37 / 94
運命の相手
しおりを挟む
「――った」
「あ、すみません! 大丈夫ですか?」
あまりにも嬉し過ぎて、つい、要さんを強く抱きしめ過ぎてしまった。
慌てて腕を離し、顔を覗き込むと要さんは少し笑って私をみた。
「あ、大丈夫です。びっくりしただけで……」
「本当にすみません。力加減もわからないなんて……」
「本当に大丈夫です。だから……もう少しだけ抱きしめてもらってもいいですか?」
「えっ……」
思いもよらない要さんの言葉に茫然としている間に、トスッと要さんの身体が私の胸にもたれかかってきた。
要さんが自ら私に寄りかかってくれたことが信じられない。でもそれ以上に嬉しくてたまらない。
私は逃げられないようにそっと要さんの身体に腕を回した。
私の胸にすっぽりとおさまる要さんの身体を壊れないように優しく抱いていると、この上ない充足感に包まれる。
昨夜もこうして要さんを包み込んで眠ったが、今の意識がある状態で、しかも要さんの意思で抱きついてくれているのとでは比べようもないくらい幸せだ。
この穏やかな時間が一生続けばいい。
そう思っていると、
「冬貴さんの鼓動を聞いているとホッとします」
要さんの嬉しい声が聞こえてくる。
きっと昨夜のことは覚えていないのだろう。
「だからでしょうか、昨夜も嬉しそうに私の胸に頭を置いて寝てましたよ」
「えっ……」
私の言葉に驚いて身体を起こすと、目を丸くしていた。
「それ……本当、ですか?」
「ええ。私がベッドに入ったら、要さんの方から近づいてきてくれて、私の胸に頭を置いて幸せそうに眠ったんです。それを見ているだけで私も幸せでしたよ」
「――っ」
私の言葉に一気に顔を赤くする要さんが可愛い。
「あ、あの、ごめんなさい……私、無意識で……」
「いいんですよ、無意識なのが嬉しいんです」
「えっ?」
「だって、本能で私を必要だと、さっきの浅香さんの言葉で言うなら、私を熟睡できる大好きな相手だと認めてくれたということでしょう? 嬉しい以外ないですよ」
「冬貴さん……」
「だから、気にしないでいつでもここで眠ってください。ここは要さん専用ですから……」
「私、専用……」
要さんはポツリと呟くと、嬉しそうに私の胸に視線を向けた。
誘うように手を広げると、もう一度要さんの方から私の胸にもたれかかってきてくれた。
私はさっきよりは少しだけ手を強めて、要さんを胸に抱いた。
「あったかくて、いい匂いがします」
そう言われて、仕事帰りのままだったことを思い出した。
流石に一日着ていたスーツとワイシャツのままなら匂いがするに決まっている。
「すみません、汗臭いですか?」
「いいえ。本当にいい匂いなんです」
私が恥ずかしくなるくらい、要さんが私の胸元をすんすんと嗅いでくれる。
――他人の体臭が良い匂いだと感じたらそれは遺伝子レベルでその人を求めている証拠。運命の相手なんだよ。
いつか、成瀬だったか、安慶名だったか、それとも氷室だったか……そんな話をしていた覚えがある。
それが真実ならば、要さんは私の運命の相手。
やっぱり自分の直感が正しかったのだとわかる。
「私も要さんの匂いが好きですよ」
そっと首筋に顔を埋めると、あまりにもいい匂いに誘われて、ちゅっと唇を当ててしまった。
「ひゃぁっ」
甘い声をあげながらピクッと身体を震わせる。
ああ、もう本当に可愛い。
「すみません、くすぐったかったですか?」
「い、いえ。あの、びっくりして……」
「嫌じゃないならよかったです。もう一度、いいですか?」
「えっ……」
まだ答えも聞かないうちに、もう一度要さんの首筋に顔を埋めるとびっくりして汗でも嗅いたのか、さっきより濃い匂いに包まれる。
「ああ、本当にいい匂いです」
「ふ、冬貴さん……ちょっ――」
要さんの声に少し困惑が感じられる。
最初からやり過ぎたか。
でも本当にいい匂いで離れ難い。
惜しみつつゆっくりと離れると、さっきよりも顔を赤くした要さんに見つめられる。
要さんの何か言いたげな表情にドキドキしつつ、
「あの……」
声をかけた。
「あの、臭くなかったですか?」
「えっ、そんなことを気にしてたんですか? いい匂いでしかないですよ。本当に」
「でも……あの、お風呂に入ってから……その、抱きしめてもらっていいですか?」
「えっ……それって……」
いや、そんなわけない。
要さんがそこまで先を望んでいるなんてないに決まっている。
でも風呂に入りたいというのを拒む理由はどこにもない。
「いえ。じゃあ、すぐにお風呂の準備をしますね。出てきたら抱きしめさせてください」
私の言葉に要さんはホッとしたように笑っていた。
急いで風呂のスイッチを入れ、先ほど選んできた服の中から新しい下着とパジャマを持ってきて、要さんに渡した。
「脱衣所に置いている入浴剤、好きなものを入れていいですからね」
「は、はい。ありがとうございます」
脱衣所に入っていく要さんを見送って、私はスマホを取り出した。
