エリート警察官僚はようやく見つけた運命の相手を甘やかしたくてたまらない!

波木真帆

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幸せの連続

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冷凍庫から肉じゃが用の肉を取り出そうとして大事なことを思い出した。

「久代さん、肉じゃがのお肉はなんですか?」

「えっ? 肉じゃがのお肉、ですか? 牛肉、ですよね?」

「わかりました。じゃあ牛肉にしましょう」

冷凍庫を開けると、ちょうど肉じゃがにお誂え向きな霜降りの薄切り肉が入っていた。
これは周平さんの弟である涼平くんからの頂き物で、倉橋くんが開発した真空パックに入って我が家に送られてくる。
この真空パックは三分程度流水をかけるだけで解凍できる優れものだ。
そのおかげでいつも美味しい肉を食べることができる。

ボウルにパックごと水をかけていると、久代さんが何か言いたげな表情で私を見ていた。

「どうかしましたか?」

「あ、あの、どうして今、お肉の種類を聞いたのかなって……」

「ああ。そのことですか。実は肉じゃがに使う肉の種類は日本の地域ごとにバラバラで、東日本は豚肉、西日本では牛肉を使う家庭が多いと言われているんです」

「えっ?! そう、なんですか?」

「ええ。我が家は両親ともに東京出身で肉じゃがの肉といえば豚肉という家庭で育ちましたが、大学時代に友人が料理を振舞ってくれた時に牛肉を使っていて驚いたものです。でも、今ではどちらも好きで自分で作る時はその時の気分で選んでいますよ」

「そんな違いがあったんですね……知らなかったです……うちは父が九州出身だから、関東出身の母が父に合わせて牛肉で作っていたのかもしれません」

「家庭料理というのはそういうものですよね。あまり外で食べる機会がないので自分の育った家庭の味が正解だと思いがちですが、こうして別の家庭で育ったもの同士でお互いの味を学んでいくのも楽しいものですよ」

「そうですね。私……今度は真壁さんが召し上がっていた豚肉の肉じゃがを食べてみたいです」

「――っ、ええ。是非」

久代さんが私の家庭の味を食べてみたい。
そう言ってくれるだけでこの上なく幸せな気持ちになっていた。


「わぁー、美味しそうですね!」

「久代さんの野菜の切り方がお上手だったので、火の通りも早かったですよ。これは一度冷ましたほうが味がもっと染みますので、その間に他の料理を作りますね」

肉じゃがを冷ましている間に副菜をいくつか作り、銀鱈の味醂漬けが冷凍庫にあったのを思い出して焼いている間に、

「あの、私……よかったらお味噌汁作りますよ」

と声をかけてくれた。

「久代さんのお味噌汁がいただけるんですか? それは嬉しいです。お願いします。昆布と鰹出汁は冷蔵庫に入れているので好きなだけ使ってください」

「真壁さん、ちゃんと出汁も取ってるんですね。すごいです」

「身体が資本なのでできるだけのことをしているだけですよ。出汁も作れる時に作っているだけですから大したことはないです」

そう言いつつも、久代さんに褒められて嫌な気はしない。
いや、それどころか嬉しくてたまらない。

私の横で味噌汁を作ってくれる久代さんの姿に将来の姿を思い描きながら、幸せの時間は過ぎていった。


「さぁ、いただきましょうか」

全ての料理を盛り付けテーブルに並べる。
普段は一人っきりの食卓が、今日はなんとも華やかだ。

成瀬たちの食事風景を思い出して、隣に座りたい衝動に駆られたが、流石に二人っきりで隣に座るのは怪しすぎる。
食べる姿を正面で見守れるのもいいものだと自分に言い聞かせて、久代さんの前に座った。

久代さんが箸をつけるのを待っていようと思ったが、彼は私が味噌汁に口をつけるのを待っているようだ。

美味しそうな香りを漂わせる味噌汁を手にして、汁を飲んだ。

「ああ……美味しいですね。ホッとします」

「よかったです……」

私の言葉にホッとする久代さんに、笑顔を向けた。

「久代さんもどうぞ召し上がってください」

「はい。いただきます」

綺麗な所作で箸を持つと、肉じゃがに箸が伸びる。

「んー、すっごく美味しいです!」

「――っ!!」

あまりにも可愛すぎる笑顔に、私はすっかり見惚れてしまっていた。

目の前の可愛い久代さんをみながら食べる食事は格別で、気づけば目の前の食事をあっという間に完食していた。

「警察の方って、やっぱり食べるのも早いんですね」

「えっ? ああ、そうですね。突然の呼び出しで出かけることもありますし、癖になっているのかもしれません」

実際食事中に呼び出されることもあるが、プライベートでその癖が出たことは一度もない。
今日はただ単に久代さんに見惚れてしまっていただけだが、なんとか誤魔化せてよかった。

「久代さんはゆっくりと召し上がってください」

温かいお茶を差し出しながら、私は久代さんが食べるのを見守った。
小さな口が私の作ったものを食べていく。
それが可愛い。そして時折見える赤い舌が私を密かに興奮させていた。


  *   *   *

文中に出てくる『倉橋くん』は
『運命の出会いは空港で ~クールなイケメン社長は無自覚煽りの可愛い子ちゃんに我慢できない』の
主人公・倉橋祐悟です。
冬貴と祐悟の関係については
『溺愛弁護士の裏の顔 ~僕はあなたを信じます』の番外編<サプライズ飲み会の5話>に書かれています。
未読の方はぜひそちらも併せてご覧いただけるとわかりやすいかと思います。
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