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縁側で話を
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<side卓>
家庭裁判所に全ての書類を提出し、改名手続きの申請を行なった。
手続きを開始したおかげで直くんの受験の時には<磯山直>として記載することが可能になった。
年が明けて学校に通うことになった時には、もうすでに<磯山直>に変わっているはずだから何も問題はない。
昇の提案が後押しになったが、本当にこのタイミングで改名を決断して良かったと思う。
ここのところ、このことで少し気を張っていたが申請を行なった今となっては、清々しい気持ちになっている。
当の本人である、直くんにはまだ一切改名については話をしていないのが少し心配ではあるが、直くん自身が名前に対してトラウマを持っていたし、きっと納得してくれることだろう。
明後日は父の引っ越しがある。
と言っても実家はあのまま残すことになるから特に大きな引っ越しではない。
父も元気とはいえ、あの年だ。
賢将さんが一緒に暮らしてくれるのは本当に助かる。
私と絢斗も様子を見に行きやすいし、何より直くんが喜ぶ。
父が暮らすことになる、賢将さんのマンションは桜守の高等部からもそこまで離れていない。
桜守は送迎が必須になっているから、私や昇が迎えに行けない場合は父たちに頼むことができる。
それがとてもありがたい。
思いの外、手続きも早く終わったし、今日はこのあと特に依頼人が来る予定もない。
少し父のところに顔を出してみようか。
そう思い立ち、私が車を走らせて実家に向かった。
「こんにちは」
「なんだ、どうした? こんな時間に」
父が驚くのも無理はない。
こんな昼間に何の連絡もせずに一人で実家に足を運ぶことなんて今まで一度もなかったからな。
「直くんの改名手続きで家庭裁判所に行った帰りにちょっと報告がてら顔を見せにきたんですよ」
私の顔を見るより、可愛い孫たちを見たいと言いたげな表情をしていたものの、流石に追い返すようなことはなく、私を中に入れてくれた。
部屋の中は少しスッキリしているものの、あまり変わった様子はない。
「この辺りはそのままにしておきますか?」
「ああ、持っていくのは自分の部屋のものだけだからな。ついでにこの辺りのいらないものを整理したくらいだ」
そう話しつつ、父はいつものようにコーヒーを淹れ始めた。
家族で過ごした家にコーヒーの香りが漂う。
「ほら」
「ありがとうございます」
少しぶっきらぼうにコーヒーを渡されて、縁側に足を投げ出すように座ると父も何も言わずに少し離れた場所に座った。
「手続きを開始してほっとしたか?」
「はい。まだ少し悩むところはありますが今は早く終わらせて、直くんに新しい人生を歩ませたいと思っています」
「そうか。それならいい。もう開始したなら後ろは振り返るな。振り返っても何の得にもならないからな」
父の言葉が心に刺さる。
昇も自分で考えて新しい道を進むことを決めた。
今の昇にはやっぱり法学部に……なんて気持ちはないだろう。
「私もここを離れることは少し悩んだが、賢将さんと暮らすことを決めたらもう振り返りはしない。ここはこれから家族で集まるだけの場所にしたらいい。きっと沙都も喜ぶ」
母はイベントごとが好きだった。
絢斗や二葉さんのような可愛い息子と、娘、それに可愛い孫ができてがやっと一緒にイベントを楽しめると喜んでいたものだ。あのころはいつだって笑顔と笑い声に溢れていた。
「まずはクリスマスですね」
「そういえばこの間の賢将さんの話で、お前がサンタクロースに心当たりがいると言っていたが、もしかしてあの人か?」
「多分、父さんが想像している人だと思います。あの人なら直くんに接点もないし、楽しんでやってくれそうでしょう?」
「やはり、そうか。彼なら私の方から話を通しておこうか。お前はいろいろとやることがあるだろう。それにいろいろと打ち合わせもしやすい」
「そうですね。じゃあお願いします」
サンタクロースの依頼を父に任せて、私は事務所に戻った。
駐車場に入れる前に事務所の入り口から中を窺おうとしている人がいて、それが気になり地下駐車場から一度事務所の入り口に戻るとまだそこにその人がいた。
「うちの事務所に何か御用ですか?」
