ひとりぼっちになった僕は新しい家族に愛と幸せを教えてもらいました

波木真帆

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夢だけど……

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<side昇>

「そこにいますよ」

直くんが笑顔で教えてくれた縁側を見ても、俺にはばあちゃんも秋穂さんの姿も見えなかった。けれどそのタイミングで窓の外に雪がちらついた。
きっとこれはばあちゃんたちが現れた証なのかもしれない。
そう思って窓を開けると、風とともに入ってきた雪が俺たちの目にもばあちゃんと秋穂さんの姿を見せてくれた。

ただ驚くだけの俺と違って、愛しい人の姿を久しぶりに見れたじいちゃんと大おじさんはすごく嬉しそうだった。
じいちゃんと大おじさんがその光に向かって嬉しそうに話をして、俺は邪魔をしないようにそっとその姿を見守った。

そうしてほんのわずかな逢瀬の時間が終わり、まだ涙を浮かべたままのじいちゃんと大おじさんが直くんを抱きしめてお礼を伝える。すると、直くんはそのまま意識を失ってしまったように見えた。

心配して声を上げると、直くんの脈をとった大おじさんが寝ているだけだと教えてくれる。
考えてみれば、この世にいない人の姿を俺たちに見せてくれたんだ。
体力も消耗するに違いない。

じいちゃんがすぐに直くんのために布団を敷いて、俺はそこに直くんを寝かせた。

じいちゃんたちがご飯を作ってくれる間、俺は直くんのそばで見守ることにしたけれど眠っている直くんが俺の身体を探すように手を伸ばしてくる。

これは直くんに求められているんだから。
直くんを熟睡させるために必要なことだよな。

そう言い聞かせて、俺もそっと直くんの布団に身体を横たえた。
すると、眠ったまま嬉しそうに直くんが俺に擦り寄ってくる。

そしていつものように胸元に頭を置くと、笑顔で眠りに落ちていった。

ああ、可愛い。
俺も直くんの温もりに誘われるように一緒に眠りについた。

ばあちゃんと秋穂さん、そして直くんが楽しそうに庭に敷物を敷いて花見をしている夢を見た。

桜の花がひらひらと舞い落ちる中、直くんが嬉しそうに俺を呼ぶ。
駆け寄ると直くんが嬉しそうに抱きついてきた。

ばあちゃんと秋穂さんはそんな俺たちの姿を見て嬉しそうに笑っていた。

――昇、直くんを泣かせたら承知しないよ。直くんは私たち家族みんなの天使なんだからね。

この言葉をばあちゃんと秋穂さんから何度も言われた。

でもそんなことを言われなくても、俺は絶対に直くんを泣かせたりしないと約束できる。
俺にとって直くんは心から愛するたった一人の人だから……。

――約束するよ。絶対に直くんを一生笑顔にする。直くん、愛してるよ……


ばあちゃんと秋穂さんを誓いのキスの証人にして、俺は桜の下で直くんとキスをした。

チュッと唇が重なるのを感じて、俺はゆっくりと目を覚ました。

「んっ?」

目の前に直くんがいて、しかも唇が重なっていることに驚いた。
けれど直くんの目は瞑ったまま。

もしかしたら、俺が見ていた夢を直くんも見ていたのかもしれない。
いや、あの夢がばあちゃんたちが見せてくれた正夢だったのかも。

夢だけど、夢じゃなかった……。

そんな有名な言葉が俺の頭に浮かぶ。

俺はばあちゃんと秋穂さんにした約束を決して違えぬように、一生直くんを笑顔にすると誓う。

そっと唇を離して、直くんを優しく抱きしめると直くんの目がゆっくりと開いた。

「のぼる、さん……」

「おはよう。いい夢見た?」

「はい。おばあちゃまたちとお庭で……」

やっぱり同じ夢を見ていたみたいだ。

「俺も見たよ。ばあちゃんたちの前で約束した」

「えっ……ほん、とに?」

「ああ、あれは俺の本心だから。直くんを一生笑顔にすると誓うよ」

俺の言葉に直くんの表情が一気に笑顔になっていく。

「そろそろ起きようか」

二人で身体を起こすと、ちょうど大叔父さんがキッチンから出てこっちにきているところだった。

「目が覚めたか。そろそろご飯にしようと声をかけにきたところだったよ。さぁ、おいで」

手を差し出されて嬉しそうに大おじさんと起き上がる直くんを見ながら、俺も起き上がる。

直くんと手をつなぐ大おじさんの嬉しそうな表情に思わず笑みをこぼすと、

――賢将さん、嬉しそう……

懐かしい秋穂さんの声が聞こえた気がした。

やっぱりここにいるんだな。
いつまでも俺たちを見守っていてほしい。
そう思いながら、俺は布団を畳んだ。
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