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伝説と衝突って本気か!?

11話

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キメライオンのオスに向かって放ったダイスが6の目を出したその瞬間、キメライオンを猛烈な光が包む。
 
「なんだ、この威力!」
俺たちはおろか、バラクが足止めしていたキメライオンすら足元がふらつくほどの風が吹いた。
 
「やっとやんだわね。」
「ちょっ!これ見てください!」
ガブが指差した先には隕石でも落ちたかのようにクレーターが出来ていた。
…これをリリーが?
 
リリー自身も呆然としながら、ステータス帳を開く。
「い、一応、キメライオンは倒したみたいだ。い、いつのまに私はこんなに…。」
「なにをそんなに驚いてやがる!ダイスなんてのは元々こんなもんだよ!お前のレベルが今まで低すぎて扱いきれてなかっただけだ!いいから、サボってねぇで俺を手伝え!」
 
1人で足止めしているバラクを前に俺はふと思い立った。
…でも、こいつには麻痺を通じないのか。ということはダイス打っても問題ないのでは?
 
「なぁ、リリー。もう1回ダイスだ。」
「いや、その必要も無さそうだぞ?」
リリーが指差す先には、キメライオンの上空に天高く飛び上がっているバラクがいた。
 
「あんな一撃で決めやがって!俺のかっこよさが霞むじゃねぇか!」
旦那を失ったキメライオンのメスは天高く舞い上がるバラクにその怒りをぶつけるかのように吼えた。
 
「おうおう、失った悲しみで今にも狂いそうか!獣!でもな!世の中には適齢期にもなってその悲しみにすらたどり着かないやつもいるんだよ!そんな哀れな女の苦しみを知りやがれ!」
やめろ、お前そんなキメ台詞っぽい感じにして途中からミシェルのこといじってるだけじゃねぇか。
 
そういうとバラクは空高くからキメライオンの首もとに目掛け、勢い良く降りてくる。
「断罪!」
バラクは勢いそのままに首もとにチョップを叩き込む。
「ガアァァァァァァ!」
キメライオンは断末魔を上げ、その場に倒れこみ動かなくなった。
 
 
「これで終わりだな?見たか!ガブ!俺の強さ!」
「おにいちゃん、おねぇちゃん達凄い!ありがとう!」
「そんなことより、早く中を確認しに行きましょう!」
嬉々とした雰囲気が俺たちを包んでいた。これで一件落着か。
 
その時だった。
嬉々として巣の入り口へと向かう俺たちを見て、バラクはガブの手を引いた。
「なんですか、こんな時に!」
「そうよ!早くこの子達を親に会わせてあげないと!心配するわ!」
「あぁ、その件だがな。やめとかねぇか?俺たち全員で行くのは。特にこのガキは。」
 
…何を言ってやがる。これで一件落着だろ?
隣にいたリリーが俺の耳元で話始める。
「なんだ処女。こんなときまでお前は。」
バラクがまた余計なことを言う。
 
「うるせぇ、今はそんな時じゃないだろ。いや、ほら!流石にさ?いきなり巣の中に皆で行く必要ないだろ?中の様子の確認は私らだけでまずは安全を確認しよう!な?」
リリーの発言がよくわからなかった。俺はとっさに反応する。
「何を言ってやがる。別行動しないのが最善の選択肢だったからここまで皆で来たんだろ?」
 
「リーダー、じゃあ実を言うけどな?キメライオンが巣の中に餌を持ち帰ってたということはすでに中で保管されてるってことだ。生きてるままだと逃げるから既に殺されてる可能性もある。まずは私たちで確認しよう?な?」
 
それもそうだな。そうしよう。
「じゃあ、俺ら4人で中を確認してくるから、バラクはここで待っててくれ!」
「マリアちゃん、中が安全かどうかお姉さん達が確認してくるから待っててね?お父さんとお母さんの写真とかある?」
「はい!処女のおねーちゃん!これあげる!」
「あ、うん。ありがと?その呼び方は変えようか、私はリリーおねぇちゃんだからね?」
「うん!わかった!処女のリリーおねぇちゃん!」
「バラクお前覚悟しろよ?」
リリーはひとしきりの流れを終えると、マリアちゃんから家族3人の写真を受け取ってきた。
さぁ、向かうか。流石に間に合っててくれよ?
 
「あー、ちょっと。俺一人だとガキのお守りは不安なんだが。」
「うるさいです!黙ってそこにいてください!ミツルさーん!よく分からないんですけど待ってくださーい!」
もうこのアホ天使も置いてこようかな。
 
「ねぇ?ところで処女ってなんなの?」
「あぁ、じゃあその話でもして待ってるか。」
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