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<閑話> 天使ちゃんのピアノ side沙都 (前編)
<side沙都>
「あらあら、明日はあの家に孫たちとお泊まりみたい」
私と秋穂さんは転生の輪に入ることを拒否して、いつかこちらにやってくる旦那さまたちを待ち続けるグループに入った。
そうしていつもの日課で、空から愛しい旦那さまたちの様子を眺めていた。
寛さんと賢将さんがそれぞれ別々で暮らしていた時には、なかなか幸せそうに見えなかったけれど、直くんという可愛い孫の存在ができてからは直くんを共通点にして、二人で同居も始めてくれたしいつも幸せそう。
今まで時折下界に降りて旦那さまたちのそばにいたこともあったけれど、そのことになかなか気づいてもらえず私たちはただ見守ることしかできなかったけれど、素直で純粋な心を持つ直くんが私たちの声も姿もみつけてくれることがわかった。
「それなら遊びに行きましょうか」
「ええ。それがいいわ」
直くんの合格お祝いの翌日、あの磯山の家で寛さんと賢将さん。そして直くんと昇の四人でお泊まりすることになって、久しぶりにあの家に暖かい空気が戻ってくる。
そして、当日。
寛さんがあの家に足を踏み入れたのを見て、私も一足早くあの家に舞い降りた。
人の気配がなかった家に、明かりが灯るのはなんだかワクワクしてしまう。
これはきっと寛さんの気持ちを感じているのかもしれない。
そうして、直くんと賢将さんがやってきて、秋穂さんも私のそばに降りてきた。
そこに大きなピアノが運ばれてくる。
「素敵なピアノね」
「ええ。あれで直くんは何を弾いてくれるかしら?」
「そうね。何かしら?」
寛さんと賢将さんがピアノのそばにあるソファーに腰を下ろすのを見て、私たちもそれぞれ二人の隣に座ってみたけれど、やっぱり二人は気づかない。
仕方がないとわかっていても、それは少し寂しいものがある。
すると、そんな私の気持ちを見透かしたように直くんが指ならしをしながら心の中で私に話しかけてくる。
――おばあちゃま。何か弾いて欲しい曲はないですか? できたらおじいちゃまとの思い出の曲とか……
その言葉が嬉しくて、私はさっとその場から離れてピアノの前に座る直くんの元に向かった。
――直くん、聞こえるかしら?
――あ、おばあちゃま。やっぱり聴きにきてくれたんですね。このお家に入ったらおばあちゃまの気配を感じたのでいると思いました。
――やっぱり直くんはすごいわ。みんな私たちには気づかないのに。
――おばあちゃんも一緒なんですね。よかった、次はおばあちゃんとおじいちゃんの思い出の曲も弾きたかったので、考えておいてもらわないと。
私たちが存在することに驚かないどころか、当然のものとして受け入れてくれていることに私の方が驚いてしまうけれど、それだけ直くんが純粋ってことなのよね。
――それじゃあリクエストしていいかしら? 曲名は……。これはね、私が初めて寛さんにお琴を披露した時に弾いた曲なの。それ以来、よくリクエストされて弾いていたのよ。直くんは知っているかしら?
もう十年以上聞いていないけれど、寛さんは覚えてくれているかしら?
――これ、知ってます。おじいちゃまと一緒に聞いててください。
直くんは嬉しそうに笑うと、鍵盤に指を置いた。
そして滑らかな動きで直くんの指が鍵盤の上を動いていく。
そっと寛さんに視線を向けると、ハッとした表情で直くんをみている。
よかった、覚えていてくれたわ。
寛さんの左隣に私もそっと座って、肩にもたれかかってみる。
私の重みは感じなくも、私がそばにいることに気づいてくれたら嬉しい。
寛さん……愛しているわ。
すると、寛さんの目からポロリと涙が溢れた。
もしかしたら私に声が届いたのかしら?
