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浅香くんからの電話
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<side卓>
正直に言って驚いた。
まさかこんなすごい演奏を聴けるとは……。
学生時代にギターを齧ったくらいで楽器には縁がなかった私でも、直くんの演奏は魂を揺さぶられるようなそんな感覚を抱いた。
もちろんプロから見れば不十分なところもあるだろう。
だが、直くんの演奏はなんというか……心に訴えかけてくるものがある。
考えてみれば楽譜もなく弾いているんだ。
覚えているまま弾くのではなく、そこに直くんの感情が乗っている。
今までの思い、これからの思い、その全てを感じることができた。
感受性の強い絢斗は、演奏を聞き始めてすぐに涙を流し始めた。
さっとハンカチを渡し、寄り添いながら演奏を聴き続けていたが、気づけば私も涙を流していた。
演奏が終わってすぐに感想を伝えたいと思いつつも、あまりの感動に言葉がつまって出てこない。
直くんを不安にさせるわけにはいかないが、言葉に表せないほど素晴らしい演奏だった。
直くんにすぐに駆け寄って感想を伝える昇に心の中でお礼を言いながら、私はそっと絢斗を抱きしめた。
「直くんはいろんな才能を秘めてるな」
「うん。あんなに幸せそうに弾いてくれて……ピアノはトラウマじゃなかったみたいで良かった。ねぇ、卓さん……」
「絢斗の言いたいことはわかってる。うちにピアノを置きたいと言うんだろう?」
私の言葉に絢斗は目を丸くした。目に溜まっていた涙がぽろっと溢れるのをそっと指で拭ってやる。
「どうしてわかったの?」
「私も同じことを思ったからだよ。家でも直くんの演奏が聴きたいんだ」
そっと唇にキスを落とすと、絢斗が嬉しそうに笑った。
「直くんのところに行こう!」
絢斗に手を取られて一緒にピアノまで向かうと直くんと昇の嬉しそうな顔に迎えられた。
「パパ、あやちゃん……」
「直くん、すっごく素敵だった! もう涙が止まらないよ!」
「良かった……久しぶりだったけど、僕も楽しく弾けました」
ポーンポーンと嬉しそうに音を鳴らす姿も愛おしい。
「直くん、うちにもピアノを置こう」
「えっ? いいんですか?」
「もちろんだよ。家で直くんの演奏が聞けたら最高だな。昇が受験勉強で行き詰まっている時も、直くんの演奏を聞けたらリラックスできるだろうし。なぁ、昇」
私の言葉に昇は目を輝かせて大きく頷いた。
「それに、今度直くんに紹介しようと思っていたんだが、私の友人の息子でパラリーガルをやっている子がいてね。その子はヴァイオリンとピアノが得意なんだそうだよ。彼と一緒に演奏するのも楽しいんじゃないかな?」
昇の反応だけでも喜んでいた直くんだったが、私のこの言葉が直くんを後押しすることになったようだ。
「わぁ! 楽しそう!」
可愛い息子が喜んでくれる姿を見るのは私も嬉しい。
「そうだろう? じゃあ早速ピアノを買うとしよう」
さて、誰に相談しようか。
やはりさっき話にも出した元春に声をかけてみようか。
彼の自宅にもピアノがあったし、きっといいところを紹介してくれるだろう。
その後、スイーツとカフェオレをもう少し楽しんで、私たちは特別室をあとにした。
料金を支払おうとして、オーナーからすでにいただいてますと言われてしまった。
さすがに奢られるわけにはいかないと思ったが、ここでスタッフに言っても仕方のないことだ。
後で浅香くんに連絡しておこうとその場はそれを受け入れた。
帰宅後、浅香くんにお礼の電話をかけようとしたが、その前に絢斗のスマホに浅香くんから電話が来た。
私が一緒に部屋にいたから、絢斗はスピーカーにしてその電話を受けた。
ー敬介くん? 今日はいろいろとありがとう。
ーあの、今お時間よろしいですか?
普段通りに絢斗が電話に出ると、いつもの浅香くんとは違って、少し興奮しているように聞こえた。
ーうん。もう家に帰ってきたから大丈夫だよ。何かあった?
ーお話ししたいことが二つあって、一つは直くんの試験のことなんですが……
ーもう結果が出たの?
ー斎川くんから試験の時の直くんの様子を聞いて、担当教師にすぐに採点をしてもらったんです。そうしたら……三教科完璧な解答で満点でした。
ー満点? すごい!
ーすごいなんてものじゃないですよ。あの問題文が間違えていた証明問題も違う公式を使って書き上げた直くんの証明は高校の数学の先生さえ舌を巻くほどの解答だったそうです。あれを中学生が解いたとは信じられないとまで言っていましたよ。
浅香くんの声がどんどん興奮していくのがわかる。
それくらい直くんの学力が素晴らしかったということなんだろう。
あの成瀬くんも、直くんの学力には驚いていたからな、当然と言えばそうなのかもしれない
ーじゃあ、直くんは合格ってことでいいんだよね?
ーもちろんです! 特待生として我が校に入学していただきます。入学書類に関しては一週間後に郵送でお届けしますのでお手続きをよろしくお願いします。
ーわぁ! やった!