「あ、すみません! 大丈夫ですか?」
あまりにも嬉し過ぎて、つい、要さんを強く抱きしめ過ぎてしまった。
慌てて腕を離し、顔を覗き込むと要さんは少し笑って私をみた。
「あ、大丈夫です。びっくりしただけで……」
「本当にすみません。力加減もわからないなんて……」
「本当に大丈夫です。だから……もう少しだけ抱きしめてもらってもいいですか?」
「えっ……」
思いもよらない要さんの言葉に茫然としている間に、トスッと要さんの身体が私の胸にもたれかかってきた。
要さんが自ら私に寄りかかってくれたことが信じられない。でもそれ以上に嬉しくてたまらない。
私は逃げられないようにそっと要さんの身体に腕を回した。
私の胸にすっぽりとおさまる要さんの身体を壊れないように優しく抱いていると、この上ない充足感に包まれる。
昨夜もこうして要さんを包み込んで眠ったが、今の意識がある状態で、しかも要さんの意思で抱きついてくれているのとでは比べようもないくらい幸せだ。
この穏やかな時間が一生続けばいい。
そう思っていると、
「冬貴さんの鼓動を聞いているとホッとします」
要さんの嬉しい声が聞こえてくる。
きっと昨夜のことは覚えていないのだろう。
「だからでしょうか、昨夜も嬉しそうに私の胸に頭を置いて寝てましたよ」
「えっ……」
私の言葉に驚いて身体を起こすと、目を丸くしていた。
「それ……本当、ですか?」
「ええ。私がベッドに入ったら、要さんの方から近づいてきてくれて、私の胸に頭を置いて幸せそうに眠ったんです。それを見ているだけで私も幸せでしたよ」
「――っ」
私の言葉に一気に顔を赤くする要さんが可愛い。
「あ、あの、ごめんなさい……私、無意識で……」
「いいんですよ、無意識なのが嬉しいんです」
「えっ?」
「だって、本能で私を必要だと、さっきの浅香さんの言葉で言うなら、私を熟睡できる大好きな相手だと認めてくれたということでしょう? 嬉しい以外ないですよ」
「冬貴さん……」
「だから、気にしないでいつでもここで眠ってください。ここは要さん専用ですから……」
「私、専用……」
要さんはポツリと呟くと、嬉しそうに私の胸に視線を向けた。
誘うように手を広げると、もう一度要さんの方から私の胸にもたれかかってきてくれた。
私はさっきよりは少しだけ手を強めて、要さんを胸に抱いた。
「あったかくて、いい匂いがします」
そう言われて、仕事帰りのままだったことを思い出した。
流石に一日着ていたスーツとワイシャツのままなら匂いがするに決まっている。
「すみません、汗臭いですか?」
「いいえ。本当にいい匂いなんです」
私が恥ずかしくなるくらい、要さんが私の胸元をすんすんと嗅いでくれる。
――他人の体臭が良い匂いだと感じたらそれは遺伝子レベルでその人を求めている証拠。運命の相手なんだよ。
いつか、成瀬だったか、安慶名だったか、それとも氷室だったか……そんな話をしていた覚えがある。
それが真実ならば、要さんは私の運命の相手。
やっぱり自分の直感が正しかったのだとわかる。
「私も要さんの匂いが好きですよ」
そっと首筋に顔を埋めると、あまりにもいい匂いに誘われて、ちゅっと唇を当ててしまった。
「ひゃぁっ」
甘い声をあげながらピクッと身体を震わせる。
ああ、もう本当に可愛い。
「すみません、くすぐったかったですか?」
「い、いえ。あの、びっくりして……」
「嫌じゃないならよかったです。もう一度、いいですか?」
「えっ……」
まだ答えも聞かないうちに、もう一度要さんの首筋に顔を埋めるとびっくりして汗でも嗅いたのか、さっきより濃い匂いに包まれる。
「ああ、本当にいい匂いです」
「ふ、冬貴さん……ちょっ――」
要さんの声に少し困惑が感じられる。
最初からやり過ぎたか。
でも本当にいい匂いで離れ難い。
惜しみつつゆっくりと離れると、さっきよりも顔を赤くした要さんに見つめられる。
要さんの何か言いたげな表情にドキドキしつつ、
「あの……」
声をかけた。
「あの、臭くなかったですか?」
「えっ、そんなことを気にしてたんですか? いい匂いでしかないですよ。本当に」
「でも……あの、お風呂に入ってから……その、抱きしめてもらっていいですか?」
「えっ……それって……」
いや、そんなわけない。
要さんがそこまで先を望んでいるなんてないに決まっている。
でも風呂に入りたいというのを拒む理由はどこにもない。
「いえ。じゃあ、すぐにお風呂の準備をしますね。出てきたら抱きしめさせてください」
私の言葉に要さんはホッとしたように笑っていた。
急いで風呂のスイッチを入れ、先ほど選んできた服の中から新しい下着とパジャマを持ってきて、要さんに渡した。
「脱衣所に置いている入浴剤、好きなものを入れていいですからね」
「は、はい。ありがとうございます」
脱衣所に入っていく要さんを見送って、私はスマホを取り出した。
782
あなたにおすすめの小説
