ひとりぼっちになった僕は新しい家族に愛と幸せを教えてもらいました

波木真帆

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じいちゃんとの貴重な時間

美味しい塩鮭を焼いている間に、耐熱ガラスボウルに炊き上がったばかりのご飯を入れておく。
年老いた私の手なら炊き立てのご飯を握っても熱さも感じにくいが、繊細な直くんの小さな手を火傷させるわけにはいかない。直くんが握れるくらいに冷ましておくとしよう。

ひじきと大豆の煮物ときゅうりと白菜の浅漬け。
塩鮭に卵焼き。そして野菜をたっぷり入れた味噌汁。
これで栄養バランスはバッチリだ。

味噌汁以外のおかずをテーブルに並べて、おにぎりの準備を整えてから直くんをソファーに迎えに行く。

「足はあったまったかな?」

「はい。おじいちゃまの半纏、すっごくあったかかったです」

巻きつけていた半纏を外して直くんの小さな足を見せてくれたが、どうやら霜焼けにはなっていなさそうだ。

「それじゃあ手を洗っておにぎりを握ろう」

直くんの手を取って洗面所に行き、綺麗に手を洗ってダイニングテーブルに連れて行く。

大きなガラスボウルと焼き海苔、そしておかかと昆布の具材も用意しておいたから直くんの好きに作ってもらうとしよう。
直くんが手に少しの塩をつけ、しゃもじを手に取り小さな手にご飯をのせる。

手慣れた様子でおかかを取ると、ご飯に乗せて器用に握っていく。

「ほお、うまいもんだな」

「昇さんのおにぎりを毎日作っているので最初に比べたら慣れてきました」

「そうか、昇は直くんのおにぎりが毎日食べられて幸せ者だな」

沙都もよくおにぎりを作ってくれていた。
もちろん具が入っていない塩むすび。

沙都の愛情がたっぷり込められていてそれを食べた後は仕事も捗ったものだ。
懐かしい。

直くんはいくつか具材の入ったおにぎりを握ると、今度は具を入れずに握り始めた。

「直くん、それは……」

「おじいちゃまのです。おじいちゃま、塩だけのおにぎりが好きなんですよね」

私の好きなものを覚えていてくれたか。
本当に優しい子だ。

直くんが握っているのを見ているだけで癒されて、気づけばボウルのご飯は全てなくなっていた。

「直くんだけに握らせてしまったな。ありがとう」

「みんなに食べてもらえると思ったら嬉しいです」

手についたご飯をパクッと食べながら笑顔でそんなことを言ってくれる。
直くんが握ってくれたのが早く食べたくなって、賢将さんと昇を起こしに行こうかと考えたその時、

「じいちゃん、直くん。おはよー」

と昇の声が聞こえた。


<side昇>

楽しい夜を終え、直くんをいつものように抱きしめて眠った。
大おじさんと並んで寝たのは初めてだけど、じいちゃんとはもっと子どもだった時に寝たことがある。
この家にたまに預けられてじいちゃんと風呂に入って、ばあちゃんも一緒に三人で寝たこともある。
あの時はたまのじいちゃん家での泊まりの日が楽しくて仕方がなかったけれど、今考えたら父さんと母さんが二人の夜を過ごしたいための日だったと思うと、なんとなく複雑な気分だが、その辺りは考えないことにしよう。

だって、俺だってもし、何かの縁があって将来直くんとの間に子どもを育てるなんてことになった時には、もちろん可愛がるけれど二人の時間だって欲しくなるはずだ。大人にはそういう時間が必要なんだよな。
だから今頃、伯父さんと絢斗さんも……想像するだけで身体がぶるっと震えたのは、伯父さんの嫉妬を感じたからかもしれない。

なんだか腕の中の感触がなくなった気がして目を覚ますと、いるはずの直くんの姿がない。
あれ? どこいったんだ?
身体を起こすと、直くんの隣で寝ていたはずのじいちゃんの姿もない。

もしかしたらもう起きたのか?

慌てて起きようとしたところでさっと後ろから腕を掴まれて思わず声が出た。

「わっ! 大おじさん。起きてたの?」

「ああ、ついさっき起きた。それよりもう少し二人にしてやれ」

「二人にって、じいちゃんと直くん?」

俺の質問に大おじさんは笑顔で頷いた。

「きっと今頃、二人で朝食を作ってくれているはずだから邪魔してやるな。寛さんにとっても可愛い孫と過ごせるいい思い出になる」

「大おじさん……」

じいちゃんの年齢を考えれば直くんと過ごせる時間の全てが貴重でいい思い出になることをわかっているんだ。

「わかったよ」

起こしていた身体を布団に横たえると、大おじさんの手が伸びてくる。

「お前はいい孫だな」

そっと頭を撫でられて嬉しくなりながら、しばらく大おじさんと二人でたわいもない話をして過ごした。

「そろそろ行ってみるか」

大おじさんのその声に布団を軽く畳んで部屋を出ると、美味しそうな匂いに迎えられた。
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