直くんが桜守学園の生徒になることが決定した瞬間、私は絢斗を抱きしめて喜びを分かち合った。
正直に言って驚いた。
まさかこんなすごい演奏を聴けるとは……。
学生時代にギターを齧ったくらいで楽器には縁がなかった私でも、直くんの演奏は魂を揺さぶられるようなそんな感覚を抱いた。
もちろんプロから見れば不十分なところもあるだろう。
だが、直くんの演奏はなんというか……心に訴えかけてくるものがある。
考えてみれば楽譜もなく弾いているんだ。
覚えているまま弾くのではなく、そこに直くんの感情が乗っている。
今までの思い、これからの思い、その全てを感じることができた。
感受性の強い絢斗は、演奏を聞き始めてすぐに涙を流し始めた。
さっとハンカチを渡し、寄り添いながら演奏を聴き続けていたが、気づけば私も涙を流していた。
演奏が終わってすぐに感想を伝えたいと思いつつも、あまりの感動に言葉がつまって出てこない。
直くんを不安にさせるわけにはいかないが、言葉に表せないほど素晴らしい演奏だった。
直くんにすぐに駆け寄って感想を伝える昇に心の中でお礼を言いながら、私はそっと絢斗を抱きしめた。
「直くんはいろんな才能を秘めてるな」
「うん。あんなに幸せそうに弾いてくれて……ピアノはトラウマじゃなかったみたいで良かった。ねぇ、卓さん……」
「絢斗の言いたいことはわかってる。うちにピアノを置きたいと言うんだろう?」
私の言葉に絢斗は目を丸くした。目に溜まっていた涙がぽろっと溢れるのをそっと指で拭ってやる。
「どうしてわかったの?」
「私も同じことを思ったからだよ。家でも直くんの演奏が聴きたいんだ」
そっと唇にキスを落とすと、絢斗が嬉しそうに笑った。
「直くんのところに行こう!」
絢斗に手を取られて一緒にピアノまで向かうと直くんと昇の嬉しそうな顔に迎えられた。
「パパ、あやちゃん……」
「直くん、すっごく素敵だった! もう涙が止まらないよ!」
「良かった……久しぶりだったけど、僕も楽しく弾けました」
ポーンポーンと嬉しそうに音を鳴らす姿も愛おしい。
「直くん、うちにもピアノを置こう」
「えっ? いいんですか?」
「もちろんだよ。家で直くんの演奏が聞けたら最高だな。昇が受験勉強で行き詰まっている時も、直くんの演奏を聞けたらリラックスできるだろうし。なぁ、昇」
私の言葉に昇は目を輝かせて大きく頷いた。
「それに、今度直くんに紹介しようと思っていたんだが、私の友人の息子でパラリーガルをやっている子がいてね。その子はヴァイオリンとピアノが得意なんだそうだよ。彼と一緒に演奏するのも楽しいんじゃないかな?」
昇の反応だけでも喜んでいた直くんだったが、私のこの言葉が直くんを後押しすることになったようだ。
「わぁ! 楽しそう!」
可愛い息子が喜んでくれる姿を見るのは私も嬉しい。
「そうだろう? じゃあ早速ピアノを買うとしよう」
さて、誰に相談しようか。
やはりさっき話にも出した元春に声をかけてみようか。
彼の自宅にもピアノがあったし、きっといいところを紹介してくれるだろう。
その後、スイーツとカフェオレをもう少し楽しんで、私たちは特別室をあとにした。
料金を支払おうとして、オーナーからすでにいただいてますと言われてしまった。
さすがに奢られるわけにはいかないと思ったが、ここでスタッフに言っても仕方のないことだ。
後で浅香くんに連絡しておこうとその場はそれを受け入れた。
帰宅後、浅香くんにお礼の電話をかけようとしたが、その前に絢斗のスマホに浅香くんから電話が来た。
私が一緒に部屋にいたから、絢斗はスピーカーにしてその電話を受けた。
ー敬介くん? 今日はいろいろとありがとう。
ーあの、今お時間よろしいですか?
普段通りに絢斗が電話に出ると、いつもの浅香くんとは違って、少し興奮しているように聞こえた。
ーうん。もう家に帰ってきたから大丈夫だよ。何かあった?
ーお話ししたいことが二つあって、一つは直くんの試験のことなんですが……
ーもう結果が出たの?
ー斎川くんから試験の時の直くんの様子を聞いて、担当教師にすぐに採点をしてもらったんです。そうしたら……三教科完璧な解答で満点でした。
ー満点? すごい!
ーすごいなんてものじゃないですよ。あの問題文が間違えていた証明問題も違う公式を使って書き上げた直くんの証明は高校の数学の先生さえ舌を巻くほどの解答だったそうです。あれを中学生が解いたとは信じられないとまで言っていましたよ。
浅香くんの声がどんどん興奮していくのがわかる。
それくらい直くんの学力が素晴らしかったということなんだろう。
あの成瀬くんも、直くんの学力には驚いていたからな、当然と言えばそうなのかもしれない
ーじゃあ、直くんは合格ってことでいいんだよね?
ーもちろんです! 特待生として我が校に入学していただきます。入学書類に関しては一週間後に郵送でお届けしますのでお手続きをよろしくお願いします。
ーわぁ! やった!
直くんが桜守学園の生徒になることが決定した瞬間、私は絢斗を抱きしめて喜びを分かち合った。
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