36 / 98
第三章 探求
彼のスーツ
しおりを挟む
あらためて、部屋を観察すると、左右の本箱の壁と直交する正面の壁は、オープンクローゼットになっていて男性用の衣服がかかっている。クローゼットを構成する前方と後方の2列のハンガーラックの手前の列のハンガーには、見慣れた彼のスーツやシャツがかかっていて、奥の列のハンガーには長めのコート類がかかっている。服のデザインや種類から、手前が夏服で奥が冬服であることが推察できた。各スーツの胸ポケットには、スーツの色とマッチしたポケットチーフが入れてある。
よく見ると、オープンクローゼットの奥の壁は障子になっていて、今は開閉が困難になっているが、茶室として使用されていた時はその障子を開けると外の景色が見えるようになっていたと思われる。
目を移して正面の壁と対抗するアーチ状の入り口側の壁を見ると、そこには姿見の鏡と、たくさんの小物入れの引き出しのある戸棚があった。戸棚の横には、回転式のネクタイスタンドが置いてあり、そのスタンドには無数のネクタイが吊り下げられていた。デートのときによく見かけた有名ブランドのネクタイもあった。お洒落な彼の姿が心に浮かんだ。
彼は毎日この部屋で着替えて、姿見の鏡で服装をチェックして外出したのだろうか。書籍のことよりも、在りし日の彼の日常を垣間見ることになり、胸が熱くなった。
ここは、茶室の中の図書館。
時が遡ると共に、空間が歪んだ気がした。
茶室の中で、懐かしい想い出が交差した。
よく見ると、オープンクローゼットの奥の壁は障子になっていて、今は開閉が困難になっているが、茶室として使用されていた時はその障子を開けると外の景色が見えるようになっていたと思われる。
目を移して正面の壁と対抗するアーチ状の入り口側の壁を見ると、そこには姿見の鏡と、たくさんの小物入れの引き出しのある戸棚があった。戸棚の横には、回転式のネクタイスタンドが置いてあり、そのスタンドには無数のネクタイが吊り下げられていた。デートのときによく見かけた有名ブランドのネクタイもあった。お洒落な彼の姿が心に浮かんだ。
彼は毎日この部屋で着替えて、姿見の鏡で服装をチェックして外出したのだろうか。書籍のことよりも、在りし日の彼の日常を垣間見ることになり、胸が熱くなった。
ここは、茶室の中の図書館。
時が遡ると共に、空間が歪んだ気がした。
茶室の中で、懐かしい想い出が交差した。
15
あなたにおすすめの小説
孤独なもふもふ姫、溺愛される。
遊虎りん
恋愛
☆☆7月26日完結しました!
ここは、人間と半獣が住んでいる星。いくつかある城の1つの半獣の王と王妃の間に生まれた姫は、半獣ではない。顔が『人』ではなく『獣』の顔をした獣人の姿である。半獣の王は姫を城から離れた塔に隠した。孤独な姫ははたして、幸せになれるのだろうか。。。
皇帝陛下!私はただの専属給仕です!
mock
恋愛
食に関してうるさいリーネ国皇帝陛下のカーブス陛下。
戦いには全く興味なく、美味しい食べ物を食べる事が唯一の幸せ。
ただ、気に入らないとすぐ解雇されるシェフ等の世界に投げ込まれた私、マール。
胃袋を掴む中で…陛下と過ごす毎日が楽しく徐々に恋心が…。
魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました
iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。
両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。
両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。
しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。
魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。
自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。
一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。
初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。
恋人になりたいが、年上で雇い主。
もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。
そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。
そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。
レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか?
両片思いのすれ違いのお話です。
声を聞かせて
はるきりょう
恋愛
動物の声が聞こえる彼女と冷たい第二王子の物語。完成しました。
「……反対されない、というのは、寂しいことだと思いますの。だから…私が反対してさしあげます」
サーシャは最上級の笑顔を浮かべた。そして、思い切り息を吸い込む。
「何でも思い通りいくと思うなよ、くそ王子!!」
「サ、サーシャ様!?」
なりゆきを見守っていたハリオが慌てたようにサーシャの名を呼んだ。一国の王子への暴言は不敬罪で捕まりかねない。けれど、言わずにはいられなかった。
そんなサーシャの言動にユリウスは一瞬目を丸くし、しかしすぐに楽しそうに笑った。
「お前面白いな。本当に気に入った」
小説家になろうサイト様にも掲載してします。
転生皇女セラフィナ
秋月真鳥
恋愛
公爵家のメイド・クラリッサは、幼い主君アルベルトを庇って十五歳で命を落とした。
目覚めたとき、彼女は皇女セラフィナとして生まれ変わっていた——死の、わずか翌日に。
赤ん坊の身体に十五歳の記憶を持ったまま、セラフィナは新しい人生を歩み始める。
皇帝に溺愛され、優しい母に抱かれ、兄に慈しまれる日々。
前世で冷遇されていた彼女にとって、家族の愛は眩しすぎるほどだった。
しかし、セラフィナの心は前世の主・アルベルトへの想いに揺れ続ける。
一歳のお披露目で再会した彼は、痩せ細り、クラリッサの死を今も引きずっていた。
「わたしは生涯結婚もしなければ子どもを持つこともない。わたしにはそんな幸福は許されない」
そう語るアルベルトの姿に、セラフィナは決意する。
言葉も満足に話せない。自由に動くこともできない。前世の記憶を明かすこともできない。
それでも、彼を救いたい。彼に幸せになってほしい。
転生した皇女が、小さな身体で挑む、長い長い物語が始まる。
※ノベルアップ+、小説家になろうでも掲載しています。
何もしない公爵夫人ですが、なぜか屋敷がうまく回っています
鷹 綾
恋愛
辺境公爵カーネル・クリスの妻となったフィレ・バーナード。
けれど彼女は、屋敷を仕切ることも、改革を行うことも、声高に意見を述べることもしなかった。
指示を出さない。
判断を奪わない。
必要以上に関わらない。
「何もしない夫人」として、ただ静かにそこにいるだけ。
それなのに――
いつの間にか屋敷は落ち着き、
使用人たちは迷わなくなり、
人は出入りし、戻り、また進んでいくようになる。
誰かに依存しない。
誰かを支配しない。
それでも確かに“安心できる場所”は、彼女の周りに残っていた。
必要とされなくてもいい。
役に立たなくてもいい。
それでも、ここにいていい。
これは、
「何もしない」ことで壊れなかった関係と、
「奪わない」ことで続いていった日常を描く、
静かでやさしい結婚生活の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる