連絡を入れて聞いてみた。
詳しい説明は抜きにしても名前にトラウマがあり、名前を呼ばれることで日常生活に支障をきたす旨を伝えると、医師の診断書があればかなり効果的に改名手続きを進められると言われたため、すぐに清吾の病院に出向き診断書の作成をさせてもらった。

直くんが医師に対してもトラウマを持っていることを知っている清吾は、名前の件を告げるとさらに怒りを見せていたが、直くんが改名することでこれから先の人生を過ごしやすくできるのならそれがいいと賛成してくれた。
今まで辛いことが多かった分、これから先の人生は笑顔で過ごし欲しいと願わずにはいられない。

清吾にも見せて、これなら問題ないだろうということで午後には診断書の作成が終わった。

「すぐに卓くんのところに持っていってやるといい。必要な資料は早く揃った方がいいだろう。ああ、そうだ。うちの可愛い息子が気に入っているケーキ屋がすぐそこにあるから、そこで直くんと絢斗くんにケーキを買って行くといいよ」

「そうだな。卓くんに連絡してみよう」

すぐに卓くんに事務所に持って行くついでに直くんたちにも会いに行きたいとメッセージを送ると卓くんからすぐに了承のメッセージが来た。

よし!
これで直くんと絢斗と楽しいお茶の時間が過ごせるな。

喜びのままに卓くんにスタンプを送り、清吾に親指を立てて見せた。

「よかった。可愛い息子と孫との楽しい時間を過ごしてくるといい。きっといいことがあるはずだよ」

「どういうことだ?」

「まぁまぁ、その時になればわかるよ」

意味深な笑みを浮かべる清吾に不思議な感情を抱きつつも、私は病院を出てケーキ屋に向かった。

絢斗の好きなモンブランとチョコレートケーキ、直くんの好きそうなフルーツがたくさんのったタルトといちごのショートケーキ、私と昇も食べられそうなベイクドチーズケーキとプリンを選んだ。
それとは別の箱に、モンブランとイチゴのショートケーキ、チーズケーキとプリンを入れてもらい、卓くんの事務所に向かった。

「こんにちは」

声をかけて入ると、すぐに事務員の中谷くんがやってくる。

「応接室にどうぞ」

「ありがとう。これは中谷くんへのお土産だ。おやつに食べてくれ。娘ちゃんの分も入っているからこのまま持って帰ってくれて構わないよ」

「ここ有名なケーキ屋さんですよ! 緑川先生、ありがとうございます」

櫻子が喜ぶだろうなという中谷くんの嬉しそうな声を聞きながら、私が応接室に入ると、テーブルにたくさんの資料を広げた卓くんがいた。

「やぁ、もう全部揃ったのか?」

「はい。賢将さんがこんなにも早く持ってきてくださったのですぐに手続きに入れそうです」

「そうか。ならよかった。これ、診断書だよ。法務省の友人と清吾にも協力してもらったからかなり有効な資料になっているはずだよ」

私の言葉に卓くんは笑顔を浮かべていた。

「それじゃあ私はこれからすぐに家庭裁判所に行ってきますので、絢斗と直くんをお願いします。昇ももうすぐしたら帰ってくると思いますよ」

「わかった。任せてくれ」

卓くんは急いで資料をまとめて部屋を出ていった。
こんなに準備万端だったんだ。急いで診断書を仕上げて正解だったな。

事務所から絢斗たちの自宅にあがりながら、そういえば私がくることを伝えているんだろうか?
それを聞くのを忘れていたな。

少し緊張しながら、玄関チャイムを鳴らすとほんのしばらくの間の後でインターフォンから、

「あっ! おじいちゃん!」

と嬉しそうな直くんの声が聞こえた。

「直くん、そうだよ。おじいちゃんだよ。遊びに来たんだが、開けてくれるか?」

「はーい! ちょっと待っててください!」

この上なくはしゃいだ声に歓待してくれているのがわかって嬉しくなる。

カチャリと鍵が開いたと同時に、直くんの笑顔が見える。

「おじいちゃん! いらっしゃい!」

「直くん、今日も元気そうだね。お土産を買ってきたから絢斗も一緒にお茶にしよう」

「あやちゃん、もう少ししたら講義が終わりますよ」

「そうか、じゃあそれまでおしゃべりでもしながら待っていようか」

「はい!」

可愛い直くんに手を引かれ、私は部屋に入った。

ケーキを冷蔵庫に入れたついでに、キッチンで飲み物を入れさせてもらい、直くんとソファーに座っていると、ピリリリとスマホの着信音が聞こえる。

私のものはポケットに入れているから違うだろう。

「直くん、スマホが鳴っていないか?」

「えっ?」

直くんはそこまでスマホには執着はないようだ。
今時の若い子はスマホを肌身離さずの子が多いというが、直くんは違うようだな。

少し離れたテーブルに置いていたスマホを直くんが手にするとなんだか怪訝な表情を浮かべているのがわかる。

「直くん、どうした?」

「知らない人、みたいです」

「どれ、見せてごらん」

直くんからスマホを受け取り見てみると、相手はどうやら清吾の息子の祐悟くんのようだ。

――きっといいことがあるはずだよ

そう言っていた清吾の言葉が甦ってくる。

もしかして……。
きっとそうだ。

「直くん、このメッセージを開いてごらん」

笑顔で優しく声をかけて、直くんにスマホを渡した。
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