ひとりぼっちになった僕は新しい家族に愛と幸せを教えてもらいました

波木真帆

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みんなに愛される

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「どうした?」

「いや、村山の母さんのことだから、うちの母さんと、それこそ絢斗さんにも届いているんじゃないかなと思ってさ」

俺の言葉に村山はニヤリと意味深な笑みを見せた。

「正解! 今日それぞれの家に届くように手配してるぜ」

ああ、やっぱりか……。
そんな気がしたよ。

昨日、俺と直くんが風呂に入っている時に、絢斗さんが早速あの可愛いウサ耳カチューシャをつけた直くんの写真を母さんに送っていた。すると、その写真を見た母さんから怒涛の返信が来たようだ。

もちろん絢斗さんが送ってくれたのは上半身の俺と直くんの姿だけ。
本当はそれだって父さんには見せたくなかったけれど、全身を見せるよりはずっとマシだ。

結局俺たちが風呂から出てくる直前まで絢斗さんと母さんは盛り上がって話をしていたみたいだ。
その話の中ではカチューシャの件はもちろんだけど、ピアノを弾いている直くんの動画も送ったらしい。
その演奏を早速スマホに取り込んで着信音にすると話していたらしくて、そのアイディアを早速俺ももらうことにした。

母さんから教えてもらったというのはちょっと複雑な気持ちもあるが、その辺は妥協しないとな。

と、それはともかく、パリは今真夜中だから、下校する頃には母さんのところにも絢斗さんのところにもそれぞれ届いているということか。

絶対に間違えて伯父さん家に帰らないようにしないとな。

「あれ? 仲間が増えたのか?」

「ん?」

いきなり何を言ってるんだ? と思いつつ、村山の視線の先を見ると、俺の鞄に向いていた。

「ああ、これか。直くんに合格祝いにあの店でキーホルダーを買ったんだよ。白か茶色が選べなくて二つ買ったら直くんにお揃いでつけたいって言われてさ」

「なるほどな。桜守の伝統だもんな」

どうやら村山は桜守の子たちが大切な人からもらった動物のキーホルダーを鞄につけるって知っていたみたいだ。
卒業生の村山の母さんから聞いたのか。

「でも桜守って送迎が必須だろう? お前、浪人するから一年間は迎えに行けるとして、大学始まったらどうするんだ? 朝はいけても帰りは難しいんじゃないか?」

俺が目指すのは医学部。
初年度からかなり忙しいと聞いている。
しかも、その上で司法試験の勉強もするつもりだし、どれだけ時間があっても足りないけれど、司法試験の勉強は浪人の間にもやるつもりだし、直くんを最優先に動くのは変わらない。

「極力俺が迎えに行くつもりだけど、どうしてもの時はじいちゃんたちにお願いしているから大丈夫だ。多分伯父さんも迎えに行きたいって言い出すんじゃないか」

「すげぇな。直くん一人にそこまで保護者がいるのは」

「まぁな。直くん、本当に可愛がられているから」

そのことに関して俺は本当に孫なのに、なんて嫉妬の気持ちは一切ない。
むしろ、みんなで直くんを守れる環境が整っていることに喜んでいるくらいだ。

「それよりお前は勉強進んでるのか?」

共テまで一ヶ月を切っている。
いつもは朝のHR前は騒がしいのに、周りを見てもみんな勉強に集中していて、話をしているのは俺たちくらいだ。

「ちゃんと家でやってるから大丈夫だよ。それよりお前もしっかりやらないと俺に首席の座を取られるぞ」

その自信満々な笑みに村山が必死に頑張っていることを知る。
浪人を認めてもらう代わりに首席で合格すると決めたのは俺自身。
俺も本気でやらないとな。


あっという間に放課後。

「じゃあ、俺先に帰るから」

村山と友人たちにそれだけ言い残して、俺は靴箱に走った。

今頃、直くんはじいちゃんちで楽しく過ごしているだろうか。

今日は久しぶりのじいちゃん家の泊まりだと思うと、子どものようにワクワクしている自分がいた。


<side直>

おじいちゃまとおじいちゃんとの楽しいお昼ご飯を終えて、お店を出た。
二人の間に入れてもらって、手を繋いで歩くのはすごく楽しい。

「八百屋はあっちだよ」

「わぁ! 僕、八百屋さん。初めてです!」

連れられていくと、そこは小さな商店街みたい。
八百屋さんだけじゃなくて、魚屋さんや肉屋さんもある。

「この匂いはなんですか?」

「ああ、これはあそこの肉屋で揚げているコロッケだよ。せっかくだから一つ買って揚げたてをみんなで食べようか」

「揚げたてを、食べる? わぁー! 楽しそう!」

さっきご飯を食べたばかりでお腹いっぱいだけど、この匂いには抗えない。
一個を三人で分けるなら僕にも食べられるかな。

みんなで肉屋さんに向かうとおじいちゃまが慣れた様子で店主さんに声をかけていた。

「注文いいかな?」

「はい、あっ! 寛先生。お元気そうですね」

「ありがとう。その揚げたての牛肉コロッケを一つもらえるかな。すぐ食べたいんだ」

「コロッケ一つですね。ありがとうございます!」

店主さんが揚げたての中から一つ、袋に入れてくれる。
それだけで美味しそうだってわかる。

「直くん。熱いから気をつけるんだよ」

おじいちゃまは僕の口の前にコロッケを持ってきてくれる。
すごくいい匂いがする。

パクッと食べると、想像以上に熱い。
でもそれ以上に香ばしくて気付けば大きな声で言ってしまっていた。

「んー! おいひぃ!!」

外で食べるコロッケ。
本当に最高だ。



   *   *   *


いつも読んでいただきありがとうございます!
気付けばこのお話、500話を過ぎてました。自分でも驚きです。
ここまで続けられているのも、皆様が読んでくださっている証。
これからもまだまだ続きますが、楽しんでいただけると嬉しいです♡
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