ううん、きっと直くんの演奏のおかげね。
でも寛さんが私を思い出して泣いてくれたのなら嬉しいわ。
演奏が終わって、直くんが私と寛さんに視線を向ける。
隣同士に座っている私たちを見て、嬉しそうに笑顔を見せてくれる。
寛さんと賢将さんが大きな拍手を送ると、こちらに駆け寄ってきた。
「本当に素晴らしかった。沙都がいたら一緒に演奏をさせたかったくらいだ」
そんな言葉が寛さんから漏れた。
やっぱり私のことを思い出してくれていたのね。
ああ、嬉しい。
「沙都さん、よかったわ」
「ええ。次は秋穂さんよ。直くんが弾いて欲しい曲をリクエストしてって言ってたわ」
「でも、ピアノの時間は終わりみたい」
「いいえ。大丈夫よ。今日はここにお泊まりなんだもの。すぐに次に演奏時間が来るわ。それまでにしっかり考えておいてね。きっと賢将さんも寛さんのように涙を流して喜ぶはずよ」
直くんのおかげで、私も秋穂さんも愛しい旦那さまたちとのつながりが持てるようになった。
本当に幸せだわ。
「あらあら、明日はあの家に孫たちとお泊まりみたい」
私と秋穂さんは転生の輪に入ることを拒否して、いつかこちらにやってくる旦那さまたちを待ち続けるグループに入った。
そうしていつもの日課で、空から愛しい旦那さまたちの様子を眺めていた。
寛さんと賢将さんがそれぞれ別々で暮らしていた時には、なかなか幸せそうに見えなかったけれど、直くんという可愛い孫の存在ができてからは直くんを共通点にして、二人で同居も始めてくれたしいつも幸せそう。
今まで時折下界に降りて旦那さまたちのそばにいたこともあったけれど、そのことになかなか気づいてもらえず私たちはただ見守ることしかできなかったけれど、素直で純粋な心を持つ直くんが私たちの声も姿もみつけてくれることがわかった。
「それなら遊びに行きましょうか」
「ええ。それがいいわ」
直くんの合格お祝いの翌日、あの磯山の家で寛さんと賢将さん。そして直くんと昇の四人でお泊まりすることになって、久しぶりにあの家に暖かい空気が戻ってくる。
そして、当日。
寛さんがあの家に足を踏み入れたのを見て、私も一足早くあの家に舞い降りた。
人の気配がなかった家に、明かりが灯るのはなんだかワクワクしてしまう。
これはきっと寛さんの気持ちを感じているのかもしれない。
そうして、直くんと賢将さんがやってきて、秋穂さんも私のそばに降りてきた。
そこに大きなピアノが運ばれてくる。
「素敵なピアノね」
「ええ。あれで直くんは何を弾いてくれるかしら?」
「そうね。何かしら?」
寛さんと賢将さんがピアノのそばにあるソファーに腰を下ろすのを見て、私たちもそれぞれ二人の隣に座ってみたけれど、やっぱり二人は気づかない。
仕方がないとわかっていても、それは少し寂しいものがある。
すると、そんな私の気持ちを見透かしたように直くんが指ならしをしながら心の中で私に話しかけてくる。
――おばあちゃま。何か弾いて欲しい曲はないですか? できたらおじいちゃまとの思い出の曲とか……
その言葉が嬉しくて、私はさっとその場から離れてピアノの前に座る直くんの元に向かった。
――直くん、聞こえるかしら?
――あ、おばあちゃま。やっぱり聴きにきてくれたんですね。このお家に入ったらおばあちゃまの気配を感じたのでいると思いました。
――やっぱり直くんはすごいわ。みんな私たちには気づかないのに。
――おばあちゃんも一緒なんですね。よかった、次はおばあちゃんとおじいちゃんの思い出の曲も弾きたかったので、考えておいてもらわないと。
私たちが存在することに驚かないどころか、当然のものとして受け入れてくれていることに私の方が驚いてしまうけれど、それだけ直くんが純粋ってことなのよね。
――それじゃあリクエストしていいかしら? 曲名は……。これはね、私が初めて寛さんにお琴を披露した時に弾いた曲なの。それ以来、よくリクエストされて弾いていたのよ。直くんは知っているかしら?
もう十年以上聞いていないけれど、寛さんは覚えてくれているかしら?
――これ、知ってます。おじいちゃまと一緒に聞いててください。
直くんは嬉しそうに笑うと、鍵盤に指を置いた。
そして滑らかな動きで直くんの指が鍵盤の上を動いていく。
そっと寛さんに視線を向けると、ハッとした表情で直くんをみている。
よかった、覚えていてくれたわ。
寛さんの左隣に私もそっと座って、肩にもたれかかってみる。
私の重みは感じなくも、私がそばにいることに気づいてくれたら嬉しい。
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すると、寛さんの目からポロリと涙が溢れた。
もしかしたら私に声が届いたのかしら?
ううん、きっと直くんの演奏のおかげね。
でも寛さんが私を思い出して泣いてくれたのなら嬉しいわ。
演奏が終わって、直くんが私と寛さんに視線を向ける。
隣同士に座っている私たちを見て、嬉しそうに笑顔を見せてくれる。
寛さんと賢将さんが大きな拍手を送ると、こちらに駆け寄ってきた。
「本当に素晴らしかった。沙都がいたら一緒に演奏をさせたかったくらいだ」
そんな言葉が寛さんから漏れた。
やっぱり私のことを思い出してくれていたのね。
ああ、嬉しい。
「沙都さん、よかったわ」
「ええ。次は秋穂さんよ。直くんが弾いて欲しい曲をリクエストしてって言ってたわ」
「でも、ピアノの時間は終わりみたい」
「いいえ。大丈夫よ。今日はここにお泊まりなんだもの。すぐに次に演奏時間が来るわ。それまでにしっかり考えておいてね。きっと賢将さんも寛さんのように涙を流して喜ぶはずよ」
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