エリート警察官僚はようやく見つけた運命の相手を甘やかしたくてたまらない!

波木真帆

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大事な話の前に

「歩夢くん、元気そうで良かった」

突然の再会に要さんが少し涙を潤ませたまま笑顔を向けると、舞川さんは大きな目からぽろっと涙を溢した。

「――っ、僕、ずっと……要くんが、心配で……心配で……」

話しながらもとめどなく涙を流す彼を新海が優しく抱きしめる。

要さんが高校を辞めさせられ、舞川さんの元を去ってから十五年以上経つが、ずっと忘れることなく安否を気遣っていたのだろう。そうでなければこんなに涙を流すことはない。年下だが親友のような存在だったのだろうな。

「歩夢くん……」

舞川さんの涙に要さんも涙を流している。
私はそっとハンカチを出し、隣に座る要さんの涙を拭った。

しんと静まり返った部屋で二人の堪えきれない声だけが響く中、その静寂を断ち切ったのは浅香さんだった。

「舞川さんもこっちにおいで! 美味しいケーキがあるよ!」

あまりにもはしゃいだ声にみんながキョトンとしてしまうが、当の本人は気にする様子もなく要さんにも声をかける。

「ほら、要くんも呼んでよ」

「えっ、あ、はい。歩夢くん、こっちで話そう!」

要さんと浅香さんの間をぽんぽんと手で叩いて声をかけると、舞川さんはまだ涙に濡れた顔だったがすぐに笑顔を見せ、二人の元に駆け寄ってきた。

そして二人の間に座ると、要さんにギュッと抱きついた。

「要くん! ずっと会いたかった……っ!」

「うん、僕も会いたかったよ!!」

幸せそうに抱き合う二人の姿に私も新海もピクッと反応してしまったが、すぐに引き離そうとは到底思えなかった。なぜなら二人の間には恋愛の情のようなものが一切見えなかったから。

まるで生き別れた兄弟が十数年ぶりに再会を果たした、そんなふうにしか見えなかった。

「二人ともすごく仲良しだったんだね」

隣で二人の様子を見守っていた浅香さんが声をかけると、ようやく涙が落ち着いたらしい舞川さんが要さんから離れ笑顔で振り返った。

「あ、はい。そうなんです。要くん、上級生なのにいつも優しくて……僕、一人っ子だったから勝手にお兄ちゃんみたいに思ってました」

まだお互いに自己紹介もしていない舞川さんと浅香さんだが、舞川さんはすっかり浅香さんに慣れているようだ。これはきっと浅香さんの持つ優しいオーラのおかげだろう。

「わかるよ、要くんって周りにすごく気を配って優しいよね。要くんと同室だったなんて羨ましいよ!」

「そんな……っ」

要さんは浅香さんに褒められて嬉しそうだ。

「ねぇ、周平さん。話は後にして、少しだけ要くんと舞川さん……歩夢くんの再会を楽しませてあげてほしいんだけど、いいかな?」

「あ、ああ。そうだな。その方が彼の緊張もほぐれていいだろう。じゃあ、私たちはあちらのソファーに移るから、のんびり過ごすといい」

「わぁー、ありがとう。周平さん!」

浅香さんの提案に少々驚きはしたが、舞川さんのことを考えればそれが一番いいだろう。

「冬貴、新海くん。自分の愛しい人に飲み物を準備しよう」

周平さんの声掛けにさっと立ち上がった私は、まだ状況をうまく飲み込めていないらしい新海に行くぞと声を掛けて一緒にキッチンに向かった。

「あ、あの警視正……いえ、真壁さんの恋人さんも男性だったんですね。しかもまさか歩夢の知り合いだったなんて驚きです」

「ああ、そうだな。私も二人が知り合いだったのは流石に驚いたよ。だがこれも何かの縁だ。新海、お前とは長い付き合いになりそうだな」

「は、はい。あの、よろしくお願いします」

新海は慌てたように硬い表情のまま頭をさげた。 

「そんな硬くならなくていい。正直言って、お前のことは優秀だと認めているからな」

「――っ、真壁さん……っ」

職場ではあまり優しい言葉はかけないがプライベートでは別だ。
特に要さんが弟のように可愛がっていた子の恋人なのだからな。

「ほら、話は後にして、早く飲み物を持って行ってやろう。それぞれ好みは知っているんだろう?」

「は、はい」

強面の周平さんに声をかけられて少し焦った様子の新海だが、さっと紅茶の缶に手をやった。
そうか、舞川さんは紅茶派か。
要さんと一緒に過ごすときのために、コンシェルジュに頼んで特別ルームの紅茶缶をもっと増やしてもらってもいいかもしれない。

私はもちろんカフェオレだ。
八尋社長との思い出だと言っていたが、たくさん飲ませて私の思い出に上書きしようと思っている。
要さんの好みの味付けで淹れたカフェオレを要さんの元に持っていく。

「どうぞ。カフェオレです」

「冬貴さん、ありがとうございます」

「ゆっくりおしゃべりを楽しんでください。何かあったら声をかけてくださいね」

それだけ言って、キッチンに戻り自分のブラックコーヒーを淹れて、要さんたちの姿が見えるソファーに腰を下ろした。
さっき出会ったばかりなのに長年の友だちのように話が盛り上がっている三人を見ながら、私はコーヒーを一口飲んだ。
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