113 / 151
第四章 真理
絶対的な真実
しおりを挟む
「私ね、このファイルを貸金庫から取り出して以来、ほぼ毎日レポートを読んでいるからね。」
詩は更に続けた。
「このレポート集が興味深いのは、世界の神話も同じことを伝えているって書いてあるの。」
「え、神話?」
巫女の経験を持つ芽依ちゃんの顔がぴくんと上がり、可愛いポニーテールが少し揺れた。
「そう、そもそも神話とは、絶対的な真実として伝えられている原古の伝承なんだって。だから、真理の解明に役立つらしく、レポート集には世界中の神話の内容がたくさん報告されていたの。」
「神話は絶対的な真実… そんなこと今まで考えたことなかったけど、古の時代から語り継がれているって、そう考えられているってことだもんね。そして、その神話が伝えていることが、現代科学と一致するなんて確かに面白いね。」
「うん、そうなの。神話には、宇宙の始まりを伝えている宇宙起源神話というのがあって、四大文明の宇宙起源神話の内容に共通性があるんだって。」
「四大文明って、あの人類最古の文明でしょ。中国、エジプト、メソポタミアとインダス文明だったっけ。」
詩が詳しく説明しなくても、芽依ちゃんが補足してくれるので、とても話しやすい。
「表現の仕方は違うけど、最初はみんな混とんから生じていると伝えているらしいの。混沌って、何もきまりや定まったものがない混乱した状態、つまり制約がない状態。さっきの科学の話しと一緒。」
「え、そうなんだ。そう言えば、日本書紀の冒頭も天地が別れる前は、混沌とした状態だったという出だしだった。」
さすが芽依ちゃん、巫女のときに神官の人から聞いたのだろうか。
「特に、中国の漢民族の盤古神話は、その混沌を破裂させて天と地が創造されたと伝えているし、エジプト神話でも混沌を支配する掟を破って世界が創造されたと伝えているの。この様子って、まさにビッグバーンを表しているかもしれないってレポートには書いてあった。」
ここで、急に芽依ちゃんが黙り込んでしまった。
「芽依ちゃん、どうしたの?」
思わず、詩が尋ねると、芽依ちゃんが静かなトーンで口を開いた。
「詩ちゃん、真理の書って新しい神話なのかも。世界中の神話や、現代科学の全ての知識を集めた未来に向けた人類の新しい神話。出だしは、この世界の始まりになっているし。神話だから、あえて書式は詩の形式にしているんじゃないかな。」
芽依ちゃんの深い洞察力には感服する。そう言われてみれば、そうかもしれない。謎めいた四行詩の書式の意味もわかる。
ここで、詩は隣の席に置いていたバッグから一枚の紙を取り出した。
「これが、真理の書の出だしの詩なの。」
湖をわたる風がそよぐ。
オークの木の葉で光がゆれる。
遠い時代の記憶にのせて
エルフたちの歌声が聞こえる。
芽依ちゃんが息を呑んだのがわかった。
詩は更に続けた。
「このレポート集が興味深いのは、世界の神話も同じことを伝えているって書いてあるの。」
「え、神話?」
巫女の経験を持つ芽依ちゃんの顔がぴくんと上がり、可愛いポニーテールが少し揺れた。
「そう、そもそも神話とは、絶対的な真実として伝えられている原古の伝承なんだって。だから、真理の解明に役立つらしく、レポート集には世界中の神話の内容がたくさん報告されていたの。」
「神話は絶対的な真実… そんなこと今まで考えたことなかったけど、古の時代から語り継がれているって、そう考えられているってことだもんね。そして、その神話が伝えていることが、現代科学と一致するなんて確かに面白いね。」
「うん、そうなの。神話には、宇宙の始まりを伝えている宇宙起源神話というのがあって、四大文明の宇宙起源神話の内容に共通性があるんだって。」
「四大文明って、あの人類最古の文明でしょ。中国、エジプト、メソポタミアとインダス文明だったっけ。」
詩が詳しく説明しなくても、芽依ちゃんが補足してくれるので、とても話しやすい。
「表現の仕方は違うけど、最初はみんな混とんから生じていると伝えているらしいの。混沌って、何もきまりや定まったものがない混乱した状態、つまり制約がない状態。さっきの科学の話しと一緒。」
「え、そうなんだ。そう言えば、日本書紀の冒頭も天地が別れる前は、混沌とした状態だったという出だしだった。」
さすが芽依ちゃん、巫女のときに神官の人から聞いたのだろうか。
「特に、中国の漢民族の盤古神話は、その混沌を破裂させて天と地が創造されたと伝えているし、エジプト神話でも混沌を支配する掟を破って世界が創造されたと伝えているの。この様子って、まさにビッグバーンを表しているかもしれないってレポートには書いてあった。」
ここで、急に芽依ちゃんが黙り込んでしまった。
「芽依ちゃん、どうしたの?」
思わず、詩が尋ねると、芽依ちゃんが静かなトーンで口を開いた。
「詩ちゃん、真理の書って新しい神話なのかも。世界中の神話や、現代科学の全ての知識を集めた未来に向けた人類の新しい神話。出だしは、この世界の始まりになっているし。神話だから、あえて書式は詩の形式にしているんじゃないかな。」
芽依ちゃんの深い洞察力には感服する。そう言われてみれば、そうかもしれない。謎めいた四行詩の書式の意味もわかる。
ここで、詩は隣の席に置いていたバッグから一枚の紙を取り出した。
「これが、真理の書の出だしの詩なの。」
湖をわたる風がそよぐ。
オークの木の葉で光がゆれる。
遠い時代の記憶にのせて
エルフたちの歌声が聞こえる。
芽依ちゃんが息を呑んだのがわかった。
15
あなたにおすすめの小説
替え玉の私に、その愛を注がないで…。~義姉の代わりに嫁いだ辺境伯へ、身を引くはずが……持ちかけられたのは溺愛契約。
翠月 瑠々奈
恋愛
ベルン皇国の辺境伯ソラティスが求めたのは、麗しき皇都の子爵令嬢レイアだった。
しかし、彼の元へ届けられたのは、身代わりに仕立て上げられた妹のラシーヌ。
容姿も性格も全く違う姉妹。
拒絶を覚悟したラシーヌだったが、ソラティスは緋色の瞳を向けて一つの「契約」を持ち掛けた。
その契約とは──?
ソラティスの結婚の理由、街を守る加護の力。そして、芽生える一つの恋。それに怯える拙い拒み。
※一部加筆修正済みです。
【完結】曖昧な距離で愛している
山田森湖
恋愛
結婚4年目のアラサー夫婦、拓海と美咲。仲は悪くないが、ときめきは薄れ、日常は「作業」になっていた。夫には可愛い後輩が現れ、妻は昔の恋人と再会する。揺れる心、すれ違う想い。「恋人に戻りたい」――そう願った二人が辿り着いた答えは、意外なものだった。曖昧で、程よい距離。それが、私たちの愛の形。
「妹の方が可愛い」と不倫夫に捨てられた私。どうぞ借金まみれの実家ごと引き取って。私が肩代わりしていた負債、すべてお二人に引き継いでおきました
唯崎りいち
恋愛
「お前より妹の方が可愛い」
不倫した夫は私を追い出し、略奪した妹と笑った。
どうぞ、その「可愛い妹」と地獄までお幸せに。
私が肩代わりしていた実家と店の多額の借金、すべてお二人に引き継いでおきましたから。
「財布」を失った元夫と、逃げ場を失った妹。
身の丈に合わない贅沢を望んだ寄生虫たちの、惨めな末路を特等席で眺めさせていただきます。
フリーランスエンジニアの優しすぎる無償の愛
春咲さゆ
恋愛
26歳OLの木崎茉莉は人生のどん底にいた。上手くいかないことに慣れ、心を凍らせることで自分を守る毎日に絶望した茉莉は、雨の夜に思わず人生の終わりを願ってしまう。そんな茉莉に手を差し伸べたかっこいい彼。茉莉は、なぜか無償の愛のような優しさをくれる不思議な男性に少しずつ救われ、前を向いていく。けれど、疑ってしまうほど親切な彼には、親切であり続ける理由があって……。雨の夜の出会いがもたらした、優しくも切ない物語。
薫る袖の追憶を捨て、月光の君に溺愛される
あとりえむ
恋愛
名門の姫君・茜は、夫の高彬に蔑まれ、寂れた離れで孤独な死を迎えた……
けれど意識が途切れた瞬間、視界を埋め尽くしたのは命を削って輝く緋色の夕映え。
目が覚めると、そこは高彬との婚約が決まったばかりの十五歳の春に戻っていた。
「二度目の人生では、誰のことも愛さず、ただあの方の幸せだけを願おう」
茜は、かつて自身の孤独を救ってくれた「最推し」の東宮・暁を、未来の知識で密かに支えることを決意する。
執着を捨て、元夫に無関心を貫く茜。
一方、高彬は自分に興味を失った茜の価値に気づき、今更遅い後悔に狂い始めるが……。
「見つけた。お前は俺の、運命の番だ」
正体を隠して東宮を支えていたはずが、冷徹な暁に見出され、逃げ場のないほどの執着と溺愛を注がれることに。
平安の雅な風情の中で描かれる、逆転と救済の物語。
最後は、二人が永遠の契りを交わす和歌で幕を閉じます。
白椿の咲く日~ひそかな恋、遠い日の思いは
紫さゆり
恋愛
結婚を控えた真由子は、久しぶりに異母姉の稚子(わかこ)と会う。
真由子の母の雪江は、大学教授であり著名な歌人の水上実之(みなかみさねゆき)の後添いとして水上家に嫁いだ。
婚約者の諒人(りょうと)のことなど、真由子は稚子と色々語り合ううち、庭の白椿の木は真由子がなついていた異母兄、靖之が植えたものだと知る。
白椿の木をめぐっての、ひそかな大人の恋物語です。
Blue Moon 〜小さな夜の奇跡〜
葉月 まい
恋愛
ーー私はあの夜、一生分の恋をしたーー
あなたとの思い出さえあれば、この先も生きていける。
見ると幸せになれるという
珍しい月 ブルームーン。
月の光に照らされた、たったひと晩の
それは奇跡みたいな恋だった。
‧₊˚✧ 登場人物 ✩˚。⋆
藤原 小夜(23歳) …楽器店勤務、夜はバーのピアニスト
来栖 想(26歳) …新進気鋭のシンガーソングライター
想のファンにケガをさせられた小夜は、
責任を感じた想にバーでのピアノ演奏の代役を頼む。
それは数年に一度の、ブルームーンの夜だった。
ひと晩だけの思い出のはずだったが……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる