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直くんのお祝い
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<side寛>
今日は私と賢将さんが暮らすこのマンションにピアノが届く。
無事に設置したら今度は卓たちの家にピアノを設置し、そのまま直くんの入学祝いのパーティーをすることになっている。
パーティーの料理は卓が腕を奮うそうだが、私と賢将さんも直くんに喜んで欲しくて二人で作ることにした。
二人で作るそれは、直くんへの祝いのケーキ。
もちろん、本格的なホールケーキは初めての試みだが、性能の良いオーブンもあるし、二人で手分けをして頑張ればやれるだろう。何より直くんの喜ぶ顔が見たい。
卓たちには私たちが祝いのケーキを用意するから買わなくていいと告げてある。
きっと絢斗くんが気に入っている果物の美味しいケーキ店で買ってくると思っているだろう。
直くんだけでなく、卓たちもまとめて驚いてくれたらいい。
初めての本格的なケーキ作りにどれだけ時間がかかるのか見当もつかないから、早めの朝食をとってすぐに取り掛かる。
賢将さんと二人でなんのケーキを作ろうかと話し合った結果、直くんが好きな苺のデコレーションケーキを作ることにした。
丸型の周りをクリームで塗るタイプは初心者の我々には難しいだろうということになり、スクエア型で飾り付けをしてから型から抜くタイプを選択した。
レシピを見てみるが、想像していた以上に工程が多く、しかも材料も事細かに分けられきっちりと分量を計らなければいけない。食事をつくるよりもずっと手間がかかる作業が多いことに驚くが、これで直くんが喜んでくれるのなら頑張るしかない。
一人で作るならともかく賢将さんと二人ならやれるだろう。
なんせ、この同居生活が始まって、お互いに長年一緒に暮らしていたかのように補い合って過ごしているのだから。
型にクッキングシートを載せて下準備を整え、一番大事なスポンジ作りに取り掛かる。
「ケーキ作りで一番体力を使うのはここです。だからこれを使いましょう」
賢将さんが用意しておいてくれたハンドミキサーは軽いのに威力が強く、みるみるうちに生地の形状が変わっていく。
「これは楽しいな」
「秋穂がケーキを作るときに何度か手伝ったことがありますが、その時はホイッパーでひたすらにかき混ぜたので本当に大変でしたよ。これは本当に楽でいいですね」
賢将さんは実体験から時間短縮と体力消耗回避のために用意しておいてくれたようだ。
あっという間に出来上がった生地を型に流し入れ、オーブンで焼いていく。
この家に甘い香りが漂い始めた。
「香りだけは今のところ成功だな」
「そうですね。綺麗に焼けたらあとはデコレーションだけですよ」
そこから焼けるまで待ち遠しくてたまらなかった。
三十分ほど焼いてオーブンから取り出すと綺麗なきつね色に焼けていて穴や割れもない。
どうやら成功したようだ。
粗熱が取れてから型から外し、冷ましている間に飾り付けの準備を整える。
周りを囲う苺を半分に切り、生クリームを泡立てる。
泡立ての途中に潰した苺を入れて、苺生クリームにした。
「さて、ここからが重要だな」
スポンジを三枚に切り、その一枚をスクエア型の枠に入れて周りに半分に切った苺で囲い、生クリームを乗せていく、二枚目のスポンジを入れて同じように苺で囲い、生クリームを乗せた上に最後のスポンジを乗せて生クリームと苺を飾り付けしていく。
「結構上手くできたな」
「ええ、見栄えは完璧ですよ!」
成功を八割ほど確信しているから私も賢将さんも笑顔が止まらない。
綺麗に飾り付けをしたところで冷蔵庫でそのまま冷やして休ませる。
かなり順調に言ってホッとしたところで、コンシェルジュからピアノの配送業者がきたと連絡が来た。
マンションへの搬入ということで一度配送業者が下見に来たが、我が家にやってくるグランドピアノが比較的小型だということと、荷物搬入用の大きなエレベーターが完備してあるということで四人の作業員で大丈夫とのことだった。
ピアノの足を外し、大きな台車に載せられた状態で四人の作業員がしっかりと梱包されたピアノを支えながらやってくる。
ピアノ用に準備しておいた何もない部屋に案内すると、手際よく梱包をはずし、ピアノの足が取り付けられる。
それを丁寧に持ち上げて、無事に設置が完了した。
木目調のグランドピアノはなんともこの部屋に似合っていて直くんがこれに座って演奏するのを想像するだけで楽しくなる。
私は設置されたピアノを写真に収め、配送業者は帰って行った。
「いいですね。このピアノ」
「ああ、直くんは見る目がある。本当にいいピアノだ」
もし沙都が生きていたら、琴とピアノの共演というのも素晴らしかっただろうな。
もしかしたらあの家にだったら沙都もまた来てくれるだろうか。
その時はぜひ一緒に直くんの演奏を聴くとしよう。なぁ、沙都。
今日は私と賢将さんが暮らすこのマンションにピアノが届く。
無事に設置したら今度は卓たちの家にピアノを設置し、そのまま直くんの入学祝いのパーティーをすることになっている。
パーティーの料理は卓が腕を奮うそうだが、私と賢将さんも直くんに喜んで欲しくて二人で作ることにした。
二人で作るそれは、直くんへの祝いのケーキ。
もちろん、本格的なホールケーキは初めての試みだが、性能の良いオーブンもあるし、二人で手分けをして頑張ればやれるだろう。何より直くんの喜ぶ顔が見たい。
卓たちには私たちが祝いのケーキを用意するから買わなくていいと告げてある。
きっと絢斗くんが気に入っている果物の美味しいケーキ店で買ってくると思っているだろう。
直くんだけでなく、卓たちもまとめて驚いてくれたらいい。
初めての本格的なケーキ作りにどれだけ時間がかかるのか見当もつかないから、早めの朝食をとってすぐに取り掛かる。
賢将さんと二人でなんのケーキを作ろうかと話し合った結果、直くんが好きな苺のデコレーションケーキを作ることにした。
丸型の周りをクリームで塗るタイプは初心者の我々には難しいだろうということになり、スクエア型で飾り付けをしてから型から抜くタイプを選択した。
レシピを見てみるが、想像していた以上に工程が多く、しかも材料も事細かに分けられきっちりと分量を計らなければいけない。食事をつくるよりもずっと手間がかかる作業が多いことに驚くが、これで直くんが喜んでくれるのなら頑張るしかない。
一人で作るならともかく賢将さんと二人ならやれるだろう。
なんせ、この同居生活が始まって、お互いに長年一緒に暮らしていたかのように補い合って過ごしているのだから。
型にクッキングシートを載せて下準備を整え、一番大事なスポンジ作りに取り掛かる。
「ケーキ作りで一番体力を使うのはここです。だからこれを使いましょう」
賢将さんが用意しておいてくれたハンドミキサーは軽いのに威力が強く、みるみるうちに生地の形状が変わっていく。
「これは楽しいな」
「秋穂がケーキを作るときに何度か手伝ったことがありますが、その時はホイッパーでひたすらにかき混ぜたので本当に大変でしたよ。これは本当に楽でいいですね」
賢将さんは実体験から時間短縮と体力消耗回避のために用意しておいてくれたようだ。
あっという間に出来上がった生地を型に流し入れ、オーブンで焼いていく。
この家に甘い香りが漂い始めた。
「香りだけは今のところ成功だな」
「そうですね。綺麗に焼けたらあとはデコレーションだけですよ」
そこから焼けるまで待ち遠しくてたまらなかった。
三十分ほど焼いてオーブンから取り出すと綺麗なきつね色に焼けていて穴や割れもない。
どうやら成功したようだ。
粗熱が取れてから型から外し、冷ましている間に飾り付けの準備を整える。
周りを囲う苺を半分に切り、生クリームを泡立てる。
泡立ての途中に潰した苺を入れて、苺生クリームにした。
「さて、ここからが重要だな」
スポンジを三枚に切り、その一枚をスクエア型の枠に入れて周りに半分に切った苺で囲い、生クリームを乗せていく、二枚目のスポンジを入れて同じように苺で囲い、生クリームを乗せた上に最後のスポンジを乗せて生クリームと苺を飾り付けしていく。
「結構上手くできたな」
「ええ、見栄えは完璧ですよ!」
成功を八割ほど確信しているから私も賢将さんも笑顔が止まらない。
綺麗に飾り付けをしたところで冷蔵庫でそのまま冷やして休ませる。
かなり順調に言ってホッとしたところで、コンシェルジュからピアノの配送業者がきたと連絡が来た。
マンションへの搬入ということで一度配送業者が下見に来たが、我が家にやってくるグランドピアノが比較的小型だということと、荷物搬入用の大きなエレベーターが完備してあるということで四人の作業員で大丈夫とのことだった。
ピアノの足を外し、大きな台車に載せられた状態で四人の作業員がしっかりと梱包されたピアノを支えながらやってくる。
ピアノ用に準備しておいた何もない部屋に案内すると、手際よく梱包をはずし、ピアノの足が取り付けられる。
それを丁寧に持ち上げて、無事に設置が完了した。
木目調のグランドピアノはなんともこの部屋に似合っていて直くんがこれに座って演奏するのを想像するだけで楽しくなる。
私は設置されたピアノを写真に収め、配送業者は帰って行った。
「いいですね。このピアノ」
「ああ、直くんは見る目がある。本当にいいピアノだ」
もし沙都が生きていたら、琴とピアノの共演というのも素晴らしかっただろうな。
もしかしたらあの家にだったら沙都もまた来てくれるだろうか。
その時はぜひ一緒に直くんの演奏を聴くとしよう。なぁ、沙都。
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