そっと近づいて声をかけると、驚きの表情で振り返ったのはまさかの人物だった。
家庭裁判所に全ての書類を提出し、改名手続きの申請を行なった。
手続きを開始したおかげで直くんの受験の時には<磯山直>として記載することが可能になった。
年が明けて学校に通うことになった時には、もうすでに<磯山直>に変わっているはずだから何も問題はない。
昇の提案が後押しになったが、本当にこのタイミングで改名を決断して良かったと思う。
ここのところ、このことで少し気を張っていたが申請を行なった今となっては、清々しい気持ちになっている。
当の本人である、直くんにはまだ一切改名については話をしていないのが少し心配ではあるが、直くん自身が名前に対してトラウマを持っていたし、きっと納得してくれることだろう。
明後日は父の引っ越しがある。
と言っても実家はあのまま残すことになるから特に大きな引っ越しではない。
父も元気とはいえ、あの年だ。
賢将さんが一緒に暮らしてくれるのは本当に助かる。
私と絢斗も様子を見に行きやすいし、何より直くんが喜ぶ。
父が暮らすことになる、賢将さんのマンションは桜守の高等部からもそこまで離れていない。
桜守は送迎が必須になっているから、私や昇が迎えに行けない場合は父たちに頼むことができる。
それがとてもありがたい。
思いの外、手続きも早く終わったし、今日はこのあと特に依頼人が来る予定もない。
少し父のところに顔を出してみようか。
そう思い立ち、私が車を走らせて実家に向かった。
「こんにちは」
「なんだ、どうした? こんな時間に」
父が驚くのも無理はない。
こんな昼間に何の連絡もせずに一人で実家に足を運ぶことなんて今まで一度もなかったからな。
「直くんの改名手続きで家庭裁判所に行った帰りにちょっと報告がてら顔を見せにきたんですよ」
私の顔を見るより、可愛い孫たちを見たいと言いたげな表情をしていたものの、流石に追い返すようなことはなく、私を中に入れてくれた。
部屋の中は少しスッキリしているものの、あまり変わった様子はない。
「この辺りはそのままにしておきますか?」
「ああ、持っていくのは自分の部屋のものだけだからな。ついでにこの辺りのいらないものを整理したくらいだ」
そう話しつつ、父はいつものようにコーヒーを淹れ始めた。
家族で過ごした家にコーヒーの香りが漂う。
「ほら」
「ありがとうございます」
少しぶっきらぼうにコーヒーを渡されて、縁側に足を投げ出すように座ると父も何も言わずに少し離れた場所に座った。
「手続きを開始してほっとしたか?」
「はい。まだ少し悩むところはありますが今は早く終わらせて、直くんに新しい人生を歩ませたいと思っています」
「そうか。それならいい。もう開始したなら後ろは振り返るな。振り返っても何の得にもならないからな」
父の言葉が心に刺さる。
昇も自分で考えて新しい道を進むことを決めた。
今の昇にはやっぱり法学部に……なんて気持ちはないだろう。
「私もここを離れることは少し悩んだが、賢将さんと暮らすことを決めたらもう振り返りはしない。ここはこれから家族で集まるだけの場所にしたらいい。きっと沙都も喜ぶ」
母はイベントごとが好きだった。
絢斗や二葉さんのような可愛い息子と、娘、それに可愛い孫ができてがやっと一緒にイベントを楽しめると喜んでいたものだ。あのころはいつだって笑顔と笑い声に溢れていた。
「まずはクリスマスですね」
「そういえばこの間の賢将さんの話で、お前がサンタクロースに心当たりがいると言っていたが、もしかしてあの人か?」
「多分、父さんが想像している人だと思います。あの人なら直くんに接点もないし、楽しんでやってくれそうでしょう?」
「やはり、そうか。彼なら私の方から話を通しておこうか。お前はいろいろとやることがあるだろう。それにいろいろと打ち合わせもしやすい」
「そうですね。じゃあお願いします」
サンタクロースの依頼を父に任せて、私は事務所に戻った。
駐車場に入れる前に事務所の入り口から中を窺おうとしている人がいて、それが気になり地下駐車場から一度事務所の入り口に戻るとまだそこにその人がいた。
「うちの事務所に何か御用ですか?」
そっと近づいて声をかけると、驚きの表情で振り返ったのはまさかの人物だった。
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