運命の番は僕に振り向かない
ゆうに
BL
大好きだったアルファの恋人が旅先で運命の番と出会ってしまい、泣く泣く別れた経験があるオメガの千遥。
それ以来、ずっと自分の前にも運命の番があらわれることを切に願っていた。
オメガひとりの生活は苦しく、千遥は仕方なく身体を売って稼ぐことを決心する。
ネットで知り合った相手と待ち合わせ、雑踏の中を歩いている時、千遥は自分の運命の番を見つけた。
ところが視線が確かに合ったのに運命の番は千遥を避けるように去っていく。彼の隣には美しいオメガがいた。
ベータのような平凡な見た目のオメガが主人公です。
ふんわり現代、ふんわりオメガバース、設定がふんわりしてます。
貧乏大学生がエリート商社マンに叶わぬ恋をしていたら、玉砕どころか溺愛された話
タタミ
BL
貧乏苦学生の巡は、同じシェアハウスに住むエリート商社マンの千明に片想いをしている。
叶わぬ恋だと思っていたが、千明にデートに誘われたことで、関係性が一変して……?
エリート商社マンに溺愛される初心な大学生の物語。
妖精です、囲われてます
うあゆ
BL
僕は妖精
森で気ままに暮らしていました。
ふと気づいたら人間に囲まれてました。
でもこの人間のそばはとても心地いいし、森に帰るタイミング見つからないなぁ、なんて思いながらダラダラ暮らしてます。
__________
妖精の前だけはドロ甘の冷徹公爵×引きこもり妖精
なんやかんやお互い幸せに暮らします。
番に見つからない街で、子供を育てている
はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。
異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。
現世の記憶は失われているが、
この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。
街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、
ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。
だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。
再会は望まない。
今はただ、この子との生活を守りたい。
これは、番から逃げたオメガが、
選び直すまでの物語。
*本編完結しました
記憶を無くしたら家族に愛されました
レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない…
家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…
すべてはあなたを守るため
高菜あやめ
BL
【天然超絶美形な王太子×妾のフリした護衛】 Y国の次期国王セレスタン王太子殿下の妾になるため、はるばるX国からやってきたロキ。だが妾とは表向きの姿で、その正体はY国政府の依頼で派遣された『雇われ』護衛だ。戴冠式を一か月後に控え、殿下をあらゆる刺客から守りぬかなくてはならない。しかしこの任務、殿下に素性を知られないことが条件で、そのため武器も取り上げられ、丸腰で護衛をするとか無茶な注文をされる。ロキははたして殿下を守りぬけるのか……愛情深い王太子殿下とポンコツ護衛のほのぼの切ないラブコメディです
僕は君を思うと吐き気がする
月山 歩
恋愛
貧乏侯爵家だった私は、お金持ちの夫が亡くなると、次はその弟をあてがわれた。私は、母の生活の支援もしてもらいたいから、拒否できない。今度こそ、新しい夫に愛されてみたいけど、彼は、私を思うと吐き気がするそうです。再び白い結婚が始まった。
王太子殿下のやりなおし
3333(トリささみ)
BL
ざまぁモノでよくある『婚約破棄をして落ちぶれる王太子』が断罪前に改心し、第三の道を歩むお話です。
とある時代のとある異世界。
そこに王太子と、その婚約者の公爵令嬢と、男爵令嬢がいた。
公爵令嬢は周囲から尊敬され愛される素晴らしい女性だが、王太子はたいそう愚かな男だった。
王太子は学園で男爵令嬢と知り合い、ふたりはどんどん関係を深めていき、やがては愛し合う仲になった。
そんなあるとき、男爵令嬢が自身が受けている公爵令嬢のイジメを、王太子に打ち明けた。
王太子は驚いて激怒し、学園の卒業パーティーで公爵令嬢を断罪し婚約破棄することを、男爵令嬢に約束する。
王太子は喜び、舞い上がっていた。
これで公爵令嬢との縁を断ち切って、彼女と結ばれる!
僕はやっと幸せを手に入れられるんだ!
「いいやその幸せ、間違いなく破綻するぞ。」
あの男が現れるまでは。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる